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文献詳細

雑誌文献

病院68巻11号

2009年11月発行

文献概要

特集 補完代替医療のこれから

医療人類学から見た補完代替医療の世界―ナラティブ・ベイスト・メディスンへの期待

著者: 辻内琢也1 中上綾子2 谷口礼2

所属機関: 1早稲田大学人間科学学術院 健康・生命医科学研究領域 2早稲田大学人間科学研究科

ページ範囲:P.919 - P.923

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 補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)が脚光を浴びていると言う.ではいったい“今・なぜ”CAMが注目されているのか? CAMに何が期待されているのか? 実際にCAMはどのように利用されているのか? はたしてCAMは信頼に値する医療なのか?

 筆者はかつて内科医・心療内科医として,東洋医学や各種心理療法を取り入れた臨床を行っていた.医学系大学院の博士論文として,糖尿病治療に対する気功健康法のエビデンスを立証する研究1)を行ったほど,CAMに魅力を感じていたのだ.しかし,CAMへの興味関心が高じて,世界中の様々な医療を研究してみたいという動機から,臨床を離れ医療人類学(medical anthropology)の道を歩み始めたところ,そこには“補完”や“代替”とは呼べないような,多彩な医療の世界が広がっていた.医師として病院やクリニックにいては決して見られないようなフィールドに遭遇したのである.

 本稿では,語り=ナラティブを重要視する医療人類学の立場から見た,CAMの世界を紹介していきたい.

参考文献

1)Tsujiuchi T, et al : The Effect of Qi-gong Relaxation Exercise on the Control of Type2 Diabetes Mellitus : A Randomized Controlled Trial. Diabetes Care 25(1) : 241-242, 2002
2)辻内琢也:民俗セクター医療をめぐる語り―その社会・文化・歴史的構築.江口重幸,他(編):ナラティブと医療,pp129-143,金剛出版,2006
3)辻内琢也,他:壮年期分科会・調査報告書,野村忍(編):「健康日本21所沢市計画」策定基礎調査・平成16年度調査報告書,pp61-94,早稲田大学人間科学学術院「健康日本21所沢市計画」委員会,2005
4)山下仁,他:日本における相補・代替医療の利用の現状と課題.病院 63(5):379-383,2004
5)Helman C : Culture, Health and Illness(fifth edition), Hodder Arnold, Oxford University Press Inc, 2007
6)Kleinman A : Patients and Healers in the Context of Culture : An Exploration of the Borderland between Anthropology, Medicine, and Psychiatry, University of California Press, 1980/大橋英寿,他(訳):臨床人類学―文化のなかの病者と治療者,弘文堂,1992
7)福井次矢:臨床医のための医療人類学.メディカル・ヒューマニティ 4(2):46-52,1989
8)辻内琢也,他:民俗セクター医療を利用する患者の社会文化的背景―医療人類学的視点による質的研究.心身医学 45(1):53-62,2005
9)谷口礼:補完代替医療を実践する医師たちの世界観に関する質的研究.早稲田大学人間科学研究科修士論文,2009
10)アンドルー・ワイル(著),上野圭一(訳):人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム.日本教文社,1993
11)斎藤清二:NBM(narrative based medicine)からみたFSS.日本臨床 67(9):1689-1694,2009
12)Mulrow, et al : Systematic reviews : critical links in the great chain of evidence. Annuals of Internal Med 126(5) : 389-391, 1997
13)Greenhalgh T : What Seems to be the Trouble? : stories in illness and healthcare, The Nuffield Trust, 2006/斎藤清二(訳):グリーンハル教授の物語医療学講座,三輪書店,2008
14)福井次矢:EBMへの誤解をとく;Editorial.EBMジャーナル 1(1):5-7,2000
15)辻内琢也:ポストモダン医療におけるモダン―補完代替医療の実践と専門職化.近藤英俊・浮ヶ谷幸代(編):現代医療の民族誌,pp183-224,明石書店,2004
16)辻内琢也:補完代替医療は近代医療の問題性を克服できるか―ポストモダンの中のモダン.現代のエスプリ 458(クリニカル・ガバナンス特集号):63-71,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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