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雑誌目次

雑誌文献

病院67巻6号

2008年06月発行

雑誌目次

特集 人材不足をどう打開するか

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.485 - P.485

 日本の20年後はどうなっているのだろうか.若年人口は減り続け,人員不足のため,電気・自動車などの生産業は国内における生産性を下げ,主たる生産拠点は,現状以上に国外に移ってしまうことが予想される.また,教育産業では,特に大学や専門学校の定員割れが起き,淘汰が加速するであろう.

 さて,医療・介護の世界はどうなっているのだろう.看護師・介護士不足は現在でも日本全体に存在する.そこに有病率が高く,介護を要する高齢者が倍増するのだから,現場の疲弊は火を見るより明らかである.特に介護士は若年層に敬遠されがちで,人材豊富な介護の現場など想像すらできない.また,医師の科別偏在も現在より進むと考えられ,救急・外科・産科・小児科などの医師はますます減ってしまう.

高齢社会における労働力と労働市場の変化

著者: 佐野哲

ページ範囲:P.486 - P.489

高齢労働力の特徴と変化

1.多様な集団の多様な変化と非労働力化

 わが国では,少子高齢社会への急速な移行に伴って,団塊世代の定年到達への憂慮など「200X年問題」に代表されるように,労働力不足が大きな社会問題となっている.しかしながら,その「200X年」を境として高齢労働力が一気に消失してしまうなど,事態が急転するわけでは決してない.

 近い将来に人口全体の約30%まで達する高齢者(65歳以上人口)の就業グループは,多様性を内包しながら徐々に変化していくと捉えるのが正しい見方である.多様性は,高齢者個々人の生き方の中に混在している.ある高齢者は,働く気力も充実し,保有する技術や知識の市場価値を維持しつつ,次世代より勝る肉体年齢でいきいきと働き続ける.一方ある高齢者は,就業意志があり健康であるものの,自らが保有する経験の労働市場価値が希望に適わず,働かずに非労働力人口となっていく.また,ある高齢者は,体力の衰えと病気の進行を不安に思い,労働力としての自らの市場価値に不満を抱きながらも,ただただ生活維持のために働く気力を振り絞っている.

現在の病院看護基準と看護師不足解消の方向性

著者: 楠本万里子

ページ範囲:P.490 - P.493

 2006年度診療報酬改定における7対1入院基本料新設等を契機に「看護師争奪戦」と称されるような看護師需要の急激な増大が生じ,看護師確保がさらに困難な状況となった.これに対し2008年度診療報酬改定では,看護必要度の導入や10対1入院基本料の引き上げ等により,7対1入院基本料を算定するための看護師確保をセーブし,医療機関に適切な入院基本料算定を促す方策が打ち出された.しかし,一方で臨床現場では手厚い看護職員配置の効果も現れてきていることから,大規模病院をはじめとする看護職員確保の活動は,さらに活性化するとも予測され,看護職員確保困難について緩和の兆しすら見えないとの悲観論も聞こえてくる.社団法人日本看護協会(以下,本会)は,患者の安全を守りつつ十分な看護ケアを提供するには,7対1でも十分ではなく,小児専門病院の6対1に続く,さらに高い配置基準が必要な医療現場が少なくないとの認識でいる.

 ともあれ,看護職員の確保困難が叫ばれ続けている中,本会は看護職員の就業動向およびこれまでの確保対策を見直し,2007年度からは看護職員がどのような状況にあっても働きつづけることができる職場づくりを目指した活動「看護職員確保定着推進事業」を展開している.本稿では,その中の「多様な勤務形態導入モデル事業」を中心に紹介する.

看護師の労働需給と雇用政策

著者: 角田由佳

ページ範囲:P.494 - P.498

 2006年度の診療報酬改定において,従来よりも看護師を多く配置する「7対1入院基本料」が新設されて以降,看護師不足の問題が発生し,今なお続いている.しかし看護師の労働力不足問題は今日に始まったことではなく,問題に対処しようと,政府はこれまで数多くの政策を施行してきた.

 本稿ではまず,看護師の労働力不足が生じる労働市場の構造と,背景にある看護師の労働供給行動の特性について,経済学の視点から整理する.そのうえで,日本の診療報酬制度,特に看護に関わる診療報酬の支払いの仕組みによって,看護師に対する労働需要が過剰に創出されたり,労働力を供給するインセンティブを阻害されたりするという,需要と供給両面にもたらされうる問題を提示し,適切な政策手段について検討する.

介護労働者を取り巻く状況とその対応

著者: 鈴木康裕

ページ範囲:P.499 - P.503

介護労働者を取り巻く状況

 高齢化が急速に進展する中,国民の安心を支える介護・福祉サービスの安定的な供給を可能とするためには,介護労働者の確保策を推進することが極めて重要な課題である.こうした中,介護労働者を取り巻く状況については,賃金水準の低さ,離職率の高さ,人材確保の困難さといった,厳しい指摘がなされている.

 厚生労働省においては,介護サービス事業の安定的かつ効率的な経営と,質の高い介護労働者の確保・育成が不可欠であるとの認識の下,平成19年10月,社会保障審議会介護給付費分科会にワーキングチームを設置し,事業所団体・労働者団体等からヒアリングを行い,介護サービス事業の経営の効率化と,将来を担う中核的な介護労働者の育成,定着率の向上を図るために必要な対応について報告(以下,ワーキングチーム報告)1)を取りまとめていただいた.ワーキングチーム報告においては,介護労働者や介護事業者を取り巻く状況を,次のとおり整理している.

医師・看護師不足への対応策としての「短時間正社員制度」の可能性

著者: 高﨑真一

ページ範囲:P.504 - P.506

 医療分野での人材不足が問題となり,特に医師・看護師不足は「病院医療崩壊」なる言葉が出現するほどとのことである.「とのことである」とは,私自身,厚生労働省の職員ではあるが,過去に医療行政にたずさわった経験は皆無で,その意味では一般国民と同じ立場で事態を承知しているに過ぎない.

 他方,労働力対策には多少経験があり,現在はパート労働対策,ホームワーク対策を担当している.今後20年ほどの労働力人口を見通すと,人口減少下において1,000万人以上激減することが見込まれる中で,若者,高齢者,特に女性の活用により,減少は不可避としてもその幅を半減することが可能とされている.要は,今後熾烈化する人材争奪戦に勝利する秘訣は,「女性の活用」ということである.

【人材不足の現状と対応】

「病院経営の現況調査」報告―日本病院団体協議会 平成19年10月発表

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.507 - P.510

調査報告の概要

 日本病院団体協議会の加盟する11団体(下記)は,悪化していると言われている病院経営の実態を調べるため,下記のような調査を実施した.今回,その概要を「病院」誌上に報告する.

1.調査客体

 調査対象は,日本病院団体協議会に加盟する11団体(国立大学附属病院長会議,日本私立医科大学協会,国立病院機構,日本精神科病院協会,全国公私病院連盟,日本病院会,全国自治体病院協議会,日本療養病床協会,全日本病院協会,労働者健康福祉機構,日本医療法人協会)の全会員病院とした.

短時間正職員制度の導入と効果

著者: 浅見浩

ページ範囲:P.512 - P.514

 平成19年11月,社団法人全日本病院協会(以下,全日病)では,厚生労働省雇用均等・児童家庭局の委託を受け,医療従事者委員会のメンバーを中心に,短時間正職員制度導入推進事業運営委員会(以下,当委員会)を組織した.当委員会では,医療機関における短時間正職員制度の導入方法や啓蒙パンフレット等の作成,モデル病院による当制度の試行と検証等の作業が行われた.

 ここでは,主にモデル病院における制度導入プロセスと効果についてご紹介したい.


注:厚生労働省パンフレット等では,同制度を「短時間正社員制度」と称しているが,医療機関では労働者を職員と呼称するのが一般的であるため,当事業では,「短時間正職員制度」としている.

医師に選ばれる病院とは

著者: 稲葉一元

ページ範囲:P.515 - P.518

医師の自由転職時代の到来

 2008年4月3日,衝撃的な記事を目にした.「国立がんセンター 麻酔科医が相次ぎ退職 手術に支障」.医師にとって最高峰のブランド病院とも言うべき国立がんセンターにまで,いよいよ医師不足の波が押し寄せてきたのである.

 2004年の新臨床研修医制度の施行後,福島県立大野病院における産婦人科医の医療過誤事件等の影響もあり,地方を中心に医師不足が深刻化している.ここで言う医師不足とは,病院で勤務する医師の不足であり,本稿でも「医師不足=勤務医不足」と解釈いただきたい.

グラフ

社会人としての人材育成が人材確保への近道―山形市立病院済生館

ページ範囲:P.473 - P.476

 山形市立病院済生館は1873年に民間病院として創立.翌1874年に山形県公立病院となり,1879年には太政大臣三条実美により「済生館」と命名された.その後いったん民間病院となったが,1904年に市立病院となり,以後,100年以上にわたり地域の中核病院として機能してきた.1992年には施設の全面的な改築が行われ,地下2階,地上11階の現在の姿となっている.

 今回は,地方都市の自治体病院が医療の質と市民の信頼を維持しながら,どのようにして人材を確保しているのか,に焦点を当てながら山形市立病院済生館(以下,済生館)の取り組みを紹介する.人口流出や高齢化といった問題を抱える地方都市においても,やはり最先端の医療の提供と職員への就労支援,教育の充実が,人材育成・人材確保の打開策として1つの可能性を秘めていると感じられた.

連載 ヘルスケアと緑・6

緑に憩う

著者: 浅野房世

ページ範囲:P.478 - P.479

 病院の庭をニューヨーク,アリゾナと紹介してきたが,今回はイギリスに飛びたい.

 イギリスは,ガーデニングの国である.キュー植物園(Royal Botanic Gardens,Kew)や,ウイズリー植物園(Royal Horticultural Society's Garden Wisley)などの大きな植物園では,庭好きなイギリス人のために,「美しいイングリッシュガーデン」の実践解説本はもとより,苗や種,スコップなどの様々な実用品を販売している.もっとも,これは元気な人を対象としている.では病者はどうすればいいのか?

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・25

在宅医療におけるMSWの退院支援―患者の意思を支える専門職として

著者: 永野なおみ

ページ範囲:P.523 - P.525

 在宅医療の実現と継続のためには,当事者である患者・家族の在宅への意思が明確であることが重要である.筆者らは事例調査を通して,在宅医療を選択する過程での医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)による支援が,この意思の力を確かなものにするため大きな役割を果たしていることを確認した.患者・家族の思いを尊重しながら,病院とケアマネジャー等地域のスタッフとが連携する在宅医療の支援システムを築くために,MSWが病院に配置されることが必要である.

〈続〉基本からわかる医療経営学・3

医療専門職の特性と病院組織

著者: 中島明彦

ページ範囲:P.526 - P.529

 医療組織は多様な専門職によって成り立っています.今回は医療専門職の特性を踏まえたうえで,個人と組織の関係や組織マネジメントの特性について検討します.

続クロストーク医療裁判・6

術後管理における医師の責任―食道がん手術後気管内挿管抜管事件―最高裁平成15年11月14日判決の事例から

著者: 小西安世 ,   石川優佳 ,   岡住慎一 ,   落合武徳

ページ範囲:P.530 - P.535

 本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 5~7回は「術後管理と医師の過失」をテーマに取り上げている.今号では,約18時間にわたった食道がんの手術(食道全摘術)が終了し気管内挿菅の抜菅をした後の呼吸管理,気道確保の措置,特に,抜管後20分間の経過が問題となっている事案を紹介する.術後管理における担当医師の過失を認めたこの判決を題材に,最高裁判決の,術後管理の場面における医師の過失判断についての考え方について検討する.

職場のメンタルヘルス・15【最終回】

今求められているメンタルヘルス対策

著者: 武藤清栄 ,   村上章子

ページ範囲:P.536 - P.541

病院の現状

 政府は,2006年の骨太の方針で述べた歳出歳入に関する改革を変更しないで,何とか国民の医療に対する信頼回復を目指そうとしている.しかし,年金記録問題や後期高齢者医療制度に対する不信感や批判は根強い.特に後期高齢者医療制度に関しては,高齢者だけではなく,家族や地方の医師会からも反対ののろしが上がっている.今や病院のメンタルヘルスの問題は,赤字経営,社会保障費の捻出,診療報酬のあり方,検査や処置についての定額報酬制度,医師や看護師の不足または偏在,勤務医や看護師の過重労働,医療事故,そして医療機関同士の連携など多様な背景から生み出されている.そんな中で,救急医療,災害医療,へき地医療,周産期医療,そして小児医療のあり方は特に深刻である.

 図1は,先進主要8か国の租税負担率と社会保障の負担率を示したものである.これを見る限り,先進諸国の中で日本の社会保障(医療,年金,介護,生活保護等)の負担率は少ない方であり,国の政策として医療にもっと力を入れて財源を確保すべきである.図2は,人口1,000人あたりの就業医師数である.先進諸国に比べて日本は,圧倒的に医師の数が少ないことがわかる.したがって,医師の養成や確保が急務となるが,看護師についても同じである.これまでの連載では,目まぐるしい変化の中で,病院のメンタルヘルスの現状がどうなっているのか,いくつか題材を取り上げてきた.今回は最終回として,病院がどのようなメンタルヘルス対策をしていくべきかについて,現状を踏まえながら提言をしたい.

DPC時代の医療経営管理塾・1【新連載】

診断群分類とは

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.542 - P.543

〈問1-1〉ケースミックス区分法とは,どのようなものか説明せよ.

〈問1-2〉診断群分類とは,どのようなものか説明せよ.

〈問1-3〉診断群分類が開発された理由を,モデルを用いて説明せよ.

(国際医療福祉大学医療経営管理学科2006年3年後期「診断治療総論」期末試験問題)


■連載にあたって

 本連載では,DPCをより深く理解するための基本的な用語や概念をわかりやすく解説してゆく.題材として,筆者が国際医療福祉大学の講義で使用している試験問題などを用い,問題の解説を通して,医療管理やDPCの理解を深めていくことを目的とする.

病院管理フォーラム ■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・6

米国・MB賞受賞病院の業務改善活動―マネジメントの質を高めるプロセス

著者: 猶本良夫

ページ範囲:P.545 - P.547

●Malcolm Baldrige Award

 米国のMalcolm Baldrige Award(MB賞)は,企業・組織のマネジメントの卓越性(excellence)を審査,表彰する国家プロジェクトであり,1999年からヘルスケア部門に適応が拡大された.

 MB賞は,米国大統領が直接授与する名誉ある賞であるが,MB賞が制定された背景には1980年代の米国企業の国際競争力の衰退があったとされる.製造業を中心に日本および西独などの海外企業製品が市場を席巻し米国国内に危機感が高まった.この時期,米国企業は国際競争力回復のため,本来は米国から取り入れられ日本で熟成されたTQCなどを学ぶために日本企業を訪問するようになっていた.このような状況下,米国産業復活のため米政府による規制の緩和や税制優遇等により競争原理が全面的に機能するような環境の整備と,企業経営者向けには競争力向上に取り組むよう啓発活動が行われ,1987年,当時のマルコム・ボルドリッジ商務長官が中心となり制定した「国家品質改善条例」がMB賞の基礎となっている.

■医療経営と可視化・9

現場からの可視化(3)―可視化による病院マネジメント

著者: 齋藤哲哉

ページ範囲:P.548 - P.551

●可視化の目的

 厳しい医療界ではあるが,変化に対応しなければ生き残れないのは,なにも医療界だけではない.様々な企業では,激しい競争の中で生き残りをかけ,顧客に対するマーケティング活動を積極的に行い,情報を見える形にして,戦略的にサービスの向上を目指している.それが顧客満足につながる.そう考えると,われわれ医療界では,患者や連携医へ価値を提供するために,必要な情報を収集しているだろうか.集まった様々な情報を職員が理解できるように可視化し,共有しているだろうか.そして共有された情報から,現場で考え行動しているだろうか.

 福井県済生会病院(表1)での可視化の目的は,現実の姿を知ること,質の改善を行うことである.医療環境の変化に対応することは,組織全体が,情報から得られた課題や目標に対して,継続的に改善活動を行うことである.チームあるいは組織全体で必要な情報を共有化し,その可視化された情報から,将来のあるべき姿へ近づくためのギャップを自発的に測定・分析・改善する.

■医事法・14

医療責任の期間制限(時効・除斥期間)

著者: 植木哲

ページ範囲:P.552 - P.554

●期間制限の意味

 医療責任の本質を不法行為責任とするにせよ,債務不履行責任とするにせよ,事故は時が経過するにつれ,人々の記憶から忘れられていきます.江戸の仇を長崎でとらせ,子や孫の代まで争いを持ち越すことは,紛争の蒸し返しを助長するだけです.これではせっかく安定した社会の秩序が壊れ,新たな紛争の火種となります.このように,法的安定性が損なわれるのを防ぐため,裁判においては訴える場所が事前に決められ,また,一定の期間が過ぎると提訴できない仕組みになっています.前者が裁判管轄の問題であり(民訴法4条以下),後者が期間制限の問題です.

 また,時の経過とともに証拠は失われ,証拠能力も色あせます.物的証拠(物証)は散逸しますし,人的証拠(人証)は死亡等により失われてしまいます.いつまでも訴訟できるようにすれば,失われた権利の回復には便利ですが,逆に権利の上にあぐらをかく人のために,他の人が戦々恐々とすることになります.加害者も,いつまでも被害者(権利者)に付き合わされては我慢の限界を超えるでしょう.一定の期間を超えると権利主張できないようにしておくのは,社会の安定に資するためです.では,その一定の期間とはどのように決まるのかと言えば,それは各国の立法政策の問題であり,それぞれの国よって異なります.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・9

病院に登場したコンビニ―病院に外の風を入れよ

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.556 - P.557

 「急げば間に合うから解熱シート買ってきて」と頼まれて,病院の売店へ走って行った.しかし,エレベーターがなかなか来ない.階段を使うにも地上11階の病室から地下の売店はきつい.やっと着いたが「午後5時閉店」と札が出て,シャッターが締められていた.時計を見ると午後5時5分だった.トホホ…

 こんな経験をした人は僕だけではないだろう.院内食堂も同じである.夕方に遠くから見舞客が子ども連れで訪れ,せめて食事でも,と食堂に誘うと,ラストオーダー終了だったりする.それなら孫に土産をと,売店に行けば同じく5時閉店.病人が見舞客の接待まで気にしなくてもいいのだが,おじいちゃん,おばあちゃにすれば,そうもいかない.

 また,病院生活ほど退屈なものはなく,小さな売店でも気晴らしとなる.回復期は特にそうだ.もてあますような時間を,患者さんたちはどう過ごすのだろう.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第161回

徳島赤十字病院

著者: 小北武 ,   中村俊一

ページ範囲:P.558 - P.563

 徳島市の南約7km,紀州灘に面した小松島市に位置する徳島赤十字病院は,徳島県南部医療圏の急性期医療を担う中核病院として地域医療支援病院の指定を受け,地域の医療に貢献し続けている.

 既存施設の老朽化や狭隘化が進み,2006年5月,東洋紡績小松島工場の跡地に小松島市の中心市街地再開発事業による道路拡幅を契機に移転新築した.

リレーエッセイ 医療の現場から

リラクゼーションルーム M.M.C.

著者: 植松順弘

ページ範囲:P.567 - P.567

 当院玄関ロビーに設置されている「リラクゼーションルーム M.M.C.」は,患者さんやお見舞いの方々に,病院での過ごし方の,新しい提案を形にしたものです.「M.M.C.」とは「ムービー・メディカル・カフェ」の略で,運営している株式会社ムービー・マネジメント・カンパニーの略名「M.M.C.」にちなんでいます.

 リラクゼーションルームの最大のセールスポイントは,病院内という公共の建物の中で,DVDを視聴できるサービスを提供していることです.著作権法上,売買用DVDやレンタル用DVDは,病院内等で視聴することができません.認められているDVDは,業務用と言われているもので,M.M.C.社は,この業務用DVDを扱う専門業者です.

レポート【投稿】

医療費未収問題における医療ソーシャルワーカーとしての貢献

著者: 都成祥子 ,   秋田穂束

ページ範囲:P.520 - P.522

要旨 近年,国民健康保険の未加入や保険料滞納問題,医療機関での医療費の未収金問題がよく取り上げられている中で,医療ソーシャルワーカー(MSW)がいかにして業務を行っているのか,また病院の収益確保にどのような貢献ができるのかということを検証した.当院においては平成18年度,MSW関与により2,982万6,052円の経済効果を得ており,①無保険・行路対応,②遡及請求,③生活基盤確保,④各種調査,⑤事務手続き関与の5項目に分類して検証した結果,①④が多くそれぞれ全体の86%,9%を占めた.本レポートではそれらの具体的な実践事例を挙げ,医療ソーシャルワーカーが得意とする対人援助技術やコンサルテーション等の能力を活用することで,「患者サービス向上」「適正な病院運営の実践に参画」することが有用であることを報告する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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