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雑誌目次

雑誌文献

病院68巻2号

2009年02月発行

雑誌目次

特集 医療統計の再構築に向けて

巻頭言

著者: 河北博文

ページ範囲:P.97 - P.97

 信頼できる社会を築き運営する中で,医療は国家のあり方の重要な要素の1つである.国家統計の見直しが進む中,医療に関しても統計の整理とあり方を見直し,データに基づき納得性の高い医療政策を導き出す必要がある.

 平成19年5月23日に公布された改正統計法第一条には,統計の目的が書かれている.「この法律は,公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ,公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより,公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り,もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする」とある.統計に関して,生活者を起点にして,学会や政策担当者などの知見を活かした広い議論がなされる必要がある.そして,統計は明確な目的のもとに正確性,継続性,国際性,情報の保護・開示性などが保障されたうえで,体系的・計画的に整備され,国民生活の向上や国家のあり方に活用されることが期待される.

期待される医療統計のあり方

著者: 井伊雅子

ページ範囲:P.98 - P.102

 日本の公的統計制度は60年ぶりの大改正を行っている.2007年5月に全面的に統計法が改正され,同年10月には公的統計整備の司令塔としての統計委員会が発足した.新統計法は本年4月より施行される.この小論では,統計法改正の背景やその目的,そして統計委員会の役割に関して概観した後,医療に関する統計を新統計法の下でどのように整備,体系化していくべきか,いくつか問題提起を行いたい.

厚生統計を医療政策にどう反映させるか

著者: 伏見清秀

ページ範囲:P.104 - P.107

 近年の政府の厳しい医療費抑制政策の影響で,わが国の医療提供体制は崩壊の危機にある.特に急性期医療においては,医療従事者の犠牲的な労働によって地域の医療が保たれている地域も多い.このような厳しい状況になってしまっている原因の1つは,医療の実態が正確に把握されていないことにあると考えられる.医療問題のような複雑な課題の解決には,実態の正確な把握とそれに基づく多くの知恵の結集が必要であるが,その基礎ができていないのである.例えば,近年問題となっている医師不足に関して,どの地域にあと何人の医師が必要かを示す具体的なデータはない.看護師数や病床数についても同様で,客観的な数値に基づく検討ができていない.

 厚生行政の基礎となる情報が,厚生統計である.本稿ではわが国の厚生統計の概略を示すとともに,それらの情報の意義と厚生統計の抱える問題点を考察する.さらに,厚生統計の利用促進によるエビデンスに基づく医療施策のあり方を示したい.

国際基準としての日本の医療費―OECD国際基準のSHA

著者: 満武巨裕 ,   石橋洋次郎 ,   福田敬

ページ範囲:P.108 - P.112

OECD国際基準のSHA

 「日本の医療費のGDPに占める割合は2005年では8.0%,米国は15.3%,日本同様の社会保険方式をとっているフランスでも11.1%,ドイツは10.7%であり,日本の割合は欧米に比べて少ない」といった医療費の国際比較データが,施策立案のための基礎資料として,また医学,公衆衛生,社会保障,医療経済の研究資料としても幅広く活用されている1).医療費をはじめとする国際比較データの多くが,OECD Health Data2)(以下,ヘルスデータ)から引用されている.ヘルスデータはCD-ROMや近年ではインターネット(有料)でも利用可能となっているデータベースで,OECD(Organization for Economic Co-operation and Development;経済開発協力機構)加盟国の医療の質や総保健医療支出をはじめとする様々な健康保険分野のデータが含まれている.

 だが,冒頭のヘルスデータにおける医療費は,日本の厚生労働省が推計・公表している「国民医療費」3)とは異なる.例えば,2005年度の国民医療費は約33.1兆円と発表されているが,ヘルスデータでは約41.0兆円(総保健医療支出)となっており,約2割高くなっている.

電子カルテ・電子請求を政策に反映させる

著者: 亀田俊忠

ページ範囲:P.113 - P.117

はじめに

 医療問題は各国と同様に日本においてもきわめて重要な政策課題であるが,これまで,ともすれば政治的駆け引きの具になるなど短期的な議論に終始し,国民の要望をふまえ,長期的視点に立った客観的な政策決定が行われてきたとは言えない状況である.

