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文献詳細

雑誌文献

病院68巻1号

2009年01月発行

文献概要

特集 60周年記念号 温故知新―これまでの特集から振り返る

患者サービスと環境

著者: 広井良典1

所属機関: 1千葉大学法経学部総合政策学科

ページ範囲:P.52 - P.55

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患者の視点と医療

 雑誌『病院』の中で「患者の視点」あるいは「患者サービス」というテーマがどのように取り上げられ論じられているかは,日本の医療ないし医療政策において「患者」がいかに位置づけられているかを反映し,またはそれを先取りしている面を持っていて興味深い.同時にこのテーマは,患者サービスという話題にとどまらず,そもそも医療とは何か,あるいは「技術」「ケア」「科学」等とは何か,といったより大きな広がりを持っている.

 さて,特集記事の中で初めて「患者」に関する話題が取り上げられるのは,1964年23巻3号「患者への心づかい」である.この特集には「T.L.C」というサブタイトルがついており,これは「Tender Loving Care(患者を優しく親切に扱うこと)」を指している.特集の中では,当時の病院管理研究所長であり本誌編集主幹であった吉田幸雄1)の「T.L.C.への関心」という総論があり,医療における患者の位置づけの基本論として重要なものとなっている.ただし,特集の論文の中で扱われるテーマは,病院の「騒音」に関するものが2本あるほか,面会人の実態と管理に関するもの,病院におけるB.G.M等,現在とはやや異なるもので,時代を反映している感がある.また「患者の投書から見た病院サービスの分析」2)と題する論文は,現在に通じるテーマのように見えるが,内容はごく素朴なもので,やはり現在との関心の違いが浮かび上がる.全体としては,上記の「T.L.C」というサブタイトルが示すように,どちらかというと“施し”の対象としての患者といった面が強いと言えるかもしれない.

参考文献

1)吉田幸雄:T.L.C.への関心.病院23(3):17-18,1964
2)鈴木武徳,吉江余志子,吉田照男,白坂龍曠:患者の投書から見た病院サービスの分析.病院23(3):41-44,1964
3)今月の表紙(特集 待たせない病院).病院32(7):(目次頁),1973
4)若月俊一:病院に「患者の権利宣言」を掲示して.病院44(2):114-118,1985
5)木村利人,若月俊一:〔対談〕病院・コミュニティ・患者の権利とバイオエシックス.病院42(6):477-484,1983
6)関田康慶:外から見た病院の力:病院の力―医療環境構造の変化と利用者への対応.病院45(3):197-203,1986
7)特集趣旨 医療の新メニュー.病院46(7):(目次頁),1987
8)飯田亮,岩崎榮,坂上正道:【てい談】サービスとは―企業と病院.病院49(1):18-23,1990
9)南砂,北嶋孝,宮澤令幸,山口祐司,波平恵美子:病院のここが嫌い.病院50(9):746-750,1991
10)若月俊一:地域社会との交流を.病院50(9):764-768,1991
11)三浦聡雄,他(13名):【事例】病院のイメージアップ作戦.病院50(9):751-763,1991
12)大渡順二,中島みち,青柳精一,石原信吾:【座談会】病院医療への批判と要望.病院35(12):18-25,1976
13)大塚暢,他(9名):【アンケート】患者の声と病院.病院35(12):33-39,1976
14)斎藤芳雄:新潟県大和町における「死に場所づくり」.病院52(11):950-952,1993
15)山崎摩耶:死の看とりと長期療養の場の課題.病院52(11):954-957,1993
16)辻彼南雄:在宅医療サービスの互酬制を求めて.病院52(11):985-987,1993
17)近藤正晃ジェームス:なぜ「患者の視点」は必要か―医療の一元論的な主体者としての患者.病院64(11):878-882,2005
18)勝村久司:患者からみた「患者の視点の重視」とは.病院64(11):887-891,2005
19)清水太郎:エネルギー危機と病院.病院34(11):22-24,1975

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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