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文献詳細

雑誌文献

病院69巻3号

2010年03月発行

文献概要

連載 より良い高齢者終末期ケア体制の構築に向けて・3

米国の高齢者終末期ケアの動向②―高齢者居住系施設入居者とホスピス給付

著者: 岡村世里奈1

所属機関: 1国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野

ページ範囲:P.219 - P.222

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 前回紹介したとおり,米国では,近年,メディケアのホスピス給付を利用して亡くなる高齢者の数が急速に増えてきている.中でも,特に増えているのが,ナーシングホーム等の高齢者居住系施設で生活している入居者が,このホスピス給付を利用して施設内で亡くなるというケースである.米国連邦保健福祉省監察総監局(Office of Inspector General, Department of Health and Human Services)の調査によれば,2006年度にホスピス給付を受けた受給者のうち,ナーシングホーム等の高齢者居住系施設で生活していた者は全体の31%にも達していたという注1)

 実際,筆者は,この何年間かかけて米国(イリノイ州)の中でも特に評判の高い高齢者居住系施設を15施設近く見てきたが,それらの施設の多くは,必ずと言っていいほど提携しているホスピス事業者があり,そのホスピス事業者と協力しながら施設内での看取りを行っていた注2).そして,これらの施設の関係者に話を聞くと,皆,「ホスピス事業者の協力なしに入居者の看取りを行うことは,体制の面からも質の面からも難しい」と口を揃えて言う.

参考文献

1)OIG, Medicare Hospice Care: Services Provided to Beneficiaries Residing in Nursing Facilities,(OEI-02-06-00223), 2009年4月, http://oig.hhs.gov/oei/reports/oei-02-06-00223.pdf
2)最近,米国の高齢者居住系施設のHPを見ると,提供サービスのところに「ホスピスケア」や「最後まで施設で過ごすことができます」という文言が載っているが,これは自前のサービスというよりは提携ホスピス事業者によるサービスの意味であることが少なくない.
3)ホスピス事業者と高齢者居住系施設の関係について規律しているのは,①ホスピス事業者がメディケアの指定事業者となるための参加条件について定めた「連邦規則」(Federal Register/Vol.70, No.202/Thursday, October20, 2005/Rules and Regulations, pp.70532-70548)と,②「運営(監査)マニュアル」の2種類である.後者の「運営(監査)マニュアル」は,メディケア・メディケイド・サービスセンターが,州の監査機関に対して連邦規則の解釈について通達したものであり,法的拘束力があるものではないが,連邦規則の内容を補完するものとして,ホスピス事業者や州の当該問題に関するガイドラインの根拠となっており,実務上大きな影響を与えている.
4)OIG, Medicare Hospice Care: Services Provided to Beneficiaries in Nursing Facilities : Compliance with Medicare Coverage Requirements,(OEI-02-06-00221), 2009年4月, http://oig.hhs.gov/oei/reports/oei-02-06-00221.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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