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雑誌目次

雑誌文献

病院68巻12号

2009年12月発行

雑誌目次

特集 今後の医師養成と病院

巻頭言

著者: 大道久

ページ範囲:P.993 - P.993

 平成16年に導入された新医師臨床研修制度が,早くも大幅に見直された.新制度の運用に伴う齟齬を修正するための見直しというよりは,長く医師養成の拠点となってきた大学病院の急速な脆弱化がもたらした地域医療の破綻状況を,少しでも立て直そうとする意図が色濃い.今回の見直しの最大の眼目の1つは研修プログラムの弾力化であり,内科・救急・地域医療を「必修科目」,外科・麻酔科等の5科のうちから選択された2科を「選択必修科目」とし,2年目のほぼ1年間,将来専門とする診療科での研修を可能としている.

 さらに臨床研修病院の指定基準も見直され,研修の質を向上させるためとして,救急医療の提供,年間入院患者数3,000人以上,研修医5人に対して1人以上の指導医の配置など,研修病院にとってはハードルが引き上げられたと言える.また,研修医の地域的な偏在を是正するために,当該県の人口規模や県下の医学部入学定員割合に,面積当たりの医師数や離島人口を勘案する調整算定式を導入して,各都道府県の研修医募集定員の上限設定を行った.医師としての人格の涵養と基本的な診療能力の習得という当初の基本理念は変わらないとされるものの,わずか運用5年で初期臨床研修の路線を転換せざるを得なかったのは,長年にわたって医師養成数を抑制してきた結果であり,臨床研修と医師不足とは別の問題とする批判も根強い.

医師臨床研修制度の見直しと今後の医師養成の課題

著者: 堺常雄

ページ範囲:P.994 - P.998

 本稿を書いている現在(10月初旬),聖隷浜松病院では平成22年度後期(専門)研修医の面接試験の最中だが,1年半の研修を受けた医師が,人間としても,また臨床医としても成長していることが見受けられ,ある種の感動を覚えている.これは初期研修を当院で受けた医師,他院で受けた医師一般に言えることであり,医師臨床研修制度が必修化され,5年にして本来の目的が達成されつつあるというのが実感である.もちろん,自己評価や第三者評価を経なければ何とも言えないが,印象としてそうだということである.

医師養成・確保の現状と課題

著者: 杉野剛

ページ範囲:P.1000 - P.1003

■医師数の現状

 近年,医師国家試験の合格者は毎年7,600~7,700人程度であり,死亡等を除いても,医師の総数は毎年3,000~4,000人程度増加し続けてきている.その結果,人口当たりの医師の数も年々増加している(図1).一方,人口当たりの医師数を諸外国と比較すると,OECD加盟国の単純平均が人口1,000人当たり3.1人であるのに対し,日本は2.1人(平成18年)にとどまっている(図2).

 医師の総数が増加する中,診療科別に医師数の推移を見ると,平成10~18年にかけての8年間で,循環器科,精神科,整形外科などが特に増加する一方,内科(▲2,232人),外科(▲3,287人),産婦人科(▲1,324人)の医師数が大きく減少している(表1).

新卒医師の研修先決定要因

著者: 川村顕

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 2004年度から新医師臨床研修制度とともに導入された医師臨床研修マッチングシステムは,新卒医師と臨床研修病院との望ましいマッチングを実現する一方,新卒医師がどのような要因で臨床研修病院を選択したかについての全般的な傾向は,必ずしも明らかではない.そこで本稿では,限られたデータではあるが新卒医師の選択要因について実証分析を行う.以下では,新卒医師の選択に関する現状を概観したうえで,2008年でのマッチング結果等を用いた臨床研修病院の選択要因に関する,筆者の行った推定結果を紹介する.なお,本稿は川村(2009)1)を基に加筆修正したものである.

医師後期専門研修のあり方と病院の役割

著者: 渡邊清高 ,   土屋了介

ページ範囲:P.1010 - P.1014

 今日の医療が抱えている問題の多くが,医師の研修,養成のあり方の議論に結びついている.本稿では筆者らが関わった平成20年度「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」(以下,研究班)での議論を通じて,専門医・家庭医養成の見直しの方向性のポイントと,病院の位置づけ,役割について概説したい.

