文献詳細
文献概要
特集 医療の拡大がもたらす社会の厚生―医療費亡国論再考
「医療」はすぐれて政治問題である―制度改革の日米比較
著者: 竹森俊平1
所属機関: 1慶應義塾大学 経済学部
ページ範囲:P.284 - P.287
文献購入ページに移動 友人に「医療」を専門にしているフランス人の経済学者がいるが,彼は医療保険制度について,「どのような制度がその国にとってよいかは,結局,伝統によって決まる」という意見を持っている.もう10年以上も前にその意見を初めて聴いた時,正直「異論」を唱えたくなった.経済学者というのは社会の仕組みについて,理論的に最適なモデルがあると考える癖がある.筆者もかつてはそうで,医療保険制度についても最適なものがあるはずだと考えたのだ.
だが最近つくづく,やはり友人は正しく,筆者は誤っていたと感じている.「どのような医療保険制度がその国に適しているか」という問題は,「伝統」と切り離しては語れない.もし伝統を無視して,新しい制度を無理やり持ち込めば国民は抵抗する.時にはその抵抗により,政治システムそのものが動揺する.具体例を挙げよう.ごく最近の話だ.
だが最近つくづく,やはり友人は正しく,筆者は誤っていたと感じている.「どのような医療保険制度がその国に適しているか」という問題は,「伝統」と切り離しては語れない.もし伝統を無視して,新しい制度を無理やり持ち込めば国民は抵抗する.時にはその抵抗により,政治システムそのものが動揺する.具体例を挙げよう.ごく最近の話だ.
参考文献
1)村上正泰:医療崩壊の真犯人,PHP研究所,2009,pp162-163
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