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雑誌目次

雑誌文献

病院67巻8号

2008年08月発行

雑誌目次

特集 人口減少時代の病院

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.677 - P.677

 2005年より人口は減少に転じ,高齢化はいっそう進んでいる.2020年には現在よりも500万人以上減少し,65歳以上の占める割合も20%から29%に増加すると推計されている.人口が減っても高齢化により医療需要は衰えないが,医療費に占める65歳以上の占める構成比は半分から3分の2に増え,現行の公平な医療保険制度が試練に立たされよう.一方,若年人口は減り続けるので,病院が看護師等の新卒の職員を確保するのは一段と難しくなるであろう.こうした人口減少時代は確実に到来するので,その動向を正しく把握し,対応策について検討することが本特集の目的である.

 まず社会保障国民会議の議長である吉川洋氏と,同会議委員で労働経済学が専門の清家篤氏にご出席いただいた鼎談が掲載されている.筆者が司会を務め,医療現場が抱えている課題を提示する形で,医療費の負担と保険で給付するサービスのバランス,年金対策としての定年延長,人口減少による医療従事者の不足などについてディスカッションし,特に定年を延長するためには,年功給から脱する必要があり,その際,病院として率先して努力するべきであるということが特に印象に残った.

【鼎談】人口減少時代の病院

著者: 清家篤 ,   吉川洋 ,   池上直己

ページ範囲:P.678 - P.683

池上 本日は人口減少時代における病院の対応をテーマに,お話しいただきたいと思います.既に人口は減少し出しており,今後減少が加速化すると予測されています.人口の減少は,医療費を負担する現役世代においても最も著しいので,現在の医療保険体制を維持できるかどうかが危惧されます.また,若年人口が減少すると,従業員,とりわけ看護・介護職員の確保が難しくなります.こうした観点から,それぞれの分野の第一人者をお招きしました.最初に,簡単な自己紹介をお願いします.

吉川 私の専門はマクロ経済学ですが,医療問題との接点は,2001~2006年の秋頃まで,政府の経済財政諮問会議に民間議員として参加し,医療制度改革等に関係したことです.

 また,今年1月に社会保障国民会議が立ち上がり,清家先生とご一緒させていただいています.

人口減少と社会保障給付費

著者: 勝又幸子

ページ範囲:P.685 - P.689

人口減少時代到来

 直近の国勢調査(2005年実施)を踏まえて,2006年12月に国立社会保障・人口問題研究所は『日本の将来推計人口(平成18年12月推計)平成18(2006)年~平成67(2055)年』を公表した.この時,出生中位推計で2006年から人口が減少を始めると推計したことが「人口減少時代」の幕開けとして注目を浴びた注1).その後実際の総人口は減少したのかというと‘まだ’である.5年ごとの国勢調査の間の人口を出すのが総務省統計局の「人口推計」で,基準は10月1日現在となっているが,2006年と2007年の総人口は前年比較でそれぞれの約1,500人ずつ増加している.

 図1のように戦後第1次ベビーブーム(1947~49年)以後,出生数は急激に減少し再び1970年代前半に第2次ベビーブームがくる.その後1973年の出生数をピークとして出生数減少の時代がやってきた.出生率注2)が2.08人を下回ると人口の再生産ができなくなると言われているが(静止粗再生産率),日本の出生率がその水準を下回ったのは1974年であり,その後減少を続け2005年には過去最低1.26人を記録した.その後出生率自体は少し上昇し,2007年では1.34人になったが,生まれた子どもの数は減少を続け,2006年から2007年にかけて生まれた子どもの数は2,929人減少した1)

医療保険制度の将来

著者: 吉川洋

ページ範囲:P.690 - P.693

 日本の医療制度は試練の時を迎えたようである.地域医療の劣化,産科・小児科・麻酔科医の不足など様々な問題が噴出する中で,「医療崩壊」という言葉すら使われるようになった.