 その背景の1つとして,これまで実際の診療に関するデータをシステマティックに収集,活用することができず,データの裏付けがないまま,行政および利害関係者間での折衝により政策決定が行われてきたことが挙げられる.

 一般に,医療をコントロールするための政策は,需要側(患者側)もしくは供給側(医療側)に対して,規制およびインセンティブを与える形をとる.前者には公的保険のカバー範囲や自己負担の設定方法,ゲートキーピングなどアクセス規制の有無などが相当し,後者には医師をはじめとする人的資源,病床や医療機器などの設備資源,医療技術などに対する規制やインセンティブの設定が挙げられる.中でも,診療報酬の支払い方式や支払額は,医療者の行動に直接大きな影響を与える.

 これらの政策は本来,明確なビジョンと具体的な目標を設定したうえで立案施行され,結果についての客観的な評価に基づいて改善されていくことが望ましい.そのためには,政策の影響を把握するための医療実態データ,特に医療現場における診療データをできるだけ即時的に収集分析することが必要であり,その仕組み作りを進めることが課題となっている.

 このような状況の中で,OECDにより1999年から3年間,加齢に伴う疾患に焦点を当てた医療システムの国際比較プロジェクトが行われ,筆者らも参加した.このプロジェクトは,具体的に乳がん,脳卒中,虚血性心疾患などを取り上げ,参加20か国における,医療政策や制度,疫学も含めたマクロレベルの分析,診療行為やアウトカム,医療費などのミクロレベルでの分析(診療行為と結果,報酬,コストなどの定量的データの比較研究)の各視点から比較研究を行い,結果を各国の医療政策に反映させるというこれまでにないユニークな目標を持ったものであった.

 プロジェクトでは,収集すべき共通のデータフォーマットが設定され,各国ごとにデータ収集が行われたが,日本における作業は,特にミクロレベルのデータ収集において難航を極めた.かろうじて過去に研究者らにより個別に行われてきた疫学研究の成果と,有志の病院グループによるベンチマーキングプロジェクトであるVHJ-QIP(Voluntary Hospitals of Japan Quality Indicator Project)のデータを利用した報告があったが,これらは日本全体のデータを代表しているとは言い難いし,母集団が異なる寄せ集めのデータであったため,データ間の関連付けを行うことも不可能であった.その結果,プロジェクトの成果の1つとして,診療情報と医療費情報とを連携させたデータベースが施設および入院外来の区別を超えて構築されれば,種々の健康・医療関連の行政統計の構造化と併せて,医療介入の費用とパフォーマンスの指標化の評価研究がなされうること,発症・治療・治療の成果という一連の情報と政策との関係の解析をも可能にすべく各種評価指標算出を進めうること,といった発展の可能性が示され,個人情報保護の体制の確立とともに,このようなデータベース構築を国レベルで検討する重要性が見出された.

 その後数年が経過し,これらの目標に向けての基盤整備に,一定の前進が見られる.具体的には,電子請求の義務化,電子カルテの普及,DPCの導入拡大,特定健診・保健指導制度の実施などにより,これまでの紙ベースの診療記録および請求では不可能であった,全国規模の診療データを電子的に分析可能な形で収集することが,ある程度可能になってきたのである.

 さらに,2008年度より,がん,脳卒中,虚血性心疾患,糖尿病など4疾患5事業に着目してミクロレベルのガイドラインを含む地域医療計画を策定し,実施状況をモニターしようという政策が導入された.また,国民1人ひとりの生涯にわたる社会保障データを一元化しようという議論も始まっている.

 このような状況の中で,本稿のテーマは,電子カルテ化,電子請求化によりどのような統計がとれるようになるか,そしてそれを医療政策に反映させることは可能か,そのためにはどのような取り組みを進める必要があるかなどを考察することである.

【事例】電子カルテの経営への利用

医療情報の活用と経営支援

著者: 岩渕勝好 ,   平川秀紀

ページ範囲:P.118 - P.121

 診療報酬の圧縮により,病院経営を取り巻く外部環境は悪化の一途をたどっている.そのため,病院の内部環境を適切に把握する必要があり,その方法として診療材料管理と原価計算が挙げられる.かつては,両者とも専門部署が時間をかけてknow howとして集積し,理解も訓練を受けたもの以外困難であった.しかし,電子カルテを中心とした医療情報システムの利用により,データの取得,解析が以前より容易にできるようになっており,管理職層における病院活動の効率性,問題点の評価に耐えるようになってきている.

