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雑誌目次

雑誌文献

病院68巻4号

2009年04月発行

雑誌目次

特集 現場に役立つ看護師をいかに確保するか

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.289 - P.289

 ロンドンのセントトーマス病院に隣接するナイチンゲール博物館を訪問したおりに,看護における現場と教育の分離について知った.現場における実務と教育に同時に対応できないので,両者の分離が100年余り前に行われ,それによって看護の教員は教育に専念できるようになったが,実務から離れることになり,それ以来,「現場に役立つ」看護師の養成が課題となったと言えよう.それでも以前は,病院附属の看護学校が主流であったため,臨床実習が当該病院で行われ,また卒業生のほとんどの就職先となっていたので,両者は密接な関係を保つことができていた.しかし,病院から多額の助成金を受け,教員も依存し,低い授業料で運営されていることが多かったので,看護の地位向上は難しかった.

 近年,看護大学が大幅に増え,特に国公立の場合は病院の経営主体とは独立した形で設置されるようになった.そこで,実務と教育の関係を改めて見直す必要があるように筆者は考えたが,看護界においては必ずしも認識されていないようである.加えて1989年のカリキュラム改定によって実習時間は大幅に減少し,また無資格の学生が医療行為を行ううえでの制約も強まっている.そうなると,看護師も医師と同様に,卒業後の研修制度を義務化する必要があるように思われるが,このような声も聞かれない.

現場に活きる看護師をいかに確保するか

著者: 勝原裕美子

ページ範囲:P.290 - P.293

■当世看護師事情

 すでに議論され尽くした感はあるが,看護師の量と質の観点から,今の看護界の問題を整理してみよう.

 まず,看護師数の絶対的不足.7対1騒動が今なお取りざたされているが,当院のように平均在院日数が12.5日,病床稼働率が95%を超すような病院においては,7対1は最低配置人数でしかない.しかし,診療報酬上,それが最高水準だとされれば,経営上はそれをギリギリ満たす人員を確保するのが,最適だということになる.仮に診療報酬を考慮しなくてよいとするなら,それでは,どこまでいけば人は足りたと言えるのか.きめ細やかで,かつ知的で安全な看護ケアを展開しようと思うと,最低でもこの倍は必要だと思う.

―【インタビュー】―看護学校の果たしてきた役割と今後の展望

著者: 山田里津

ページ範囲:P.294 - P.298

 看護師養成の歴史において,看護学校は中心的な役割を担ってきた.特に,かつては附属看護学校として病院が直接運営する形態がほとんどを占め,これは看護師の安定した確保だけでなく,卒前・卒後教育の円滑な移行という利点もあった.しかし現在,こうした病院附属の看護学校は少なくなり,一方で4年制の看護大学・大学院の増加と,変化の時代を迎えている.

 そこで今回は,日本看護学校協議会の創設に携わり,現在は会長を務める山田里津氏に,看護学校のこれまでの歩みと,これからについて,お話を伺った.

大学における臨地実習充実への取り組み

著者: 横田素美

ページ範囲:P.300 - P.303

 2006年3月に厚生労働省が設置した「看護基礎教育の充実等に関する検討会」は,翌年4月に看護基礎教育(保健師教育・助産師教育・看護師教育)のカリキュラム改正案,ならびにその実施に伴い必要とされる教員や実習指導者に関する事項を中心に報告書をまとめた.その中では,「看護学生の看護実践能力を強化すること」が重要なポイントとして取り上げられており,保健師・助産師・看護師にとって必須の技術項目が掲げられ,卒業時の到達度も明確に設定されている1)

 また検討会は,看護基礎教育カリキュラムの見直しについて,1996年の改正から10年以上が経過しており,看護を取り巻く環境の変化に伴って,早急な対応が不可欠であることも指摘している1).このような動きに呼応して,文部科学省においても保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下,指定規則)が改正された場合の大学・短期大学への適用課題等が検討された.これらの検討内容を踏まえ,2008年1月に指定規則の一部改正が公布され,2009年度の入学生から新カリキュラムを適用するために,看護基礎教育を担う教育機関では改正作業が行われた.筆者が勤める大学(福島県立医科大学)においても,これからの社会構造や医療技術の進歩等を見据えながら,看護基礎教育において,どのような看護職者の育成を目指すべきか,そのためには何をコアにすべきか等々を論議し,カリキュラムを見直してきた.その過程の中で,学生の看護実践能力を高めるための臨地実習のあり方について,現状の改善や今後の取り組みを検討した.ここでは,臨地実習の充実を図るための方策を,私見も含めて述べていきたい.

実習先病院としての看護学生の受け入れ

著者: 中野悦子

ページ範囲:P.304 - P.307

■当院の現状

 当院は神戸市の基幹病院として高度・先端医療,救命救急医療を担う912床(実稼動810床)の総合病院である(表).本年4月に地方独立行政法人化し,2011年には新築移転し700床の病院として生まれ変わる予定である.

 現在の平均在院日数は14~15日,病床利用率94~95%,入院基本料は7対1を届け出ている.また,救命救急センター,地域がん診療連携拠点病院,地域周産期母子医療センター等の指定を受け,全職員が医療の質,患者サービス,地域の保健・医療・福祉機関との連携の向上に取り組んでいるところである.また,看護部の中期ビジョンは,専門性の高い高度救急医療や先端医療に対応できる看護師の育成はもちろんのこと,患者サービスの向上,患者参加の看護実践,市内民間病院との連携強化,働きやすい職場環境の提供などを目指している.

【新卒看護師の研修事例】

国立病院機構岩国医療センター

著者: 出原陽子 ,   矢野いづみ ,   青芝映美

ページ範囲:P.308 - P.310

 当院(概要は表1)は,第3次救急まで受け入れる急性期型の病院であり,その理念,使命は「①良質で安全かつ高度な医療の提供,②個人の尊厳を守り患者様主体の医療の提供,③地域社会との連携推進」である.また,基本方針は,急性期医療の充実はもとより,地域医療支援病院,がん診療連携拠点病院としての役割を果たすことである.

 看護部は,この理念,基本方針を基盤とし,医療環境の変化に応じた看護,専門的知識と技術で安全な看護,豊かな人間性を養い,信頼される看護を提供し,地域社会で評価され選ばれる病院を目指している.そして,こうした理念,使命を日常業務の中で具現化していくための方策を,現任教育の中で計画し,取り組んでいる.なお,7対1看護体制導入に伴い,卒後3年目までの看護師は,全看護師数の38%を占めている.

 本稿では,卒後3年目までの看護師の教育に焦点を当て,育成の実際と課題を報告したい.

掛川市立総合病院

著者: 松井とも子

ページ範囲:P.312 - P.315

 掛川市は,静岡県西部の中東遠地域にある人口約12万の自治体である.当院は,昭和59年4月,現在の場所に新築移転しており,掛川市の一般入院施設として,唯一の病院として存在してきた(表1).多くの自治体病院がそうであったように,医師は大学医局から派遣され,看護師の採用は退職者の補充,患者は当院を受診するもの…という時代を続けてきた.しかし今,ここ数年の病院を取り巻く医療・社会情勢の変化の煽りを受け,大きな転換期を迎えている.医師不足,施設基準看護配置7対1,看護師不足,病院経営破綻は,当院にとっても他人事ではなく,病院の合併という大きな課題も出現した.

 そのような中で,筆者は平成18年4月に看護部長に就任し,「病院の合併・新病院構想」という大きな課題と,「今後4~6年の間に,団塊の世代をはじめベテランと呼ばれる人たちの退職を多数迎える」という状況に直面することとなった.私は常に「自分の看護を責任を持って患者に提供できる看護師を育てたい.看護のプロです,と自信と誇りを持って言える看護師を育てたい」という想いがあった.また,当院の看護部では,「責任ある継続した看護の提供」を目指し,平成7年度に看護方式の見直しを行い,平成9年度からは「責任と継続した看護の提供,看護師のやりがい感」を目指す「固定チームナーシング」という看護方式を取り入れてきた.

