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連載 病院管理フォーラム ■医事法・11
医療行為(医療水準)と因果関係
著者: 植木哲1
所属機関: 1千葉大学法経学部法学科
ページ範囲:P.258 - P.260
文献購入ページに移動●因果関係の多義性
医師の法的(不法行為)責任を問うためには,原因(加害)行為と被害発生との間に因果関係が存在しなければなりません(民法709条).これには,故意・過失によって他人の権利や法益を侵害した原因を明らかにするための因果関係と,この権利・法益侵害によって生じた損害の範囲を確定するための因果関係があります.前者を成立上の因果関係,後者を範囲確定のための因果関係と言います.医師・病院の診療契約違反を問う時,債務者(医師・病院)が債務の本旨に従った履行をしなかったことによる損害の発生についても同じ問題が生じます(同415条).
因果関係の存否は,診療(技術)過誤の場合には当然に必要ですし,また,説明義務違反の場合にも問題となります.またこの基準は,風が吹いたら桶屋が儲かる式の漠然としたものであってはいけませんから(法的安全性の欠如),加害行為や被害範囲との間に密接な関係,すなわち相当性のあることが必要とされます.このためそれぞれは「相当」因果関係と呼ばれます.本講座では主として診療過誤における成立上の因果関係を中心に議論することにします.
医師の法的(不法行為)責任を問うためには,原因(加害)行為と被害発生との間に因果関係が存在しなければなりません(民法709条).これには,故意・過失によって他人の権利や法益を侵害した原因を明らかにするための因果関係と,この権利・法益侵害によって生じた損害の範囲を確定するための因果関係があります.前者を成立上の因果関係,後者を範囲確定のための因果関係と言います.医師・病院の診療契約違反を問う時,債務者(医師・病院)が債務の本旨に従った履行をしなかったことによる損害の発生についても同じ問題が生じます(同415条).
因果関係の存否は,診療(技術)過誤の場合には当然に必要ですし,また,説明義務違反の場合にも問題となります.またこの基準は,風が吹いたら桶屋が儲かる式の漠然としたものであってはいけませんから(法的安全性の欠如),加害行為や被害範囲との間に密接な関係,すなわち相当性のあることが必要とされます.このためそれぞれは「相当」因果関係と呼ばれます.本講座では主として診療過誤における成立上の因果関係を中心に議論することにします.
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