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雑誌目次

雑誌文献

病院66巻9号

2007年09月発行

雑誌目次

特集 価格とコストの地域格差

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.725 - P.725

 近年,病院経営は厳しさを増すばかりである.それは,相次ぐ診療報酬の引き下げや,医療安全・質向上に多くの時間を要するようになったこと,医師臨床研修の必修化により医師の偏在が顕著になったこと,そして平成18年診療報酬改定における7対1看護基準の創設により看護師不足が顕著になったこと,など様々な要素に起因していると考えられる.

 実際に中小病院においては,過去には例を見ないほど廃院が増加しており,大規模病院でも医師不足により診療科が存続できない病院が続出している.さらに,人口過疎地域では公立病院であっても存続不可能となっている.東京近郊においては,経済活性化により平均給与が上がり,現行の診療報酬では赤字になってしまう病院の方が多い.介護施設では給与の低さにより,多くの介護職員が他産業に流出してしまい,慢性的な人手不足となってしまった.

 このような現状において,診療報酬では1%にも満たない「地域加算」が存在するのみであり,介護報酬の「地域区分」は人件費を補うことはできない.

賃金と物価の地域間格差

著者: 石川達哉

ページ範囲:P.726 - P.730

 本年1月と6月にそれぞれ閣議決定された政府の「進路と戦略」および「骨太の方針」においては,景気回復の地域間不均衡に対する懸念が表明される一方,地方自治体の財政力格差を縮小させるべく地方財政制度や税制の改革を進めることが明記されるなど,地域という集合体としてのレベルでも衡平を追求する考え方が社会の趨勢となりつつある.ただし,景気回復の度合いや自治体の財政力以外の面で問題とすべき地域間格差が存在するのか,それらの格差がどの程度の大きさのものか,過去と比べて格差が本当に拡大しているのかどうか,などが顧みられることは意外に少ない.

 地域社会を構成する1人ひとりの個人にとっての地域とは,生活者として消費する場であり,また,労働者として生産活動に従事する場であろう.したがって,地域社会における個人を集合体として捉えた場合でも,生活水準を決める最も重要な要因が当該地域における所得と物価であることは,一個人の場合と基本的に変わらないはずである.ところが,このように重要性の高い所得・賃金と物価について,地域による差異の実態がデータに即して語られることは極めて稀である.そこで,都道府県および県庁所在市の賃金と物価に関する様々な統計に基づいて,地域間の格差が本当に拡大していると言えるのか否か,格差拡大はどのような時間軸,どのような品目において観察されるのかなどの観点から,以下で検討を行うこととしたい.

診療報酬と地域差

著者: 田中滋

ページ範囲:P.731 - P.734

 「都会における医療機関経営は,最大費用項目である人件費をはじめ,食材費等のコストが地方より高いので採算が厳しい」「地価の水準のために土地購入費が地方をはるかに上回る金額にのぼり,資金調達の一部を借入金に頼った場合,同一の面積を手当てした同じような売り上げ規模の地方の病院・診療所に比べ,(土地については減価償却によるキャッシュフローが発生しない以上)より大きな額の利益を毎期獲得できなければ借入金元本の返済ができず,経営の存続が困難となる」「借りている土地や建物の地代・借料も高い」等の声がこの特集の背景であろう.

 これらの主張は,「ゆえに公的医療保険からの診療報酬について,地方を上回る一点単価もしくは点数を設定してほしい」との期待ないし希望につながる場合も珍しくない.実際にそのような希望をもつ経営者がおられることは承知している.また,今でも診療報酬には例外的な地域加算が存在し,また介護報酬1単位あたりの金額にわずかな価格差が存在している点は周知の通りである.

 ただし,そうした願望をもつことは都市部の医療機関経営者にとってやむをえぬと十分に理解できるものの,以下の各項に示す内容を打ち破る論拠を示さない限り,社会連帯,すなわち共助の仕組みである医療保険制度から支払われる診療報酬への大掛かりな地域格差導入は難しいと考える.

医療費の地域差は何を意味するか

著者: 郡司篤晃

ページ範囲:P.735 - P.739

医療費の地域差分析の位置づけ

 医療費は経時的に変化するとともに,地域間においても差が存在する.それらの変化や差を分析することによって,医療費の高騰の要因を知ることができる.それによって賢明な医療政策の可能性が高まるはずである.闇雲な医療費抑制は医療の崩壊をもたらす.

 世界的に見て,医療費の経年変化は,経済の成長を上まわってきた.その要因は技術の進歩が大きな要因であることはまちがいなかろう1).また,今後ともこの傾向が続くとすると,その終末的な状況から,現在,そして近未来をどう考えるかという視点も重要であろう.

病院収支モデルにおける地域格差―首都圏の病院経営が崩壊寸前

著者: 藤原寿 ,   高橋泰

ページ範囲:P.740 - P.744

 「東京都心部での病院経営は今後成り立たない」.それは,現状の診療報酬では,都市部と地方の地域差が考慮されていないからだ.地価や食料費をはじめとした物価が都市部のほうがはるかに高い.にもかかわらず,診療報酬は全国一律の公定価格である.つまり,物価の高い都心部の医療機関は,同一の医療サービスを提供しても地方の医療機関より利益が少なくなる.その地域格差の一部は,入院において最大で1日につき180円,現状の診療報酬で評価されているだけである.

 一方,介護報酬では,介護・看護職員の人件費の地域差を反映する「係数」を設定し,報酬単価全体に乗じる報酬設定になっている.したがって,介護保険においては,サービスを提供する地域によって同じ内容のサービスであっても基本の報酬額全体が異なることになる.

医療費の地域加算価格導入の再検討―第三セクター鉄道との比較を通じて

著者: 平野創 ,   平野琢

ページ範囲:P.745 - P.750

 本稿では,医療費の地域加算価格導入が都市部の赤字経営に悩む病院に与える影響を検討する.本稿前半部では,地域間のコスト差の価格への安易な転嫁は,赤字を計上する病院にとって本質的な問題解決とはならない可能性を指摘する.なぜなら,都市部に赤字病院が多い原因はコスト格差よりも,地域間の医業収入の格差に起因すると考えられるからである.

 本稿後半部では,医療機関と類似した状況下にある他産業の事業体(第三セクター鉄道)を考察し,医療機関への経営改善のインプリケーション導出を試みる.第三セクター鉄道は,稼働率低下(乗客減少)に伴う収入の減少に悩まされていたが,老人や学生といった交通弱者のために容易には廃止できないというジレンマに陥っていた.こうした,公共の福祉と収益性の間のジレンマという点で,患者(顧客)が少ないからといって社会厚生上容易には撤退できない病院と第三セクター鉄道は共通点があると考えられる.

報酬とコストの地域格差

著者: 安藤高朗

ページ範囲:P.751 - P.754

 病院の報酬とコストの地域格差を考えると,東京とその他地域の比較が前提になることをはじめにお断りしておく.

 国民がわれわれ医療人に求めるものは,①安全で安心な医療と介護,②質の高い医療と介護,③わかりやすい医療と介護であるが,この実現のためにはコストに見合う診療報酬・介護報酬が大前提となる.しかしながら全国一律が基本の報酬体系では,大都市部の病院経営状況は厳しく,求められる医療と介護の実践どころか倒産や診療所化している病院が増えてきているのが現状である.

精神科病院における地域格差

著者: 平川淳一

ページ範囲:P.755 - P.760

 仲間うちで地域差問題を論じる時,最終的には「自らの地域が最も厳しい,たいへんだ」という話になる.いわゆる「貧乏自慢」である.ある病院経営者は「うちの地域では看護師が不足して,基準を維持できない.給料を上げたり,広告宣伝やら,お金がかかる」という.また,別の経営者は「うちは医師が不足して,たいへんだ.医師の給料に比べれば,看護師の給料なんて安いものだ.うちのほうがたいへんだ」という.さらに,別の経営者は「うちは看護師も医師も足りないうえに,患者もいなくなってきた.一生懸命,長期在院者を退院させてきた結果,病院経営が厳しくなった.いったいどうなっているんだ」という.