 卒後教育の充実に向けた改革こそが,医療が抱える多くの問題の解決に導くものであり,そのためには医師の自律と国民との対話が不可欠である.具体的には,①家庭医・総合医,専門医の専門性を確立し,②地域における医療体制における位置づけを明確にすること,加えて③説明責任,プロセスの透明化,認証のための質の保証である.専門病院,大学医学部,地域病院,診療所など様々な診療形態からなる医療関係者に加え,研修医や医学生,支払い基金,行政機関,地方自治体,地域住民などの参画により,医師養成の仕組みを構築する「公的な独立機関」として,「卒後医学教育認定機構(仮称)」の設立を提言した.

家庭医の養成と病院の役割

著者: 津田司

ページ範囲:P.1015 - P.1019

 1年間のインターン制度が身分保証や経済的保証がないなどの理由で1968年に廃止され,同時に卒後2年以上の臨床研修を行うよう努力することが定められた.これで医師としての身分は保証されたものの,労働面や給与面での問題が多かったので,2004年から現在の新臨床研修制度がスタートした.しかし,研修医が地方から都会に集中して地域医療の崩壊が進行したので,2010年より研修期間を実質1年間に短縮し,2年目から志望科で研修させる研修プログラムを実施しやすくして地域の医師不足に対処することになった.並行して,医学部の定員を1.5倍に増やすことで医療崩壊を食い止めようとしている.

 これら2つの施策によって本当に医療再生ができるのであろうか.筆者は大変難しいのではないかと考えている.なぜなら,現在の医療崩壊は2004年の新臨床研修制度の開始が引き金にはなったものの,実はそれ以外の要因のほうが大きいのではないかと考えているからである.

【座談会】今後,病院は医師養成にどうかかわっていくか

著者: 小山信彌 ,   今明秀 ,   高橋俊雄 ,   吉新通康 ,   大道久

ページ範囲:P.1020 - P.1025

大道 このたび,2004年から始まった新医師臨床研修制度が見直され,基本理念は変わらないとされているものの,運用はかなり変わったという印象があります.

 まず,年間入院患者数や指導医の配置など,臨床研修病院の指定基準が実質的に引き上げられました.これは地域の病院が今後,医師養成にどうかかわっていくかという観点から,大きな出来事と言えると思います.また,研修医の地域的偏在の議論を受けてか,受け入れ定員についても上限が設定されました.経過措置もあるので,すぐに大きな変化があるとは思いませんが,やはり新しい大きな流れだと思います.

【各県の医師確保対策】

【岩手県】地域医療の確保に向けた いわての取り組み―みんなの力を医療の力に!

著者: 野原勝

ページ範囲:P.1027 - P.1029

 岩手県は本州の北東部に位置し,東西約122km,南北約189kmと,四国4県に匹敵する広大な県土を有し,その約77%は森林で覆われている.県庁所在地である盛岡市から沿岸部の主要都市までは,約100kmの距離があり,車で移動する場合は,約2時間から2時間30分を要する.このような地理的条件の中に,2次保健医療圏が9圏域ある.

【石川県】石川県における地域医療確保の取り組み

著者: 木村慎吾

ページ範囲:P.1030 - P.1031

 石川県における人口当たりの医師数は年々増加傾向にあり,全国平均に比べて高い水準にある.しかし,能登北部医療圏等の勤務医の減少,産婦人科等の診療科を選択する医師の減少,救急医療を担う医師の負担の増加など,様々な課題が見られている.

 このため,石川県では平成20年度に「地域医療推進室」を設置し,県内の大学,臨床研修病院,医師会等と連携しながら,医師確保対策に取り組んでいる(図).

