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文献詳細

雑誌文献

病院66巻7号

2007年07月発行

文献概要

連載 病院管理フォーラム ■虐待防止・3

身近な症例としてのDV(ドメスティック・バイオレンス)

著者: 加藤雅江1

所属機関: 1杏林大学医学部附属病院医療福祉相談室

ページ範囲:P.605 - P.607

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 コミュニケーションの形態が変わってきている.医療の場でも,コミュニケーション不足によるトラブルが発生し,コミュニケーションをうまくとるための研修が開催されるなど,その重要性が叫ばれて久しいが,そもそも「コミュニケーション」というもの自体が形骸化しているような気がする.会話を楽しんだり関係を深める手段としてコミュニケーションが活用されていないように思われる.背景にはメールや携帯電話の普及があるのかもしれないし,ライフスタイルが影響しているのかもしれない.あるいは,表面的にはコミュニケーションをとれているにしても,深く人と関わることを望まない人が増えてきているのかもしれない.このように,一般的には希薄になりつつある対人関係を基盤にした世の中で,その対極にあるともいえるDV(Domestic Violence)が増え,社会問題化している.

 医療の場は社会問題と直結している.DVについても知らん顔はできないのである.DVを知り,疾患の1つのカテゴリーとして捉えることが,医療スタッフには必要である.当院では,児童虐待防止委員会が活動を始めた頃より,児童虐待の背景にDVの影が見え隠れしていた.また,子どもの疾病を主訴に受診しに来た母親からDVについて相談を受け,子どもの疾患も両親間のDVの影響を受けていると考えられたことから,DVについて急遽介入した事例もあった.

 救急診療の場からは,DVにより搬送されてくる患者への対応を依頼されることも多く,フローチャートを作成し,勉強会を行っていった.そのような流れを経て,平成17年,児童虐待防止委員会は名称自体を虐待防止委員会に変更し,援助対象を子どもから広げていく結果となった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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