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特集 災害と病院
災害医療をめぐる最近の話題
著者: 山本保博12
所属機関: 1日本私立学校振興・共済事業団 東京臨海病院 2日本集団災害医学会
ページ範囲:P.414 - P.417
文献購入ページに移動救急・災害医療における最近のテーマは,pre hospital care,in hospital care,post hospital care(以下,pre hospital,in hospital,post hospital)という3要素をどうすれば適切に運用できるかである.病院前救護とも呼ばれるpre hospitalの現場では,1991年の救急救命士誕生以降,救急隊員の質の向上が常に図られてきた.特に,高齢化社会の進展に伴い,老人ホームなどの高齢者施設における心肺停止患者の増加は顕著で,救急車で搬送される傷病者のうち,65歳以上が40%以上を占めている.地域によっては50%を超えているところもあり,病院の選定困難事例の主な原因にもなっている.さらに,台風や地震など災害時でも,高齢者が犠牲になることは圧倒的に多く,台風などでは屋根からの転落,河川の上昇した水位を見に行っての溺死等,報道される犠牲者の多くは皆高齢者である.
小児救急医療に関しては,小児科医不足のうえに,いわゆるモンスターペアレントも増加し,小児科を閉鎖してしまう病院も多くなってきた.そのため,地域医師会や地域病院会,小児科医会等に依頼し,小児の初期救急医療に関して基盤整備を充実させる努力が始まっている.また重篤な小児救急患者に対して高度医療を総合的に提供できる第三次救急医療ネットワークもでき上がりつつはあるが,小児救急医療の困難性はまだ続くに違いない.
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