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雑誌目次

雑誌文献

病院68巻1号

2009年01月発行

雑誌目次

『病院』創刊60周年にあたって

巻頭言

ページ範囲:P.17 - P.18

 『病院』は病院の発展に寄興する目的をもつて経営する.病院を経営するもの,病院に勤務するもの及び病院を利用する民衆―の三者が一体となつて初めて,よい社会に必要なよい病院を生み出すことが出来るだろう.『病院』はこの三者の意見を交換する機関となることを企図している.よい病院を生み出すために,お互に知識を提供しあい,意見を述べあい,反省しあつて,その間に存在する不合理,誤解,矛盾―等の,よい病院を生み出す障害となるものを分析し検討して,お互の正しい理解をもち合おうではないか.そしてお互の理解は,その日から病院をよりよくするに違いない.

特集 60周年記念号 温故知新

【インタビュー】編集企画の背景―『病院』のあゆみと病院管理の発展

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.19 - P.23

―紀伊國献三先生は,1961~1996年までの約35年間にわたって『病院』編集委員(当初の名称は編集幹事)として本誌の編集に関わってこられました(20巻9号~55巻7号).その後は編集顧問として雑誌をご覧いただいております.

 戦後の医療や病院管理の発展と,雑誌『病院』のあゆみは重なり,本誌で議論されたことが診療報酬などに結びついたこともあると聞きます.本日は,『病院』編集企画の背景や経緯,裏話と言いますか,様々なエピソードをお聞かせいただければと思います.

わが経営思想と『病院』

著者: 竹内實

ページ範囲:P.62 - P.64

 『病院』60周年,誠に喜ばしい限りである.60年間毎月を重ねて今日あるということは,わが国の医療提供体制の中での病院運営に少なからず参考になってきたことを証明するものと思う.私個人としても,60年の内の約4分の1の期間,編集委員に加えていただいたこと大変感謝している.記念号発刊に際し,自分のかかわった病院医療を振り返りながら今後の医療への提言を書いてみたいと思う.

温故知新―これまでの特集から振り返る

社会と病院

著者: 河北博文

ページ範囲:P.25 - P.30

医療法の名文句の由来

 「病院は,傷病者が,科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され,かつ,運営されるものでなければならない」(現行医療法第1条の5)

 『病院』1964年23巻6号本誌発刊15周年記念特集号において,医療法のこの名文句の由来が述べられている(制定時第1条の1の文言であり,複数回の改定の後に第1条の5とされた).

医療制度と地域医療

著者: 大道久

ページ範囲:P.31 - P.34

医療制度における病院の位置づけ

 病院のあり方を,制度との関わりで特集として最初に取り上げたのは,1966年の25巻1号における「病院と医療制度」である.冒頭で「現行制度下における病院の役割」を論じた島内武文1)(東北大学教授)は,歴史的に神殿や寺院に付属して身寄りのない者を受け入れる「収容の機能」を果たしてきた病院が,「一般の傷病者の診療」のために使われたことは画期的なこととし,医学研究・教育の場として機能していることの意義を強調している.そのうえで,島内は「医師患者関係の特殊性」から病院の合理性と制度化を,次のように導いている.

病院経営

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.35 - P.38

 戦後のにおいが残る1949年,当時はまだ病院の数が少なく,その後の医学・医療の進歩など考えられなかったであろう60年前に,病院について専門的に論文や報告を掲載する雑誌『病院』が発刊された.その後の急速な経済成長の中,病院急増時代を迎え,経済成長を上回る国民医療費の増加が起きた.しかし,その後の経済状況の変化から病床規制が始まり,現在の病院減少・病床減少に繋がるわけである.

 当時筆者はまだ生まれておらず,父は戦前から開業していたが,戦後焼け野原になった下町で再度開業した頃である.その後のおぼろげな記憶では,雨の日にもスクーターに乗って往診をしていたことを思い出す.1963年に診療所から病院になり徐々に大きくなったが,いつも自宅では「病院の経営は大変だ」と嘆いていた.父は1978年に急逝してしまったが,その後も病院は多くの難問を抱えながらも存続した.そして筆者自らが経営者になってから,すでに20年を超えてしまった.

 この60年という激動の中で,『病院』は多くの病院経営に関する特集を企画している.ここでは,時代を反映する医療・病院の経営に関する記事を引用し,病院経営の過去・現在・未来について考察してみたい.

組織と人材

著者: 池上直己

ページ範囲:P.39 - P.42

 本稿では,組織と人材について,病院マネジメントの立場から設けた,事務長の役割,病院経営のプロ養成,人事管理と人事考課,法制度の改定と病院の課題の各テーマに沿って本誌の論文を選び,適宜抜粋して解説を加える.

看護

著者: 川島みどり

ページ範囲:P.43 - P.46

 発刊以来60年の雑誌『病院』の歩みは,学生時代を加えた筆者の看護師人生と丁度重なる.目次を見ながら,時々の問題の渦中にいたことに,一種の感慨を持った次第である.ところで,21巻以降約40年分の特集から「看護」に焦点化したものは47回にのぼる.その他にも,「病院外来」「救急医療」「高齢者」「在宅」「アメニティ」等々,看護が深く関わっているものも多くある.

 これらを総覧するという好機を喜ぶ反面,膨大な論考を前に,何を主題にすべきか思い惑う時間に殆どを費やした.21巻以降といっても前後でくっきり分けられるものではなく,その底流にある思想や風土は多少の変化はあっても現在まで絶えることなく続いている.“温故知新”というからには,直近の論考はさておき,古きをたずねて現代に生きる教訓を探ってみることにした.

設備と情報管理

著者: 神野正博

ページ範囲:P.47 - P.51

 設備と情報管理について,本誌『病院』が特集形式を設けるようになった21巻(1962年)以降の掲載内容のうち,今日においても普遍性があるか,あるいは時代の変遷を表わすうえで意義があると判断したものを振り返り,現在に通じる流れを検証してみたい.

患者サービスと環境

著者: 広井良典

ページ範囲:P.52 - P.55

患者の視点と医療

 雑誌『病院』の中で「患者の視点」あるいは「患者サービス」というテーマがどのように取り上げられ論じられているかは,日本の医療ないし医療政策において「患者」がいかに位置づけられているかを反映し,またはそれを先取りしている面を持っていて興味深い.同時にこのテーマは,患者サービスという話題にとどまらず,そもそも医療とは何か,あるいは「技術」「ケア」「科学」等とは何か,といったより大きな広がりを持っている.

 さて,特集記事の中で初めて「患者」に関する話題が取り上げられるのは,1964年23巻3号「患者への心づかい」である.この特集には「T.L.C」というサブタイトルがついており,これは「Tender Loving Care(患者を優しく親切に扱うこと)」を指している.特集の中では,当時の病院管理研究所長であり本誌編集主幹であった吉田幸雄1)の「T.L.C.への関心」という総論があり,医療における患者の位置づけの基本論として重要なものとなっている.ただし,特集の論文の中で扱われるテーマは,病院の「騒音」に関するものが2本あるほか,面会人の実態と管理に関するもの,病院におけるB.G.M等,現在とはやや異なるもので,時代を反映している感がある.また「患者の投書から見た病院サービスの分析」2)と題する論文は,現在に通じるテーマのように見えるが,内容はごく素朴なもので,やはり現在との関心の違いが浮かび上がる.全体としては,上記の「T.L.C」というサブタイトルが示すように,どちらかというと“施し”の対象としての患者といった面が強いと言えるかもしれない.

医療の質と安全

著者: 岩﨑榮

ページ範囲:P.56 - P.61

 「医療の質と安全」というテーマで,本誌『病院』が特集で取り上げた経過を振り返る時,少なくとも,「質と安全」とを同時に論じられるようになったのは,1999年米国医学院(IOM : Institute of Medicine)より『To Err is Human』という報告書1)が出版されて以来だと認識される.特にわが国においては,翌2000年にその訳本『人は誰でも間違える』が出版されて以来,急速に医療の質と安全への関心が高まったといってもよいであろう.

 それまで,質と安全とは必ずしも一緒に論じられることはなく,安全が先にあって医療の質が後追いだったように思われる(このことについては2001年・2006年の特集で取り上げられているので後述する).

 少なくとも,本誌『病院』が特集として安全をテーマに取り上げたのは,1964年23巻11号における特集「安全対策」を嚆矢とする.

特別記事

写真と特集で振り返る病院の60年

著者: 大石杉乃

ページ範囲:P.65 - P.68

 第2次世界大戦が終結し,日本が連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領下にあった1949年7月1日,雑誌『病院』が学術書院(現在の医学書院は学術書院と日本医学雑誌株式会社の合併による)から発刊された.

 創刊当時の雑誌には,病院の発展に寄与する目的をもって創刊されたことが記載されている.また,巻末には「日本の病院のおくれを早くとりかえしましょう!」という記載があり1),新しい日本の病院を築こうとする医師や編集関係者の意気込みが伝わってくる.『病院』の理念ともいうべき「よい病院はどうあるべきかを研究する雑誌」という言葉は,雑誌の表紙下段に表記されていた.

 『病院』のグラフ(グラビア)は1954年から,特集は1963年から組まれた.本稿では,特集とグラフを中心に『病院』を分析し,日本の医療の発展過程とその中で『病院』が果してきた役割を検証する.さらに,メリーランド大学Gordon W. Prange Collection(プランゲ文庫)に残されている史料を収集し,『病院』創刊事情や発行部数など,日本では不明となっていた情報を紹介する.

