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文献詳細

雑誌文献

病院69巻4号

2010年04月発行

文献概要

特集 医療の拡大がもたらす社会の厚生―医療費亡国論再考 【論文集】適切な医療の拡大がもたらす社会の厚生

格差是正,景気浮揚,雇用誘発の視点から

著者: 大内講一1

所属機関: 1日本福祉大学

ページ範囲:P.260 - P.263

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 2010年度診療報酬改定の中医協審議は,再診料をめぐって診療側に内紛が生じ,この内紛を公益委員が調停するという異例の展開の中で終結した.政府予算案編成時に医療崩壊を解消するため総枠0.19%の引き上げが決定され,4,800億円と見込まれる引上げ分のほとんどを入院医療に配分する審議結果となった.マスコミはこれにより「勤務医の待遇改善」が可能と論じたが,ことはそれほど簡単ではない.

 勤務医の過酷な状況を改善する唯一の方策は,医師を補充することである.今回の改定により総額では病院の増収となるが,これを分配すると1病院当たりの増収は高が知れている.そのため各病院が医師を1人だけでも補充できるかどうかは大変疑問で,今回改定から期待される勤務医の待遇改善は,せいぜい「超勤手当の引上げ」に止まるように思われる.勤務医の抜本的な待遇改善には医療費財源のさらなる増加が必要である.

参考文献

1)田近栄治,尾形裕也(編著):次世代型医療制度改革,ミネルヴァ書房,2009
2)近藤克則:「健康格差社会」を生き抜く,朝日新書,2010
3)医療経済研究機構:医療と福祉の産業連関分析に関する研究報告書,2004
4)同上:医療と福祉・介護の産業連関に関する分析研究報告書,2010
5)同上:2005年度OECDのSHA手法に基づく保健医療支出推計,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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