icon fsr

文献詳細

雑誌文献

病院68巻10号

2009年10月発行

文献概要

特集 医療費の配分を問う

子孫に誇れる医療を―将来世代の借金で医療を賄うことの愚かさ

著者: 坂野嘉郎1 近藤正晃ジェームス1

所属機関: 1特定非営利活動法人 日本医療政策機構

ページ範囲:P.827 - P.831

文献購入ページに移動
■議論されない負担の先送り

 将来世代の借金を積み増すことで,現在世代の医療を負担していく.このような無責任な政策が,日本の医療では20年近く続けられている.かつての日本人は,子孫によりよい社会を残すことを当然の責務として捉えてきた.仮によりよい社会を残せないとしても,せめて借金を残さない.そうした当たり前の道徳観が,現在の医療からは欠落している.

 医療の「世代間配分」を議論する時,通常は,高齢者により多く給付すべきか,子どもにより多く給付すべきかといった,現在の医療給付の配分が問題となる.医療資源が限られている以上,その給付をいかに配分すべきかは重要な論点である.しかし,本稿で取り上げたいのは,この給付の世代間配分ではない.あまり議論されることがない,負担の世代間配分,その中でも将来世代への負担の先送り問題に国民の注意を喚起したい.この負担の先送り問題こそ,日本の医療の最大の改革の先送り問題である.

参考文献

1)社会保障国民会議:最終報告付属資料,2008
2)増島稔,他:世代別の受益と負担―社会保障制度を反映した世代会計モデルによる分析.ESRI Discussion Paper Series 217,内閣府経済社会総合研究所,2009
3)国立社会保障・人口問題研究所2006年中位推計より筆者計算
4)総務省:家計調査報告(貯蓄・負債編)平成20年平均結果速報,2009
5)野村総合研究所:高齢者の金融資産の有効活用及び社会的責任投資等への資金流入の可能性に関する調査報告書,2006
6)日経ビジネスオンライン:ばら撒くよりも,カネを動かせ 「贈与税改正」発案者が語る経済危機対策,2009.4.15
7)荒川匡史:高齢者保有資産の現状と相続,LIFE DESIGN REPORT,2003年5月
8)明るい選挙推進協力ホームページ http://www.akaruisenkyo.or.jp/

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら