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雑誌目次

雑誌文献

病院67巻5号

2008年05月発行

雑誌目次

特集 変容する患者像―求められるヘルスリテラシー

巻頭言

著者: 大道久

ページ範囲:P.389 - P.389

 患者・家族の医療へのかかわり方が大きく変わりつつあることが強く認識されている.昨今,病気は治って当たり前で,治らないのは病院や医者が悪いからと言わんばかりの患者・家族の態度に辟易している医療人は少なくない.済んだ医療に納得したかに見えて,突然に代理人を引き連れて診療録の保全手続きに及ぶ事例が経験されたり,故なきクレーマーに苦慮することも日常的になりつつある.未集金の増大も,経済格差の拡大に帰するだけでは説明がつかない状況といえる.

 このように変容しつつある患者・家族の背景には何が起こっているのか.医療だけでなく教育や福祉にも共通する状況が出現しているが,世代交代が進行して価値観が多様化し,家族や地域の変質,あるいは形骸化も指摘されてきたところである.急速な社会環境の変化と氾濫する情報のなかで,医療の受け方と提供のされ方の間でミスマッチが拡大し,新たな調整による秩序が求められているといえる.この問題の改善に向けて期待されているのが,ヘルスリテラシーの向上である.

ヘルスリテラシーの動向

著者: 北澤健文

ページ範囲:P.390 - P.393

ヘルスリテラシーの位置付け

 高度に情報化が進み,様々な媒体によって膨大な情報が提供されている現代において,リテラシーの重要性があらためて注目されている.リテラシーは,「個人が(言語を)読み,書き,話す能力と,目標の達成や,知識やポテンシャルを培うために仕事や社会で必要となる程度の問題を処理し,解決する能力」1)とされる.つまり個人が社会生活上必要な知識や能力を獲得し,さらにそれを拡大する際の基盤であり,識字能力や読解能力を中心とした能力,コミュニケーション能力,さらに現代ではコンピュータの利活用能力まで含めて捉えられている2).このように広義に捉えた場合のリテラシーの概念は様々な領域で適用されていて,情報リテラシー3)や科学リテラシー4)などのように,多様なリテラシーに関する議論がなされており,医療や健康の領域も例外ではない.

 1974年にカナダのラロンド保健大臣による報告書5)が発表され,人々の健康状態に影響を与える社会的要因への関心が高まる中で,教育も健康増進上の1つの要素として認識されるようになった.1986年のオタワ憲章6)によるヘルスプロモーションの提唱後は,個人のエンパワメント達成におけるリテラシーの重要性が指摘されるようになり,1990年代に入ると,各国の健康増進政策やヘルスプロモーション戦略に,教育やリテラシーの向上が具体的に位置付けられるようになった.例えばアメリカのHealthy People 2010においてヘルスリテラシーは「個人が,適切な健康上の判断を下すために必要な,基礎的な健康情報とサービスを獲得,処理し,理解する能力の度合い」7)として定義され,ヘルスリテラシーへの配慮がヘルスコミュニケーション領域の目標達成において必要であることが示された8).その他にも,オーストラリア9)やイギリス10)でも同様に,ヘルスリテラシーへの対応が健康増進政策に組み込まれている11).このように,健康増進政策を円滑に進めるに当たって,教育を受ける機会を逸しやすい移民や低所得者におけるヘルスリテラシー向上は,諸外国において重要な社会的問題とみなされている.

ヘルスリテラシーとヘルスプロモーション

著者: 中山和弘

ページ範囲:P.394 - P.400

ヘルスプロモーションにおけるヘルスリテラシーへの注目

 世界の健康政策の中心となっているヘルスプロモーションでは「人びとが自らの健康をコントロールし,改善することができるようにするプロセスである」というオタワ憲章の定義が多く用いられている.そこでは,個人が健康的な生活を送ることができるスキルや能力を高めることを,個人だけに要求するのではなく,それをサポートできる環境を社会的,経済的,政治的に作り出すことが強調されている.実際にトップダウン式の健康教育で知識を与えただけでは行動変容は起こりにくく,社会的に決定されているものを変えるには,社会を変える必要がある1).そのためには,その活動に人々が参加して影響を与えることが不可欠であるとされている.

 1986年にオタワ憲章を発布した第1回ヘルスプロモーション世界会議は,2005年には6回目を迎え,バンコク憲章が採択された2).そこでは,人びとが獲得すべき能力の中に,ヘルスリテラシーが盛り込まれている.それはすでに1998年のWHOによるヘルスプロモーション用語集にも登場していたが,バンコク憲章は,全体としてグローバル化した現在の世界状況をより反映したものとなっている点で意義深い.

