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雑誌目次

雑誌文献

病院70巻1号

2011年01月発行

雑誌目次

特集 病気と社会を考える

巻頭言

著者: 広井良典

ページ範囲:P.13 - P.13

 そもそも病気とはいったい何だろうか.また,一体なぜ人は病気になるのか.新年号ということもあり,こうした普段あまり発することがないような,自明ともいうべき問いについて考えてみたい.

 いま掲げたような問いは,一見抽象的な話題のようにも響くが,「現代の病」をめぐる状況を考えると実質的な重要性を持っており,また,近年の最先端とも言える様々な研究分野が新たな光をあてて探求しているテーマでもある.例えば90年代頃から台頭してきた進化医学と呼ばれる分野は,病気というものを人間とそれを取り巻く環境とのギャップから捉えるという,根本的な視点を提起している(本特集の冒頭の井村裕夫氏の論文参照).また近年,社会疫学と呼ばれる分野が発展し,例えばストレス,労働のあり方,経済状態,コミュニティのつながりなど,「健康ないし病気の社会的決定要因(social determinants of health)」,あるいは病気の生成と社会的・経済的な要因との関わりが明らかにされつつある(岩永・近藤論文参照).

人はなぜ病気になるのか―進化医学の視点から見た病因論

著者: 井村裕夫

ページ範囲:P.14 - P.18

 現在の医学は病気の原因を明らかにし,それに基づいて診断,治療を行うことを王道としている.例えばインフルエンザの場合には,咽頭からウイルスを検出し,陽性なら抗ウイルス治療を行う.この場合,原因は一見して明らかなように見える.しかし,インフルエンザの流行期に,なぜ一部の人が罹患するのかは明確には説明できない.その背景には,きわめて複雑な免疫機能の個人差と既往の感染歴があるからである.

 慢性疾患の場合には,原因の解明はより難しくなる.例えば痛風を例に挙げてみよう.この病気は血液中に尿酸が増加し,それが何らかの理由で関節内に析出して起こる結晶性関節炎である.したがって原因は高尿酸血症であるということができる.しかしなぜ一部の人に高尿酸血症が起こるのか,完全には明らかになっていない.そもそも血清尿酸値は動物にくらべてヒトでは著しく高い値である.これはヒトと一部の霊長類で,尿酸酸化酵素の遺伝子に突然変異が起こって機能を失っているからである.細菌以来,生物が連綿として受け継いできたこの酵素をなぜ失ったかは,明らかでない.しかしそこに痛風の遠因があると言える.それを理解しようとするのが進化医学である.

健康の社会的決定要因への介入―イギリスNHSの現場に見る健康格差対策

著者: 岩永直子 ,   近藤克則

ページ範囲:P.19 - P.23

 病気は,遺伝子や生活習慣などの生物学的要因以外にも,「社会」の影響も受けて発症する.「健康の社会的決定要因」には,低所得や失業などの社会経済状態や,医療政策をはじめとする制度・政策のありようなどが含まれる.例えば,うつには所得水準との関連が認められ,所得の低い層では高い層に比べうつ状態が6.9倍も多いことが報告されている1).また,窓口負担額の引き上げに伴って,低所得者ほど受診を我慢しており2),男性では死亡率で3倍もの健康格差があることが日本の高齢者でも確認されている3)

 このような「健康格差」あるいは,その原因である「健康の社会的決定要因」の重要性が再認識されるにつれ,欧米では対策がとられ始めている.例えば,欧州連合(EU)では,それを単独テーマとするサミットが開かれ,政府の対策方針文書が英国などで発表され,スウェーデンは公衆衛生法の改正を行った4).米国でも保健・人間サービス省(U.S.Department of Health and Human Services)のAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)は医療格差報告書(The National Healthcare Disparities Report)5)を出し,CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は,そのウェブサイトに健康格差(Health Disparities)のコーナーを設けている.そしてWHOは2009年の総会で,健康格差対策に取り組むことを決議するに至っている6)

人生90年時代の医療

著者: 秋山弘子

ページ範囲:P.24 - P.27

■先例のない長寿社会

 日本は世界で一番長生きの国である.第2次大戦後まもない1950年には日本の平均寿命は50年であり,65歳以上の高齢者は人口の5%にすぎなかった.20世紀後半に平均寿命の30年延長という驚異的な「寿命革命」を達成した.厚生労働省の平成20年度簡易生命表によると,日本人男性の平均寿命は79.29歳,女性は86.05歳であり,人生90年と言われる時代になった.