【三重県】“地域医療医”の育成と定着に向けた新たな取り組み―「ポジティブ・スパイラル・プロジェクト」の推進

著者: 加藤和浩

ページ範囲:P.1032 - P.1034

■三重県における医師不足の現状

 三重県の人口10万人当たりの医師数は178人で,全国平均の206名を大きく下回り,全国第37位と低い水準にある.地域別に見ると,へき地や離島を擁する東紀州,伊勢志摩地域はもとより,北勢,伊賀地域など都市部においても医師数が県内平均を下回る状況となっている.医療機関別では,診療所の医師数がほぼ全国平均の水準にある一方で,病院の医師数は全国第42位と低位にあり,県内全域における病院勤務医の絶対数をいかに増加させるかが,今後の医師確保対策における重要な課題である.

 また,本県唯一の医師養成施設である三重大学医学部では,平成16年度の医師臨床研修制度施行以来,附属病院に残る医師が大幅に減少し,県全体の臨床研修医数も,増加傾向にあるものの,募集定員を大きく下回っている.

 三重大学医学部の定員増,さらに地域枠が拡大される中で,県内出身者を中心に臨床研修残留率を向上させるとともに,県外からも研修医を呼び込む取り組みが求められている.

【島根県】島根県の医師確保対策の概要

著者: 木村清志

ページ範囲:P.1035 - P.1037

■背景

 島根県は東西に細長く,海岸沿いの狭小な平地を除いては大半が山間地域であるとともに,隠岐諸島という離島を持つ.以前から離島,中山間地域においては医師不足という課題を抱えていたが,近年では,市部の中核的な病院においても様々な診療科で医師不足となり,診療科としての機能低下にとどまらず,救急医療の機能も低下している.

 そういった状況の中で,島根県では1992年の「島根県へき地勤務医師確保協議会」設置を始めとして,地域医療支援のための制度等を創設してきた.2006年度には,医師を室長とする医師確保対策室を新設し,現役の医師の招聘を強化するとともに,将来の地域医療を担う医師を育てるために,大学とそれまで以上に協力・連携する取り組みを開始した.現在,島根県では地域医療を支える医師を「呼ぶ」「育てる」「助ける」を3本柱として取り組んでいる.

グラフ

教育の充実が地域医療を救う―総合病院 水戸協同病院・筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター

ページ範囲:P.981 - P.984

 茨城県の中央部に位置する水戸協同病院(以下,当院)は,大正8年から続く地域医療の中心的存在として,JA(全国農業協同組合連合会)茨城県厚生連が運営している.東京に近い茨城県南部と違い,北部から中央部にかけては地域住民の高齢化とともに急速に医師不足が進んでおり,現病院長の平野篤医師が赴任してきた平成14年頃には医師が疲弊しきっていた.平野院長は当時を振り返って「医師が現場を去る一番の原因はバックアップ体制がないこと.周りに支援してくれる医師がいないと,医師は自分の専門以外の患者さんを診ないようになる.それでは地域医療を続けていくことはできない」と語る.病院存続のために整形外科やリハビリテーションに特化した専門病院に移行するしかないかという瀬戸際にも立たされたが,JAの社会貢献という精神にのっとり,「地域の高齢者に必要なケアをやめるわけにはいかない」と,総合病院として地域に根差した医療を続ける道を選んだ.

連載 ロボット技術と医療・介護・福祉・11【最終回】

【インタビュー】人とサイバニクス

著者: 山海嘉之

ページ範囲:P.986 - P.988

― 医療・福祉分野は,特に人とロボットが密接にかかわる分野だと思いますが,山海先生が研究されている「人・機械・情報系の融合複合」としての新しい研究領域,“サイバニクス”とは,どのようなものなのでしょうか.

山海 サイバニクスは,サイバネティクス,メカトロニクス,インフォマティクスという学術分野を中核とし,そこに脳神経科学,行動科学,ロボット工学,IT,システム統合技術,生理学,心理学,さらには倫理や法律,安全技術までが1つとなった学術分野です.