医療コーディネーターの役割と課題―フィジカルアセスメントを基本とした生活障害の視点で行う支援

著者: 嵯峨﨑泰子

ページ範囲:P.401 - P.405

 医療コーディネーター(以下,MC)の役割は,クライアント(患者・家族・友人等の関係者)が望む“医療とそれに伴う生活”を享受し維持できるよう,かつ医療提供側との関係が保たれるよう,医療者・医療機関・関係機関との橋渡し役を担うことである.医療という専門性の高い領域において,理解や判断に困難を来たしているクライアントの状況・環境をサポートすることである.

 本来この役割は,臨床現場で主に看護職が担う機能そのものであり,期待される役割でもある.しかし,現在の臨床現場では,業務が高度化・専門分化・細分化され,看護職はより専門特化した働きを要求されるようになった.また,クライアント側の情報量の増大が,知り過ぎるゆえの不安感を生じさせやすくなったり,医療に対する信頼の崩壊を助長している可能性も少なからずあると考える.それ以前は,ジェネラリストとしての看護職がこの橋渡し的機能を果たしており,きめ細かな対応や日常的な対話によって,臨床現場における利用者のニーズに応えていたようにも思う.しかし,現在の臨床現場において,この役割を期待することに限界を感じたクライアント側からの要請で13年前に発生したのがMCである.

患者図書室の現況と将来展望―患者が納得して治療が受けられるために

著者: 戸津崎茂雄 ,   山室眞知子

ページ範囲:P.406 - P.409

 病院は患者の治療を行うところであり,病院図書室も病院機能の一部門として患者の治療に参加すべきである.今までは,医療従事者に専門情報を提供することによって参加してきたが,これからは,患者にも医学・医療情報を提供する,あるいは病気を持ちつつ生きていく生き方を書籍(文学書や闘病記など)から学べるようにして,患者の治療や闘病生活を支援する病院機能の一端を病院の図書室は担うべきではなかろうか.

 課題はある.病院機能の一端としての図書室を考える時,病院図書室の機能・設備を一定のレベル以上に保つ必要がある.しかし医療法では,病院に図書室の設置は規定されておらず,地域医療支援病院と特定機能病院に設置を求めているのみである.また,(財)日本医療機能評価機構による病院機能評価では,図書室機能は医療従事者を対象とした文献検索などの情報提供機能が評価されているに過ぎない.

病院におけるクレーマーへの対応

著者: 井上清成

ページ範囲:P.410 - P.413

医療クレーマーの実態

1.クレーマー増大の原因

 医療現場におけるクレームが止まらない.ひと昔前には想像もしなかった状況である.直接的な原因は,医療者に対する司法の場での責任追及の増大と,クレームを許す社会的風潮にあると思う.

 医師や看護師が逮捕勾留され,刑事被告人として処罰される.刑事事件化まではしなくても,医療過誤損害賠償請求訴訟を提起すれば,勝訴したり和解金が得られる可能性が高まった.そうなると一層,裁判まで起こさなくても任意の折衝だけでも示談金が得られるかも知れない.いずれも医師や看護師や病院に対する責任追及の形をとって,である.医療者に対する司法の場での責任追及の増大が,それの何十倍もの数の責任追及の形でのクレームを,医療の現場に誘発させたのだと思う.

苦情相談窓口の現況

著者: 服部啓子

ページ範囲:P.414 - P.418

 昨今の医療事故報道の増加,患者の権利意識の高まり等を背景として,病院に向けられる社会の目は年々厳しさを増している.このような環境下で,多くの病院は患者相談窓口等を設置して患者の苦情に耳を傾け,顧客満足向上に取り組んでいる.

 筆者は昨年,首都圏のある病院(A病院)の患者対応記録を集計する機会があった.この集計を通して見える患者の要求やその背景,またそれに対応する病院の苦情相談窓口の現況について紹介し,そのあり方について考えてみたい.

【座談会】患者・家族との紛争を避けるために

著者: 中西成元 ,   安井はるみ ,   長谷川剛 ,   大道久

ページ範囲:P.419 - P.426

大道 近年,患者・家族と医療者との関係や,相互の接触の仕方が大きく変わりつつあると実感しています.病院への苦情・クレームの増加に加え,患者さんから医療提供者への暴力事件なども頻繁に聞くようになりました.医療者と患者・家族との関係をしっかり見つめ直さなければいけない時期にあると感じます.

