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雑誌目次

雑誌文献

病院69巻11号

2010年11月発行

雑誌目次

特集 拡大するリハビリテーション医療

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.845 - P.845

 リハビリテーション(rehabilitation)とは,re(再び)+habilis(適した,ふさわしい)+ation(状態にすること)であり,「再び適した状態にすること」を意味し,そのために行われるすべての援助活動がリハビリテーションであるという.その対象とするものは,歴史的には肢体不自由児や傷痍軍人などの厚生から,自然災害,工業化に伴う労働災害,モータリゼーションに伴う交通事故,そして生活習慣病へと拡がっていったのであろうと思われる.また,その目的は障害からの離脱のみなならず,QOL(Quality of Life)の改善や認知機能の改善までをも目指すこととなり,さらにその場は,広くあらゆる障害・疾患の超急性期~急性期~回復期~維持期・慢性期~終末期にまで拡がり,医療施設のみならず介護・福祉施設へ,また,病院や施設のみならず地域や在宅の場へまで拡がっていったのである.

 今後のリハビリテーションを考えるうえで,以下の2点に注目したい.1つは,本誌グラフに紹介したような,わが国が世界に先んじるロボット工学の応用である.ロボット技術は,リハビリテーションを受ける側ばかりではなく,リハビリテーションを提供する側の福音をも,もたらすに違いないと思われる.

わが国のリハビリテーション医学・医療の潮流

著者: 里宇明元

ページ範囲:P.846 - P.850

 筆者が医学部を卒業した1979年当時は,まだリハビリテーション医学が一般社会はもちろんのこと,医学・医療の世界においてもほとんど認知されていない時代であった.リハビリテーション医学講座がある大学も3校しかなく,筆者の在籍した大学にも当然,存在しなかった.そのような不確かな状況ではあったが,横断的診療,全人的医療,チーム医療などの考え方に従来の医療にはない新しい息吹を感じ,何よりも様々なチャレンジの余地が残されている未開拓の分野であることに強く惹かれ,心踊らせながらリハビリテーション医学の道に飛び込んだものであった.

 その後,紆余曲折がありながらも,先人たちの努力により,リハビリテーション医学・医療は着実に発展を遂げ,今日では医学・医療の重要な分野の1つとして認められつつあることを実感している.脳卒中医療を例にとってこの30余年間の変化を振り返ると,この間に非常に大きな変化がもたらされたことを改めて感じる(表1).以下,筆者なりにわが国のリハビリテーション医学・医療を振り返り,将来を展望してみたい.

医療制度におけるリハビリテーションの位置付けと今後

著者: 水間正澄

ページ範囲:P.852 - P.855

 リハビリテーション(以下,リハ)は障害を対象とする領域であるが,その対象も先天性障害,中途障害,老化に伴う障害など多様であり年齢も新生児から高齢者まで多岐にわたる.そして,それら障害は外傷,疾病に対する急性期医療,救命医療,新生児医療,再生医療などの進歩に伴って多様化・複雑化しそのニーズはますます広がっている.

 一方,医療制度改革以降,医療提供体制の見直しが進められ,施設の機能分化と連携体制の確立,さらには在宅ケアの推進を目指した政策が示された.医療においては急性期,亜急性期,慢性期へと異なった施設がお互いに適切な連携の下に継続性を持って進められることが推進されている.リハ医療の場合は急性期リハ,回復期リハ,維持期リハと区分してその流れを考えるようになり,単一施設での一貫した継続的なリハを実施することは困難となり,病院完結型リハから地域完結型リハへと,リハ医療提供の場にも大きな変化が求められている(図)1)

急性期から回復期リハビリテーションにおける病院の役割分担

著者: 石川誠

ページ範囲:P.856 - P.859

■リハ医療における制度上の変遷

 2000年から現在までの10年間,リハビリテーション医療に係わる制度は大きく変化した(表1).その起点は,2000年の介護保険制度の施行と医療保険の診療報酬制度に回復期リハビリテーション病棟が創設されたことに遡る.

 かつてのリハビリテーション(以下,リハ)医療は,診療報酬制度における理学療法・作業療法・言語療法等のリハ施設基準を有する医療機関であり,入院・外来・訪問によるものが主体であった.しかし,2000年からリハ医療サービスは入院・外来・通所・訪問・短期入所・入所等へと多様化し,医療保険と介護保険の両方からサービス提供されるようになった.

慢性期リハビリテーションにおける病院の役割

著者: 山上久

ページ範囲:P.861 - P.864

 医療保険制度の改革に伴い,急性期病院における在院日数の短縮化は今後さらに進められる可能性が高い.一方,回復期リハビリテーション病棟においても,脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の回復期リハビリテーションを要する状態に応じて算定日数に上限が設けられ,より早期での入院とより早期の退院が求められている.

 これに対応して,慢性期リハビリテーションにおいては,①施設や在宅での心身機能および生活機能の維持・改善に努め,対象者・家族のQOL向上を目指した諸種の取り組みを積極的に展開し,②回復期の患者の地域への受け入れを速やかに調整・マネジメントして,③急性期~回復期への流れの効率化を促進するという大命題が課されている.このことは,慢性期リハビリテーションのあり方が,急性期や回復期の入院期間に大きく影響すると換言できる.

がん医療におけるリハビリテーション

著者: 田沼明

ページ範囲:P.865 - P.867

 高齢化社会に突入したわが国において,がん患者数は年々増加している.一方,医療技術の進歩によってがんの死亡率は減少傾向にあり,がんを克服した,あるいはがんと共存している患者数は増え続けている.これらの患者においては,がんそのものやがんの治療によって生じた機能障害が生活の質(QOL : Quality of Life)を落とす原因となる.したがって,がん患者の機能障害や日常生活活動(ADL : Activities of Daily Living)の維持・改善のためリハビリテーションの必要性が増している.

【事例】

地域連携医療とリハビリテーション:脳卒中

著者: 川北慎一郎

ページ範囲:P.868 - P.872

 脳卒中診療において近年,救急搬送,tPAによる急性期治療,急性期からのチーム医療と積極的リハビリテーション(以下,リハ)の重要性が指摘されている.これらは概ね,急性期治療体制に関することであった.最近,回復期リハ病棟の普及を受け,急性期と回復期の脳卒中地域連携が注目されるようになり,2007年診療報酬改定における診療報酬追加を追い風に,全国各地で脳卒中地域連携クリティカルパス(以下,地域連携パス)の取り組みが行われている.

 石川県では,2007年4月に地域連携パスモデル事業が三疾患(脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病)で開始となり,当院が脳卒中地域連携パス作成指定病院となった.同時期に金沢大学脳神経外科学教室 濱田潤一郎教授が主催する「日本海脳卒中医療連携セミナー」で能登用の脳卒中地域連携パス作成担当病院の指名を受けた.これらを受け,図1のような経過で取り組みが始まり,今日に至っている.今回その内容や特徴,また当院の脳卒中リハ・地域連携医療の現状と課題につき紹介する.

地域連携医療とリハビリテーション:大腿骨近位部骨折

著者: 野村一俊

ページ範囲:P.873 - P.875

 近年,医療機関の機能分化が進み,長期のリハビリテーションを要することが多い大腿骨近位部(頸部/転子部)骨折の入院治療は,急性期医療機関と回復期医療機関との連携で行われることが多い.

 2006年の診療報酬改定において,地域連携クリティカルパス(以下,地域連携パス)による連携体制の評価が行われ,地域連携診療計画管理料,地域連携計画退院時指導料が新設された.他疾患に先駆けて大腿骨頸部骨折が対象となったため,大腿骨近位部骨折の地域連携パスは,全国で広く運用されている.

訪問リハビリテーションの意義とこれから

著者: 吉良健司

ページ範囲:P.877 - P.880

■訪問リハビリテーションの意義

 いわゆる団塊の世代が高齢者となる2015年を山場として,日本は未だかつて経験したことのない超高齢社会を迎えようとしている.その急激な人口増加から推計される療養者や要介護者は,現在の医療施設や福祉施設のインフラのキャパシティーを超え,社会保障費の増大はやむをえない現実として国家にのしかかってきている.医療費の増大の抑制に向けては,欧米諸国の医療の動向を踏まえ,在院日数の短縮と療養病床の検討,早期在宅復帰が推進されてきている.これに伴い,入院リハビリテーション(以下,リハ)期間の短縮化が推し進められ,リハ医療の提供のあり方が大きく変わってきている.その中でも,最も注目されているサービスが訪問リハである.

 以前は,発症してから在宅復帰までに数年を要していた時代もあったが,最近では脳卒中であっても6か月程度で自宅復帰するケースも珍しくない.このため,以前の訪問リハは維持期のフォローといったニュアンスが強かったが,最近は回復期もあり,入院することが容易でなくなったため,急性期や終末期といったすべてのリハ医療の段階があり,それらを包括するオールラウンドなサービスへと進化している.

認知症とリハビリテーション

著者: 平井基陽 ,   金屋裕美子

ページ範囲:P.881 - P.884

 認知症の原因となる病気の多くは,進行性慢性疾患である.そのため,病気の進行の程度と随伴する周辺症状(認知症の行動および心理症状:BPSD)の有無および治療を要する身体合併症の状態により,様々な医療・介護ニーズが生じる.一方,認知症の中核症状を構成する高次脳機能障害に対しては,従来からいわゆる認知リハビリテーションが実施されてきた.一般的には,高次脳機能障害は脳外傷や脳卒中などの脳血管性障害によって生じる急性発症の症状群を指し,リハビリテーションにより機能回復が可能なものと受け止められている.そして,認知症に対しても,これらの手法が,認知症の非薬物療法として導入されてきた.

 認知症のリハビリテーションという考え方が拡がりを見せ始めたきっかけは,1つには認知症治療薬としてアリセプト®が登場したこと,もう1つは介護保険制度の創設であった.介護保険制度開始後5年目の見直しに向け,2004年に「高齢者リハビリテーション研究会報告」で脳卒中モデル,廃用症候群モデルと並んで認知症モデルが提唱された.そして,老人保健施設でのモデル試行を受けて,2006年の介護報酬改定で「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」が創設されたのである.

グラフ

先端技術が拓く新しいリハビリテーション―産業医科大学病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.833 - P.836

 産業医科大学病院リハビリテーション科(同大学リハビリテーション医学講座)は脳卒中などの急性期を対象としたリハビリテーションを提供するとともに,高次脳機能障害やポリオ後症候群など,他の病院では難しいリハビリテーション症例の診断・治療・訓練も行っている.こうした症例に対する新しい評価手法やアプローチの開発にも積極的であり,本グラフではロボット技術などの工学分野とも連携した,同科の取り組みを紹介する.

連載 デザインの力・11

エラーを防ぐデザイン

著者: 山本百合子

ページ範囲:P.838 - P.839

エラーを防ぐデザイン

 見えづらいことによって引き起こされる事故なら,デザイン的に見やすい工夫をすることによって,注意を喚起し,エラーを減らすことができるだろう.子どもの指が入って怪我をする可能性があるなら,入らない設計にすればよい.本号では,ちょっとしたデザイン等の工夫によって,事故や間違いを防ぐことができないか,具体的に考えてみた.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・51

地域ネットワークプロセス―認知症を切り口にして

著者: 佐藤和子

ページ範囲:P.890 - P.893

 海南病院では,認知症に対する理解を深めるために院内外で勉強会を開催し,患者・介護家族を支える取り組みをしてきた.また病院MSWが地域包括支援センターのケアマネジャーと協働して,医師会や薬剤師会と「顔の見える関係」を築くためのネットワークをつくってきた.本稿ではその取り組みを紹介する.

より良い高齢者終末期ケア体制の構築に向けて・11

英国の高齢者終末期ケアの動向④―判断能力の不十分な者と終末期の意思決定

著者: 岡村世里奈

ページ範囲:P.894 - P.896

■2005年意思能力法(Mental CapacityAct2005)

 英国では,終末期ケア体制の整備に力を入れるだけではなく,終末期ケアの意思決定に関する法整備も進んでいる.中でも特に重要な法律の1つとなっているのが2005年に制定され,2007年から施行されている「意思能力法(Mental Capacity Act 2005)」1)である.

 意思能力法は,一口で言えば,英国の成年後見制度ならびに事前医療指示制度について定めた法律である.認知症や精神疾患,脳の障害等によって独力で意思決定を行うことができない16歳以上の国民の保護を目的として,本人に代わって誰が意思決定を行うことができるのか,またそのためにはどのような手続きを踏めばいいのか等について定めている.

院内サービスの新展開・7

―院内アロマセラピー―ホリスティックな視点で心と身体をサポート

著者: 小杉美貴子

ページ範囲:P.898 - P.899

■院内サロン開設の経緯

 海老名メディカルサポートセンターは,海老名総合病院の附属病院として生活習慣病外来や人間ドックなどの予防医療と慢性期入院医療を行う施設である.アロマセラピーサロン「Franc(フラン)」は2007年6月,外来・入院患者や病院職員を対象にアロマセラピーのトリートメントを提供する施設として同院内に開設された.以前より,筆者を含む2人のセラピストが海老名総合病院のマタニティセンターにおいて入院中の産褥婦にトリートメントを提供していたが,出産前の妊婦からもケアを受けたいとの要望が多く,また,病院側より健診や人間ドックの受診者を対象に予防ケアとして提供できないかとの提案があったことから,ニーズのリサーチを経たうえで開設に至った.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・38

「医者のことばはほどほどに聞いておくように」と言った医者

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.900 - P.901

水を多く飲むように

 「おじいさんが頻尿で困っているから往診をお願いします」と,泌尿器専門のクリニックに電話がかかった.クリニックの院長は泌尿器専門医であると同時に,在宅医としても活動する人物である.さっそく往診に行ってみると,頻尿になる身体的原因が見つからない.おかしいなぁと思って,よくよく聞いてみると,ごく最近,軽い脳梗塞になって入院していたとのこと.その退院時「水をたくさん飲みなさい」と医者に言われ,以来水をたくさん飲むようになった.それは良いことだが,どれほどの量を飲むのかとたずねると,「1日4リットル飲む」とのこと.当然,ひっきりなしにトイレに行くはずである.

病院管理フォーラム ■女性医師支援・2

勤務体制のサポート

著者: 瀧野敏子

ページ範囲:P.903 - P.905

 前回は,女性医師への支援はなぜ必要か,というテーマで概説した.その中で,①女性医師を含めてすべての医師・医療従事者が幸せになる就労環境づくり,という視点が必要であること,②働きやすい環境づくり(ワークライフバランス)は,もはや福利厚生ではなく,社会的必然であること,を述べた.

 今回は,士気の高い人材が専門職として活躍し続けるための環境づくりには,どのような条件が必要か考えてみよう.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第190回

日本赤十字社医療センター

著者: 南部真 ,   小西剛

ページ範囲:P.907 - P.913

■日本赤十字社医療センターの沿革

 日本赤十字社医療センターは,明治19(1886)年,千代田区麹町に日本赤十字社の前身である博愛社病院として建設された.翌年日本赤十字社が設立されると日本赤十字社病院と改称され,明治24(1891)年に現在の敷地である渋谷区広尾に移転された.

 その後,昭和16(1941)年に名称を日本赤十字社中央病院と改め,さらに昭和47(1972)年には日本赤十字社産院との統合により日本赤十字社医療センターと改称し,昭和49(1974)年に現在解体中である旧建物への全面建て替えが行われた.

【復刻版】眼でみる病院の設備とはたらき・11

診療補助業務

ページ範囲:P.914 - P.915

 病院には,医師が行う診療の補助として,医師以外の病院職員が行う業務がある.これが,たとえ不完全であっても,病院医療はやれるので,忘れられがちであるが,もし管理者がこの方面に特に考慮を払って,業務を改善すれば,病院医療は好調となり,著しい力を増す.又患者にとっては病院が親しみ易い,居心地のよい場所となる.

