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雑誌目次

雑誌文献

病院67巻3号

2008年03月発行

雑誌目次

特集 事務職員の採用とキャリア形成

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.205 - P.205

 現在,公立病院は本庁,民間病院は家業からの独立が求められており,その際,要となるのが有能な事務職員の採用とキャリアの形成である.この課題を実現するために以下について検討する必要がある.まず,第一に「事務」と総括されているが,医事課におけるレセプト作成等の専門技能と,経理・人事部門等の一般的管理技能とは性質が異なり,両者のバランスを本人の適正と法人・病院のニーズに考慮して保つ必要がある.第二に,人材を内部で養成し,役職者の異動・退職に備えて後継者を育成するか,あるいは銀行等の取引先や親しい関係者等から迎え入れるかを選択しなければならない.第三に,医療機関は一般に中小規模でポストも限られており,その中でキャリアパスを用意する必要がある.こうした枠組みの中で何が可能かを本特集で取り上げた.

 まず,慶應義塾大学院経営管理科の大藪毅氏は,企業では組織の長期的利益に貢献するコア人材と,それ以外の周辺人材に分けるようになったが,病院では有資格者のほとんどはコア人材にならないことの問題点を解説している.これを受けて,筆者は病院の事務職もコアと周辺に分かれ,コアの人材として内部から養成する場合と,外部から登用する場合の功罪,および研修の役割を分析した.

専門組織の人材と労働市場―人材採用・養成の基本課題

著者: 大藪毅

ページ範囲:P.206 - P.210

 組織における人材マネジメントの問題は,単に採用方法や研修方法など,個々の手法の良し悪しだけで決まるものではない.特に病院など,高度な専門組織における人材の採用や養成の問題は,様々な公的規制と長年の雇用慣行だけでなく,医師・看護師・コメディカルなどの労働市場および個々の病院の人材マネジメント方針に大きく影響されている.本号特集の事務職員の場合も,病院組織の中でどのような役割を期待し,その人材体系の中でどこに位置づけるのか考えるところから始まる.

 本論では,人的資源管理論の立場から,まず組織ではどのような人材が求められているのか,そして人材調達・育成の場としての労働市場について考えてみる.その際重要なのは,技能形成および組織へ精神的関わり方(コミットメント)の問題である.次にそれを病院などの中小専門組織にあてはめた場合,どのような構造的課題があるか指摘したい.

病院における人事管理と事務職の役割

著者: 池上直己

ページ範囲:P.211 - P.214

 DPCによる包括評価や安全管理の規定等の導入に対応するために,病院として組織的に取り組む必要があり,その際,管理者(病院のCEO)にとって,一般的管理技能(general management skill)を有する人材の確保が不可欠である.すなわち,日常的に発生する管理上の問題に対して迅速・適切に対応し,また診療科別管理会計等の手法を駆使して実績に基づいた中長期計画を企画・立案できるような人材が必要であり,こうした人材をいかに採用,養成するかが大きな課題である.そこで,本稿では事務職に焦点を当てて現状を分析し,今後を展望する.

全国社会保険協会連合会における事務職員の養成

著者: 杉崎富夫

ページ範囲:P.215 - P.219

 社団法人全国社会保険協会連合会(以下,全社連)は,都道府県社会保険協会を会員(47名)として昭和27年12月に設立認可されている.その目的は,健康保険および厚生年金保険その他社会保険事業の円滑な運営を促進し,併せて被保険者および被扶養者の福祉を図るとともに社会保障制度の確立に資することにある.

 現在は,厚生年金病院の経営受託を含め,52病院(約1万5千床),8看護専門学校,28介護老人保健施設等について,社会保険庁長官と全社連との間で委託契約を締結,経営受託している.職員数は全社連本部・各施設併せて約2万人であるが,事務職は約2千3百人である.

自治体立病院における事務職の採用と養成―筆者の体験から

著者: 接待隆敏

ページ範囲:P.220 - P.223

 筆者は,1945年生まれの62歳,地方公務員として約40年間務めた.自治体の職員は,3~5年で他部署に異動することが多い.しかし,筆者は,最初の職場として当時の新採用の登竜門であった税務課に13年間勤務した後,14年間+14年間(間に1年間観光課に配属)の計28年間もの期間にわたって,青森県八戸市立市民病院に勤務した.そして2006年3月に定年退職した後,民間病院(八戸シルバー病院)を1年経験し,2007年3月より茨城県立中央病院に勤務している.