 冷静に考えるならば,わが国の医療制度は先進国の中では比較的少ない投入にもかかわらず高いパフォーマンスをあげている.国民医療費の対GDP比は8%(2005年).これはOECD30か国中22位である(最も高いアメリカでは15.3%,フランス11.1%,イギリス8.3%).1人当たりの医療費も19位であり,所得水準の高い最先進国の中では一番低い.一方,平均寿命はよく知られているとおり香港と並び世界一なのだから,国際的に見る限り,わが国の医療制度は世の風潮とは逆に,実はかなりうまくいっているほうだと言うべきなのである.にもかかわらず,はじめにも書いたように,わが国の医療制度が多くの問題を抱えていることも事実である.本稿では経済学者の立場から,日本の医療保険制度について考えてみることにしたい.

鍵は労働条件の見直し

著者: 清家篤

ページ範囲:P.694 - P.696

年金と医療・介護との違い

 本格的高齢社会の到来を前に,社会保障制度改革は待ったなしである.政府も社会保障国民会議などで,社会保障制度についての抜本的,包括的な改革論議を開始した.年金,医療,介護のすべての分野に関して,制度の見直しが求められている.

 もちろん現行の制度の見直しは簡単なことではない.負担の増加,給付の削減など,国民にとっては痛みを伴うような部分も含まれるからである.しかしこれは嬉しいチャレンジでもある.というのは,社会保障制度改革を必要とする高齢化は,われわれの経済社会の成功により,生活水準が向上した結果でもあるからだ.

病院としての将来像

飯塚病院―優秀な若者を惹きつける教育病院

著者: 田中二郎

ページ範囲:P.698 - P.701

 2005年の「人口動態統計」は,統計を取り始めた1899年以来,初めて出生数が死亡数を1万人下回る自然減を報告した.合計特殊出生率は1.26を記録した後,2007年には1.32とやや回復したものの,自然増と自然減の境界値とされる2.08には遠く及ばず,日本はここに人口減社会に突入した.人口減社会の入り口は少子高齢化社会であり,高齢者の増加により医療需要が増加するのに対して,医療提供体制を担う若年労働力が減少する.少子化というトレンドのなかで今後の病院,ことに職員の過重労働が問題となっている急性期病院は,医療提供の担い手たる医師・看護師らマンパワーの確保が大きなテーマであり続けるであろう.いまや,日本の病院は患者に選ばれる前に,働く者にとっていかに魅力的であるかが問われる時代となったのである.

公立みつぎ総合病院―早くから高齢化に対応してきた病院として

著者: 山口昇

ページ範囲:P.702 - P.706

 高齢化が進み,要介護者が増え続けている.2008年度より後期高齢者医療制度が実施に移された.今後の後期高齢者増加に対し,国の社会保障審議会特別部会ではいろいろと検討が行われ,私もヒアリングの場で意見を述べさせていただいた.一方,「健康日本21」や介護予防を重視した介護保険制度改革等により,2008年度からは特定健康診査・特定保健指導がすべての医療保険者に義務付けられた.

 医療の世界も大きく変りつつある.現在,都道府県は療養病床の転換をはじめ保健医療計画や医療費適正化計画等,種々の計画を策定中である.これら一連の諸計画はそれぞれ整合性がとれたものでなければならない.一方,都市部と中山間地域とではそれぞれ事情が異なるため,これらに配慮した計画が必要となる.都市部では総合病院も複数あるためそれぞれ役割・機能分担が可能であるが,中山間地域ではそうもいかない.病院機能にしてもそうである.患者が必要とする医療を提供できる病院機能を有しなければならない.

平成立石病院―高齢化と地域のニーズに応える病院運営

著者: 猪口正孝

ページ範囲:P.708 - P.711

 病院が存続する必要条件は,患者を代表とするその地域に必要とされ,支持を受け続けることである.そして内部変革を持続的に繰り返し,質の維持を計ることが十分条件となる.高齢化社会をふまえて支持を得るためには,地域が何を必要としているかを捉えなくてはならない.制度の変化には敏感でなくてはならないが,「あれが儲かる」というような思いつきは無視するようにしている.

