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文献詳細

雑誌文献

病院68巻6号

2009年06月発行

文献概要

特集 医療IT化の行方

診療情報IT化の可能性

著者: 神野正博1

所属機関: 1社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院

ページ範囲:P.478 - P.481

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■はじめに―潮目は変わった

 日本の産業は極めて生産性が高かった.それゆえ,豊富なエネルギーを利用し,少ない人数で高品質なものを大量に生産可能であった.その生産性は内需を凌駕し,余剰に生産された物品は安い価格で国際市場へ流出していった.この外需に依存した日本の産業構造は,アメリカなどでバブルが萎んだことにより,たちまちその市場を失った.市場が少なくなれば,生産調整が必要となり,「派遣切り」という言葉で代表される雇用不安を生んだのであった.

 一方,サービスの生産性が低いとされてきた医療・介護産業は,人が人に手をかけるといった極めて労働生産性の低い産業であったのだ.しかし,日本人が日本人にサービスを提供して収入を得るといった内需中心であり,かつまた膨大なエネルギーを消費しない,環境にやさしい産業でもあったのである.

 国は外需重視の姿勢から,雇用の創出と同時に国民生活の安心・安全にかかわる健康長寿を成長戦略の重要な部門の位置づけようとしている1).従来,国にとってコストであった医療・介護などの健康分野を産業として振興させようという潮流が生まれつつあるのである.

 ならば,この機こそ医療・介護のサービス提供体制そのもの,そしてその周辺分野で新しいイノベーションを起こすチャンスが到来したと心得たい.世界一の速さで未曾有の高齢化が進む日本だからこそ,われわれは新しい仕組みを作って内需を刺激するという気概を持ちたいものである.そこでは,新薬・新医療機器研究開発,生活支援機器(介護ロボットなど)開発・実用化などとともに,IT技術の新たな可能性を探っていく必要性があるのである.

参考文献

1)平成21年第5回経済財政諮問会「成長戦略集中審議:その1」,経済財政諮問会議平成21年会議結果のホームページ http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0303/agenda.html
2)神野正博:わが病院のIT戦略.日経ヘルスケア 225:109-111,2008
3)神野正博:恵寿総合病院の新サービス創出の取組み3 地域連携サービスの担い手を考える.病院経営 400:28-34,2008
4)神野正博:恵寿総合病院の新サービス創出の取組み6 サービスの視える化を考える.病院経営 405:54-59,2009
5)神野正博:恵寿総合病院の新サービス創出の取組み7 ITをどうサービスに活用するか.病院経営 407:54-62,2009
6)神野正博:医療のデフレ下における対策―顧客管理(コールセンターの開設).病院 62(2):124-126,2003
7)神野正博:制度改革と恵寿総合病院の戦略・戦術―成功体験にとらわれず,事業のポートフォリオを見直す.病院経営 350:69-81,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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