icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院67巻10号

2008年10月発行

雑誌目次

特集 病院と家庭医療

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.869 - P.869

 1985年6月,時の厚生省は「家庭医に関する懇談会」(座長:小泉明東京大学教授)を設置し,1987年9月には報告書を出版し,総合的な医療を提供する家庭医を専門的な分野として位置付けようとした.しかし,様々な理由で日の目を見ることはなかった.また,1986∴年に家庭医療学研究会が発足するものの,それもなかなか大きな発展は見られなかったという.

 筆者は,日本病院会で新規に発行する冊子「勤務医のために」の執筆打ち合わせのため,同会の当時の担当理事であった西村昭男理事長(現・社会医療法人社団カレスサッポロ理事長)が経営する室蘭の日鋼記念病院を1999年に訪れた.そして,たまたま西村理事長の配慮により,同院家庭医療学センターで家庭医療というものに始めて触れ,本特集の執筆者の1人,当時のセンター長であった葛西龍樹氏と初めてお会いした.新しい医療への情熱に触れ,鮮烈なイメージだった.

「総合的な診療能力を持つ医師」の必要性

著者: 大竹輝臣

ページ範囲:P.870 - P.872

 わが国の医療は国民皆保険のもと,誰もが安心して医療を受けられる制度を実現し,これまで世界最高の平均寿命や高い保健医療水準を実現してきた.

 一方,急速な高齢化の進行,技術の進歩など,医療をめぐる環境は大きく変化している.また,現在の医療現場においては医師不足やへき地医療などに不安があるのも現実であり,こうした問題を解決しながら,今後とも国民の医療に対する安心・信頼を確保し,質の高い医療サービスが適切に受けられる体制を構築・維持していくことが求められる.

大学が県単位の広域で取り組む家庭医養成プロジェクト

著者: 葛西龍樹

ページ範囲:P.873 - P.876

 「家庭医療が利用者の利益を最優先した健全なシステムとして,早く日本に浸透してほしい」.筆者はこのように願って1990年から家庭医療を追求しているが,本稿では2006年3月に筆者が福島県立医科大学(以下,福島医大)へ赴任してから取り組んでいる「県を単位とした広域に及ぶ公益性の高い家庭医養成プロジェクト(福島医大モデル)」の進捗状況について報告する.医療確保も含めた,日本の大きな医療制度改革の参考になれば幸いである.

医療再生―グループ診療のできる家庭医の育成が急務

著者: 津田司

ページ範囲:P.877 - P.880

 小児科医,産婦人科医不足の問題を皮切りに始まった医師不足問題は,コンビニ受診による救急現場での医師の疲弊が引き金となって,公立中核病院の救急外来廃止や内科初診外来の制限などに進展し,遂には日本全国での医療崩壊が明らかになった.崩壊の要因としては,2004年度から始まった新臨床研修制度によって地方公立大学の医師不足が起こり,関連病院の医師を大学へ呼び戻したため,地域中核病院の医師が疲弊したことが考えられている.

 しかし,医療崩壊はこの3,4年の間に急に起こったのではなく,20~30年の間に徐々に進行していたのである.細分化された専門医の養成教育が加速され,各医師の守備範囲が狭小化したので,多数の健康問題を抱える高齢者は複数の専門科を受診せざるを得なくなり,延べ患者数が増大した.医学部卒業生の98%以上が専門医の研修を積むのは世界的に見ても異様な状況である.そして,専門医志向の中でも過酷な労働条件下にある救急専門医や麻酔科医の志望者が少ないことも問題である.また,救急現場の疲弊の要因の1つとして,「ビル診」など開業形態の変化によって開業医の一次救急への対応が減少したことも挙げられる.他の要因としては,種々の文書作成作業の増加など,医師の業務が増大したことも挙げられる.女性医師の増加に伴い,結婚・出産などで,実質的な労働時間の減少を来たしていることも見過ごせない.