 診療補助業務は何々かと言えば,医師以外の病院職員が日々行う仕事はすべてそれだとも考えられるが,ここでは,医師以外の職員が,医師の配下にあって介補するのではなくて,診療を助ける意味で医師と協力はするが,自主的に,患者或はその関係者に直接に働きかける仕事を指すことにする.

(本文・写真とも1954年『病院』Vol.11 No.4 pp.35-41より一部抜粋・要約)

リレーエッセイ 医療の現場から

あなたの病院はオープンですか?

著者: 佑嶋敦志

ページ範囲:P.919 - P.919

 「次の治療の存在自体が難しいと思います.末期医療の病院を探してください」

 5年前の夏,こういう意味のわずか2行のメールを,主治医のA医師から受け取った時の衝撃は生々しく覚えている.よく「頭をがーんと打たれる」というが,こういう時を指すのだろう.「(妻の)次の治療法を相談したい」とメールしたのに対する返事である.「重大なご指摘と受け止めましたので,お目にかかりたい」と返信すると,「末期医療の病院を探してからにしてください」とにべもなく拒否された.妻は悪性脳腫瘍で,その3年前から闘病していた.この時,再再発した腫瘍が月を追って再増大していた.A医師の上司である助教授は私だけを呼び,「余命は半年から1年」と告げた.

レポート【投稿】

国立病院機構における医療の質評価の取り組み―「医療の質の評価・公表等推進事業」における臨床評価指標に焦点をあてて

著者: 小林美亜 ,   古場裕司 ,   尾藤誠司 ,   岡田千春 ,   堀口裕正 ,   三田晃史 ,   伏見清秀

ページ範囲:P.885 - P.889

要 旨 国立病院機構(以下,機構)では,2006(平成18)年度より,「医療の質の向上」と「医療の質を可視化し,患者・国民に情報提供する」ための取り組みとして,臨床評価指標(以下,指標)を用いた医療の質評価を実施してきた.2010(平成22)年5月に,厚生労働省医政局が「医療の質の評価・公表等推進事業(以下,推進事業)」を行う団体を募った.機構の取り組みは,その目的と一致したことから,そのための指標を検討し,申請を行い,採択に至った.推進事業で取り扱う指標は,最終的に17指標(患者満足度の2指標を除く)とした.病院全体の指標は,患者安全に係る指標を設定した.領域別の指標では,適切な治療の遂行,薬剤の適正使用,早期のADLの向上,患者の自己管理へのサポート等の視点から設定した.機構では,この17指標の評価を通じて,医療の質の向上を図り,患者・国民に対する医療の質に係る情報提供として公表に取り組む予定である.

書評

NPO法人 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会 編『デジタルマンモグラフィ 品質管理マニュアル』

著者: 石田隆行

ページ範囲:P.893 - P.893

 乳癌の撲滅,検診の早期受診を啓蒙・推進することを目的とする世界規模キャンペーンのピンクリボン運動は年ごとに活発化し,広く国民に知られるところとなった.それに伴い,マンモグラフィ検診の受診率も年々増加している.このことは,全国各地で行われているマンモグラフィの品質管理の重要性を高めている.また,近年になってマンモグラフィのデジタル化が急速に進んだことから,これまでのアナログマンモグラフィの品質管理の方法を見直したデジタルマンモグラフィの品質管理マニュアルの必要性が高まった.

 わが国で,この必要性にいち早く応えたのが,日本でマンモグラフィ検診の精度管理の核となって活動を続けているNPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)である.精中委が編集した『デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル』(医学書院)は,International Electrotechnical Commission(IEC)がまとめた国際標準の精度管理法や欧米の精度管理のガイドライン,日本画像医療システム工業会の表示モニタの品質管理ガイドラインなど,世界中で採用されている国際的な精度管理の方法を参考にしながらまとめられており,国際水準の品質管理法が一読しただけで実践できるようにまとめられた優れた書籍といえる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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