 本稿では,電子カルテシステム(医療情報システム)からの診療材料管理,原価計算の実施とDPCとの関連について論じる.また,リスク対策としての診療プロセス評価の例を提示する.

医療情報システムと病院経営

著者: 松波己

ページ範囲:P.122 - P.124

 手稲渓仁会病院は1987年12月に開設された病床数547床の急性期総合病院である.24診療科,医師数213人,職員約1,300人,新型救命救急センター,ドクターヘリ基地病院,臨床研修病院などを担い,隣接する10診療科を有する手稲渓仁会クリニックと合わせて「手稲渓仁会医療センター」と呼称している.また,DPC対象病院であり,7対1看護基準を取得.電子化パスを採用し,パス数200,パス利用率45%となっている.2007年度の病院実績は平均在院日数10.8日,手術数6,756件,救急車搬送台数4,116台,ドクターヘリ出動要請件数485件,病床稼動率は91%である.

 2000年5月,手稲渓仁会クリニックを開設するにあたり,電子カルテ導入に踏み切った.当初は外来診療のみの電子カルテから,診療支援システム,看護支援システム,オーダリングシステム,クリニカルパスシステムへと徐々に拡大,浸透,発展させ,部門システム,医療情報ネットワーク,経営管理,物流などとの接続,連携を進めながら現在に至っている.

当院の統合医療情報システムが病院運営・経営に及ぼした影響

著者: 松原要一 ,   菅原稔 ,   佐藤智昭

ページ範囲:P.125 - P.127

 当院は平成11年度に新病院の実施設計ができ,創立90周年にあたる平成15年7月1日に新病院へ移転,開院した1)

 当院は平成18年の6市町村合併で人口約10万人から16万人になった地方都市の市立病院(520床)で,新病院計画の段階で,財政能力と資金面からその経営は容易でないと考えられていた.また,対象人口16万人に対して当地区唯一の急性期基幹病院のため,患者数が多く医師不足で,もともと非常に忙しい病院であった.加えて,医療費抑制政策による診療報酬のマイナス改定や,平成16年度からの新医師臨床研修制度による勤務医不足の増悪が懸念されていた.したがって,新病院の起債の返済も含めた経費増大は経営的に容易でなく,市立病院としての存続は,基本計画では困難と思われた2)

病院経営と電子カルテシステム

著者: 吉田博 ,   中島暢昭

ページ範囲:P.129 - P.131

 病院の基幹システムたる電子カルテシステムおよび周辺部門システムを一括導入すると現在でも数億円規模の投資となり,この金額は病院経営に非常に大きなインパクトを与える.大きなインパクトのある投資である以上,なぜ電子カルテシステムの導入が必要なのかということを病院経営のトップマネジメントがどのように捉えているが重要である.オーダリングシステムと違い面倒な転記作業を廃止できる,クリニカルパスなどにも対応した高度なオーダリング機能を備えている,あるいはシステム導入で得られる二次的な統計データや帳票類など利用が容易になる,などの表面上の効果に目が向きがちであるが,その投資額が高額であるがゆえに電子カルテシステムの導入に関する基本的戦略・達成目標の設定を見誤れば,病院経営を左右する事態を招きかねない.

 当院(19診療科,330床)では2003年12月にノンカスタマイズ型電子カルテシステムの新規導入および周辺部門システムの新規導入・更新を行った.その経緯も含め,当院におけるIT投資に関する基本的なスタンスを記述したい.

グラフ

Ai×解剖―筑波メディカルセンター病院 放射線科・病理科 筑波剖検センター

ページ範囲:P.85 - P.88

 筑波メディカルセンター病院は,1985年つくば科学万博時の救急医療と,人口が急増する茨城県南・西部の救急医療を目的に開設された.当時の大橋教良・救命救急センター長は救急外来で解剖の承諾を得る困難さから,死因特定のための死後CTを通常業務として開始.現在,当院では来院時心肺停止状態の患者で心肺蘇生術を施行するも死亡したケースのほぼ全例に対して,死後CTを施行している(年間100例前後,外傷:非外傷=1:3).