 病院での業務は,自治体の他の事務とはまったく違う特殊な世界である.専門性を必要とし,時には医学的知識も必要となってくる.筆者は,点数表解釈本1冊を支えとして,長年いろいろ悩み苦しみ励まされながら,前向きにやりがいをもって病院事務の仕事に取り組んできた.本稿では,そうした体験を踏まえて,自治体立病院における事務職の採用と養成の事例についてご紹介したい.

民間病院における事務系職員の採用とキャリア形成

著者: 大峡雅男

ページ範囲:P.224 - P.228

 2006年度,厚生労働省医政局委託研究において,経営の安定化を図っている優良な病院が紹介されている.本研究では,中小病院の悩みの一つとして,経営に関わる事務スタッフの少なさがある,と指摘している1).その論文の中で,中核となる人材の採用と育成について事例が述べられている.事例病院では,経営管理を任せうる人材の採用を常日頃検討しており,地元銀行出身者を事務長として迎え入れ,黒字確保のための計数管理を徹底したことが紹介されている.

 日本医師会総合政策研究機構では,1999年よりデータを更新しながら,高齢者介護福祉を含む将来の医療サービスのあり方を研究している.この研究では,将来の医療福祉サービス産業の事務管理に従事する人員を推計しており,2015年には97万人に達するとしている2).事務管理に関わる職員の数は驚くほどであるが,実際の経営に関わる職員はこの中からどの程度出てくるのであろうか.西田は,医療福祉サービス産業の市場規模から,経営管理専門家養成の必要性を報告している3).しかし,先の事例研究で明らかなように,民間医療機関の多くは,スカウト人事などによりキャリアに該当する人材を得ていることが推測される.

日本病院会「病院経営管理者養成課程通信教育」概要と実績

著者: 小川嘉誉

ページ範囲:P.229 - P.231

 社団法人日本病院会の「病院経営管理者養成課程通信教育」(表)は2年間の通信教育として実施し,本年で第31回生を迎えることとなる.既に835名の方が在籍され,536名を認証し登録している.

 経営管理者は病院という組織医療を実践するうえで,多くの知識が求められる.そのため履修科目は全31科目49単位と多岐にわたり,概論的なものから専門分野の内容まで網羅し,それを実践するカリキュラムで実施している.

全日本病院協会「病院事務長研修コース」概要と実績

著者: 大橋正實

ページ範囲:P.232 - P.234

 バブル経済の崩壊とともに医療費削減の声がマスコミに登場し始めたのが2000年頃である.その頃はまだ「病院を潰すはずがない」という医療神話が広く信じられていた時代で,誰もが危機感は薄く楽観していた.それまでは病院の事務長と言えば地方自治体の元環境衛生部長や元銀行支店長で,筆者の病院の事務長も元某大手カメラ卸し会社の経理部長であった.病院はそこそこの腕を持った医師と看護師が法定数いれば,誰が事務長であっても経営できたのである.

 その状況が変わり始めたのが,2002年の診療報酬改定からだと思われる.筆者の病院では,ちょうどその年に,5年前に北見市に新しくオープンした耳鼻科の単科専門病院のリースアップということで,30%の経営利益増を見込んでいたが,この診療報酬改定ですべてが消えてしまった.さらに2004年,2006年の改定で特別な投資はまったくしていないのにもかかわらず,2001年の経常利益の50%近くにまで収益が悪化した.この時期から筆者の拠点病院のある札幌市でも病院の売り買い,経営危機の噂が飛び交うようになり,老舗の外科専門病院と新興の循環器専門病院が,いずれも新しい場所への新築移転ののち数年を待たずに前者は吸収合併,後者は倒産して民事再生法に委ねられた.さらにその数年前には北海道で初のPET検診を売りにした病院が倒産し他の医療法人の手に渡ってしまった.いずれのケースも,新築移転,新しい事業展開を熟孝し,ストップをかける「コアの人材」がいなかったことがわかっている.

日本精神科病院協会 学術教育研修会「事務部門」概要と実績

著者: 松田ひろし

ページ範囲:P.235 - P.237

 日本精神科病院協会(日精協)は長年にわたり会員病院職員の資質向上のために学術研修を最重点事業の1つに位置づけ,精力的に研修会活動を行ってきた.その活動の基本的な考え方は後に倫理綱領として制定されている(表1).