兵庫県立がんセンタ-

著者: 安部陽子

ページ範囲:P.316 - P.318

 看護師としての第一歩をどこで踏み出すか,そこでどんな人と出会い,どのような経験を積み重ねて看護観を培い,いかにキャリアを形成していくかは,その後の人生に影響し,とても重要な意味を持つ.筆者は「病院組織の中で最大の集団である看護部の活動は医療の質や病院経営に多大な影響を与える」と考え,新規採用した看護師の早期離職を防ぎ,成長につながるように育成していくことを病院運営上の大きな課題と捉えている.

 2006年4月に新規採用した看護師数は34人で,そのうち新卒看護師は19人であったが,1人が8月末に退職するに至り,また,新卒看護師を指導するプリセプターの役割を担っていた先輩看護師が,指導する責任感から強いストレスを抱え,12月末に退職してしまった.この経緯を踏まえて,2007年4月より,新たな教育支援体制である「卒後役割移行期サポートプログラム」をスタートさせたので,そのプログラムの紹介と2年間実施した評価と課題について述べる.

【看護学校と病院の関係事例】

河北総合病院看護専門学校

著者: 古場利津子

ページ範囲:P.320 - P.322

 河北総合病院看護専門学校は,昭和46年に故・河北恵文理事長の「よい病院には看護学校がある」という考えのもとに河北病院附属看護学院として創立された.当時の河北病院の看護婦の多数は准看護婦であり,(正)看護婦は少数という状況であった.昭和40年代の私立の中規模病院で,(正)看護婦を確保することは容易ではなかったと推測される.そこで,准看護婦を教育して(正)看護婦にしようと2年課程定時制の学校として,河北病院における看護教育がスタートしたのである.それ以降,社会や医療の変化,患者さんが看護に求めるニーズとともに,看護学校のあり方も変化してきている.昭和61年には,働きながら学ぶ定時制から全日制へ変更,平成5年には3年課程に課程変更した.それは,「よい病院にはよい看護師が必要」という考えの継続でもあったと思われる.

佐世保市立看護専門学校

著者: 早田宏

ページ範囲:P.323 - P.325

 一昨年より,筆者は佐世保市立看護専門学校(以下,本校)と佐世保市立総合病院という2つの異なる組織の管理職を兼務することとなった.また,これまで大学教官として医学教育には関わってきたが,看護教育という新たな分野の経験も得ることとなった.医学教育と看護教育のあり方については,月刊誌『看護教育』(医学書院)にて既に意見を述べているが1),今回は看護学校と病院管理職の経験から,「質の高い看護師」を育てる体制について私見を述べる.なお,本稿の内容は役職に基づく公的見解ではなく,あくまでも私見であることをご理解いただきたい.

聖マリア学院大学

著者: 井手信 ,   矢野正子 ,   山田公子

ページ範囲:P.326 - P.329

 聖マリア学院大学は平成18年4月に開学し,まもなく完成年度(4年次)を迎える看護学部のみの1学年定員100人の単科大学である.本学は昭和48年に開設された聖マリア病院附属の看護学校から始まり,その後,短期大学として20年の歴史を経て,ようやく大学へ移行したところであり,来年3月に卒業する第1回生の,聖マリア病院への就職が期待されている.本稿では,看護教育における病院と本学の連携をご紹介しながら,今回の特集テーマである「現場に役立つ看護師をいかに確保するか」の方策を考えていきたいと思う.前述の如くまだ学部の卒業生を出していないため,掲載の図表は短期大学生についての資料である.