 当院には1986年県の補助事業として筑波剖検センターが併設され,非犯罪性異状死体の承諾解剖(通称,行政解剖)を行っている.承諾解剖は年間50件前後,病理解剖は年間10件前後であり,法医学医師と病理学医師が共同で施行している.

連載 ロボット技術と医療・介護・福祉・1【新連載】

病院内自律搬送ロボット「HOSPI」

著者: 上松弘幸

ページ範囲:P.90 - P.91

 病院内には,薬剤・検体・X線フィルム・医用材料など様々な物の搬送業務がある.これらの搬送業務を機械に任せ,人は人にしかできない業務に専念することで,患者サービスの向上や経営の合理化を進めることを狙い,病院内自律搬送ロボット「HOSPI」を開発した.

〈続〉基本からわかる医療経営学・10

病院における情報システムとオペレーション

著者: 森川富昭

ページ範囲:P.142 - P.146

病院情報システムの背景

1.病院情報システムの推進

 厚生労働省は平成13年に「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を公表し,病院ITの導入を推進してきました.これは,情報化が医療の将来に大きな影響を与えるものであることを踏まえ,これを国として戦略的に進めていくことが,きわめて重要であるという考えからです.そして,医療情報システム構築のための達成目標を,電子カルテとレセプト電算処理システムに関して作成しました.

 電子カルテの達成目標は,平成16年までに全国の2次医療圏ごとに少なくとも1施設は電子カルテシステムの普及を図り,平成18年度までに,全国の400床以上の病院の6割以上,全診療所の6割以上に普及させることです.また,レセプト電算処理システムは,平成16年度までに全国の病院レセプトの5割以上に普及させ,平成18年度までには7割以上に普及させることを達成目標としています1)

続クロストーク医療裁判・13

相当程度の可能性-再論―拘置所勾留中脳梗塞発症事件―最高裁平成17年12月8日判決の事例から

著者: 古谷真良 ,   溜箭将之 ,   早坂典洋

ページ範囲:P.147 - P.153

 本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.今回は,前回の連載第10,11回で取り上げた相当程度の可能性の問題について,その後出された平成17年の最高裁判決を素材に再論する.本件は,東京拘置所に勾留されていた者が脳梗塞を発症し重大な後遺症が残ったことについて,外部の医療機関に適切な時機に転送されていれば,重大な後遺症が残らなかった「相当程度の可能性」があったか否かが問題となった事案である.最高裁は,こうした「相当程度の可能性」があったとは言えないとして,原告の請求を認めなかった高裁の判断を維持したが,判決をした5名の最高裁判事中2名の反対意見が付される一方,多数意見(3名)中の2名がこの反対意見に対する反論的な補足意見を付している.1回目のCT撮影の時点(脳に低吸収域が認められる)やそれ以前に血栓溶解療法の適応があったか否かが重要なポイントとなっている.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・30

患者・家族の態度・行動変容をもたらす心理社会的アプローチ

著者: 和田光徳

ページ範囲:P.154 - P.157

 医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)の働きの1つに,心理社会的アプローチがある.それは「自己決定」という原則に支配されるが,「自分で決める」ということは,単純な意思表明を意味するものではない.それは,その人が,それまでの周りとの関わりの中で育んだ“こころ”の在りよう(心理)と,「今,ここ」の関わり(社会)の中で,相対的に帰結する過程である.本稿では,表面上,手術を拒否するという意思を表明した2人の患者について,MSWが全く対照的とも見える「関わり方」を行った結果,患者にどのような変化が見られたかを紹介する.さらに在宅ケアへの支援事例について,MSWの心理社会的アプローチの結果,患者・家族の気持ちが変化し,医療を主体的に選択するに至ったケースを提示する.

図説 日本の社会保障 医療・年金・生活保護・2

社会保障費の増加状況

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.158 - P.159

社会保障費の定義・範囲

 ILO(国際労働機関)が国際比較上定めた社会保障の基準(1949年)によると,社会保障費とは以下の3基準を満たすすべての制度に基づく費用を含むものとされている.

1.制度の目的が,次ぎのリスクやニーズのいずれかに対する給付を提供するものであること.

