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雑誌目次

雑誌文献

病院69巻6号

2010年06月発行

雑誌目次

特集 災害と病院

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.413 - P.413

 国土ならびに国民の生命,身体および財産を災害から保護するため,1961年の伊勢湾台風を契機に,災害基本法が制定された.以後防災に国や地方自治体がその責任として,積極的に関与し対応する体制が敷かれてきた.

 しかし,1995年1月の阪神・淡路大震災という都市型天災は防災に関する意識を変え,組織の危機管理体制の重要性に改めて大きな警鐘を鳴らした.そして,同年3月の地下鉄サリン事件という未曾有の都市型テロ災害の発生は,平和な国日本とてテロの恐怖から免れないということで,国民を,われわれ病院を震撼させた.さらにその後も大地震やそれに伴う津波,また風水害などの天災が内外各地で起き,加えて大規模事故,事件や紛争も起こらない年はないほど,内外で発生しているのである.これからも国際的な政情や地球温暖化が様々な災害を引き起こす可能性を孕んでいるといってよいかもしれないのである.

災害医療をめぐる最近の話題

著者: 山本保博

ページ範囲:P.414 - P.417

■病院と救急・災害医療

 救急・災害医療における最近のテーマは,pre hospital care,in hospital care,post hospital care(以下,pre hospital,in hospital,post hospital)という3要素をどうすれば適切に運用できるかである.病院前救護とも呼ばれるpre hospitalの現場では,1991年の救急救命士誕生以降,救急隊員の質の向上が常に図られてきた.特に,高齢化社会の進展に伴い,老人ホームなどの高齢者施設における心肺停止患者の増加は顕著で,救急車で搬送される傷病者のうち,65歳以上が40%以上を占めている.地域によっては50%を超えているところもあり,病院の選定困難事例の主な原因にもなっている.さらに,台風や地震など災害時でも,高齢者が犠牲になることは圧倒的に多く,台風などでは屋根からの転落,河川の上昇した水位を見に行っての溺死等,報道される犠牲者の多くは皆高齢者である.

 小児救急医療に関しては,小児科医不足のうえに,いわゆるモンスターペアレントも増加し,小児科を閉鎖してしまう病院も多くなってきた.そのため,地域医師会や地域病院会,小児科医会等に依頼し,小児の初期救急医療に関して基盤整備を充実させる努力が始まっている.また重篤な小児救急患者に対して高度医療を総合的に提供できる第三次救急医療ネットワークもでき上がりつつはあるが,小児救急医療の困難性はまだ続くに違いない.

国民保護法と災害医療

著者: 滝川伸輔

ページ範囲:P.443 - P.445

 今年は,阪神・淡路大震災と東京地下鉄サリン事件からいずれも15年目の年である.様々な行事,報道やテレビの企画は皆様のご記憶に新しいことと思う.JR福知山線脱線事故から5年目の年にも当たる.

 実は,最近の国民保護共同訓練では,有事の際に,より的確に国民の生命・身体の保護を行うため,災害医療の充実という観点を大幅に取り入れている.そして,国・地方公共団体・各実動機関に加え,医療関係者との連携強化を強く意識している.最近の実動訓練では,有事のNBC(Nuclear, Biological, Chemical)災害対応医療を中心とした救援体制の確立を図ることにより,平時の災害医療にも役立つ危機管理能力の向上に貢献することを重要なコンセプトとしている.

 本稿ではそうした状況を簡単に紹介し,医療従事者,病院関係者の皆様に,国民保護施策の意義を身近なものに感じ,国民保護訓練へのご関心を深めていただきたいと考えている.なお,文中意見にわたる部分は,政府としての公式見解ではなく筆者の個人的見解であることをあらかじめ申し上げておく.

原子力災害と病院の役割

著者: 明石真言

ページ範囲:P.446 - P.451

 災害対策基本法(昭和36年11月15日,最終改正:平成17年10月21日)によれば,災害は「暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波,噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう」とされている.この定義は医学的な観点からではないが,これらの災害では,われわれは身に降りかかる危険を認知することができる.またテロリズムや事故による化学物質の大量放出や体内への摂取が起これば,症状が早期に現れる.