グラフ

写真で振り返る病院の60年

ページ範囲:P.1 - P.7

この60年,医療を取り巻く状況は大きく変わった.『病院』誌のグラフや特集記事の写真は,その年代の医療の実状を教えてくれる.さらに,異なる年代を比較することによって“発展”や“変遷”がわかる.

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表紙の60年と病院史

ページ範囲:P.8 - P.11

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第168回

【60周年記念座談会】今の病院が抱える課題―建築の視点から

著者: 今井正次 ,   河口豊 ,   友清貴和 ,   長澤泰

ページ範囲:P.70 - P.75

病院管理とともにスタートした病院建築

長澤 本日は『病院』誌の60周年を記念して,「今の病院が抱える課題―建築の視点から」をテーマに,座談会を企画いたしました.

 私は1970年代に厚生省の病院管理研究所にいた頃,病院管理の研究は旧態依然だった日本の病院を近代的・効率的なものにするために,戦後アメリカの指導によって始まったことを聞きました.病院建築計画研究は,東京大学の吉武泰水先生(『病院』1949年1巻2号に寄稿)の研究室に始まり,本日いらしている先生方の恩師である伊藤誠先生,柳沢忠先生,青木正夫先生,その他の先生方に引き継がれ,1954年には日本病院建築協会(現・日本医療福祉建築協会:JIHa)が発足しました.日本の病院建築の曙の時代と言えます.

 さて,先生方は,いつ頃から病院建築を意識されたのか,なぜ病院建築―この泥沼と言ってもよいかもしれませんが(笑)―に足を踏み込んだのか,何を問題視されていたのかをお聞かせ願えますか.

図説 日本の社会保障 医療・年金・生活保護・1【新連載】

日本の社会保障

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.78 - P.79

連載にあたって

 「医療崩壊」という言葉が,巷間,飛び交っている.しかし,崩壊は医療だけのことではない.年金も介護も崩壊の危機が叫ばれている.生活保護費削減も課題となっている.自由競争社会の中にあっての弱者救済策,社会不安を防ぐ対策である「社会保障」の崩壊は,わが国の国家として存続が問われる問題である.

 医療費が大きな問題になっていることを否定する医療関係者はいない.しかし,実際には,医療費問題は,個々の医療機関(病院,診療所)と支払機関(全国健康保険協会,健保組合,共済組合,国保組合など)の収支問題として議論されることが多く,「社会保障下における医療・医療費のあり方」「適切な医療を妥当な医療費でどのように実現するか」の具体的論議は,ほとんど行われていない.わが国における医師の技能集団である日本医師会は「国民のためのより良き医療制度をめざして」のタイトルを反復,主張している.しかし,基本は「低負担・高福祉」の域を越えるものではなく,現実的・具体的な提言には至っていない.

 本連載は,医療関係者が,医療・年金・介護・生活保護という社会保障の根幹に関わる問題を考える前に承知しておかねばならない「日本の社会保障」の経緯・現況・課題について,特に,社会保障に要する費用と財源を意識した資料の集約を企図したものである.わが国における社会保障下の医療,医療のあり方を考えるうえでの,1つの参考資料となることを期待したい.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・16

―「あなたの家にかえろう」配布数20万部突破<1>―感性を大事にしたもの作り~私が思うこと~

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.80 - P.81

在宅ホスピスケアを紹介する冊子

 2005年7月,(財)在宅医療助成 勇美記念財団から助成金をいただき,がんの在宅ホスピスケアという選択肢を広く世の中に知ってもらおうと,小冊子をつくることになった.

 制作メンバーは医師,看護師,ソーシャルワーカー,ケアマネジャー,大学教員からなる7名に,在宅ホスピスケアの経験者として僕が加わった8名(現在,メンバーの一部は入れ替わっている).リーダーは兵庫県尼崎市の開業医・桜井隆さん.冊子の特徴は複眼的視点で,様々な角度から家でのホスピスケアを紹介したいと考えた.具体的には「コンビニにも置けるもの」を目標にした.そのためには複眼的視点が必要となる.

リレーエッセイ 医療の現場から

無菌室のぬいぐるみ

著者: 石川春美

ページ範囲:P.83 - P.83

 「癒しの環境研究会」の講演会で,特殊繊維で作られた無菌室にも持ち込み可能なテディベアのぬいぐるみがあることを知り,もっと,病気の子どもたちが癒されるものが開発され広がってほしいと切に思いました.3年前に白血病で亡くなった娘,福美(当時8歳)が,担当医に泣きながら抗議していた姿が浮びます.

 「なぜ?どうしてプーさんを無菌室に入れちゃあ駄目なの?わたし 頑張っているよ.いっぱい,頑張っているよ.お家に帰れないのも,痛い治療も,1人で寂しいのも,怖いのも,いっぱい,いっぱい,我慢しているよ.わたし…これ以上 我慢できない.プーさんと一緒でなければ骨髄移植は嫌だ!」

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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