 現在,高齢者は人口の23%であるが,20年先の2030年には,実に,人口の3分の1を占める.そのうちでも急速に増加するのが,欧米で「人生第4期」(The Fourth Age)と呼ばれる75歳以上の人口である.図11)に見られるように,20年間で倍増(1,000万人増)し,人口の2割を占める.「人生第3期」(The Third Age)(65~74歳)の人口を数においてはるかに凌ぐ.さらに,2030年には,1割の高齢者が認知症,4割が一人暮らしをしていると予測されている.つまり,80歳,90歳代の一人暮らしが一般的になる.

新成長戦略と医療・介護・健康関連分野における新たな産業の創出

著者: 木村拓也

ページ範囲:P.28 - P.31

 わが国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えている(図1).他方で,高齢化が進行しているのは,日本だけではない.2030年にもなれば,欧米先進国のみならず,新興国までもが日本の背中を追ってくる.今後,日本が高齢化時代の経済成長・社会保障モデルをどう打ち立てていくのか,世界は期待をもって見つめている.

幸福度と医療・病院

著者: 西川太一郎

ページ範囲:P.32 - P.34

 日頃は意識しないが,いったん損なわれるとその大切さを痛切に思い知らされるもの,それが健康である.人々の幸福感を構成する多くの要素の中で,健康は,最も比重が重いが自覚されにくい潜在的な性格を有するものであり,そうした意味では,災害や事故,犯罪,さらには戦争などと類似した属性をもつと言えよう.

 しかし一方では,もし不治の病に侵されたらとの不安感に苛まれ,驚くほどに禁欲的な生活を送るという人も少なくない.医療の飛躍的な進歩により,多くの疾病が克服された現代においても,依然,治療が困難な病気が存在する.そうした病魔に対する不安感が,幸福度を著しく低下させることは想像に難くない.

過重労働とうつ病

著者: 川人博 ,   須田洋平

ページ範囲:P.36 - P.39

 2010年5月,日本精神神経学会等4学会が共同宣言を採択し,「うつ病は国家的課題」であるとして,様々な対策を提言した.他方,厚生労働省は,2010年9月,このような自殺ないしうつ病による経済的損失が2009年には推計で2兆7,000億円に上ることを明らかにした.このように,うつ病が日本社会に対して極めて深刻な影響を与えていることが明らかになってきている.

 また,自殺はうつ病と大きな関連性があると言われているところ,2010年5月に警察庁生活安全局地域課が発表した「平成21年中における自殺の概要資料」によると,2009年の日本の自殺者数は,3万2,845人(人口10万人当たりの自殺率は25.8人)となっており,12年連続で自殺者数が3万人を超えている.

【事例】

双極Ⅱ型障害のためのリワークプログラム

著者: 奥山真司 ,   秋山剛

ページ範囲:P.41 - P.44

■新たな課題「双極Ⅱ型障害」

 これまで気分障害については,「うつ」にのみ注意が向けられており,一生懸命仕事をしすぎた過労から「うつ」になる人は,「几帳面」「メランコリー型」といった特徴からのみ捉えられてきた.ところが最近になって,「うつ」の他に,少し活動性が高くなる「軽躁」の時期がある双極Ⅱ型障害(以下,双極Ⅱ型)が,人口の3.5~5.6%程度存在することが明らかになってきた1,2).しかも,双極Ⅱ型の人は「うつ」が遷延したり,自殺念慮を抱きやすいなどの傾向があり,双極Ⅱ型への治療の重要性が指摘されている1,2)