 開院した6年前を思い出し,これまでを振り返ってその延長線上を考えれば,当院の10年後が見えてくるというものでもない.ニーズには連続性があり,必然がある.制度の変化とともに急に生じるものではない.私たちは医療の本質と高齢化社会の要求,そして従業員たちの満足を考えながら,未来を探っている.

グラフ

“病院は命綱”―医療法人陽気会 網小医院

ページ範囲:P.665 - P.668

 宮城県石巻港から連絡船で1時間弱のところに,人口530人ほどの離島,網地島(あじしま)がある.65歳以上の高齢者が64%を占めるこの島の医療を一手に引き受けているのが,医療法人陽気会網小医院だ.

 当院は,人口減少に伴う少子化で廃校となった網長小学校を改修し,1999年に開院した.それまでの町立診療所は救急や手術,往診ができず,海が荒れれば石巻市の病院へ行くことも難しかった.そのため,「島でできるだけ完結した医療を」という基本構想のもと,CTや手術室を備えている.

連載 ヘルスケアと緑・8

五感で楽しむ

著者: 浅野房世

ページ範囲:P.670 - P.671

 前回は,花壇づくりの具体的方法を記述した.今回から,「癒す」ことを考えて筆者が実際にデザインに携わった庭を紹介したい.

続クロストーク医療裁判・8

MRSA感染症に関する医療機関の法的責任―MRSA感染死亡事件―最高裁平成18年1月27日判決の事例から

著者: 小野寺健太 ,   米村滋人 ,   廣瀬昌博

ページ範囲:P.718 - P.723

 本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.

 術後処置の問題に引き続いて,第8回目では院内感染の問題をテーマにする.院内感染に関し問題とされる過失類型は,「法理論的」には,1)起因菌の感染を防止すべき義務を怠ったこと,2)当該起因菌による感染症の発生を防止すべき義務を怠ったこと,3)当該起因菌による感染症が生じた後に適切な治療を行わなかったこと,などが想定される.今回は,そのような事例のうちMRSA感染に関する平成18年最高裁判決を採り上げる(なお,第3回で私的意見書に関する判例として紹介したのと同じ判決である).

〈続〉基本からわかる医療経営学・5

病院における人事評価と給与制度

著者: 厨子直之

ページ範囲:P.724 - P.728

今なぜ病院において人事評価や給与制度に注目するのか

 読者の皆さんの病院では,既に医療専門職の働き振りを評価し,評価結果を給与に結びつけているところもあれば,今後そういう仕組みの導入を検討しているところもあるのではないかと思います.しかし,医療現場において,人事評価の実施は容易ではないでしょう.実際,「評価項目が多すぎて負担」「評価結果に納得できない」といった医療専門職の声を耳にすることが少なくありません.

 ところが,昨今,病院においても,人事評価や給与制度に着目する必要性が出てきた医療界固有の事情が2つあります.その1つが,医療費抑制政策です.具体的には,診療報酬のマイナス改定と診断群分類別包括評価(DPC)の導入が挙げられます.診療報酬の単価切り下げにより,病院全体の収益は年々減少しつつあるのが現状です.また,DPCに基づく定額支払いの診療報酬体系が浸透すれば,病院の収入が患者の治療件数に比例して上昇しなくなります.病院の収益が右肩上がりに増加しないということは,多くの病院が採用している国家公務員給与体系,つまり全職員の給与額が勤続年数や卒後年数に応じて自動的に上がる仕組みが維持困難となることを意味します.そのため,限られた病院収入の中でいかに各専門職に給与を分配していくかが検討課題になります.当然,その場合,客観的な分配基準がなければ被評価者は不満を感じるでしょう.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・27

退院援助における対象者の実態と実践課題

著者: 村上武敏

ページ範囲:P.729 - P.732

 退院援助はいまや医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)の中心的業務となっているが,いまだにその対象が十分に明らかにされてはいない.本稿では,MSWが行う退院援助の対象者の実態を明らかにするとともに,その実態から退院援助の実践の意義と課題,さらに病院が担うべき社会的責任を明らかにする.そのことが厳しさを増す医療制度改革を,健全に乗り切る1つの条件を示唆することにもなるであろう.

