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文献詳細

雑誌文献

病院67巻4号

2008年04月発行

文献概要

連載 病院管理フォーラム ■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・4

巧みな「見える化」目標は「人の成長」―医療の特性とトヨタ生産方式

著者: 猶本良夫1

所属機関: 1岡山大学大学院消化器・腫瘍外科学

ページ範囲:P.353 - P.355

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 本連載では,病院におけるマネジメントのありようをトヨタ自動車関連企業が母体となる病院と,トヨタ生産方式を導入し,見事に再生,成長し続けている米国の病院の取材を通して述べてきた.医療のプロセスに適合できるマネジメント・システムは,製造業で例えると,少品種,大量生産ではなく,多品種,少量生産であろう.こういった生産システムをサービス産業の側面の強い医療,病院に導入することで,業務のカイゼンが得られたことは,大きな意義があり,日本においても期待される取り組みである.しかしながら,多くの専門職によって構成される病院に導入する際に克服すべき問題点,工夫などについては疑問が残る.ここで医療の特性を整理しておこう.

 1)高度専門性:専門性の中で職種,診療科の間で言葉が通じない,2)高い倫理性,3)多品種,少量生産,4)労働集約性,5)不確実性などが医療の特性であろう.専門職の集団で構成される病院の構造と不確実性を常に抱える点が特徴で,こうした点は製造業,他のサービス業と比較して特に際立つ特性である.リスクマネジメントに関して言えば,発生場所,発生場面,患者の心身状態,事例に関連した診療科,発生要因などリスクに関わる要因は極めて多岐にわたっている.さらに,治療を受ける側の人の体の多様性は遺伝子,遺伝子多型によって支配され,生体に対する入力,刺激が同じでも,出力である反応の多様さは無限大ともいえる多さである.すなわち,図1に示すように製造業における入力と出力の関係と医療におけるそれとは大きく異なる.したがって,これらの特性を踏まえたうえで病院にマネジメントを導入してゆく必要がある.

参考文献

1)大野耐一:トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして,ダイヤモンド社,1978
2)H.トーマス・ジョンソン,アンデルス・ブルムズ(著),河田信(訳):トヨタはなぜ強いのか―自然生命システム経営の真髄,日本経済新聞社,pp 161-163,2002
3)ジェームズ・C・コリンズ(著),山岡洋一(訳):ビジョナリーカンパニー 特別編,日経BP社,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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