病院69巻3号

2010年03月発行

特集 医療におけるソーシャル・ビジネスの展開

フィンランド福祉国家の競争力とソーシャル・イノベーション

著者： 山田眞知子¹²

所属機関： ¹北海道地方自治研究所 ²前・北翔大学

ページ範囲：P.202 - P.205

　近年，フィンランドの生徒の学力の高さと優れた国際競争力がわが国でも注目されている．フィンランドは次のような特徴を持つ北欧型福祉国家に属している．それらは，国が国民の幸せに責任を持つ割合が大きいこと，社会保障が高度に普遍的な公的サービスならびに平等な給付と労働所得に基づく給付によって成り立つこと，平等の理念，高い税負担，所得や生活水準の格差が比較的小さいこと，進んだ地方自治制度などである．

　では，このような高福祉高負担の国は，どのようにして国際競争力を高めることができたのだろうか．競争力は高福祉高負担と矛盾しないのだろうか．本稿は，フィンランドの福祉国家の社会政策が競争力の強化に寄与するしくみを，ソーシャル・イノベーションを通じて見ることを目的としている^注1）．

参考文献

1）フィンランドのソーシャル・イノベーションについては，イルッカ・タイパレ編著，山田眞知子訳『フィンランドを世界一に導いた100の社会改革』公人の友社，2008年，フィンランド福祉国家の社会保障については山田眞知子著『フィンランド福祉国家の形成　社会サービスと地方分権改革』木鐸社，2006を参照

2）イルッカ・タイパレ，ヴァップ・タイパレ，山田眞知子（訳）：タイパレ夫妻札幌講演会―フィンランドに学ぶ格差・貧困対策と地域医療．北海道自治研究No.488，2009年9月号

3）www.kunnat.net.fi 2009.12.3（フィンランド自治体協会・地方財政のサイト）

4）Vappu Taipale : Finnish Social Protection Underpins Equality. In a Finnish-Japanese Seminar on Equality as a Resource of Society. Tokyo, 2003.11.29（ヴァップ・タイパレ講演「平等を支えるフィンランドの社会保障」，読売新聞主催セミナー）

5）STM : Sosiaali-ja terveydenhuollon henkilosto. 2009.7.2（フィンランド社会保健省　社会福祉保健ケア職員についてのサイト）

6）Castells M & Himanen P : Suomen tietoyhteiskuntamalli. Sitra, SITRA, Helsinki, 2001, pp.181-182

7）www.Ray.fi : avustustoiminta（フィンランドスロットマシーン協会　助成事業のサイト）2009.12.3, 2008.12.4

8）Elinkeinoelaman keskusliitto : Talouskatasus suhdanteet. 2009.11.27（経済産業中央連盟：経済・景気について）

9）Helsingin Sanomat（ヘルシンキ・サノマット紙）: 2009.11.2（フィンランドの全国紙）

10）Juha Rehula : 議会における聞き取り調査，2009.5.15