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文献詳細

雑誌文献

病院68巻6号

2009年06月発行

特集 医療IT化の行方

DPCからみた医療IT化

著者: 松田晋哉1

所属機関: 1産業医科大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.467 - P.471

文献概要

 日本は医療のIT化が遅れていると批判されて久しい.そして,これを解決するために「電子カルテの一般化が必要である」と主張され,実行されてきた.これは正しい主張であったのだろうか.何のために情報が必要なのかと言えば,業務の効率化,情報の後利用によるマネジメントや医療の質の改善のためである.わが国の現在の電子カルテの状況はこの視点から見た時に,本当に望ましい形になっているだろうか.

 個々の医療機関において,電子カルテ化に大きな効果があったことは筆者も認めている.医療職間で患者記録が電子的に共有されることで,業務の効率性と安全性は飛躍的に向上した.しかしながら,異なる施設間の情報の共有という点ではどうであろうか.標準仕様がない状態で,それぞれの病院がそれぞれのベンダーとの関係の中で独自のシステムを作ってしまったために,社会全体で見るとコストが高く,そして互換性のない情報システムが日本中に広まってしまったのではないだろうか.社会の情報インフラという視点が,わが国の電子カルテ事業には決定的に欠けている注)

参考文献

1)Donnabedian A : Quality assessment and assurance : unity of purpose, diversity of means. Inquiry 25(1) : 173-192, 1988
2)伏見清秀:国立大学病院医療に及ぼすDPC導入の影響,平成16年度厚生労働科学研究補助金 長寿科学総合研究事業(H15-長寿-011,主任研究者:西岡清),2005
3)伏見清秀:DPCデータ活用ブック 第2版,じほう,2008
4)石川B光一,松田晋哉:厚生労働省平成19年度DPC調査データに基づく病院の診療実績一覧,じほう,2008
5)松田晋哉:包括払い方式が医療経済及び医療提供体制に及ぼす影響に関する研究 総括報告書,平成19年度厚生労働科学研究補助金 政策科学推進研究事業(H19-政策-指定-001,主任研究者:松田晋哉),2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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