 精神科日常臨床の経験から言うと,双極Ⅱ型の病態は大企業の高学歴ホワイトワーカーの「うつ病・うつ状態」に多く認められる印象がある.これらの人たちは,しばしば職場で業績を上げ,わが国の産業・経済を支えており,しかも,休職から復職する時に,高度かつ高負荷の業務に従事することが多いようである.したがって,双極Ⅱ型の人たちへの復職支援を含む治療プログラムの必要性は,単極型うつ病の人たち以上に高いと考えられる.しかし,こういった双極Ⅱ型に特化した治療プログラムは,ほとんど見られないのが現状である.

在宅医療を中心とした「人と社会が繋がる地域コミュニティ」再生構想

著者: 武藤真祐

ページ範囲:P.46 - P.48

■祐ホームクリニックについて

 祐ホームクリニックは,2010年1月に開設した在宅医療専門の診療所である.文京区千石に所在するも,約100m先は豊島区,約1.3km先は北区,約2km先には荒川区という立地であり,当院はこの4区を主たる対応エリアと設定している.

 開業から11か月経過した現在,医師14人(非常勤含む),看護師および事務スタッフ12人の合計26人の体制にて,地域医療に取り組んでいる.

無縁社会への処方箋―孤独死防止への先駆的取り組み

著者: 山中修

ページ範囲:P.50 - P.53

 “医療崩壊”と声高に叫ばれて久しいが,崩壊しているのは,医療だけではないようだ.自殺が増えている.年金を目的に,親を白骨粉砕化している.男性と遊ぶために母親業を放棄している.“日本崩壊”と言わざるをえない.高齢社会・無縁社会・貧困格差の問題は,もはや国の質が問われる社会課題となっている.100歳以上の高齢者の生存安否さえ不明のまま,年金の授受が行われている.これから数年のうちに団塊世代が高齢者群に大挙に参入する.医療・年金・福祉の問題はさらに膨張・加速化され,国としてパニックにさえなりかねない.

 2015年には日本の人口の4人に1人が65歳以上に,2025年には3人に1人が高齢者となる.かつてこの国が遭遇しなかった事態を迎えることになる.どう対応すべきなのだろう? 今,医療者として私たちはどこに立ち,何をすべきなのだろうか? 高齢者や社会的弱者への医療のあり方は? 考えてみなければならない時期にきている.

グラフ

自分らしい生活を取り戻す―リハビリテーション医療を中核とした在宅支援 医療法人財団 新誠会 在宅総合ケアセンター元浅草

ページ範囲:P.1 - P.4

病気や障害を抱えていても,生活上の困難を軽減し,住みなれたところで自分らしく暮せるように.高齢者の在宅生活を支えるリハビリテーション医療の現場を紹介する.

連載 看護学生と若手設計者が考える 理想の病院・1【新連載】

自然を感じる

著者: 小藤一樹

ページ範囲:P.6 - P.7

看護学生のみなさんへ

 自然を感じる病院――水を感じる,風を感じる,窓からの景色がとてもよい――.

 皆さんのディスカッションで導かれたテーマの中から,患者さんと看護師双方にとって理想的な病院のテーマとして私が選択したのが,これです.私が興味を持ったのは,このテーマが単に病院のあり方だけでなく,建築のあり方への本質的な問いかけでもあるからです.人間が快適だと思える環境は,患者であろうと看護師であろうと相違ないことの証左と言えます.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・53

周産期医療におけるMSWのかかわり―妊婦健診から始まる養育支援

著者: 下田薫

ページ範囲:P.60 - P.63

 少子高齢化が進行する中で,社会は複雑化し人とのつながりが希薄となり,地域の保育力や介護力が減退してきている.特に近年は児童虐待のニュースが毎日のように聞かれることからもわかるように,核家族化,母子家庭,貧困,若年妊娠と母子を取り巻く問題は深刻化している.近年,国立病院機構佐賀病院では,養育支援を要する症例が増加傾向にあり,MSWによる妊娠中からの支援が必要となっている.今回,2009年度に関わった43症例を振り返り,周産期医療におけるMSWの役割の重要性を痛感したので報告したい.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・40

鉄郎対談集①―大往生なんか,せんでもええやん!(前編)

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.64 - P.65

 表題は2010年8月28日,西宮市において筆者のNPO法人アットホームホスピス主催で行った,桜井隆医師の出版記念講演会のタイトルである.桜井氏は同タイトルの著書を講談社から2010年5月に上梓している.