 通常,学術―例えば工学や医学などですが―は細分化され,他の分野と接点をあまり持たない,細く,深いものとなっていきます.その結果,目的を達成するための学問ではなくなってしまう.でも,「何のための」が抜けたまま,研究や技術だけが独り歩きするのは,どう考えてもおかしいわけです.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・40

MSWコーディネート機能の入退院モデル分析―連携モデル分析と平均在院日数分析

著者: 関田康慶

ページ範囲:P.1039 - P.1043

 本稿では,2つのMSW連携・退院支援モデルについて検討,分析を行っている.第1のモデルでは,病院の前方連携,院内連携,後方連携の充実度の有無を組み合わせたモデルの連携効果について検討した.第2のモデルでは,MSWコーディネート係数モデルを用いて,MSWのコーディネート機能が平均在院日数の短縮にどのように影響を及ぼすかについて分析した.第1のモデル検討結果として,前方連携,院内連携,後方連携の充実度の組み合わせによるモデルの連携効果特性が示された.特に退院支援機能を果たす後方連携機能の重要性が明らかになり,MSWのコーディネート機能の重要性が示唆された.第2のモデル分析結果として,延入院患者数が一定で平均在院日数を短縮する場合,平均在院日数が短縮化されるに伴い,MSWのコーディネート機能の充実(MSWの配置人数の増加)が一層必要になることが判明した.また平均在院日数の短縮は,MSWや職員の業務量負担を2乗のレベルで増加させることを示した.

広がる院内助産所・助産師外来・7【最終回】

【座談会】院内助産所・助産師外来のこれから

著者: 飯田俊彦 ,   河合蘭 ,   村田佐登美 ,   福井トシ子

ページ範囲:P.1045 - P.1050

福井 今,院内助産所,助産師外来が注目を集めています.『病院』ではこれまで6回にわたって「広がる院内助産所・助産師外来」という連載を続けてきましたが,本日はその最終回として,病院のお産にそれぞれの立場から関わっている皆さんにお集まりいただきました.最初に,自己紹介も兼ねて,各施設での様子を簡単にお話しいただこうと思います.

飯田 済生会宇都宮病院の産婦人科長をしています.当院では昨年11月に院内助産所――私たちはバースセンターと呼んでいます――を立ち上げ,昨日までにここで出産した妊婦さんは,74人になりました.実際には分娩途中,あるいは妊娠途中の健診や分娩予約の段階でバースセンターの対象外となった人たちもいますので,最終的に残った人が74人という状況です.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・27

―映画人が見つめる病の世界(3)―簡単にわからないもの

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.1052 - P.1053

映画『おくりびと』

 本木雅弘さん,広末涼子さん主演.脇を務めるのが山崎努さん.監督は滝田洋二郎さん.第81回アカデミー賞外国語映画賞受賞作品である.観たいなぁと思っていたら,わが町の小さなホールで,800円で鑑賞できると知った.DVDなら3,000円以上,映画館に行けば1,800円する.「これは安い」と,喜び勇んで会場に足を運んだ.

 ところが,会場は早朝から長蛇の列.ゾッとするような光景だった.ホールの改札から階段,エレベーターとつながり,外の歩道へはみ出した人の列が延々と続く.聞けば3時間半待ちという.そして,並んでいるのはお年寄りばかりで,その会話たるや「あそこのおじいさん,少し前に特養で死なれてねぇ」「一緒に行こうと山田さんを誘ったけれど,歩くのがつらいとかで…」と,井戸端は深刻な話題ばかり.並んではみたが,その中で3時間も耐える根性がなく,映画館へ行くことにした.

図説 日本の社会保障 医療・年金・生活保護・12【最終回】

日本の社会保障―今後の課題

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.1054 - P.1056

 戦後64年,正確に記載するならば,1947年5月施行の日本国憲法において「社会保障」の用語がわが国に初めて登場して以来62年,この間,わが国の社会保障は目覚ましい充実を遂げ,欧州先進諸国に比して遜色ない状況に至っている.「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(憲法第25条-1)」は実現していると言えよう.

 この社会保障の充実を支えたものは,1990年までは,高度経済成長(1955~1973年)に代表される目覚ましいわが国の経済発展であった.しかし,1991年以降,増加し続ける社会保障費を賄ってきたのは,国の債務(借金)であることは強調されねばならない.1991年,初めて赤字国債が発行され,2009年度末の日本の長期債務は816兆円(対GDP比168%)と世界の先進諸国の中で最悪の財源状態を来たすと算定されている.「高負担・高福祉」か「低負担・低福祉」かの問題に決着をつけ,「低負担・高福祉」体制,債務の膨張体制からの脱却が必要である.