DPC時代の医療経営管理塾・3

14桁コードの読み方をどう教えるか

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.734 - P.735

ある旅行会社が,5桁のコードで情報管理を行っているとする.

最初の3桁は顧客コードで,

  345…鈴木さん, 567…佐藤さん, 789…田中さん

4桁目のコードは航空会社で,

  1…A航空, 2…B航空, 3…C航空

5桁目のコードは目的地で,

  1…英国, 2…カナダ, 3…アメリカ

を意味する.

〈問1〉この時,下記①~③のコードは,どのような意味を持っているか?

読解の手順を示しながら,そのコードの意味を説明せよ.
①34513  ②56721  ③78932

〈問2〉今回のケースを解読するために必要な,①顧客テーブル,②航空会社テーブル,③目的地テーブルを作成せよ.

(国際医療福祉大学医療経営管理学科2002年3年前期「高齢者ケア論」授業中小テストより)

病院管理フォーラム ■エクセレント・ホスピタルの条件を探る・8

医療専門職と事務部門との協働―バージニア・メイソン医療センターの事例から

著者: 川上智子

ページ範囲:P.736 - P.739

 病院のマネジメント力を高める重要な要素の1つに,医師や看護師などの医療専門職と事務部門との協働をいかにうまく進めるかという問題がある.実は,病院に限らず,どのような組織においても,専門分野の異なる者同士が協調し,かつ馴れ合いにならずに緊張感を保ちながら働くことは難しい.とりわけ,日々のルーチン・ワークに留まらず,革新的な試みを取り入れて組織に定着させようとする際には,専門分野の違いによる組織の分断が組織内に不調和を起こさないように,組織設計や人員配置を周到に行う必要がある.

 病院の経営において,医療専門職と事務部門との協働を成功させるには,どのようなマネジメント上の工夫が考えられるのだろうか.今回は,本連載第3回でご紹介したアメリカ(シアトル)のバージニア・メイソン医療センター(VMMC : Virginia Mason Medical Center)のケースをさらに掘り下げつつ,経営組織論の知見に基づき,部門間の協働を促す組織設計のあり方を考えてみたい.

■医事法・16

診療・学会ガイドラインと法的責任

著者: 植木哲

ページ範囲:P.740 - P.742

 医療倫理と法的責任の問題に引き続き,今回はガイドラインと法的責任の関係について考えてみます.ガイドラインには,私的団体が個々の診療レベルの標準を医学・医療の観点から記載した診療上のガイドラインと,厚生労働省(以下,厚労省)や学会が当該専門領域に関する医学・医療の標準を示す専門レベルのガイドラインがあります.いずれも科学的根拠に基づいていることが必要ですが,最近では特にEBM(事実に基づく医療)に依拠していることが重要とされます.しかしその作成過程には不明な部分が多く,問題点も少なくないと言われます〔寺本民生:ガイドラインの作成理念とそのプロセス・治療学34(6):5-8,2000〕.このようなガイドラインが裁判でどのように使われるのかを考えてみましょう.

■DPCによる地域医療分析・1

DPCによる地域医療分析の意味

著者: 真野俊樹

ページ範囲:P.743 - P.746

●医療崩壊とは

 医療崩壊という言葉が頻繁に聞かれる.定義は何であろうか,また現象として何が起きているのであろうか.医療崩壊とは,「医療システムの健全な運用が損なわれていくさま」(はてなダイアリーより:2008年6月20日Yahooで検索).あるいは,医療崩壊とは「それなりに廻っていた医療体制が何らかの原因でたちゆかなくなること,またその状態を漠然と指す言葉」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』同日検索),という.