 今日の座談会では,これらの背景に何があるか,そして今後の対応,特に紛争化を避けるための対処法についてお話しいただきます.

グラフ

医療法人陽和会 南山病院―禁煙はどこでもできる!

ページ範囲:P.377 - P.380

 禁煙に取り組む病院が増えている.(財)医療機能評価機構の病院機能評価においても,「全館禁煙」(屋上等も含む)を原則とし,駐車場なども含めた敷地内禁煙の場合はより高く評価される.その一方で,患者や病院職員への禁煙指導の難しさや,病院付近での喫煙など,敷地内禁煙に伴う課題は多い.また,同機能評価では「精神科」「療養病棟」「緩和ケア病棟」については分煙でも評価となっており,これらの病棟では禁煙が難しいことが読み取れる.

 医療法人陽和会南山病院は,精神科病院としては沖縄県で初めて敷地内禁煙を実施した.それまでは患者・職員ともに喫煙者が多く,他の病院同様,禁煙を進めることが難しい状態だった.しかし2003年の院内分煙を機に少しずつ準備を進め,2007年5月より敷地内禁煙の認定を受け,禁煙外来も開設している(表).敷地内禁煙を始めてちょうど1年,当院を取材した.

連載 ヘルスケアと緑・5

砂漠の水

著者: 浅野房世

ページ範囲:P.382 - P.383

 今回紹介する病院の庭は,米国アリゾナ州フェニックスにある,バナー・グッド・サマリタン医療センター(Banner Good Samaritan Medical Center)の庭である.グッド・サマリタンとは,新約聖書(ルカによる福音書第10章29~37節)に記された“よきサマリア人”のことである.強盗に傷つけられ道に倒れていた者を,通りすがりの身分の高い者たちは,みな気づかぬふりをして通り過ぎていったが,少数民族であったサマリア人は,旅の途中にもかかわらず手厚く介護したという喩え話である.この喩え話は,「自らが不利益をこうむるリスクを顧みず,人を助けようとする行為」を指し示している.ちなみに,アメリカには「よきサマリア人法」(急病やけが人などを救うために行動した場合,たとえ失敗しても責任を問われない)が,ほとんどの州で導入されている.

 このミッションを病院の冠としたグッド・サマリタン病院は全米に存在するが,本ガーデンを有する当院は,典型的な砂漠気候地域であるアリゾナ州フェニックス郊外にある.650床のベッドを有し,救急救命はもちろんのこと,整形外科や臓器移植を含む外科やリハビリテーション科をはじめ,がんや心臓病のみならず,様々な病気の専門医を抱える総合病院である.

続クロストーク医療裁判・5

感染症に対する予防と治療―手術後緑膿菌感染症死亡事件―最高裁平成13年6月8日判決の事例から

著者: 筈井卓矢 ,   土屋裕子 ,   鍋谷圭宏 ,   落合武徳

ページ範囲:P.428 - P.433

 本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 続編の5~7回は「術後管理と医師の過失」を取り上げる.第5回の平成13年判決は,外科手術後の感染防止措置,特に術後の経過から,どの時点で緑膿菌感染の可能性を考えた処置を講ずるべきかが問題となった事案である.術後管理については,手術による侵襲を受けた万全ではない状態の患者に時々刻々と体調の変動がある中で,多種多様な処置を求められる.また,術後管理の扱う科目や事象は多様である.したがって,術後管理における過失論を一般的に定義することは困難であるし,過失の前提となる「医療水準」を明確に措定することにも困難が伴う.5~7回の連載で扱う3件の最高裁判決は,いずれも,そうした点を意識してか,事例に関係する医学的知見を認定し,それを前提として,手術後の一時点における医師のその後の経過に対する予見可能性等を肯定し,過失を肯定する論法をとっている.

〈続〉基本からわかる医療経営学・2

病院経営における原価管理

著者: 安酸建二

ページ範囲:P.434 - P.438

 近年,病院経営における原価管理の重要性が指摘され始めています.従来の日本の多くの病院は,原価の管理よりも収益の管理(増加)によって経営を維持しようと考えてきました1).しかし,昨今の医療保険制度の改変や病院間の競争激化に伴う病院の収益環境の悪化を念頭に置けば,医業収益の増大を期待するのではなく,原価管理を通じて利益の出る財務体質を構築することが喫緊の課題となっています.医業収益は外部環境の変化に大きく影響を受けますが,原価管理の成果は外部環境の変化にそれほど影響を受けませんので,一定の収益から十分な利益が確保されるように,原価の大きさをコントロールすることに力を注ぐのは経営として自然な展開ともいえます.