 医療経済学者ではない私には学術的に議論を展開することは難しいので,このような現場の視点で,入院基本料や給与について比較しながら,看護師・医師需給問題を,また病床利用率,食材料費のデータも加えて,地域差を考えてみようと思う.資料は,日本精神科病院協会(以降,「日精協」と略す)の総合調査のデータを使用する.本来ならば都道府県単位での数値が望ましいと思われるが,使用可能サンプル数が極端に少ない地域もあり,表1に示すようなブロック単位での比較とした.ただし,東京,大阪,福岡,広島・岡山については個別に数値を示してみた.

介護保険施設における地域格差

著者: 難波眞

ページ範囲:P.761 - P.764

都が国に緊急提言

 現在,医療・介護・福祉に対して財政主導による圧迫が加速してきている.介護報酬の締め付けによって,「官製ワーキングプア」にならざるを得ない現場で働く職員たちは,自分の将来を悲観し転職を考えている.今年5月30日に東京都福祉保健局は,厚生労働省に対して「介護保険施設に係る介護報酬の地域格差等に関する提言~大都市東京で安定的な施設経営が成り立つ介護報酬とするために~」 を行った(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2007/05/20h5v700.htm) .

 主な提言の内容は,①介護保険施設の人件費比率の設定を引き上げるべき,②賃金水準の地域差をより適正に反映すべき,③物価水準等の地域差を新たに反映すべき,④定員規模に応じた段階的な報酬設定とすべき,⑤離島等の特養への特別地域加算を創設すべき,というものである.根拠となる数字は東京都福祉保健局が調べたデータ(東京都社会福祉協議会高齢者施設福祉部会では平成12年度以来,毎年「特別養護老人ホーム経営実態調査」を行っている)のほか,厚生労働省「介護事業経営実態調査」や,厚生労働省が医療経済研究機構を通じて実施した「介護報酬改定後の介護保険施設の経営状況調査」,財団法人介護労働安定センターによる「事業所における介護労働の実態調査」などを基にしている.

グラフ

地域医療再生と家庭医療のコラボレーション―三重県立一志病院

ページ範囲:P.713 - P.716

 三重県立一志病院は,津市街地より車で50分ほどの津市西部地域の山間に位置する自治体立病院である.市町村合併で住所は津市となったが,旧白山町(人口約13,000人)と旧美杉村(人口約6,400人)の地域住民を対象とする,地域中小病院である.

 同院は以前より,コミュニティバスの停留所を病院敷地内に設置したり,近くの小学生等がボランティアで花壇や植木の手入れに訪れたり,また職員がボランティアで病院内の飾りつけやごみ拾いを行ったりと,地域住民に身近な病院として愛されてきた.実際にコミュニティバスの運転手が「利用者に高齢者が多いので,バスの乗降には十分な時間を確保し,雨の日には滑らないようにする等,利用される方への安全に配慮しています.運転手には安心が要求されます」とさりげなく発言する等,関係者の意識も高い.また「健康まつり」や「音楽療法」,「健康教室」,「糖尿病教室」等,予防医療にも力を入れて地域住民の健康に配慮した包括医療を展開してきた.しかし,このような病院も昨今の人材確保と経営難の難局に直面し存亡の危機が続いている.特に常勤医師が確保できるかどうかは喫緊の課題として数年前よりその対策に追われていた.こうした状況の打開策として,内科診療部門を家庭医療の教育と実践の場とすることで,三重大学総合診療部の全面的な協力を得ることとなり,2007年4月より新体制がスタートした.

連載 ヘルスケア環境の色彩・照明・9

色彩5 明るい病院をつくる色

著者: 梅澤ひとみ

ページ範囲:P.718 - P.719

「明るい」印象

 「病気を宣告された患者の気持ちを少しでも明るくしたい」この課題は色彩による効果を期待される場合が多い.

 単色の色彩感情から考えると明度が高いほど明るい印象を与える.しかし空間を構成する内装材の平均明度を高くすればいいわけではない.そもそも「明るい」という意味は陰鬱ではなく活動的であることが求められているのだ.一つひとつの色ではなく全体的な色彩構成で考えたい.

