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雑誌目次

雑誌文献

病院7巻1号

1952年07月発行

雑誌目次

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病院隨想

著者: 島村喜久治

ページ範囲:P.2 - P.5

 病院と呼ばれるものにもいろいろあつて,歐米のホテルなみのものからモクチンホテルそのものにいたるまで,さまざまである。モクチンホテルを,歐米ホテルなみのところまで引き上げようという努力が,この雑誌の刊行となつたろうが,私のような,モクチンホテルのマネージャーにしてみれば,それなりの言分はいくらでもある。どうしてくれというのではない。そんなことを,いくら言つても始まらぬことは,マネージヤー,よく心えているつもりである。これだけの問題をかかえて,しかも,モクチンホテルはつぶれるわけには行かぬということを,張調したいだけである。

病院長に愬う

著者: 山本美智子

ページ範囲:P.6 - P.9

 ある看護婦學校の學生に,「病院で一番大切に考えなければならないのは,誰か」を看護倫理の試驗問題として,きいて見たら,「病院長」というのが,過半數を占めていたとの事です。この答を正解としたか,間違いとしたか,どうかについては,はつきりと聞かなかつたのですが,私は,これは考えさせられる問題だと思う。大切,といふ意味のとり方にもよりますが少くとも,病院の目的が,社會の患者を診療し,看護して,健康の恢復を計り,更に進んで人々の健康増進への貢献であつてその事が明確に,看護婦學生に教え込まれて居り,また病院の運營が,實際に其の目的達成のために行われておれば,この問題には,「患者さん」と學生はすぐ答えたでしよう。しかし實際のところ病院が,誰のために存在しているのか,病院職員の多數が,よくわかつていない現在では,看護婦學生だけを,それだからといつて責めることは無理というものでしよう。
 試みに,病院の職員に,病院の目的は何ですか?ときいて見たら,幾人が正しく答える事でしよう。

病棟はどうあるべきか

著者: 福田朝生

ページ範囲:P.10 - P.15

まえがき
 建築はすべてそれを使用し,或はその中に住む人々の生活に適合した快適で且つ能率的なものであることが先づ大切なことゝ考えられます。住宅でもたとえ外觀は貧しくとも,その中に住む人々が氣持よく生活出來れば第一の最も大切な役目を果していることゝなるでしよう。所謂美術的には價値のある建物でも,それを使用する人々の生活に支障があつては建築本來の目的に外れたものと見なければなりません。
 病院建築も全くその通りだと考えられます。之を使用する患者・醫師・職員・看護婦・其の他の從業員或いは又見舞客等すべての人々が使いよく且快いものでなければならない筈です。良い病院建築とはこれらの條件を具えたものと考えて差支ないでしよう。

アイソトープ研究室の建築計畫

著者: 山崎三郞 ,   竹村立史

ページ範囲:P.16 - P.23

 之は昨年東大附屬病院の一部に放射性同位原素綜合研究所が設置された時にその建築設計に當つて調査した事柄の一部をその後の資料を加えて將來同種の建築の計畫をされる方々の參考として記述したものである。
1 放射性アイトソープの取扱(實驗室の設計)

炊事場と飯蒸罐

著者: 四十九院梧樓

ページ範囲:P.24 - P.30

 看護婦と食事の問題さえ片ずけば療養所の困難の大半が解決されるだろうというのが私の持論である。
 ところが2つとも何時になつたら解決できるか,今のところ全くあてのない話であるが,關係各方面の理解によつて最近新しい炊事場を作ることが出來たので,多年の懸案の一部だけが解決に近づいた。病床が増築され患者の内容が複雑になつて來たのに建設當時の飯場式の手狹い,非能率的な,不衞生な古い炊事場ではその日暮しさえ,むつかしくなつてしまつていたのだから,味や榮養への努力などは殆んどプログラムによる餘地さえなかつたのである。古材をつかつての擴張工事ではあつたが,特に集團炊事の專門家の熱心な協力を得たことと,厚生省整備課の人達が私共の氣儘な注文に同情を以て協調してくれたおかげで,大體思い通りの機能が發揮できるようなものとなり面目を一新したのである。

醫療社會事業技術論(I)

著者: 松尾友重

ページ範囲:P.31 - P.36

 最近醫療社會事業について一般の關心が高まつて來た故か醫療社會事業についての論議が多く聞かれるようになつた。例えば「醫療社會事業とはSocial Case Workの一タイプである」とか,「醫療保護事業という形で表現されるときは全醫療組織を含み,醫療社會事業といわれるときは病院内における社會事業部の活動範園を意味するものである」とか,或いは醫療社會事業は「醫療における新しい方式の一つである」とか,いや「純粋な社會事業の一部門」なのだ,といつた樣に。その何れもが夫々の立場から異なつた視角に於て語られ主張されて居るものであり,それだけに醫療社會事業の今後の發展の上に大きな期待がかけられて居るわけである。とにかく醫療社會事業はそれがどの樣な形式と内容を持つにせよこれからの醫療機關において缺くことの出來ない裝置として要請されることは確かである。社會保障制度という畫期的な制度が完全に實施される時には一層このような樣能が要求されるであろうし又缺いてはならぬものなのである。さて今まで醫療社會事業の技術というと單にMedical Case Workのみが語られ,あたかもそれ以外の技術はないかの如き状態であつた。もとよりCase Workが醫療社會事業の技術において占める地位は重要であり,これを缺いては近代的醫療社會事業は成立し得ないことはいうまでもないことである。然し醫療社會事業はCase Workのみで成立するものではない。

病院關係人事消息

ページ範囲:P.37 - P.37

◇宇佐美 健一氏 名古屋大學附屬病院長吉川仲教授(産婦人科)が辭任,内科學教授の氏が後任院長に就任した。宇佐美新院長は愛知縣人,大正2年愛知醫專校を卒業し,名大教授に進み現在に至つた人で本年62歳。
◇日置 達雄氏 國立大阪療養所長の民は徳島市民病院長に轉任。同時に大阪大學講師を委嘱。新住所は徳島市北福島町1の1。氏は鳥取縣人,昭和7年阪大醫學部卒業,終戰當時は滿洲黑龍江省富拉爾基療養所長であつた。

メヂカル・ソシアルワーカー執務基準(2)

ページ範囲:P.38 - P.48

執務
一.執務の態度
 1.人間が個々ばらばらに生きるものではなく運命を一つにして生きるものであるという精神がこの仕事の土臺になつている。ケースの取扱いに當つては,この精神の上に立つて,冷靜な,また速かな判斷の下に,科學と叡智とに立脚した處置を行う。
 2.患者またはその家族に對して温かい心と忍耐とが必要である。何よりも,その人々から信頼され協力して貰うことが大切である。また,一身上の秘密は嚴重に守らなければならない。

見學記—ホテル

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.49 - P.51

 私たちの頭には病院といえばたゞ醫療ということだけが,浮かんでくるが新しい病院管理の教えるところによれば,病院は患者へのサービスと醫療とを合せ持つところなのである。Hospitalという言葉はHotelと近縁關係にあるそうだが,病院の性格にはサービスということが根本になつているというのは眞實であろう。私たちは病院におけるサービスを説かれたとき,はじめは取りつきようのない奇異の感さえ持つたが,病院の在り方を反省してみれば極めてありふれた事がらであるのに氣付き,今まで取り上げられることの少かつた點をむしろおかしく思う位であつた。
 健康な人々はホテルとかデパートとか設備やサービスの良いところへ行くが一度病人になると設備もサービスも不十会な病院に押しこめられる日本の状況はおかしいと言われてみればそれもそうだと思われる。なるほどデパートには冷房裝置はあつても病人のための病院で冷房裝置をそなえている病院が日本にあるだろうか,變なたとえだが,よくいらつしやいましたとおしぼりを持つて來そうな病院もみあたらない。しかし身も心も弱つている病人にとつてみれば温かく迎えいれられることは注射をされるよりはありがたいに違いない。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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