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文献概要
特集 60周年記念号 温故知新―これまでの特集から振り返る
患者サービスと環境
著者: 広井良典1
所属機関: 1千葉大学法経学部総合政策学科
ページ範囲:P.52 - P.55
文献購入ページに移動雑誌『病院』の中で「患者の視点」あるいは「患者サービス」というテーマがどのように取り上げられ論じられているかは,日本の医療ないし医療政策において「患者」がいかに位置づけられているかを反映し,またはそれを先取りしている面を持っていて興味深い.同時にこのテーマは,患者サービスという話題にとどまらず,そもそも医療とは何か,あるいは「技術」「ケア」「科学」等とは何か,といったより大きな広がりを持っている.
さて,特集記事の中で初めて「患者」に関する話題が取り上げられるのは,1964年23巻3号「患者への心づかい」である.この特集には「T.L.C」というサブタイトルがついており,これは「Tender Loving Care(患者を優しく親切に扱うこと)」を指している.特集の中では,当時の病院管理研究所長であり本誌編集主幹であった吉田幸雄1)の「T.L.C.への関心」という総論があり,医療における患者の位置づけの基本論として重要なものとなっている.ただし,特集の論文の中で扱われるテーマは,病院の「騒音」に関するものが2本あるほか,面会人の実態と管理に関するもの,病院におけるB.G.M等,現在とはやや異なるもので,時代を反映している感がある.また「患者の投書から見た病院サービスの分析」2)と題する論文は,現在に通じるテーマのように見えるが,内容はごく素朴なもので,やはり現在との関心の違いが浮かび上がる.全体としては,上記の「T.L.C」というサブタイトルが示すように,どちらかというと“施し”の対象としての患者といった面が強いと言えるかもしれない.
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