 ①高齢,②遺族,③障害,④労働災害,⑤保健医療,⑥家族,⑦失業,⑧住宅,⑨生活保護,その他

2.制度が法律によって定められ,それによって特定の権利が付与され,あるいは公的,準公的,若しくは独立に機関によって責任が課せられるものであること.

3.制度が法律によって定められた公的,準公的,若しくは独立に機関によって管理されていること.あるいは法的に定められた責務の実効を委託された民間の機関であること.

 わが国の社会保障費の算定範囲も,ILOの基準に従って行われている.

DPC時代の医療経営管理塾・8

調整係数の決め方―既に実施病院になっている場合

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.160 - P.161

 A病院は,平成16年に準備病院に応募し,平成18年にDPC実施病院になった.診断群1の患者のみを診療する専門病院であり,毎月200人の患者がコンスタントに入院する.全ての患者に同一の診療内容を提供し,全ての患者は5日間入院,DPCの包括部分(入院基本料,検査,画像診断,投薬,注射など)は,DPCの調査期間中の出来高払い換算で毎日1.8万円(1,800点)発生すると仮定する.

 平成18年度の診断群1の診療報酬点数表は表1のとおりであり,新規にDPC実行病院になった病院の調整係数は式1により計算される.

 

〈問1〉A病院の平成18年の調整係数を計算せよ(小数点第4位まで).

 A病院はDPC実施病院になった後も,診断群1の患者のみが毎月200人の患者がコンスタントに入院し,以前と変わらず全員5日間で退院した.一方で,以前は入院中に行っていた検査を外来で行い,ジェネリック医薬品を導入するなどして,実施病院になる以前の出来高払い換算で毎日1.8万円(1,800点)であったDPCの包括部分(入院基本料,検査,画像診断,投薬,注射など)の医療内容を,1.65万円(1,650点)相当までスリム化した.

 

〈問2〉A病院が,以前と同様の出来高払い換算で毎日1.8万円(1,800点)相当の医療を行い,出来高で支払いを受ける場合と比較し,DPC実施病院になり医療のスリム化を行ったA病院は,1か月当たりどの程度の増収,または減収が見込まれるか.

 

 全国DPC実施病院は,平均在院日数の短縮や医療内容のスリム化を進めた.その結果,平成20年度の診断群1の診療報酬点数表は表2に示すものになった.また,平成20年度の調整係数は,平成18年度の診断群分類に基づいた支払額から平成20年度の診療報酬全体の改定率0.82%を引いた収入額を保証するという基本方針に従い,式2により平成20年度の各病院の調整係数は計算された.

 

〈問3〉A病院の平成20年度の調整係数を求めよ(小数点第4位まで).

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・17

―「あなたの家にかえろう」配布数20万部突破<2>―アンケート調査が示したもの~私が思うこと~

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.162 - P.163

あなたが願うなら可能です

 日本で病院死が在宅死を超えたのは昭和54年,30年ほど前のこと.

 その年は,ソニー「ウォークマン」第1号が発売された年,東名高速日本坂トンネルで玉突き衝突があった年でもある.歌の世界では,西条秀樹さんの「ヤングマン」,山口百恵さんの「いい日旅立ち」,その1年前の1978年にはキャンディーズの解散公演があった.その後にバブル好景気時代が到来し,死もお金と関係するのか,病院死が急上昇する.現在では8割以上の患者さん(がんに絞れば9割以上)が,病院から旅立っている.これは日本だけの現象で,異常とも言えるものだ.

病院管理フォーラム ■院内DPC支援

院内DPC支援体制(前編)―DPC管理室

著者: 福村文雄

ページ範囲:P.164 - P.166

 DPC包括支払い制度は,医療費増大の抑制,医療の質の確保,情報の透明性という要求を背景に“良質な医療を効率的に提供” を看板に掲げ,2003年に特定機能病院から導入され,現在DPC対象病院718施設,準備病院701施設で,合計すると一般病床の50%へと急速に拡大している1).この制度の根幹には,適切な診断群分類選択と正確な情報提供が前提となるが,その運用やデータの信頼性は,それぞれの施設に委ねられている.

 一方,診断群分類の選択を任されている医師の多くはICDコードに不慣れであり,請求について無頓着な場合も少なくない.また,様式1に代表される診療データ提出や厚生労働省(以下,厚労省)からの再入院理由といった特別調査なども大きな負担となっている.通年でレベルの高いDPC精度を保つには,各診療科・各医師任せでは難しく,コーディングに精通した診療情報管理士,レセプトデータを得意とする医事職員が,医師と知識を補完し合う支援体制が望ましいと考え,当院ではDPC制度に参加した2006年から,DPC管理室を中心とした支援体制を整え,運用している2)

■DPCによる地域医療分析・6

MDC04 呼吸器系疾患

著者: 河野一博 ,   真野俊樹

ページ範囲:P.167 - P.170

 これまで,医療資源の「選択と集中」に関して,厚生労働省が発表しているDPCデータを用いて分析を行ってきた.連載第6回目の今回はMDC04呼吸器系疾患の「選択と集中」について報告する.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第169回

岡山県精神科医療センター

著者: 藤記真 ,   大守昌利

ページ範囲:P.172 - P.178

病院スタッフと密接に協働

難題を創造的に解決

 岡山県精神科医療センター(旧県立岡山病院)は,岡山県の精神科医療の中核病院として,民間病院では対応できない専門的医療を行ってきた.旧病院の老朽化に伴い,より高度で専門的かつ総合的な医療を提供する施設を整備することとなった.

 設計プロポーザルでの選定を経て設計が始まったが,狭い敷地での3期にわたる複雑な建替,病院からの高レベルで濃密な設計要件,精神科特有の課題(安全性と開放性の両立など),難題解決のために必然的に知恵を絞る設計が求められた.工事中においても,病室や保護室のモデルルーム作成により検証を行うなど,設計開始から竣工にいたるまで,病院スタッフとの熱き良き協働体制を築きながらプロジェクトを敢行した.

リレーエッセイ 医療の現場から

女性外来で働く婦人科医から見た「スポーツ・健康医学」の応用

著者: 江夏亜希子

ページ範囲:P.179 - P.179

 私の働く「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」は銀座・中央通りに面するビルの一角にある女性外来です.婦人科,乳腺科,心療内科,内科,泌尿器科などの診療科があり,医師を含めスタッフ全員が女性.アロマの香り漂う「病院らしくない」クリニックです.

 そして,私の専門は「女性のための健康スポーツ医学」.スポーツドクターになろうと志したのは中学2年の夏でした.水泳部の激しいトレーニングで体調を崩した時にテレビでロス五輪を見て,あの華やかな場所に行きたいと憧れたのがきっかけです.なんとか医学部に滑り込み,卒業時に専門を決める時,スポーツの現場で活躍している多くのドクターと同様,整形外科に進むべきかと悩みましたが,恩師からの「女性スポーツ選手の身体と心を熟知している女性ドクターの存在も必要」というアドバイスに背中を押していただき,学問的に一番興味のあった産婦人科を選びました.

研究と報告【投稿】

院内保育所を含む医師就労支援に関する調査

著者: 江口成美 ,   野村真美 ,   出口真弓

ページ範囲:P.132 - P.136

要旨 医師の確保が喫緊の問題となっている現在,女性医師の就労継続支援は医師全体にかかわる重要な課題である.国は女性医師就労支援の大きな柱として院内保育所を挙げているが,医師の利用や効果については必ずしも明らかでない.本調査は,全国の病院の院内保育所の運営実態や医師のための就労支援の現状を把握し,院内保育所設置の効果と就労支援のあり方について考察した.院内保育所は医師の利用制限や運営費を含めた多くの課題を抱えているものの,設置には一定の効果が認められた.また,女性の常勤医師,非常勤医師との間には,効果的な支援プログラムに違いが見られた.時間短縮勤務などの支援プログラムは必ずしも普及しておらず,今後,医師のニーズに即した支援策への柔軟な対応が求められる.ただし,全てを医療機関の対応で行うには限界があり,経済的支援を含めた行政側の積極的な支援が望まれる.

特別寄稿

コミュニティケアとクリニカルガバナンス(前編)

著者: 吉長成恭

ページ範囲:P.137 - P.141

 英国の医療改革に関して,11年間の定点観察を通してプライマリーケアの重要性と官民協働によるコミュニティケアの進化,および地域医療充実のためのクリニカルガバナンスについて,2回にわたって報告する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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