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文献詳細

雑誌文献

病院69巻1号

2010年01月発行

文献概要

特集 拡大する医療・介護需要

介護保険施設の一元化は可能か―この8年の介護費用の推移から考える

著者: 髙木安雄1

所属機関: 1慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科

ページ範囲:P.31 - P.33

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■はじめに―介護保険施設一元化をめぐる課題

 「介護の社会化」を目標に平成12(2000)年4月にスタートした介護保険制度も今年度末で10年を経過しようとしている.高齢化のスピードの速さを横目に,“走りながら考える”ことで展開してきた新しい制度であるが,この介護保険施設の一元化の問題については,医療保険,老人保健,老人福祉各制度の歴史と既得権益の狭間で海図なき航海を続けてきたと言える.

 例えば,老人保健施設は老人保健制度の下で,医療と福祉,施設と在宅の「中間施設」として昭和63(1988)年から整備されたが,当時の厚生省が期待した老人病院からの転換は進まなかった.その原因は,老人保健施設の施設療養費が低いこと,施設の設備・構造設備基準が病院にとって厳しい内容であることにあった.平成12(2000)年4月からの介護保険制度は施設の一元化の検討の時間もなく,医療,保健,福祉の各施設をそのまま介護保険の対象施設としてスタートし,平成18(2006年)の医療構造改革でようやく(唐突に)介護療養病床の平成23(2011)年度末までの廃止の方針が打ち出されたに過ぎない.その結果,転換型老人保健施設が政策誘導されるが,それに応える介護療養医療施設は少なく,10年前と同じ姿を露呈している.「歴史は繰り返す.一度は悲劇として,二度目は喜劇として」という言葉があるが,介護保険施設の一元化はその様相を示しており,この先どのように展開するのか,この平成12(2000)年度から直近の平成19(2007)年度までの8年間の介護費用の推移をもとに考えてみる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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