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文献詳細

雑誌文献

病院67巻11号

2008年11月発行

文献概要

特集 「環境の時代」と病院

環境CSRと持続可能性

著者: 河口真理子1

所属機関: 1大和総研 経営戦略研究部

ページ範囲:P.962 - P.965

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CSR(企業の社会的責任)とはなにか?

 企業の社会的責任,CSR(Corporate Social Responsibility)については様々な定義があるが,筆者は「企業の内側と外側を再確認すること」と定義している.これは言い換えると,己を知り相手(社会)を知ることである.内側から見直すということは,企業のミッションを再確認し,企業の社会的な存在価値を問い直すことを意味する.結局,最近頻発している企業不祥事のほとんどは,目先の利益を確保するという近視眼的な発想から生じている.しかしそれらが一旦発覚すると企業に取り返しのつかないほどの損失をもたらす.こうした企業も,設立当時を振り返ってみると,その事業を通じて社会に貢献をしたいというミッションが必ずあったはずである.しかし,日々の事業活動を続ける中でそれが見失われてしまった.それを再確認することがCSRの第一歩である.

 次に「外側から見直す」ということは企業を取り巻くステークホルダー,すなわち社会との関係を再確認することである.そこで社会(相手)を知る時に重要な点が1つある.それは「何がビジネスのチャンスなのか?」という切り口以外の視点から社会を知るということである.地域の住民や,NGOなどビジネス上あまり利害のないステークホルダーがその会社に対して何を期待しているのか,また従業員などビジネスに直接関係の深いステークホルダーでも,会社とどのように関わっていきたいと思っているのか.彼らの要求は,環境保全やワークライフバランスのとれた職場制度など直接ビジネスにつながらないように見えるものが多く,通常の企業活動の中で無視あるいは軽視されがちであるが,これらは社会の変化とともにビジネス上も重要なテーマとなることが多い.

参考文献

1)1987年にブルンブラント委員会が発行した報告書“Our Common Future”における定義.
2)Global Footprint Networkが算出しているエコロジカル・フットプリントという.
3)2007年に発表が予定されているIPCCの第4次報告書では,さらに深刻な事態が報告される見込み.
4)サステナビリティの科学的基礎に関する調査プロジェクト「サステナビリティの科学的基礎に関する調査2006」p. 136
5)池田香代子・マガジンハウス(編):世界がもし100人の村だったら2,マガジンハウス,2002,p. 71
6)ロバート・B・ライシュ著,雨宮寛・今井章子訳:暴走する資本主義,東洋経済新報社,2008,pp. 144-145(原著,2007)
7)世界経済フォーラム資料“Voice of the People 2007”(http://www.weforum.org/en/media/Latest%20Press%20Releases/voiceofthepeoplesurvey)によると,政治家と経営者では,政治家のほうが不正直で能力がない,と認識されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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