研修会の歴史

 研修会の歴史は昭和42年に遡る.昭和42年当時は精神医療の混乱期で,また精神科病院の不祥事もあり,それらがマスコミに大々的に取り上げられ政治的問題にまでなっていた.そのような厳しい状況下,精神科病院の質の向上を目的として,その職員の学問的かつ実践的な研修の場および交流の場が日精協内外から必要であるとされた.そして昭和42年からの試行的期間を経て,昭和45年に精神病院技術者研修会が正式に発足した.

グラフ

病院愛が事務職を育てる―特定医療法人厚生会 総合病院 木沢記念病院

ページ範囲:P.193 - P.196

 木沢記念病院は,中山道の宿場町として有名な太田宿に近接する位置にあり,1912(大正1)年に診療所「回生院」として開設された.以来,岐阜県中濃地区の中核病院として進化と発展を続け,今では地域住民にとってなくてはならない存在となっている.

 今回は同院事務部門の活動を紹介し,病院事務部門のあるべき姿を探ってみたい.いうまでもなく医療サービスを住民に提供するのが病院としての使命であり,その中心となるのは医療専門職ではあるが,円滑にかつ質の高い医療を提供するためには,医療専門職を支える事務職の存在は欠かせない.医療の厳しい状況下では,ますますその重要性は高まっているのは言い過ぎではないだろう.

連載 ヘルスケアと緑・3

光を描く―モネの庭

著者: 浅野房世

ページ範囲:P.198 - P.199

 この連載も,今回で3回目となった.「病院の庭の具体的な作りかたは?」という質問が届き始めた昨今であるが,いま少し,癒しの庭への“みちゆき”にお付き合いいただきたい.今回は,日本人にも有名なクロード・モネを取り上げる.


印象派の画家,クロード・モネ

 モネ(1840-1926)は印象派の画家として活躍したが,日本人に最も人気の高い画家と言える.『印象・日の出』や連作『睡蓮』の作品は有名であり,モネ自身の庭が,彼の作品のモデルになったことは日本でもよく知られている.また,“モネの庭”は日本でも再現され,人気のスポットとなっている.しかしその一方で,この庭が,絵のモデルとなった以上に,彼の人生に大きな意味を持っていたことはあまり知られていない.

続クロストーク医療裁判・3

鑑定書と“私的意見書”―MRSA感染死亡事件―最高裁平成18年1月27日判決の事例から

著者: 小野寺健太 ,   溜箭将之 ,   佐藤武幸

ページ範囲:P.242 - P.247

 本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 続編の1~4回目では「鑑定書・医師の私的意見書(私的鑑定書)の評価」を取り上げる.鑑定書・私的意見書は,いずれも裁判所の判断を補助するため,専門家が作成する資料である.鑑定が裁判所の指定した鑑定人によって行われるのに対して,私的意見書は,被告側あるいは原告側の一方当事者から依頼された専門家が作成するものである.3回目では,鑑定書と私的意見書とを比較しつつその評価を行った事案を紹介する.

職場のメンタルヘルス・12

セクハラとメンタルヘルス

著者: 武藤清栄 ,   村上章子

ページ範囲:P.248 - P.253

仕事のストレスとセクハラ

 厚生労働省(以下,厚労省)は病院勤務医の過重労働対策の1つとして,看護師が患者への一定の薬の投与量についての判断や,夜間・休日などの急患への診療項目の優先順位の決定,また入院患者やその家族への医師の治療方針の補足的な説明など医師の仕事の一部を肩代わりできることを決めた.厚労省は2007年12月28日付で各都道府県にこれらのことを通知し,また,これに付随して病院の事務職員に対しても,医師の確認や署名があれば診断書や処方せん,主治医の意見書などの作成の作業を認めることになった.これらは,医師法に抵触しない限り,医師でなくてもできる業務を選別し,勤務医の負担を軽減するためのものである.