グラフ

職員のチーム力を上げる―医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院

ページ範囲:P.277 - P.280

信頼される中核病院として

 昭和37年,地域に貢献したい地元企業トヨタグループが,市民病院を持たない刈谷市と医療法人豊田会を設立.翌年,刈谷豊田病院(当時200床)を開設し,以後,地域における社会貢献を基本理念として運営を続けてきた.平成10年に日本医療機能評価機構認定を取得し,平成18年にはISO9001認証を取得するとともに,名称を刈谷豊田総合病院(以下,当院)に変更.救命救急センターには指定されていないが,救急車受入数は愛知県随一であり,地域の中核病院として市民に信頼されている.

連載 ロボット技術と医療・介護・福祉・3

アザラシ型ロボット・パロによるロボット・セラピー

著者: 柴田崇徳

ページ範囲:P.282 - P.283

 ペット動物は,一般家庭で広く普及しているだけでなく,医療福祉施設でのアニマル・セラピーとしても有用である.しかし,アレルギーや噛み付き・引っ掻きによる事故,人畜感染症,衛生,管理などの理由で,動物を飼うことができない場所や人々が多く存在している.

 そこで筆者は1993年から,ペット動物のように,ふれあいにより楽しみや安らぎを提供する新しい役割を持つロボットの研究開発を進めている.心理実験などの結果から,人から受け入れられやすいように,あまり身近ではない形態のアザラシ型を採用し,「パロ」と称して改良を重ねた.一見,ぬいぐるみのようであるが,内部には,様々なセンサと,静かに動くアクチュエータで構成され,複数のマイコンや高度な人工知能により,飼い主との触れ合いの中で,名前や行動を学習しながら生き物らしく振る舞う.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・32

MSW中心の医療連携モデル構築―その実践と成果

著者: 山本展夫

ページ範囲:P.331 - P.335

 各医療機関が地域で担うべき役割・機能を明確にしたうえで,連携により切れ目のない医療・介護・福祉サービスが提供されるべきだろう.しかし,その実現には具体的かつ効果的な方法論が必要となる.当院では,その方法論として1997年に医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)だけで構成する地域医療連携室を開設し,以降12年間にわたり模索・活動を継続することで,地域へ医療・介護・福祉包括サービスの提供を具現化するとともに,病院経営戦略としても一定以上の成果が得られている.本稿では,その実践経緯・概要・成果などを紹介する.

続クロストーク医療裁判・15【最終回】

突然の証拠保全に驚かないために―カルテの証拠保全

著者: 宮川広臣 ,   畑中綾子 ,   長谷川剛

ページ範囲:P.336 - P.340

 本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供してきた.最終回では,民事裁判にあたり医療機関側が最初に裁判所と接触する局面とも言える「証拠保全」手続について取り上げる.

 医療機関側には,実施の1時間程度前にしか知らされず,突然,裁判所と患者側の弁護士が医療機関を訪れ,医療関係記録の捜索的な行為に及ぶことから,証拠保全手続の実施自体に対して反発もあるだろう.しかし,証拠保全が実施されたからといって,裁判所が医療機関側の責任を認めたことにはならない.むしろ,医療関係記録の存在と内容が患者側に明らかになることにより,患者側の誤解や不審が解消され,その結果裁判が起こされずに解決することもあるし,医療裁判となった場合にも,証拠保全によって客観的な内容が確認・保全されている資料に基づく議論が可能となることから,決して医療機関側に不利なことではない.証拠保全の実施に当たっては,手続を主催する裁判所から,そうした証拠保全手続の意義や効果が説明され,医療機関側の協力の下に円滑に実施されるようなことも多くなってきたと指摘されている.今回,証拠保全の意義や具体的な実施手順について論じたい.

図説 日本の社会保障 医療・年金・生活保護・4

医療保険の歴史と現況

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.342 - P.343

■医療保険の歴史

 わが国の医療保険(健康保険)の歴史・変遷の概略を示した(表1).

●戦前

 わが国における医療保険は,鐘紡,八幡製鉄所共済組合設立(1905/明38年)に示されているように,職域における相互扶助「共済制度」を目的として出発したことである.

 広く国民を対象とした健康保険,国民健康保険は1927(昭2)年,1938(昭13)年に発足したが,任意保険のため大きな普及は見られず,この状態は戦後も続いた.この時期,1931(昭6)年の満州事変以来,支那事変,太平洋戦争,そして日本の敗戦(1945/昭20年)まで続いた15年戦争による膨大な戦費調達のため,医療に配分される公的財源(税金)はほぼ皆無であったことも明記されねばならないことである.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・19

とぎれ

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.344 - P.345

遺志を継ごうとしたが

 「もしもこの病気がよくなったら,ホスピスかどこかで,同じ病気の人の話し相手にでもなりたい」.これが亡くなった妻の遺志だった.看護師だった彼女の夢は,ホスピス認定看護師になることだったが,さて僕が彼女の遺志を引き継ごうと,いきなりホスピスかどこかで,話し相手活動ができるかと言えばそうではない.医療界も今はかなりオープンになってきているが,10年前は取り付く島がなかった.

病院管理フォーラム ■医療安全:Try Top Management First!・1【新連載】

Train Top Management First!―トップマネジメントが実践するRCAと新たな活用法

著者: 石川雅彦

ページ範囲:P.346 - P.349

連載を始めるにあたって

 医療機関にとって,医療安全は最優先課題であり,医療安全に関してトップマネジメントが果たすべき役割は極めて大きい.

 これまで,筆者は国立保健医療科学院において,医療機関のトップマネジメント(病院長,副院長,看護部長など)に対する様々な研修(病院長研修,看護部長研修,医療安全リーダーシップ研修など)を担当し,企画,講義・演習などを実施してきた.これらの研修実施や実施後の評価,および現在進めている研究活動を通して,医療の安全推進と質向上を図るには,医療機関のトップマネジメントに求められる役割が非常に大きいことと,戦略的なリーダーシップの発揮が極めて重要であることを,改めて実感した.

 本連載のキーワードは,「Try Top Management First !(まず,トップマネジメントが率先してやってみよう!)」である.本連載では,医療機関における医療安全管理体制構築に,直接・間接的に影響する課題に焦点を当て全6回で,特に医療安全に関して医療機関のトップマネジメントに求められるリーダーシップと支援について,今後の新たな取り組みを提案したい.

 なお,本連載では,医療事故に関連する用語をどのように表現するか検討し,様々な定義を考慮して,患者に障害が発生しなかった事例,もしくはタイムリーな対応により事故に至らなかった事例や状況を「インシデント」,患者に何らかの障害が発生した事例を「アクシデント」と表現する.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第171回

千里リハビリテーション病院

著者: 川島浩孝 ,   若松将人

ページ範囲:P.350 - P.354

■気づきの医療

 本法人の中心的な理念である「気づきの医療」への理解から,このプロジェクトは始まった.展開される生活としつらえとしての空間装備や治療プログラムとの矛盾に気づくこと,その矛盾を解決するために空間装備や治療プログラムを変えていくこと.いうまでもなくリハビリの最終的な目標は在宅復帰にあるため,この「気づくための装置」として,在宅や地域での生活で想定される場面を可能な限り用意する,場面としての選択肢を豊富に提供するという考え方である.

リレーエッセイ 医療の現場から

その図表,大丈夫ですか?―図表転載と著作権

著者: 伊藤勝

ページ範囲:P.355 - P.355

 インターネットの普及によって情報の発信や利用の敷居が下がり,従来のコンテンツ産業だけでなく個人のレベルでも著作権を権利や財産として考える時代になってきました.しかし学術の分野では,そもそも学術研究は先人の成果の上に成り立つものであり,著作権の問題はあまり意識されてこなかったように思います.ところが近年,特に医療分野では健康への関心の高まりや医療関連産業の発展につれて,学術的な情報も専門家の中だけに留まらなくなってきています.今後は医療者自身の執筆の機会はもちろん,他人によって自分の書いたものが利用されるといったケースも増えてくるでしょう.著作権のルールを知らないではすまされなくなっています.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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