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文献詳細

雑誌文献

病院67巻8号

2008年08月発行

文献概要

特集 人口減少時代の病院

医療保険制度の将来

著者: 吉川洋12

所属機関: 1東京大学大学院 経済学研究科 2社会保障国民会議

ページ範囲:P.690 - P.693

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 日本の医療制度は試練の時を迎えたようである.地域医療の劣化,産科・小児科・麻酔科医の不足など様々な問題が噴出する中で,「医療崩壊」という言葉すら使われるようになった.

 冷静に考えるならば,わが国の医療制度は先進国の中では比較的少ない投入にもかかわらず高いパフォーマンスをあげている.国民医療費の対GDP比は8%(2005年).これはOECD30か国中22位である(最も高いアメリカでは15.3%,フランス11.1%,イギリス8.3%).1人当たりの医療費も19位であり,所得水準の高い最先進国の中では一番低い.一方,平均寿命はよく知られているとおり香港と並び世界一なのだから,国際的に見る限り,わが国の医療制度は世の風潮とは逆に,実はかなりうまくいっているほうだと言うべきなのである.にもかかわらず,はじめにも書いたように,わが国の医療制度が多くの問題を抱えていることも事実である.本稿では経済学者の立場から,日本の医療保険制度について考えてみることにしたい.

参考文献

1)小松秀樹:医療崩壊,朝日新聞社,2006
2)吉川 洋:「皆保険」の持続に向けてやらなくてはならないこと,エコノミスト(毎日新聞社),2005年12月6日
3)Fuchs V : Economics, Values and Health Care Reform, American Economic Review 86(2) : 125-148, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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