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文献詳細

雑誌文献

病院67巻12号

2008年12月発行

文献概要

連載 リレーエッセイ 医療の現場から

父のFinal Gift

著者: 対本宗訓

所属機関:

ページ範囲:P.1113 - P.1113

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 私が初めて人の死の現実に触れ得たのは,30歳も半ば,実の父を見送った時であった.80歳の父は数年間の長患いの中で幾度となく入退院をくりかえし,長い長い時間をかけて,きわめて緩徐に死に立ち到ろうとしているかのように見えた.

 死の10日ほど前のことであっただろうか,何日かぶりに父の枕元に立った私は,いつもと違う父の表情に思わず目を見張った.父の意識レベルは末期まで比較的保たれており,それまではきちんと私の顔を見て受け答えしてくれていた.ところが,その日に限って視線が私の体を通り越し,私の背後の空間の一点に焦点が結ばれた.そしてその目が実にいきいきと輝いている.まるで誰か親しい者がそこにいるかのように.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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