 彼は1992年に兵庫県尼崎市で「さくらいクリニック」を開業.以来,平素の診療の延長として,家での看取りを支援し,これまでに270人余りを診てきた.

病院管理フォーラム ■院内感染対策―医療監視の立場から・1

院内感染対策―連載開始にあたって

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.66 - P.67

 2010年9月に東京都内のある大学病院が,入院中の多数の患者に多剤耐性アシネトバクターによる感染が起こっていたことを発表しました.いわゆる「院内感染」です.その後,都内の他の病院でも,患者数は少ないものの多剤耐性アシネトバクターによる院内感染が疑われる事例が報告され,また緑膿菌やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)による比較的患者数の多い院内感染事例なども報告され,院内感染問題が関心を集めました.

 病気を治療するはずの病院で,逆に病気になってしまうというようなことがあれば,病院,ひいては医療への信頼が揺らぐことになります.院内感染を予防するためにどのような対策をとればいいのか.既に多くの病院は対策をおとりになっていることと思います.筆者は,公衆衛生行政,なかでも医療行政に携わってきましたので,医療監視を所管してきた立場から,院内感染対策に資するいくつかの点について,何回かに分けて,実例も交えながら概説したいと思います.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第192回

大分市医師会立アルメイダ病院

著者: 仲谷茂樹

ページ範囲:P.70 - P.76

 大分市医師会立アルメイダ病院(以下,アルメイダ病院)は大分市医師会員による共同利用施設として昭和44年に設立され,大分市中心部より約4kmの郊外に位置し,県中部医療圏における急性期医療を担う中核病院である.既存施設の老朽化と狭隘化,高度医療や療養環境の向上に対応するため,敷地内全面建て替えを行い,平成20年3月に新病院が開院,平成21年1月に全面竣工した.現在,救命救急センター・地域医療支援病院に加え,新たに地域周産期母子医療センター・地域がん診療連携拠点病院の指定を受け,地域医療へのさらなる貢献を続けている.

リレーエッセイ 医療の現場から

海外在留邦人のメンタルヘルス―ジャカルタからの所感

著者: 久津沢りか

ページ範囲:P.79 - P.79

 「長期(3か月以上)海外在留邦人者数は今や100万人突破」とは,海外邦人医療を語る際の枕詞となっています.これは,わが国の都道府県人口の少ない順から10番目前後に相当する数の「海外県民」が国外で生活していることになります.

 分母が増えただけに,海外に在住する心構えに欠ける人やハイリスク者も増加しました.さらに,在留邦人数,日本への物理的な距離,当地のインフラや文化背景などがモザイクのように組み合わさり,同じ東南アジア域内だけでも様相は各都市でまったく異なります.「海外邦人医療」と一言で括ることはできません.

特別鼎談

超高齢社会のあるべき医療システム―2011年 医療ITビッグバンを迎えて

著者: 長谷川友紀 ,   長谷川英重 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.54 - P.59

敏彦 『病院』誌上では5年前と10年前の過去2回にわたって,たまたま長谷川という名前の3人が集まって,「IT」「システム」「評価」の3テーマについて話し合ってきました.本日は,日本の医療の過去と未来を占うということで,5年ぶりにこの“3長谷川の会”をもちたいと思います.