職場のメンタルヘルス・6

職場の人間関係を演出するコミュニケーション

著者: 武藤清栄 ,   村上章子

ページ範囲:P.778 - P.782

メッセージ―内容に関するものと関係に関するもの

 職場の人間関係の良し悪しを決めるのは,コミュニケーションの品質である.大きく分けるとコミュニケーションには「言語的なもの」と「非言語的なもの」があり,前者はメッセージの「内容に関するもの」,後者はそのメッセージの演出にかかわり,「関係に関するもの」と言われる.言葉や文字,メール等は内容に関するものであり,声,文章の長短,伝え方,句読点の打ち方,強調,表情や態度などは関係に関するものである.つまり,内容に関するものは言語的,関係に関するものは非言語的なコミュニケーションに属する.そしてすべてのメッセージ(記号)は,常に関係に関するものが,内容に関するものを規定するというルールがある.

 例えば,太郎と花子は恋人同士である.それも非常にうまくいっている恋人同士である.ある時太郎がヘマをしたら,花子が「あなたって本当にバカね」と言った.しかし,太郎にとってその言葉は,「愛のささやき」のように聞こえる.そして「俺って本当にバカだったよなぁ」と自分の非を認めた.一方,太郎と桃子は仕事のライバルである.たまたま太郎が仕事上のミスをした時に,横にいた桃子がたまらず言葉を漏らす.「あなたって本当にバカね」それを聞いた太郎はムッとし心の中で「くそっ.いつかこいつをバカにしてやる」とつぶやいた.内容的なメッセージとしては両者とも「あなたって本当にバカね」であるが,花子が言った場合と,桃子が言った場合とでは意味が違って取られる.ここに関係に関するメッセージの優位性がある.したがって,コミュニケーションでは,そのことを十分考慮しておく必要がある.

病院管理フォーラム ■医事法・5

医療(診療)契約と医療水準

著者: 植木哲

ページ範囲:P.783 - P.785

 前回,医療現場においては医療(診療)契約という観念が不可欠であることを指摘しました.今回は医療(診療)契約と医療水準の関係を明らかにしておきます.

医療動向フォーラム ■DPCの今後を予測する・2

日割り包括 vs 一入院包括―日本に合っているのはどちらか?

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.786 - P.787

●DPCを巡る今後の3つの議論

 柳澤厚相は,2007年5月15日,経済財政諮問会議へDPC病院を現在の3倍の1,000か所まで増やす計画を示した.この計画の実施期間は,2008~12年度の5年間であり,現在360病院あるDPC実施病院を12年度にまでに1,000病院に増やすことを意味する.この場合,どのようにDPCの病院を絞り込むか,逆に非DPC病院をどのように扱うかなど,DPC 病棟と非DPC病棟の棲み分けや診療報酬のあり方など日本の急性期医療の全体像を決める必要がある.

 中医協はすでに,2010年度以降のDPC病院の評価のあり方として調整係数の廃止と「新たな機能評価係数」の検討を課題として設定しており,今後の議論が注目される.また同時に厚生労働省内でも待望論が根強い一入院包括(DRG)が動き出し,日割り包括(DPC)から一入院包括(DRG)への移行の話が急速に進展するかもしれない.

■「患者さま」を考える・前

「患者さま」に感じる違和感

著者: 松尾佳津子 ,   田原孝

ページ範囲:P.788 - P.791

●「患者さま」への異議申し立て

1.現状の確認

 「患者さま」ということばに対する「異議申し立て」が近年目につく.


 病院へ行くと,「患者さま駐輪場」「患者さま待合室」と書かれていることがある.「患者さま」と言われるのは何となく落ち着かない.なぜなら「患者」という言葉自体がすでに悪い印象を与えるため,いくら「さま」をつけてもらってもうれしくない.「病人さま」「怪我人さま」「老人さま」など,いくら頑張っても敬うことにならないのである.
(金田一春彦:日本語を反省してみませんか.角川 one テーマ21,角川書店,2002)