 この方策によって,逆に看護師や事務員の業務量は増えることになる.例えば,患者の病状が急変した時の対応や,糖尿病などの慢性的な患者への生活指導,注射なども医師の指示の下では可能となる.こうなると医師と看護師,医師と事務職員の信頼関係やコミュニケーションの質が重要になってくる.特に看護師にとっては,医師が不在でも,自分の判断で医療行為を肩代わりすることができるので,仕事を合理的にこなせる部分も出てくる一方,新たな責任も発生することになる.その分,ストレスや患者や家族からの訴えやクレームも多くなりそうである.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・22

病院経営にMSWの視点を生かす

著者: 遠藤正樹

ページ範囲:P.254 - P.256

医療費削減政策に医療現場は翻弄されている.矢継ぎ早の制度改正は,医療者にとってもわかりづらいものであり,患者にとってはなおさら不安や混乱を与えるものでもある.そのようななか,医療ソーシャルワーカー(MSW)は,病院の窓口として,患者・家族,地域の声を拾い上げ,病院組織に伝えていく役割を担っている.本稿ではMSWの視点が病院経営に有用であることを述べる.

病院管理フォーラム ■医事法・11

医療行為(医療水準)と因果関係

著者: 植木哲

ページ範囲:P.258 - P.260

●因果関係の多義性

 医師の法的(不法行為)責任を問うためには,原因(加害)行為と被害発生との間に因果関係が存在しなければなりません(民法709条).これには,故意・過失によって他人の権利や法益を侵害した原因を明らかにするための因果関係と,この権利・法益侵害によって生じた損害の範囲を確定するための因果関係があります.前者を成立上の因果関係,後者を範囲確定のための因果関係と言います.医師・病院の診療契約違反を問う時,債務者(医師・病院)が債務の本旨に従った履行をしなかったことによる損害の発生についても同じ問題が生じます(同415条).

 因果関係の存否は,診療(技術)過誤の場合には当然に必要ですし,また,説明義務違反の場合にも問題となります.またこの基準は,風が吹いたら桶屋が儲かる式の漠然としたものであってはいけませんから(法的安全性の欠如),加害行為や被害範囲との間に密接な関係,すなわち相当性のあることが必要とされます.このためそれぞれは「相当」因果関係と呼ばれます.本講座では主として診療過誤における成立上の因果関係を中心に議論することにします.

■医療経営と可視化・6

手術室の視点から

著者: 冨岡俊也

ページ範囲:P.261 - P.263

 医療を取り巻く情勢の厳しさが言われるようになって久しい.その原因に関しては,いろいろな点が挙げられる.医療費に関連する事柄だけでも,急激な少子高齢化社会の到来による医療費の急増,医療技術の進歩に伴う高額医療の増加,国家財政の危機に伴う医療を含めた福祉関連支出の制限,など枚挙に暇がない.一方では,現場における情勢の厳しさも日々増している.病院の集約化の大きな流れに伴う,特に地方の地域中核病院での医師不足,数年来の医療費のマイナス改定による減収減益,勤務医不足に伴う病院勤務医の疲弊,などである.

 では,そもそも現在の医療のどこに問題があるのであろうか.大きく分けて,「医療の質」と「医療に関する財政」,この2つに問題が集約できるのではないだろうか.「医療の質」はさらに「外部的な質」と「内部的な質」に分けることができる.「医療の質」と「医療に関する財政」は表裏一体であり,この2点を検証するうえで本稿のテーマである「可視化」は非常に有意義である1)

■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・3

点と点をつなぐ―バージニア・メイソン医療センターの経営革新

著者: 川上智子

ページ範囲:P.264 - P.267

 アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市にあるバージニア・メイソン医療センター(VMMC : Virginia Mason Medical Center).この病院では,2001年からトヨタ生産方式(TPS)を取り入れた経営革新が進んでいる.その成功の鍵は,トップ・マネジメントのリーダーシップとカイゼン推進オフィスによる制度化にあった.

 連載3回目の今回は,医療の分野でTPSの導入に成功し,単に製造業からのマネジメント手法の移植にとどまらず,独自の発展を遂げつつある同病院のケースを紹介する.

医療動向フォーラム ■DPCの今後を予測する・8【最終回】

DPCを軸とした今後の医療制度改革の展望

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.268 - P.269

●医療の標準化・透明化とDPC

 日本の医療機関が月末に作成するレセプトは,世界に類を見ない詳細な診療内容を示すデータといえる.しかしこれまでは,その内容が紙に印刷されたもので電子化されていないため,この貴重なデータを経営や管理に利用することが難しかった.筆者はDPCの理論面での生みの親といえる産業医科大学の松田晋哉先生と,DPCプロジェクトの本質は何かというディスカッションをしたことがある.この時,松田先生は「DPCプロジェクトの本質は,レセプト電算化」と答えられた.この言葉を少し噛み砕いて説明するならば,DPC導入により詳細な診療内容を示すデータを電子化し,この情報を地域医療や各医療機関の経営や管理に利用可能にすることにより,日本の急性期医療の質を上げることが,DPCを導入する最重要目的であるということである.