救急医療と家庭医療

著者: 寺澤秀一

ページ範囲:P.882 - P.888

救急医療崩壊とゼネラリスト養成

1.病院内外のゼネラリスト

 本稿では,図1に示すような4つの医師団を「病院内外のゼネラリスト」と呼ぶことにする.

1)救命型救急医とER型救急医

 本稿では,図1に示すように,三次救急の初期診療から入院治療(Critical care)に軸足をおく救急医を「救命型救急医」と呼び,一次救急から三次救急まで,すべての救急患者の初期診療(Emergency care)に軸足をおく救急医を「ER型救急医」と呼ぶことにする.

 「風邪の子どもたちから交通事故の心肺停止まで」受診する「ER型救急」では,施設によって差はあるが,ER受診患者の約10~20%が緊急入院となり,残りの80~90%はERから帰っていく.三次救急患者主体の「救命型救急」では,ほとんどの患者はそのまま入院となりICUで集中治療を受けることになるが,「ER型救急」のERでは入院させるべきか,帰してもよいかという判断を要求される.筆者はこの両者とも救急医と考えている.今後,わが国で救急医を目指す医師は,初期には両者の研修をしながらも,いずれはどちらかに軸足を置くような形で発展的に分業してゆくのが理想的と考えている1,2)

2)「総合内科医」と「家庭医」

 本稿では,図1に示すように,総合診療医のうち内科全般にわたる継続的な外来診療と入院加療を行う病院ベースの医師を「総合内科医」と呼び,内科だけでなく小児,外傷なども受け入れ,継続的な外来診療に軸足を置き,入院治療が必要な場合に専門医に転送する地域,外来ベースの医師を「家庭医」と呼ぶことにする.筆者はこの両者を総合診療医と考えている.今後,わが国で総合診療医を目指す医師は,初期には両者の研修をしながらも,いずれはどちらかに軸足を置くようなかたちで発展的に分業してゆくのが理想的と考えている1,2)

周生期医療と家庭医療

著者: 新井隆成

ページ範囲:P.889 - P.892

 「周生期」とは,妊娠,出産,新生児,乳児期を1つの包括した期間として捉えた造語である.この期間を次世代育成の極めて重要度の高い医療領域であると認識し,これらの領域におけるプライマリケアと,高い専門性に対応できる幅広い知識・技能を有する医師の養成・充実を図ることを目的に作られたのが,文部科学省の平成18年度「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」で選定された「周生期医療専門医養成支援プログラム」(以下,周生期プログラム)である.

 医師不足から医療事情の悪化が深刻な周生期医療を担う専門医をどのように養成するか,またどのような診療能力を周生期医療専門医は身につけるべきなのか.医学生―初期研修―後期研修という一貫した教育体制についてプログラムの構築を進めていく中で,北米において周生期医療の一端を担っている家庭医の存在を知るに到った.今,日本,特に地域が抱える医師不足診療科や医師の不適正配置問題への具体的な対策を検討するうえで,北米で機能している家庭医療と各専門領域との協力関係は,大いに参考となる医療体制のあり方であると考える.

アメリカ医科大学における家庭医療

著者: 藤岡洋介 ,  

ページ範囲:P.893 - P.896

 本稿のテーマは「アメリカの教育病院における家庭医療」であるが,われわれの施設は医科大学の家庭医療科であり,同じ教育病院でも,地域病院の家庭医療科とは多少性格が違ってくる.家庭医療の性格上,むしろ地域に根ざした病院のほうが研修に適している部分もある.それを承知していただいたうえで,われわれが勤務しているアメリカ医科大学での家庭医療を中心に紹介したい.ただ,それ以前にアメリカと日本では「家庭医療」そのものに対する捉え方の違いがあり,読者にアメリカにおける家庭医療の位置づけについて理解していただくため,アメリカで家庭医療が始まったいきさつ,アメリカでの家庭医療の定義などから話を始めたい.

【家庭医療クリニックと病院の連携例】

―亀田ファミリークリニック館山―Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題

著者: 岡田唯男

ページ範囲:P.897 - P.901

 家庭医療の重要な概念であるbiopsychosocial modelが提唱されて昨年で30年1),プライマリヘルスケアの概念が提唱されたアルマ・アタ宣言から今年で30年,そして来年,米国で家庭医療が1つの専門分野として誕生して40年になるが,ようやく,地域全体の健康度の上昇はプライマリ・ケアなくして成立せず,専門医が多すぎると医療費の高騰,地域格差の増大,全体的な死亡率の低下が起きるという確固たるエビデンスが示されてきている2,3)

 医療法人鉄蕉会は2000年より家庭医療の実践と家庭医の育成に取り組んできたが,2006年より家庭医療単科のサテライトクリニック(亀田ファミリークリニック館山,以下,KFCT)を開設した.ここにその概要を解説する.なお,本稿における「家庭医」とは米国の家庭医療レジデンシープログラムと同等の研修を受けている後期研修医およびその指導に当たる指導医と定義する.

―北海道家庭医療学センター―病診連携における家庭医の強み―外来診療と在宅医療の2つの観点から

著者: 草場鉄周

ページ範囲:P.903 - P.906

 家庭医に求められる機能は多岐にわたるが,表で示した家庭医療の特徴の中でも,病診連携は2番目に大きく扱われており,大変重要な機能であることが見て取れる.この文言の中では,・他の専門分野と患者の間の仲立ち,患者の立場を代弁,・ヘルスケア資源の効率的な活用,という3つの要素が示されており,家庭医が日常診療の中で,どのような点に配慮しながら病院との連携を図っているかが明確にわかる.本稿では,こうした3要素を体現する具体的な連携の実例を提示しながら,家庭医の果たす役割について論じたい.

グラフ

生活を支える医療―医療法人財団 河北総合病院 東京・杉並家庭医療学センター

ページ範囲:P.857 - P.860

1928年の創立から80周年を迎えた河北総合病院は,人口53万人の杉並の地に根をおろし地域医療を支えている.2006年4月に東京・杉並家庭医療学センター(家庭医療科)を開設.包括的な医療ケアを患者の生活の場に提供することを目指し,英国で家庭医療の経験を積んだ一戸由美子医師をセンター長に迎えて,臨床実践と教育を行っている.

連載 ヘルスケアと緑・10

子どもと癒し―その1―イギリス

著者: 浅野房世

ページ範囲:P.862 - P.863

 さて,今回紹介する施設は,イギリスのバーミンガムにある,世界で3番目に作られた子どものホスピスである.地域において年間600名以上の終末期の子どものケアを実施しており,そのサービスは,子どもとその家族に24時間体制で提供され,患児だけでなく家族も一緒に施設を利用することができる.大きな敷地の中にある平屋と一部が2階の建物は,少し大きめの住宅と見間違う.死を間近に控えた子ども,親,そして兄弟姉妹のプレッシャーは大きい.このプレッシャーから一時的にでも開放し,それぞれが担わなければならない苦しみを少しでも軽減したいというのが,この施設のコンセプトである.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・29

臓器移植におけるMSWの役割―心臓移植医療における当院でのソーシャルワークを通して

著者: 小野賢一

ページ範囲:P.907 - P.910

 東京女子医科大学病院(以下,当院)は,1997年の「臓器の移植に関する法律」の施行に伴い,心臓移植の実施医療施設となった.そうした中で,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)は,当初から心臓移植医療チームのメンバーとして活動を行っている.本稿ではその経緯と,具体的な支援の概要について述べる.

〈続〉基本からわかる医療経営学・7

医療とマーケティング

著者: 島津望

ページ範囲:P.911 - P.914

マーケティングの必要性

 筆者はこれまでにも,医療におけるマーケティングの重要性を主張してきました1).しかし,実際にはなかなか浸透していないようです.マーケティングが広告・宣伝と受け取られたこと,営利目的の企業の売り込み作戦に見られたことなどによって,医療の現場へマーケティングを積極的に取り入れるという気運が芽生えなかったのでしょう.医療の公共性とマーケティングのイメージは,依然としてかけ離れたもののようです.