レポート【投稿】

広域災害に備えて―災害用伝言板による連絡網構築と訓練の経験から

著者: 平間好弘 ,   新谷周三

ページ範囲:P.765 - P.767

 現在,携帯電話各社は震度6以上の地震が発生した場合,災害用伝言板により安否確認情報を提供している.大規模災害時の情報伝達システムは,自治体や消防本部の使用している衛星電話や厚生労働省の広域災害・救急医療情報システムである.医療機関で働く職員への業務連絡や情報伝達を考えたものではない.新潟県中越地震では,救急医療情報システムが,まったく機能しなかった.災害時には,自治体を含め職員や住民に救急医療情報を提供することが必要となる.そこで当院では「サンダーバード作戦」と名づけた携帯電話の災害伝言板を利用した大災害時連絡網の新システムを構築し,定期的に訓練を実施している.また,地域住民と職員にアンケートを行い,その結果から問題点や改善すべき点を明らかにした.それらのアンケートや連絡網の改善,訓練を報告するとともに,重傷患者の円滑な移送につなげるため,全国の救急病院に配置されている厚労省の「広域災害救急医療情報システム」と一緒に設置してある通話のみの携帯電話に i モードなどの機能を取り付け,厚労省や自治体などと情報を共有することを提案する.

短期連載 医療過誤における民事・行政・刑事責任・3【最終回】

民事責任の問題を含む医療紛争防止対策について

著者: 長谷川幸子

ページ範囲:P.768 - P.773

 医療者と患者の間には,診療契約が存在する.診療契約においては最善の医療を施すことを求められるが,医療の不確実性から,手術の成功,病気の治癒までを約束するものではない.契約の性質からして,医療者と患者との間の信頼関係が基礎とされており,医師は専門家として,患者に対し,十分な説明義務を負う.

 医療過誤は,この診療契約に違反し,債務不履行(民法415条),不法行為(民法709条)とされる場合であるが,医療の不確実性からすると,どのような内容を説明し,約束したかが重要となる.治るつもりで受けた手術で,合併症により不幸にも死亡の結果に至った時,医師は仕方がないと考えても,やはり遺族は納得いかないことも多い.もちろん法的に見た場合,合併症の一言をもって責任がないとされるわけではないが,信頼関係の上に十分な説明がなされていれば,避けられない合併症まで紛争となることは少なくなるだろう.

連載 医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・16

回復期リハビリテーション病棟でのMSW援助と役割

著者: 原田由美

ページ範囲:P.774 - P.777

 当院の回復期病棟に入院した患者の退院先の約7割は自宅退院である.その多くが地域の在宅サービスの援助を受けて生活している.患者・家族の生活の実態は,医療保険や介護保険法・障害者自立支援法などの法改定に振り回されているともいえる.医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)は変動する医療・福祉制度や地域の社会資源等の情報を収集して,その社会資源が現実的にどのようなサービスを提供しているのか熟知し,それを患者・家族,そして医療の現場に情報提供をしていくことが期待されている.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第152回

東海大学医学部付属病院

著者: 竹村和晃 ,   有賀雅尚

ページ範囲:P.794 - P.799

 東海大学医学部付属病院は,高度救命救急センターを併設した神奈川県西部医療圏の3次医療を担う特定機能病院である.

 2006年1月に開院した新病院は今まで以上に急性期医療に特化され,質の高い診断と治療を速やかに実施することを目標として様々な取り組みを行うとともに,患者が治療に専念できる環境をハード・ソフト両面から整備し,満足度の高い施設を目指している.

連載 リレーエッセイ 医療の現場から

がん治療を支える―早期からの緩和ケア

著者: 有賀悦子

ページ範囲:P.803 - P.803

 緩和ケアというと,終末期医療の代名詞だった時期がありました.がん対策基本法にも盛り込まれた「早期からの緩和ケア」.“緩和ケアは大切” と言いつつも,終末期医療だと思っていた緩和医療が,早期からどのような役割を果たすのか,中々ピンとこない医療者もいらっしゃるのではないでしょうか.私たちが支えた患者さんの中に,この「早期からの緩和ケア」のモデル的な患者さんがいらっしゃいました.

 60代の膵がんの女性でした.都内のある大学病院で診断され,塩酸ゲムシタビンの外来化学療法と疼痛コントロールを受けていました.痛みと嘔気が強く,緩和ケア科外来に移りたいと問い合わせがありました.急性期病院での緩和ケアですので,基本的にがん治療を施行されている方を対象とした緩和ケア外来です.「そちらに移って,症状の緩和と可能ならがん治療も平行して続けたい」とのこと.まずは消化器科を受診してもらいました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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