 10年前の会は,ここにおられる友紀さんと私,そして長谷川利典先生(元 大阪大学医学部教授)が出席しました1).横浜市立大学で医療事故が起こった頃で,国民の医療に対する失望と期待が高まっていた時期でした.「これからは医療が評価される時代になる」「そこでは医療情報が非常に重要な役割を果たす」という議論が中心でした.つまり,3テーマの中でも特に「評価」について話をしました.

カラー連載関連記事

看護学生と若手設計者が考える 理想の病院

ページ範囲:P.69 - P.69

新連載がスタートしました!

 医療・福祉施設の設計者は,より質の高いケアやサービス,療養空間としての快適さを患者や利用者に提供したいという医療者の希望をできる限り実現しようとする一方で,コストや敷地面積,工期など様々な制約も考慮しなければなりません.本誌「アーキテクチャー保健・医療・福祉」欄で紹介している医療・福祉施設は,いわば理想と現実の間で,少しでも理想に近づけようという,設計者と医療者の努力の結晶とも言えます.

 では,もし上記に挙げたような様々な制約がなかったとしたら.「アーキテクチャー」欄の編集協力委員である筧淳夫氏(国立保健医療科学院 施設科学部長)ならびに中山茂樹氏(千葉大学工学部 教授)のご協力をいただき,「看護学生に“理想の病院”についてディスカッションしてもらい,そこで出されたテーマについて,若手設計者がイメージを膨らませ,設計プランを描く」という新連載のコンセプトが決定しました.本連載「看護学生と若手設計者が考える 理想の病院」では,今年1年にわたり,12名の設計者による設計プランを紹介していきます.

表紙

「シシ」

著者: 赤木主税

ページ範囲:P.11 - P.11

 1980年岡山県生まれ.生後1か月でダウン症と診断される.中学卒業後に入所した岡山県吉備の里能力開発センターで絵画の才能を開花.97,98年「Tシャツアート展」受賞,世界人権宣言50周年記念切手デザインコンクール佳作入選ほか.2006年4月より茨城県つくば市にあるNPO法人自然生クラブに参加.絵画制作の他,田楽舞の舞台にたち,アイルランド,ベルギー等の演劇祭に参加,国内外問わず精力的に作品展,公演を行う.

【今月号の作品】

アイルランド・香港から障害者アーティストを招いたアーティスト・イン・レジデンスにて制作.赤木の作品は,自身の記憶の自由な加工として,見事にデザイン化されていく.(自然生クラブ ディレクター 柳瀬 敬)

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書籍紹介

ページ範囲:P.44 - P.44

書評 NST活動に今すぐに必携の書~完全型チーム医療実践をめざす教典~東口 髙志 編『《JJNスペシャル》「治る力」を引き出す 実践!臨床栄養』

著者: 平田公一

ページ範囲:P.45 - P.45

 本書を読み終えてみると,さすが東口髙志編とうならされた.同氏の高邁な精神性と教育力の高さを反映し,気遣いの余白も実に適切,各ページの文字とともに説得力のある図や表の提示が,われわれを次のページを読みたいと掻き立てるのである.知識が感性的に身につきやすい教育図書となっている.知らず知らずのうちにおのおののページに向ける眼力にいっそう力が加わってしまうという.そのような工夫が設定されている.また見事に多くの共著者陣として素晴らしい専門家が並んでいる.

 昨今,NST活動へ評価は高く保険診療にも大きく反映されたことは周知のことである.その質を支えそしてチーム医療を向上させるにはもってこいの書であり,そしてTPOを得た発刊ともいえる.多くの医療従事者や教育担当者は日々の勤務の中で負担を背負いつつ,努力による前進が成されている.その努力の結果として,医療の原点ともいえる「ヒポクラテス医学」の心と信念を日常臨床の場にその理念の導入とその普及へとつなげようとする各種医療職の考え方にさらに向上がみられる.そのような日本的努力の成されている今日,本書による具体的で良質な臨床栄養学の次世代も読んだ提案は,次への目標設定と励みを提供していると考える.ありがたいことである.

投稿規定

ページ範囲:P.77 - P.78

次号予告/本郷だより/告知板

ページ範囲:P.80 - P.80

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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