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文献詳細

雑誌文献

病院66巻6号

2007年06月発行

文献概要

連載 病院管理フォーラム ■虐待防止・2

出会ってしまったからには…

著者: 加藤雅江1

所属機関: 1杏林大学医学部附属病院医療福祉相談室

ページ範囲:P.510 - P.511

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●虐待症例が教えてくれたこと

 小児科病棟のデイルームを,5歳になるその男の子はくるくる,くるくる走り回っていた.体も頭も汗ばんで,頬も赤みが差している.自分の体を持て余し,走ることで何かを消耗しようとしているような,走ることで何かを吸収しようとしているような,そんな切なくなるような走り方だった.「ちょっとお休みしてご本を読もうか」と声をかけ,抱きとめようとした時,彼は触れられるのを拒み,大きな声で威嚇し始めた.5年間の彼の苦しみを絞り出すような声で.

 正確には,彼は母親のおなかにいる時から虐待を受けていたことになるので,その歴史は6年に及ぶものになる.妊娠し胎児が男の子であることがわかった時,母親は泣き叫び,膨らんだそのおなかを壁に打ち付けていた.驚いた外来のスタッフから連絡を受けて,母親に声をかけたのがこの事例との出会いである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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