文献詳細
文献概要
特集 どう対応する 医事紛争時代
「医療と法」をめぐる新たな状況と課題
著者: 植木哲1
所属機関: 1千葉大学大学院人文社会科学研究科
ページ範囲:P.462 - P.469
文献購入ページに移動医事関係訴訟の増加と将来予測
1.医事関係訴訟事件の最新の処理状況および平均審理期間
初めに,平成18年6月に発表された最高裁の医事関係訴訟に関する資料から問題の所在を明らかにしよう.表1は,医事関係訴訟事件の最新の処理状況および平均審理期間を示したものである.これによれば,現在,第1審(地方)裁判所における新受件数は1,100件前後であり,未済事件が既済事件を大きく上回る中,平均審理期間の短縮化にもかかわらず,裁判所が医事関係訴訟の処理のために四苦八苦している現状が窺われる.特に,訴訟事件数の増加は,平成4年までは300件前後で推移していたのであるが,これ以降に急激に増加しており,今まさに医療関係者受難の時代を迎えようとしている.
医事関係訴訟件数の増加は,最近における法曹(特に弁護士)の増加と密接に関連している.従前は500名前後で推移していた(旧)司法試験合格者は,次第に増え続けて1,500名前後に達していた.将来は法科大学院を修了する新司法試験方式に移行することになっているが,現在は両制度が並存して1,500名前後の合格者を出している.この法曹資格の増加がこれに比例して医事関係訴訟の増加を導いていることは明らかであろう(3倍の正比例).将来的には3,000名の合格者が予定されており(平成22年),それに伴って医事関係訴訟件数は,このままの状態で推移すれば軽く年間2,000件を超すことが予想される.
1.医事関係訴訟事件の最新の処理状況および平均審理期間
初めに,平成18年6月に発表された最高裁の医事関係訴訟に関する資料から問題の所在を明らかにしよう.表1は,医事関係訴訟事件の最新の処理状況および平均審理期間を示したものである.これによれば,現在,第1審(地方)裁判所における新受件数は1,100件前後であり,未済事件が既済事件を大きく上回る中,平均審理期間の短縮化にもかかわらず,裁判所が医事関係訴訟の処理のために四苦八苦している現状が窺われる.特に,訴訟事件数の増加は,平成4年までは300件前後で推移していたのであるが,これ以降に急激に増加しており,今まさに医療関係者受難の時代を迎えようとしている.
医事関係訴訟件数の増加は,最近における法曹(特に弁護士)の増加と密接に関連している.従前は500名前後で推移していた(旧)司法試験合格者は,次第に増え続けて1,500名前後に達していた.将来は法科大学院を修了する新司法試験方式に移行することになっているが,現在は両制度が並存して1,500名前後の合格者を出している.この法曹資格の増加がこれに比例して医事関係訴訟の増加を導いていることは明らかであろう(3倍の正比例).将来的には3,000名の合格者が予定されており(平成22年),それに伴って医事関係訴訟件数は,このままの状態で推移すれば軽く年間2,000件を超すことが予想される.
参考文献
1)植木哲:医療の法律学(第 2 版),有斐閣,1998
2)植木哲,他:医療判例ガイド,有斐閣,1996
3)古村節男,野田寛(編):医事法の方法と課題―植木哲先生還暦記念論文集,信山社,2004
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