 しかし欧米では,マーケティングを社会活動一般に積極的に取り入れています.事実,アメリカやカナダのヘルス・プロモーションには,ソーシャル・マーケティング手法が用いられています.医療にマーケティングの考え方を取り入れることは,決して医療の公共性と相容れないことではありません.むしろ積極的に取り組んでいかなければならない課題でしょう.

続クロストーク医療裁判・10

B型肝炎訴訟―他原因論と因果関係の判断―集団予防接種B型肝炎感染事件―最高裁平成18年6月16日判決の事例から

著者: 小野本敦 ,   星野豊 ,   廣瀬昌博

ページ範囲:P.915 - P.920

 本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 第10回目は前回と論点が異なる注射関係の判決をとりあげる.この平成18年判決は,乳幼児期の集団予防接種によりB型肝炎の持続感染者となった者や遺族の損害賠償請求を認めたものである.接種した者の集団予防接種に関する過失が肯定されることには争いがなく,集団予防接種とB型肝炎の罹患との因果関係が問題となっている.第一審の札幌地裁は因果関係を否定したのに対し,控訴審の札幌高裁はこれを肯定し,最高裁が高裁判決の結論を追認したものであるが,因果関係の肯定の理由について,水平感染の可能性が低かったこと等独自の論立てをしている.なお,法律的には,20年の除斥期間(民法724条後段)の適用を認めるか(その起算点をいつと見るか)という問題も論点となっているが,今回は補足的な記述にとどめた.

DPC時代の医療経営管理塾・5

調整係数の決め方

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.922 - P.923

 診断群Aの包括部分の1日当たりの支払額

  3万円(入院期間にかかわらず)

 診断群Bの包括部分の1日当たりの支払額

  4万円(入院期間にかかわらず)

 診断群Cの包括部分の1日当たりの支払額

  5万円(入院期間にかかわらず)

 診断群Dの包括部分の1日当たりの支払額

  6万円(入院期間にかかわらず)

とする.左の表は,DPC調査期間中の松病院のDPC関連の全患者の診断群,在院日数,包括部分が出来高で支払われた場合の医療収入額を示す.

(DPCの調査期間中に松病院を退院した患者データ)


〈問1〉出来高払いの方が,包括払いより高い収入を得られるのは10症例中,何症例か?

〈問2〉松病院の調整係数を求めよ(小数点第3位まで算出せよ).

(国際医療福祉大学医療経営管理学科2007年2年後期「医療における今日的諸問題」期末テスト)

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・13

病診連携とプライマリケア

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.924 - P.925

 最近,病診連携という言葉が盛んに使われるようになってきているが,意外なところに盲点があるように思える.


かかりつけ医を持たない

 救急搬送の妊婦が医療機関に受け入れを拒まれるニュースが何度もあり,そして,その多くが「かかりつけ医」を持っていないことも明らかになった.

病院管理フォーラム ■医事法・18

医療紛争裁判の現状と課題(2)

著者: 植木哲

ページ範囲:P.926 - P.928

●医事関係訴訟事件の認容率

 前回の表1(本誌67巻9号832頁)で見た医事訴訟の新受事件数の増加は,裁判所による判決の増加をもたらします.しかも医療訴訟は裁判途中で終結しないため(裁判上の和解は別),下級審判決の増加はもちろんのこと,必然的に上級審判決,特に最高裁判例の出される割合も高くなります.判例データベースTKCの医療判例検索システムでも,最高裁による判決数は84件に上っています(2008年2月22日現在,全体で2,685件が収録).これまで本連載では,最高裁判決を中心に,医療側の常識と世間の常識という観点から検討してきました.

