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連載 病院管理フォーラム ■医事法・18
医療紛争裁判の現状と課題(2)
著者: 植木哲1
所属機関: 1千葉大学法経学部法学科
ページ範囲:P.926 - P.928
文献購入ページに移動前回の表1(本誌67巻9号832頁)で見た医事訴訟の新受事件数の増加は,裁判所による判決の増加をもたらします.しかも医療訴訟は裁判途中で終結しないため(裁判上の和解は別),下級審判決の増加はもちろんのこと,必然的に上級審判決,特に最高裁判例の出される割合も高くなります.判例データベースTKCの医療判例検索システムでも,最高裁による判決数は84件に上っています(2008年2月22日現在,全体で2,685件が収録).これまで本連載では,最高裁判決を中心に,医療側の常識と世間の常識という観点から検討してきました.
全体的な観点から最高裁判決を経時的に眺めると,3つの時期に分けて考察することができます.第1期は,昭和50年代前半までの時期であり,最高裁梅毒輸血事故判決(最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁)を中心に,医師に高度な注意義務(最善の注意義務)が設定され,少ない判例の中にあって,患者の救済が大幅に進捗した時期です.ここでは原審(下級審)において医師の責任が肯定されることが多いので,最高裁は上告を棄却する役割を果たします.ちなみに昭和50年代に入るまでは,第1審判決における原告(患者側)の勝訴(認容)率は50%を超えていました.
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