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文献詳細

雑誌文献

病院67巻2号

2008年02月発行

文献概要

連載 続クロストーク医療裁判・2

適切かつ十分な鑑定のために―顔面痙攣・脳神経減圧手術死亡事件―最高裁平成11年3月23日判決の事例から

著者: 志村由貴1 大澤彩2 山上岩男3

所属機関: 1さいたま地方裁判所 2東京大学大学院法学政治学研究科博士課程 3千葉大学医学部附属病院脳神経外科

ページ範囲:P.158 - P.163

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 本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 続編1~4回目は「鑑定書・私的意見書(私的鑑定書)の評価」を取り上げている.

 第2回目の事案は,鑑定に対して厳しい評価を下した最高裁判所の判決である.この判決で最高裁判所は,高等裁判所の判決が依拠していた鑑定書や鑑定人の証言について,内容が乏しく,客観的資料を精査したうえでの鑑定かどうか疑わしいと判断して,高等裁判所の判断を覆した.このような鑑定が実施されてしまったことは,鑑定人のみの責任ではない.裁判所の鑑定実施についての訴訟指揮や弁護士の訴訟活動にも問題があったと思われる.本判決は裁判所が安易に鑑定に追従して判断することに警鐘を鳴らすものであるとともに,証拠価値(証拠としての有用性)の高い鑑定のあり方を示唆するものである.

参考文献

1)笠井正俊:医療関係民事訴訟における事実的因果関係の認定と鑑定―最高裁判所の破棄判決を素材として,法学論叢154巻4・5・6号,pp.454-455,2004
2)最判昭和50年10月24日民集29巻9号,p.1417
3)水野謙:本件判批,年報医事法学15号,p.155,2000.稲垣喬:本件判批.同:医師責任訴訟の構造,p.292以下,有斐閣,2002.笠井前掲注1,p.454
4)最小一判平成11年2月25日民集53巻2号p.235.最二小判平成12年9月22日民集54巻7号p.2574.最三小判平成15年11月11日民集57巻10号p.1466.詳しくは本誌65巻11号~66巻1号の本連載を参照
5)溜箭将之:因果関係―「ルンバール事件」からの問題提起,ジュリスト1330号,p.90,2007
6)専門家責任についての文献のうち,特にこの点を指摘するものとして,鎌田薫:専門家責任の基本構造.山田卓生,加藤雅信(編):新・現代損害賠償法講座第3巻製造物責任・専門家責任,p.299,日本評論社,1997
7)笠井正俊:前掲注1,pp.430-431
8)塩谷國昭,他(編):専門訴訟体系1 医療訴訟,p.203以下,青林書院,2007.東京地方裁判所医療訴訟対策委員会:東京地方裁判所医療集中部における鑑定の実情とその検証(上)(下),判例時報1963号,p.3以下,1964号,p.3以下,2007 (大澤 彩)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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