 小松秀樹医師は,『医療崩壊―立ち去り型サボタージュ」とは何か』(2006)を著し,日本の医療体制が直面する状況,なかんずく刑法にもとづく警察と世論を背景としたマスコミがいかに医師を追い詰めるかに警鐘をならした.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・11

暮らしという奥深いケアシステム

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.748 - P.749

 2002年の厚生労働省の調べによると,病院で最期を迎える人は80%を超え,がん患者では90%を超える.ところが,現在は国の医療政策変更により入院日数が短縮され,急性期を過ぎた患者さんは家に帰るか転院を求められる.これによって病院で最期を迎える人の数が減るかと思っていたが,そうでもない.旅立ち間近,ぎりぎりに病院に戻り,そこで最期を迎えるからだ.

 理由は患者さんや家族の不安,介護力不足や緊急事態の発生などである.今後どうなっていくかわからないが,入院日数短縮を在宅での看取りにつなぐのは難しいようである.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第163回

前田病院

著者: 長島一道 ,   谷口麻里子

ページ範囲:P.750 - P.756

分散していた機能を集約化

 佐賀県西部,伊万里焼・有田焼の積出港であった伊万里湾を囲むように伊万里市は広がる.この地で1916年開業の前田病院は,それまで分散していた市街地にある本院(77床)とそこから約1.5km離れている分院(52床)を統合する計画を2004年に立て,分院隣の敷地に地域医療を担う新病院として2007年にリニューアルした.併せて,旧分院を改修した管理棟と既存腎センター(透析病床58床,6時間透析実施)と新病院とを渡り廊下でつなぎ,すべての病院機能を一体化した.

リレーエッセイ 医療の現場から

そうぞう―想像と創造

著者: 成澤俊輔

ページ範囲:P.759 - P.759

 先天的な難病である網膜色素変性症だとわかったのは,3歳の時であった.花火の燃えカスをバケツに入れることができない私を見た母が,夜盲の症状に気づいた.父の仕事の関係もあり幼稚園は2年ほどアメリカで生活し,その後は佐賀県の普通校に通った.よく母と日本中を飛び回って旅をした.そして大学受験を終えて,希望に満ち溢れる想いで埼玉の大学に入学した.専攻は社会福祉学.自分のハンデを生かしながら人生を過ごしたいと思っている.

 大学生活を送る中で「理想と現実のギャップ」という言葉をよく耳にするようになった.この文言の裏にある1つのテーマとして,「社会と大学の連動性の欠如」があると感じている.それは次のように表現できると思う.

特別寄稿

現場医療者からのフィードバック調査―急性期医療現場で医療が目指すべき方向性は果たされているか?

著者: 井出恵伊子 ,   田中滋

ページ範囲:P.712 - P.716

要旨 医療政策の大きな方向性は①医療サービスの質の向上,②資源の効率的利用,③患者満足度の向上であり,各医療機関ではさらに④従業員満足度の向上,⑤収益の維持または向上が必要とされている.①~⑤達成に向け様々な制度が導入されたが,一方で医療者達が病院を去る人材危機が深刻化した.そして急激に医療提供体制存続に危機的状況を招いた.本研究ではこの現象を制度・政策の「現場インパクト」という視点で捉え直し検証を試みた.

 医師・看護師調査の結果,医療者は①~⑤の各々の実現性に矛盾を感じていた.また身体的・精神的・時間的限界の訴えや事務作業への不満が非常に高かった.背景には平均在院日数短縮による業務量増大,患者期待の増大,訴訟リスク,マネジメント資源の限界等が考えられた.

 本研究は特に外部から状況が判断しづらい,急性期医療現場問題の実態解明を主旨とし,今後の医療のあり方を考える一資料を提供するものである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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