icon fsr

文献詳細

雑誌文献

病院67巻2号

2008年02月発行

文献概要

連載 病院管理フォーラム ■医療経営と可視化・5

医療経済の視点から

著者: 後藤励1

所属機関: 1甲南大学経済学部

ページ範囲:P.173 - P.175

文献購入ページに移動
 医療経済学では,古くから医療の特殊性の1つとして,「患者と医療機関の間の情報の非対称性」を挙げている.治療成果などについての医療情報の可視化の目的は,経済学的には,本来患者側が正確にはわからない医療の質に関して,両者の情報の非対称性を埋めることである.その結果,患者側は質に基づいて医療機関の選択をし,医療機関側は質についての競争を行うことになり,結果として質の低い医療機関は淘汰される.

 このような患者の選択を通じての質の向上は,通常のモノやサービスでも想定されるものである.さらに医療の場合は,紹介医の医療機関選択が質の向上圧力を与えることも考えられる.本来紹介医は細かな情報を判断することのできない患者の代理であることが求められるため,紹介医の医療機関選択は原則的には消費者側の行動といえる.一方,質の情報を公表することが直接医療機関内部での質向上努力を増加させる場合もある.このように,質の情報は消費者側,供給者側両方の経路を通じて医療の質の向上に役立つ可能性がある.

参考文献

1)Werner RM, Asch DA:The unintended consequences of publicly reporting quality information. JAMA 293(10):1239-1244, 2005
2)Casalino LP, et al.: General Internist' views on Pay-For Performance and public reporting of quality scores:a national survey. Health Affairs 26(2):492-499, 2007
3)Lindenauer PK, et al.: Public reporting and pay for performance in hospital quality improvement. N Engl J Med 356(5):486-96, 2007
4)Dranove D, et al.: Is more information better? The effects of “Report Cards” on health care providers. Journal of Political Economy 111(3):555-588, 2003
5)Goddard M, et al.: Clinical performance measurement:part 2-avoiding the pitfalls. J R Soc Med 95(11):549-551, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら