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雑誌目次

雑誌文献

病院7巻5号

1952年11月発行

雑誌目次

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我國の結核療養所の將來—特に醫療及び管理面からの考察

著者: 牧野進

ページ範囲:P.2 - P.4

 現在の日本における結核療養所が,戰前のそれに比して,收容患者の病状とそれに應する醫療内容が全く一變したといつてよい程に相違する事は,肺結核の診療にたずさわる諸家の一致した見解であろう。
 例をわれわれの清瀬病院にとつても,これは明らかである。即ち開設された昭和6年から10年位の間では,すべての患者が殆んど大氣安靜療法を唯一の頼みとしてひたすら療養していたので,醫療面では殆んど見るべきものも無かつたのであつた。又當時の肺結核に對する認識不足も相待つて病症も重症となつてから,止むを得ず入院してくるという状態であつたので,入院後に短時日に死亡する患者も多くあつたのである。試みに昭和13年の死亡者をみると,年間在院患者1048名に對し,死亡は371名で,在院患者に對する死亡率は35.4%の多數に達する。そしてこれらの死亡者の在院期間を調べると,半數は6ヵ月以内であり,70%が1ヵ年以内である。

病院の空氣調整法

著者: 平野彦兵衞

ページ範囲:P.6 - P.11

病院とは
 患者が病氣治療のために,安息を欲し,その苦悩から解放され,病氣の全快を期待する場處であり,然も病院としては,合理的な經營を續け,或は病院に寄與された寄附資金の完全な管理を完うする場所である。この意圖を充分満足させるためには,病院の經營陣と治療陣の充實及び設備の横充とをもつて,可及的多數の患者の満足な利用に期待を掛けるべきであろう。これまでとかく見逃がされがちだつたのは,この室氣調整の問題てある。

綜合病院の設計と構造(1)—連邦安全機關,公衆衞生局,病院施設課によつて準備された處の,病院機能に關係した病院施設を,物理學的に考察した決定的研究

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.12 - P.16

 本書は,米國政府の行う病院建築行政の指導書であると云われる。又この政府はその設計を民間建築事務所に依託し,唯設計基準とその指針書を研究作成することによつて,病院建築の新築,改善を全國的に指導して居るとも云われる。
 吾が國に於ても,これが日本版の研究作成の氣運にあるが,ここには一段の病院及びその建築關係者の參考に供すべく,上記表題の米國書を飜譯して,分割掲載するものである。

精神病院經營資料

著者: 高岡功

ページ範囲:P.17 - P.22

 これは昭和27年2月頃,全國約30の精神病院から提供していたゞいたものを集計したものである。病院中精神病院は,私立が多く,規模,設備サービスとも一般的には劣惡である。今迄この樣な状態を分析したものが發表されぬため,徒らにこの状態が批判もされず,放置されて來た。「こうした方がよい」「かくあるべし」と云う抽象的論文もあるが,先づもつて實際數字を示し,比較させた方がよいのではないだろうか。
 經營者は醫療と云う社會的使命を達するため,先ず經濟的地盤を確立することに關心を持つであろう。往々,自から墓穴を掘る如き亂脈な經營内容を持つているにも拘らず,現状を知らぬ場合もある。かゝる場合,この資料が恣意的であつたとしても,自己病院の現状をふり返つて見るだけの資料を必要とすると思う。

外來勤務看護婦に關する意見

著者: 菅野正雄

ページ範囲:P.23 - P.24

 近頃病院の社會性と謂う事に就いて一般の認識が深められ,良い病院は社會を良くする事に役立つと云う意味から病院の在り方に就いて種々研究されて來て居る。この病院改善の「テーマ」としては管理者の再教育を始め,高等看護學院制の創設,完全給食,完全看護の問題から,中央材料室臨床検査室,又公的醫療機關としての問題等數多く採り擧げられ,何れも相當な研究や對策が講ぜられて居る。之等の問題は非常に多方面に亙つて居るけれ共,其中に一貫して居る事柄がある。
 それはどう云う風に病院を運營すれば患者の爲になるかと云う事である。夫れには先ず醫師は專ら適正であつて,最も進歩せる科學的醫療と療養の指導を行う。看護婦は之れを助けて完全な看護と療養上の指導を與える。そして管理者は之等を實行可能な樣に運營すると云う事になると思う。

米國に於ける病院増加の趨勢

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.25 - P.29

 私はかねてから米國において年々建設され増加する病院の數量がどの樣であるか知りたいと思つていましたが,たまたま1952,3,The Mordern Hospital誌にLouis S. Reed氏が「病院建設の趨勢」(Hospital Construction Trends)と題して記載しておられる小論文を見い出し我が國のそれと比較して甚だ興味深く讀みましたので,その大要を此所に御紹介することにしました。なお著者Louis S. Reed氏はChief, Medical Economics, Branch Division of Medical and Hospital Resources, Public Health Service, Federal Security Agency, Washington, D. C. という肩書であるから,我が國にあるとすれば厚生省醫務病院資源局の醫療經濟部長とでもいうべき役柄でしようか。もとより現在わが國にこの樣な部があるわけではありません。
 この小論文の目的とする所は,現在手もとにあつて使用出來る統計資料を利用して,米國における病院建設の量と種類とを明らかにしようということである。

慢性疾患患者收容の近代的米國病院

ページ範囲:P.30 - P.30

 此病院は桑港の大平洋岸の陸地の狹き半島形を爲した一角に建てられ,海に面し風光明曙の場所でMaimonides保健所の所麗である。
 建築技師は獨逸で有名だつた,今米國に居住し居るMendelshon氏の設計且施行になるもので最近出來上つたのである。

G.M.計數管による散亂X線の測定について

著者: 長谷川功 ,   寺崎恒信 ,   阿部正二朗 ,   山邊敬之

ページ範囲:P.31 - P.38

1.序
 近年醫學方面の診斷或は治療,工業方面の検査等にX線を用いることが益々盛んになつて來た。またラヂオ・アイソトープを用いた種々の研究も次第に數を増して來た。それにつれてこれらの業務或は實驗に携わる技術者或は研究者を各種の放射線から防禦することが色々な面で問題になつて來ている。然し個々の現場の防禦對策はまだ不充分なことが多く,實際に現場で働いている人達が不安を感じていても,果してどれ位の放射線をあびているかと云う詳しい測定は殆ど行われていない。また相當の對策が講ぜられていても,それで充分に安全であるかどうかも分つていないことが多い。このたび我々が行つたGeiger管による測定の結果によれば,山形縣で一派の大病院でも相當に危險な状態にあることが分つた。この樣なことは重大な社會問題であり,一刻も早く各現場で完全な測定を行い,適當な對策を講することが急務であると思う。

アメリカ婦人一生態

著者: 島內武文

ページ範囲:P.39 - P.40

 私のアメリカ便りも生活標準や自動車の話等と,病院管理とは縁遠い話がつゞいたので,少し近い話しにもつてゆこうと思う。
 アメリカで私が最も世話になつた女の人は——等というと耳をそばだてる人もあるだろうが——それは各所の秘書であつた。總長,學部長,外人學生課長や教授,病院の院長副院長等に會うためには,先づ秘書を經る事が必要であつた。そしてこれ等の人々は秘書をおく事によつて,その能力を數倍していると思われた。世間にありふれたものを,今更秘書論でもあるまいが,見渡した所日本では教授院長の方々で秘書をチヤンとおいている方が少いので,こゝに書く事も無駄ではないと考える。

見學記—中央材料室

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.41 - P.42

 Central supplyを中央材料室,中央補給室などという名稱ですでに實施している病院も少くないと思う。中央材料室のあり方はいろいろあると思うが,私たちは東京都立廣尾病院をおとずれ院長の原先生から親しく中央材料室のお話を承わつたのでその見學記を記してみたいと思う。たゞはじめにお斷りしておきたいのは,原先生は廣尾病院の中央材料室をモデルとして示されるお考えは全くなく見學記などむしろ御迷惑のことと思われるが私たちが勝手に見たまゝ聞いたまゝを記してみることにしたにすぎないのである。
 東京都立廣尾病院は240床の綜合病院である。案内を乞うと院長先生みずから中央材料室へでかけて説明して下された。「赤十字病院では昭和21年の夏に作つており私のところがはじめではないのですが」とことわられ,「作らなければならないものだとは知らなかつたが,作つてみたら實に便利なものです」とはじめに結論を出される。はじめはどんなものか見當がつかず1年ほど檢討をしたが,豫算が通つてやつと25年の1月から仕事を始めたのだそうである。アメリカ人が實際にやつでいるところをみようと舊同愛病院に行つたところ,こゝでは看護用品の倉庫のようなものであつて考えていたのとは全く違つていた。しかし第49病院では又別のやり方をしており,大體それを見本にしてはじめたのだそうである。

某病院の厨房管理を見る

著者: 安藤勝彌

ページ範囲:P.42 - P.44

 メインキツチンの作業臺,配膳臺はステンレス張りで他の棚類も總てペイント塗裝されている。煮物釜の上部もステンレスである。ガスレンヂ,炊飯器,煮物釜は汚れ目なく,眞新しく塗裝され,調理場の入口には消毒用手洗器がある。床はセメントモルタルだが,適當な勾配で水洗されて,足あと一つない。壁天井も白系統オイルペイントで手入してあるし,螢光燈40W數個所,豫備にガス燈もついている。ガスレンヂ,煮物釜の上の換氣裝置は半ジヨウゴ形として,自然換氣及び換氣フアンでやつているから暑くない。周園の窓及び出入口は總て金網張になつている。このため蠅はいない。
 仕込場には,調理機,皮剥機,魚焼器,洗米器,電氣冷藏庫が完備されている。米ざるや飯入れ半切とか厨具類は總て棚に整理されている。床はきれいに水洗され,ゴミ一つなく,手洗器もついている。排水開渠が完備され,汚水がたまらず,ドブ鼠の出入も出來ないし臭氣もない。合成調理機のアタツチメントの幾種類かは,壁仕切の棚に入れ一つ一つきれいになつている。各種の疱丁は疱丁立に手入して並べてある。疱丁には赤錆なく光つている。仕込場と穀物倉庫,風通しのよい野菜倉庫は連絡よくなつている。外部から仕入れした物は坪所で檢量できるようになつている。これらの倉庫の周圍はたゝきで水洗いして奇麗。

朝鮮に於ける連合軍疾病の状況

著者: 森島

ページ範囲:P.45 - P.45

 以下は米陸軍省醫務局軍醫總監George E. Armstrong氏の朝鮮方面に於ける疾病の状況報告である。
 1.蚊性疾患は非常に多發した1943年では比島方面に於ける米軍の罹病者は年間1000名中696名であつたのに朝鮮では15〜16名に激減した。然し同方面から歸還した米軍勇士に6000名も多發し皆マラリアであつた。之等は6〜9ヵ月の潜伏期の後で發病したのであつた。そこで新藥PrimaquineというChloroquine治療藥を用い大部分治癒した。其爲今度は戰線から歸える船中生活14日間内に毎日本藥一錠宛の内服を爲さしめ,本病發症は殆んど無くなつた。血中へあるマラリア病原體が死滅したのだろうと思う。ただ内服に努めなかつた者に本病の發症を起したものがあつた。

Dr. Moriya's Recordtape

ページ範囲:P.48 - P.49

5.學用患者と研究小切手
 先日も大學病院研究會の席上で,大學病院の患者一名當りの經費が高いと云う事から,それは研究用の治療が入つているのだろうとか,いや大學ならそれ位の診療は料金はとれなくても良心的はやらねばならぬだろうと議諭した事があつた。
 今の醫療體系ではたとえ大學でも診療行爲に對しては收入があるのが原則である。しかし,現在健保で認めない大量ペニシリン療法等は患者に支拂能力がなくても行いたい。又,特に大量の調査をする爲にX線をうつすとか,血液檢査をやる時は,料金を取る事が出來ぬ。又學生の教材用に種々の患者を用意するにはどうしても學用患者として無料にする必要もあろう。この樣な場合,從來の樣にただ單に料金を取らぬと云うだけでは色々と不都合がおきて來る。これからの病院の經理の合理化では常に仕事高即ち收入と經費特に材料を見合にしなければならぬが,この時材料だけ消費して收入がないと,尻が合わぬ事になる。もつとも尻が合わぬ事を理由に不合理性をカンフラーヂする手もあるが。

病院關係人事消息

ページ範囲:P.50 - P.50

◇林 道 倫氏 岡山大學長を辭し,岡山市三番町12番地に林精神病院を開設し,林精神醫學研究所を併發し精神神經疾患の治療と研究とに從事することとなつた。なお自宅は從前通りの岡山市四番町37番地である。
◇山口大九郞氏 國立療養所大湊病院長に就任。

編集後記

著者: 小西

ページ範囲:P.56 - P.56

 我が國が長期に亙る占領から解放されて丁度半年,總選擧も終つて新しく選ばれた國會並びに政府に占領行政の殘滓を拂拭した清新な政治が期待されている。國際關係の微妙な今日,獨立國家と稱しても程度の差こそあれ何らかの制約や義務を荷せられることは,今日世界の大多數の國家が兔がれ得ない運命にある。併し我が國では,過ぐる半年の間に,所謂修整と稱する逆コース現象がはやいくつか現出している。かかる傾向は,今後とも更に助長されるであろうことは想像に難くない。保健衞生關係は,占領期間中にいくつかのエポツクメーキングな業績を擧げたが,連合軍の後楯がなくなつた今日に於ては,勢力均衡の變動によつて樂觀を許さぬようになつている。厚生省や府縣衞生部の存在すら一時は危殆に瀕した事實に徴しても,將來とも全く安心する譯には行かぬ我が國の現状である。この邊の趨勢については,新政府の動向を我々は嚴重に見守る必要があろう。
 この間にあつて,病院問題については愈各方面の關心が昻まりつゝある情勢にあることは御同慶に堪えない。大學病院の改革も遲蒔乍ら徐々に具體化せんとする趨勢にあるし,我が國の病院問題も愈核心に觸れて來たのを感ずる。近代病院の使命が漸次民衆に理解されようとしているのも心強い。併し病院内の具體的な問題となるとまだ未解決な分野が少くない。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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