病院管理フォーラム ■DPCを軸とした病院の経営管理・7

DPC病院進化論⑤―第3レベルの病院になるための必要条件(3)人事考課制度と変わることを後押しするスタッフ

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.1058 - P.1059

●第3レベルになるための必要条件

 10,11月号では第3レベル(表1)の病院の例として相澤病院を取り上げ,これまで表2の(1)(2)について述べてきた.今月号では,表2の(3)(4)について述べる.

●変わるために必要なこと

 山本五十六海軍大将の「やってみせ,言って聞かせて,させてみて,褒めてやらねば人は動かじ」という名言が示すように,人はなかなか指示通りに動かないものである.まして「長年行ってきた行動を変えてもらう」のは,単に指示通りに動いてもらうよりも,さらに難しい.多くの人は,他人からの指示で自分の行動パターンを変えることを基本的に好まない(できれば変わりたくない)からである.

■経営品質・6【最終回】

JHQCとクオリティクラス認証

著者: 真野俊樹

ページ範囲:P.1060 - P.1062

●日本版医療MB賞のチャレンジ

 最終回となる今回は,経営品質という考え方を広めていくための筆者らの取り組みを紹介したい.最初に,連載の第1回の要点を振り返る.

 筆者は日本生産性本部とともに,米国のマルコム・ボルドリッジ賞(MB賞)に端を発する経営品質賞において,医療における経営品質とは何か,あるいは経営品質賞を他の企業と同様に立ち上げることができるかどうか検討してきた.前者は未だ模索中であるが,後者の答えは,イエスでありノーでもあるが,少しずつ整理がついてきている.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第179回

アルペンリハビレッジ―医療法人社団アルペン会 アルペンリハビリテーション病院・通所リハビリテーション あいの風

著者: 藤田修功

ページ範囲:P.1063 - P.1067

■ロケーションと施設概要

 富山市街地にほど近い風光明媚な田園風景を残す計画地は,北アルプス立山連峰を遠景にかかえ,雄大な山々が語りかける.春夏秋冬の四季の変化を感じさせるこの地は,日本海にも近く,名所旧跡や文化芸術施設・温泉にも恵まれた地である.

 施設は,大きく分けて,外来および60床の病棟を持つリハビリテーション病院ゾーンと,料理を楽しむ「ダイニング・キッチンエリア」,リビングルームや食堂・厨房から成る「ぬく森ホール」,リハビリをサポートする「マシンエリア」,趣味の教室となる「園芸室」「木工室」「陶芸室」等を持つ通所リハゾーンの2つの施設で構成されている.

リレーエッセイ 医療の現場から

患者からみた医療スタッフの動線

著者: 堀エリカ

ページ範囲:P.1069 - P.1069

 「病院」,それは病の不安を持った人たちが訪れる場所です.

 「どんな病気なのかなぁ」「手術をすることになったら怖いなぁ」などといった思いや緊張を胸に,患者さんは病院の門をくぐります.

 病院の中に一歩足を踏み入れると,多くの患者さんにとって,そこは“異次元の世界”.鼻をつく消毒液の“匂い”,医療器具の無機質な“音”,そして自分が病院にいることをいやが上にも実感させる医療スタッフの“白衣”….病院という組織に属する者には日常でも,患者さんにとっては非日常であることから,ただ病院にいることさえ,精神的な負担を感じます.そのため,診察順が回ってきても,疲弊感や緊張感から,言いたいことがうまく言えないまま,診察が終わってしまう人も多いようです.私たち医療者は,日常業務が多忙になると,こうした患者さんの心理状況を見逃しがちになります.私自身を含め医療者や病院への提言として,①受付から診察前,②診察時,③診察後の3つのステージごとに,「スタッフの動線としてこれだけは注意してほしい」と,患者さんからよく指摘されるものを紹介したいと思います.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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