 しばしば,原価の低減は医療の質の低下につながるという批判を耳にしますが,質の低下につながらないようにどこに原価をかけるかという判断こそ重要です.また,利益の出る財務体質の構築によって,病院が安定的に経営され,医療を継続的に提供していくことも病院に課せられた社会的な使命であるといえます.今回は,原価管理に関する研究を通じて蓄積されてきた知見を紹介しながら,病院経営における原価管理に必要な発想あるいは視点を提供したいと思います.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・24

透析医療におけるソーシャルワーク―透析者との関わりから学ぶ

著者: 藤田譲

ページ範囲:P.439 - P.441

 透析者は年1万人ペースで増加しており,透析技術の進歩により長期生存も可能になった.しかし,透析のための頻回の通院や食事・水分制限による日常生活の制約,高齢化・合併症の増加による介護の問題など,抱えている生活課題は決して軽減されてはいない.このような背景を踏まえて,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)は長期にわたる透析者との関わりをベースに,透析者に寄り添い共鳴しあう関係を築いて,彼らを心理社会的側面から支えていかなければならない.また,頻繁に改正される社会保障制度の動向に注意し,日々の援助だけでなく,透析者全体の影響も考慮し,広く環境への働きかけもますます重要になっている.

職場のメンタルヘルス・14

不信時代における医療事故とキャリア

著者: 武藤清栄 ,   村上章子

ページ範囲:P.443 - P.447

 ここに面白い調査がある.朝日新聞社が行った「信用度に関する調査」である.郵送で調査票を送り,信用について回答してもらったものだ1).これによると,最も信用されていないのが「政治家」と「官僚」で,「信用している」と答えた国民は僅か1%.いかに不信感を抱いているかがわかる.逆に最も信用しているのが「家族」で74%であった.ちなみに医師に対しては,「信用している」が16%,「ある程度信用している」が68%,「あまり信用していない」が13%,「信用していない」が2%であった.また,併せて行った信用度と「生活満足度」「心のゆとり」の関係についての回答からは,生活に満足していたり,心のゆとりがある人ほど他者への信用度が高いことがわかった.逆に言えば,不満を持っていたり,ゆとりのない人ほど,世の中や人間関係の恩恵をこうむることがなかったとして,疑心暗鬼になってしまう.

 今日の病院の医師や看護師の不足や偏在,過重労働,医療事故,サービスへの不満,クレーム,人間関係のトラブルといった状況の中で,患者や家族だけではなく世間の医療に対する不信感も増大してきたように思う.またそうした状況の中で,逆に医師や看護師のストレスも高まっている.厚生労働省の調査では,働く人たちの約6割が職業生活についてイライラや強い不安,抑うつ感などストレスを感じているという報告がある.その結果,離職したり,仕事の適性について悩んだりする人も多い.しかし医療の現場で最も深刻な事態は,ミスやエラーをした時である.場合によっては,その出来事が医師や看護師のその後の人生にひどく影響を与えることがある.

病院管理フォーラム ■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・5

特別医療法人愛仁会における業務改善活動

著者: 石井淳蔵

ページ範囲:P.448 - P.451

 特別医療法人愛仁会グループ注1)は,1959年,大阪市西淀川区千船に診療所を開設してそのスタートを切った.現在は大阪市北区に本部を構え,総合病院である千船病院と高槻病院を柱に,表1に示す諸施設をもつに至る注2)

 愛仁会グループが,グループ挙げての「業務改善活動」に取り組み始めたのは1996年からである.本稿では,その活動に注目し紹介したい.

■医療経営と可視化・8

現場からの可視化(2)―可視化と医療経営の課題

著者: 宮部剛実

ページ範囲:P.452 - P.454

 現場(済生会吹田病院)における取り組みから「可視化」がどのように医療経営において実践されてきたのか,その背景と具体例について考察を加えて紹介する.さらに本連載の契機となった他の済生会病院とのベンチマーク研究についてふれる.最後に可視化を阻む課題についても考えてみたい.なお本稿では,「可視化」は情報をわかりやすくする,あるいは目には見えないものを見える形に変えるという本来の意味に加えて,問題発見から問題解決までの改善活動と,透明性・情報公開の促進活動のコンセプトとして使用する1)

■医事法・13

因果関係の競合

著者: 植木哲

ページ範囲:P.455 - P.457

 前2回で因果関係に関する一般的な問題を検討しました.以下では医事紛争をめぐる特殊問題として,①交通事故と医療過誤の競合,②集団的被害発生における因果関係の競合を検討します.いずれも成立上の因果関係や範囲確定上の因果関係をめぐる応用問題に該当します.

■DPC導入と院内体制整備(後編)

DPC手上げの要(かなめ)―レセ電算マスタと退院時サマリの実態把握

著者: 山本康弘

ページ範囲:P.458 - P.459

 前号でDPC準備病院から実施病院への移行における2つのポイントとして,事務局体制の充実と医師に対するDPC導入への理解・協力の説明が重要であることを説明した.これらの内容と同じようなことが,本年2月25日に厚生労働省(厚労省)による新規DPC対象病院向けの説明会で指摘されていた.これまで準備病院としてデータを提出してきた病院にとってはDPCの本格実施という新たな春を迎えることになろう.

 そうなると次に気になるのが,新規のDPC手上げ病院の募集に関する情報である.今年度新たにDPC準備病院として参入を検討している病院へ対しての説明会の案内を心待ちにしている病院も多いのではないだろうか.今のところ未だ厚労省から正式に発表されていないが,今年度も手上げがあるだろうと予想しており,これまでの流れからすると,おおむね6月くらいにDPC手上げに関する情報が示されるのではないかと考えている.本稿では,後編として新たにDPC準備病院として手上げを検討している病院に対して,最も重要となる院内体制の整備を取り上げ2つのポイントを解説する.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・8

裏をみせ 表をみせて 散る紅葉 情報の偏り

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.460 - P.461

 ある基幹総合病院で心のケアをしていた時のことである.携帯用酸素ボンベキャリアーをひっぱりながら,がん患者さんがやって来た.第1回目の面接がよかったのか,続けて相談室に来るようになる.

 胃がん末期で,有効な治療法がないと告げられていた.余命を聞くのは恐ろしい,しかし,知りたいと思う.そんな相談だった.彼は大きな手帖を持ち歩く.びっしりと書き込まれた様々な情報.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第160回 介護保険施設二題

介護老人保健施設 マイウェイ四谷

著者: 佐々木龍郎

ページ範囲:P.462 - P.465

 東京都新宿区に残る旧い住宅地に立地する全室個室の介護老人保健施設である.敷地は交通量の多い幹線道路より一歩入った中学校のグラウンド跡地であり,鍼灸の専門学校にコンバージョンされた校舎側を除いて南,西,北の三方が道路に面している.周囲のほとんどは住宅であり,戸建,集合住宅,木造,コンクリート造が混在している.そのような典型的な都市住宅地にフィットする良質な生活環境としての施設のあり方を模索した.

高齢者総合福祉施設 晴海苑

著者: 菅野正広

ページ範囲:P.465 - P.468

運河に面するアジアン・リゾート

 晴海苑は,もんじゃ焼きで有名な月島駅から徒歩5分,朝潮大橋のたもとに位置している.運河に面するという好条件を生かして,「温暖な場所で,ゆったり,のんびり暮らしたい」という,誰もが描く老後の生活の理想を思い描き,「アジアン・リゾート」をテーマに全体を構成した.

 チークおよびジャックビーンの無垢材を床に使用し,壁の見切りや天井廻縁には赤茶色の木材,ユニットの玄関等には木製の格子扉を採用し,アジアン・テイストを醸成した.2~5階の運河に面するユニット交流スペースのバルコニーにはウッドデッキを敷き,ユニット交流スペースの天井には網代風のクロスを貼っている.

リレーエッセイ 医療の現場から

アルビノ

著者: 石井更幸

ページ範囲:P.471 - P.471

 アルビノとは,メラニン色素が全くないか極端に少ない,という特徴を持つ人(動物も)のことです.そのため皮膚が白く,体毛が白や金髪で,眼は血液の色が透けて赤く見えたり青や褐色だったりと様々で,日本人等の有色人種では特に目立ちます.眼に色素がない(少ない)ために視力が出にくく,眼鏡などの矯正もなかなか効きません.

 私は1973年に千葉で9人家族の家に三男として生まれました(私だけがアルビノ).生まれた私を見て母はとても驚いたそうです.面会に来た父も家族も親戚もです.

 母が病院長の奥さんから言われたのが「こういう障碍のある子だからこそ,外に連れ出して様々な経験をさせ,多くの人と交流をさせてあげてください」ということ.この言葉を守って母は色々な場所に私を連れて行ってくれました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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