 全体的な観点から最高裁判決を経時的に眺めると,3つの時期に分けて考察することができます.第1期は,昭和50年代前半までの時期であり,最高裁梅毒輸血事故判決(最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁)を中心に,医師に高度な注意義務(最善の注意義務)が設定され,少ない判例の中にあって,患者の救済が大幅に進捗した時期です.ここでは原審(下級審)において医師の責任が肯定されることが多いので,最高裁は上告を棄却する役割を果たします.ちなみに昭和50年代に入るまでは,第1審判決における原告(患者側)の勝訴(認容)率は50%を超えていました.

■DPCによる地域医療分析・3

MDC05循環器系

著者: 河野一博 ,   真野俊樹

ページ範囲:P.929 - P.931

●「地域医療」と「選択と集中」

 連載第1回でわれわれは,地域医療を担う医療機関を1つの医療サービスのプロバイダーと考え,地域の医療機関が一体となって最適な医療を提供することの重要性を示した.そのため,各医療機関が経営するうえで,地域医療計画と組み合わせた地域における医療資源の「選択と集中」が必要となる.

 産業界における「選択と集中」のフレームワーク1)を医療に適応する際,最適な分析データとしてDPC : (Diagnosis Procedure Combination)という診断群分類を基礎としたデータの活用を提案した.すなわち「選択と集中」をDPCデータを用いて検討し,地域医療の評価や,その地域における最適な医療提供を実現する病院経営の戦略を体系化して遂行するための活用方法について述べる.

 今回は主要診断群 MDC05 (循環器系疾患)について報告をする.

■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・10

プロジェクトマネジメント

著者: 能登原伸二

ページ範囲:P.932 - P.935

●プロジェクトとは何か

 本稿ではプロジェクトマネジメントについて述べるが,そもそもプロジェクトとはどう定義されるのだろうか.

 プロジェクトとは「ある特定の目的を持って実施される一連の業務であり,明確に定義された目標,スケジュール,予算をもとに,独自の成果物を創出する有期的活動」と定義される.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第165回

ドイツにおける病院運営の多角化と建築デザイン

著者: 中山茂樹

ページ範囲:P.936 - P.942

 ドイツはヨーロッパ諸国の中でも最も社会保障の進んだ国の1つである.その方法は,英国や北欧など多くの国が財源を税金によって賄う方法を採用しているのに対し,わが国と同様に「保険制度」によっている.基本となる制度がわが国と同一であり,同様な課題も抱えるドイツの医療施設を視察する機会を得たので,近年の制度改革と,それに合わせた病院建築のデザインについて報告したい注1)

 かつて,ドイツの病院運営者は,州もしくは自治体のほかは教会など,いわゆる公的な組織であった.これが近年は独立行政法人や第3セクター,あるいは民間会社の参入も著しいなど,その形態は大きく変容し多角化している.加えて,上述した医療保険制度にも,様々な競争的原理が導入されるなど,これまでの医療体制とは異なってきている.本稿は,こうした点にも触れながら,新しい時代に合わせた病院建築についての最新事例の考察である.

リレーエッセイ 医療の現場から

看護用具創意工夫展

著者: 佐藤和子

ページ範囲:P.943 - P.943

 看護用具創意工夫展の歴史は古く,20年以上前から大学病院や看護協会で開催されています.しかし中小の民間病院ではほとんど行われていません.現場の実践が優先されて余裕がなく,教育的な活動が二の次になってしまうからです.当院の看護師も「患者中心の看護」という意識が薄く,1日をただ仕事だけこなしている状態でした.

 そこで,「患者のために,優しさと暖かなこころのふれあいを大切にし,質の高い看護を提供する」をモットーとして,2004年に業務教育委員会を立ち上げました.そして「看護職員の想像力を養い,看護サービスの向上を図る」ことを目的に,「看護用具創意工夫展」を企画したのです.新しいことを始めるには,多少の抵抗がつきものです.私が就任した2002年当事の看護部はきちんとした組織がなく,同じ方向に向けて運営されていなかったため,看護部の組織化が一番大変でした.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?