 このような流れを受け,各病院が提出したDPCデータを集計して,種々の病院を比較したデータが病院の実名入りで公表されるようになってきた.例えば白内障(両眼)の手術目的の入院では,短い医療機関では4日前後であるが,長い医療機関では10日を超えていることを多くの人が知るようになってきた.またDPCデータを用いれば,治療内容の病院間のばらつきも明らかになる.図は,白内障の手術目的で入院した患者への抗生剤投与額(円)の平均値の病院間比較を表す.このようなデータが地域ごとに病院の実名入りで公表されるようになると,白内障の手術を受ける人の多くはこのような情報を参照し,「A病院は,術後に抗生剤の投与を行わない病院」と考え,A病院を敬遠するようになるだろう.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・6

告知:泣いてあたりまえじゃない

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.270 - P.271

 小嶋紳司さん(兵庫県在住)は,仕事でオランダ駐在中に奥さんががんになった.子どもの学校のこともあって日本には帰らず,オランダで治療を受けた.一時小康を得るが,帰国することなく他界(2002年).葬儀もオランダで行った.安楽死が認められる国オランダでの尊厳死だった.

 彼の帰国後(2003年),思いがけず知り合って意気投合.そのおつきあいからオランダでの闘病体験談を聞かせてもらうことになる.最初に驚いたのが告知の情景だった.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第158回

特定・特別医療法人博愛会 博愛会病院

著者: 川島浩孝 ,   田中正史

ページ範囲:P.272 - P.277

 診療圏約5万人の地域住民を対象として,保健・医療・福祉全般にわたるサービスを網羅的に提供しつづける法人による,病院機能本体の新築移転プロジェクトである.1951年に開設された博愛会病院としては,1987年に次ぐ2度目の拡大新築移転となる.本移転計画に先立つ約10年では,老人保健施設(100人)・ケアハウス(40人)・グループホーム(3単位)・新型特養(100人)・高優賃(20戸)・在宅系センター群等が順次新設整備されてきた.病院本体の移転という本計画は,一連の施設群整備の総仕上げプロジェクトといえる.

 療養病棟1単位を包含してケアミックス・スタイルで運営されていた199の病床に,85床の増床許可療養病床を新たに付加するというプログラムで2004年初頭に設計協議がスタートした.既存併設の健診センター・病後児保育所の合築整備も併せて行っている.

リレーエッセイ 医療の現場から

―イージェイネット―小恐竜のはなし

著者: 瀧野敏子

ページ範囲:P.279 - P.279

社会を動かすのは,九割九分までが男だが,男を動かすのは女の力なのだ….

高木彬光『白昼の死角』(角川文庫)


ejnetと病院評価事業

 早いものでejnet(2008年1月末現在,会員410名)が設立されて丸3年が経ちました.元はと言えば,私の母および自身の個人的体験を踏まえ,女性医師が子育てしつつ第一線で働き続けられる社会にするために一石を投じようと,同志を誘って行動を起こしたのがきっかけです.

研究と報告【投稿】

医療ソーシャルワーカーの仕事に対する満足感に関連する要因―退院支援における院内の職種間連携に注目して

著者: 鈴木俊彦 ,   森有加 ,   牧上久仁子 ,   安村誠司

ページ範囲:P.238 - P.241

要旨 病院内の職種間連携が医療ソーシャルワーカー(MSW)の仕事に対する満足度にどのように影響を与えているか調べるため,福島県内69病院に勤務するMSW182名を対象に,2007年5月初旬勤務先での退院支援体制に関する無記名自記式のアンケート調査を実施した.114通(62.6%)の回答が得られた.多変量解析の結果,MSWとしての仕事の満足感が高いことに関連が認められたのは,MSWとしての経験年数が長いこと,他職種がMSWの仕事を把握していると感じていることであった.経験の浅いMSWに対する支援が必要であること,医師・看護師等の医療専門職に対して,MSWの業務および専門性について啓発が必要であることが示された.MSWの仕事の満足度から院内の職種間の連携の成否を間接的に評価できる可能性がある.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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