 ところが,放射線に被ばくをしても,よほどの高線量でなければ症状がすぐに現れることはない.体内汚染であれば,より症状は現れにくい.つまり原子力災害や放射線による事故・テロリズムが起きても,そのこと自体がわかるまでに時間を要することが多い.また放射線や放射能量に関しても,定量性があるもののその単位を実感することは難しく,このことが被ばく医療をわかりにくいものとしている.

災害と情報管理

著者: 宮本正喜 ,   平松治彦

ページ範囲:P.452 - P.456

 早いもので,阪神・淡路大震災から15年が経過した.死者6,434人,負傷者33万3,109人,第2次世界大戦以降,日本で最も大きな災害であった.その後も大規模地震は何度と起こり,また,JR福知山線脱線事故のような鉄道災害も発生している.世界に目を向けても,アメリカ南部,インドネシア,ハイチ,チリなど世界のいたるところで水害や大規模地震が起こっている.

 現在,インターネットや携帯電話などIT・通信機器が発達し,こうした情報化の進歩は特に都市部で著しい.しかしその反面,阪神・淡路大震災では,都市機能だけでなく,都市部の情報機能もダメージを受けていた.本稿では,当時行ったアンケート調査や通信の状況に基づき,災害時の情報管理について述べる.

災害医療に協力する地域ボランティア活動のあり方

著者: 沢野次郎

ページ範囲:P.457 - P.459

 筆者の専門分野は,災害ボランティア活動論である.阪神・淡路大震災以後,災害ボランティア活動は防災白書においても「防災において,もはやボランティアはなくてはならない主体となっている」1)と位置づけられ,災害ボランティア活動は社会的に広く認められる存在として発展してきている.災害ボランティア活動がここまで発展してきた時代的背景には,言うまでもなく国内外における自然災害の多発とそれへの対応,さらには今後の災害発生の危険性が挙げられる.いわば自然災害多発国日本において,災害ボランティア活動の構築は避けて通れない課題となっているのである.

 本稿においては,一般の人があまり聞くことがない最近の災害ボランティア活動の傾向を簡単に紹介したうえで,災害医療と連携する地域の災害ボランティア活動のあり方について考察することにしたい.

【災害支援のあり方】

日本DMAT活動の実際

著者: 本間正人

ページ範囲:P.419 - P.421

 1995年に発生した阪神・淡路大震災では,初期医療体制の不備が問題となった.被災地内ではライフラインが途絶し,医療機関の多くは機能を失った.この地震では救命医療が必要な急性期において,現場に駆けつけることのできた医療チームの数は少なく,航空搬送も十分に行えなかった.平時の救急医療が提供できていれば救えたはずの命,いわゆる「防ぎえた災害死」が500人以上存在したことが,複数の研究者から指摘された.

 阪神・淡路大震災の後,厚生労働省(以下,厚労省)を中心に災害拠点病院,広域災害救急医療情報システム(EMIS),ドクターヘリなど様々な事業が導入された.しかし,2004年に発生した新潟県中越地震では,急性期に被災地内で救命医療を提供できる医療チームが十分とは言えず,その必要性があらためて認識され,日本DMATが誕生する契機となった.

民間病院としてのDMAT活動

著者: 玉井文洋 ,   森義顕

ページ範囲:P.422 - P.425

 今回,1民間病院としてのDMAT活動への取り組みを紹介するとともに,それに関わる経費についても言及する.多くの民間病院が医師不足などに悩む中,当院も生き残りをかけてどのような形で進むべきか模索中である.当院は病院の目標の1つである「地域貢献」のために,救急医療,災害医療への取り組みを積極的に行ってきた.その経緯と現状を報告する.

【災害発生~そのとき現場は】

阪神・淡路大震災の教訓

著者: 澤田勝寛

ページ範囲:P.426 - P.431

 平成7年1月17日午前5時46分,突然大きな地響きとともに,大地震が阪神淡路を襲った.マグニチュード7.2の直下型地震.死者6,434人,負傷者約4万3,000人,倒損壊家屋25万棟以上という,戦後最大の大災害となった.直接・間接的に多くの市民が様々な被害を被り,子どもや肉親を失った悲しみ,住み慣れた家が倒壊もしくは焼失した辛さ,長期間の避難所生活の苦しみ,それこそ筆舌に尽くしがたい苦難があった.

 そして,15年が経った.折に触れて,家族や病院職員とも地震の話をするが,その回数もめっきり少なくなった.病院の被害は甚大でその復興には心血を注いだつもりであるが,その時の辛さや苦しみはほとんど忘れてしまい,今となっては若干の懐かしさを覚える.このような感覚は,程度の差はあれ,決して私だけのものではないだろう.スタンダールは「思い出の美化作用」と言っているが,「時が経つ」ことの副次的なこの作用に感謝せずにはいられない.

兵庫県佐用町水害―被災した民間病院の対応

著者: 林充

ページ範囲:P.432 - P.435

 2009年8月9日夜,佐用川の氾濫により,当院は1階部分が最高で110cm浸水する被害を受けた.被害は佐用町全域に及んだものの,被災地域が限局していたため,近隣の医療機関による素早い対応がなされ,また災害拠点病院からはDMATチームが出動し,被災した住民の医療を引き受けてもらうことができた.水が引いた後は救急搬送もスムースであった.

 そのような中,病院の被災に対してはほとんど何の公的支援もなく,できる限りの医療活動を行いつつ,自力で立ち直るしかない状態であった.幸いにも,当院はいろいろな幸運に恵まれ,現在何とか復興できる見込みを得ているが,一般の民間病院がこうした被害を被ると,救急活動を続けるどころではなく,立ち直れなくなってしまうのではないかと考えている.

 本稿ではこうしたことをふまえ,当院における被災時の医療活動と,その後の復旧過程を報告したい.

JR福知山線列車事故への対応と課題

著者: 吉永和正

ページ範囲:P.436 - P.439

 1995年に発生した阪神・淡路大震災はわが国の災害医療を大きく変化させた.その10年後に,同じ地域で発生したのがJR福知山線列車事故(以下,JR事故)である.まさに10年間の災害医療への備えが試されることになった.結果的には,10年前に比べて効率的な医療が行われたが,多くの問題点も指摘されている.本稿ではこれらの点を受け入れ病院の視点から見直してゆきたい.

秋葉原無差別殺傷事件

著者: 布施明 ,   横田裕行

ページ範囲:P.440 - P.442

 「DMAT要請,千代田区外神田4-1,ソフマップ電気店の近く.刃物で3人が刺された模様.詳細不明」.2008年6月8日午後12時43分,当院の高度救命救急センター内に設置されたホットラインが鳴り,後に言う「秋葉原無差別殺傷事件」の第一報が当病院にもたらされた.日曜の昼下がり,医療スタッフは病棟でオーダーを書き,処置を行い,都内で開催されていた学会での発表準備をしていた.出動要請のホットラインに尋常ではないものを感じとった3人のスタッフがすぐさまドクターカーに向かい,要請から4分後,東京DMATとして現場へ向かうために病院を発った.12時55分,現場に到着したところ,最先着したA救急隊は必死にトリアージを行っていた.日曜の秋葉原の中心街で,歩行者天国(当時)となっていた路上は人,人,人でごった返していた.その真っ只中に,3人は飛び込んでいくことになる.

 以上が秋葉原無差別殺傷事件の初動である.当施設は本事案に対し,①東京DMATとして出動し,現地医療活動を行った.②同事案の2人の負傷者を当施設へ受け入れ,治療を行った.③東京消防庁災害救急情報センターに救急隊指導医として勤務していた当施設医師が,同事案に対してセンター内で助言を行った.

 本稿では本事案の当施設における経過を概説し,「事件」に対する医療機関の対応について考察する.

グラフ

1人でも多くを救うために―平成21年度全日病救急災害訓練 医療法人芳越会 ホウエツ病院

ページ範囲:P.401 - P.404

 全日本病院協会の救急・防災委員会では,阪神・淡路大震災の翌年より,毎年会員病院において救急災害訓練を行っている.14回目となる今回は徳島県美馬市の医療法人芳越会ホウエツ病院において実施され,徳島県立中央病院および田岡病院(ともに徳島市),徳島県医師会,美馬市消防・警察,さらに和歌山県立医科大学附属病院からもドクターヘリが参加する大規模なものとなった.

 これまでの救急災害訓練は地震を想定した内容であったが,今回はバスと乗用車による多重衝突事故を想定している.シナリオを担当した徳島県立中央病院救命救急センターの三村誠二医師に,その理由を聞いた.「地震などの広域災害と違って,交通事故はピンポイントで発生する集団災害です.徳島県も高速道路が通り,大規模な交通事故が起こる可能性は高い.事故現場に近い病院へ多数の患者が搬送されてきた時にどう対応するか,訓練しておくことが重要なのです」.

 ホウエツ病院は美馬市で唯一の2次救急病院.救命救急センターのある徳島県立中央病院や徳島赤十字病院までは車でも1時間はかかるため,このような事故が発生した際,適切にトリアージできるかは切実な問題だ.

連載 デザインの力・6

多様性としての障害

著者: 山本百合子

ページ範囲:P.406 - P.407

多様性の形

聴覚障害

 医療機関を訪れる人の状態は多様である.一時的なもの,長期にわたるものなどさまざまであるが,物理的な状態としては,歩けない,見えない,聞こえないなど「障害」と呼ばれるものと似ている.こうした多様性に配慮したユニバーサルデザインは,障害を持つ人の不便さを改善するとともに,多様な状況にある多くの人にとっても役立つものとなる.

 今月号では聴覚障害に注目して人の多様性に対する配慮を考えたい.

医療機関の再建・1【新連載】

医療機関を再建するには―連載開始にあたって

著者: 片山卓朗

ページ範囲:P.464 - P.466

質問

私は,父親から引き継いだ病床数80床の病院と100床の老人保健施設を経営しています.父は医療機器に関心が高かったため,病院には最新の医療機器を整え,それが評価されているのか,病院も老人保健施設もほぼ満床状態です.

しかし,患者の数とは対照的に,毎月の資金繰りに苦労しているのが現状です.調べてみると,私が父親から引き継いだ際に,既に借金が過大であることがわかりました.このような現状を,どのように立て直していけばいいのでしょうか.

より良い高齢者終末期ケア体制の構築に向けて・6

米国の高齢者終末期ケアの動向⑤―看護師による死亡確認・死亡診断

著者: 岡村世里奈

ページ範囲:P.467 - P.469

 現在,日本において,死亡診断書を作成できるのは医師のみである(医師法20条).そのため以前から,在宅医療や居住系介護施設の現場では,夜間に患者が亡くなった場合に来てくれる医師が見つからない,死亡時点から医師による死亡確認まで時間を要し,死後処置や弔いをスムーズに行うことができないといった問題が指摘されてきた.

 これらの問題は,在宅療養支援診療所の導入や医師法20条の「24時間」の解釈をめぐる混乱が落ち着いたことで最近は改善傾向にあるようにもみえる.しかし今後,在宅や居住系施設で亡くなる高齢者が飛躍的に増えると,この問題が遅かれ早かれ再燃することとなろう.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・46

退院・生活支援としての「リエゾンシステム」

著者: 権田吉儀

ページ範囲:P.470 - P.473

 急性期病院でのMSWの退院支援は,短期間で効率的に行うことが求められる.しかし実際には限られた時間の中で,とりあえずの退院先設定,制度紹介・サービス調整になりがちである.したがって,患者の生活上の問題点などを十分に認識したうえでの退院支援でなく,退院先への申送りは,単に医療上の残された課題を伝えることで終わってしまいかねない.切れ目のない退院支援を行うためには,MSW単独ではなく,多職種を巻き込んだ情報の共有と意識変革が必要であり,人材確保も課題となる.そのため当院では「リエゾンシステム」構築を目指し,それに伴いMSWの人員増がかなった.本稿ではその取り組みを紹介する.

院内サービスの新展開・2

―院内カフェ(後編)―病院内に『癒しの空間』を~独自の工夫~

著者: 町澤慎一

ページ範囲:P.474 - P.475

■病院内店舗ならではの工夫

 病院内店舗では,基本的に街中にある店舗と同様の設計としている.入院や通院により病院内で過ごす時間が増えた方々に対して,できるだけ街中のカフェにいるような雰囲気を味わってもらうためである.しかし一方で,医療現場を取り巻くソフト・ハード面に配慮することも必要であり,それぞれの病院のニーズに応えながら,病院内店舗らしい独自の取り組みや空間作りを行っている.以下にその具体例を紹介したい.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・33

―食はスピリチュアル~病院給食雑感(3)―わからないでしょう この気持ち

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.476 - P.477

 妻の入院は1997年10月だった.すでに10年以上の年月が経っている.当時お世話になった大学病院は,院内食堂が1つに,売店が1つあるだけ.言ってみれば大名商売で,サービスアップに努めようとする気配がない.接客態度は横柄で,病院外ではとてもやっていけそうにないが,1つしかないという強みがあった.その後,病院は大規模改修を行い,今では1つだった売店は2つとなり,院内食堂は3つもある.そのうち1つは有名ホテルの経営する,病院の最上階にある展望レストラン.メニューも日替わり定食から高級料理まで,ずらりと並ぶ.ライスの代わりにパンを選べば,お代わり自由という形式だ.だから,若い人はそこに行く.

 見舞い客が来た時も,そこに連れて行けば十分なもてなしができるので,患者家族には重宝がられている.しかし,なんという変わりようだ.病院も競争時代に入ると,手のひらを返したように変われるものなんだ.内部事情は知らないが,外から見るとそのように思える.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第185回

医療施設の整備手法

著者: 石田信之 ,   金波詩明

ページ範囲:P.478 - P.483

■病院建築の成り立ち

 日本の病院建築は,現在に至るまでに大きく2つのフェーズに分けることができる(図1).

 はじめに,第2次世界大戦後の復興の中で急務であった医療施設の量的拡充が図られ,そして建築計画学の分野で急速に発達してきた米国の病院管理学と共に,日本の病院は効率的に近代的な治療する施設であるべく効率性を追求されるようになった.

 次に,1985年「第1次医療法改正」が行われ,以降は患者サービスの向上という考え方による患者の獲得という目的のため,病院建築は“量”から“質・評価”へ移り変わってきている.

【復刻版】眼でみる病院の設備とはたらき・6

病院の舞台裏装置(後編)―防火・清掃

ページ範囲:P.484 - P.485

 防火はいずれの施設でも重要であるが,病院には身体精神ともに衰弱して傷つき易き――火災に遭えば死をまねくことさえある――患者が居るのであるから,管理者は常時防火のために周到なる計画をたて,その実現を期して全力を注がなければならない.

(中略)

 人の健康には排泄と清潔が重要であると同時に病院の健康にも清掃が大切である.清潔は感染防止に資するのは勿論だが,それが人の心理に及ぼす影響をも見のがしてはならない.清潔は人の心をも浄化する.

リレーエッセイ 医療の現場から

栄養士ってセンセイ?

著者: 東山幸恵

ページ範囲:P.487 - P.487

 病院ほど多様な国家資格を持つ専門職集団が同じ建物内で仕事をする施設は,他にそうそうあるものではありません.医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,などなど.私が職としている栄養士もその1つです.

 院内における栄養士の仕事としては,主に①入院患者の栄養管理(食事提供も含む),②患者への栄養教育,が挙げられます.治療の一環として食に関する行動実践を支援するのが病院における栄養教育です.

特別寄稿

テレビドラマの中の病院(後編)―米国ドラマ『ER』と韓国版『白い巨塔』・台湾ドラマ『ザ・ホスピタル』

著者: 渡部幹夫

ページ範囲:P.460 - P.463

 筆者は,米国ドラマ『ER』日本語版の医学監修をはじめ,韓国版『白い巨塔』,台湾ドラマ『ザ・ホスピタル(原題:白色巨塔)』の日本語版制作に関わってきた.

 前回ではドラマ『ER』をめぐる米国の医学ジャーナルでの論評を紹介した.今回は,日本の隣国である韓国と台湾にて制作された医療ドラマに見られる東アジアの医療風土とメディアについて,米国と比較しての小論を試みる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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