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文献詳細

雑誌文献

病院70巻10号

2011年10月発行

文献概要

特集 終末期における延命医療のあり方

一般病院における終末期の治療方針の決定―病院内倫理コンサルテーションの設立・運営

著者: 三浦靖彦13 川崎彩子1 土屋晶子1 佐野広美2 野村幸史3

所属機関: 1医療法人財団慈生会 野村病院 内科 2医療法人財団慈生会 野村病院 外科 3医療法人財団慈生会 野村病院

ページ範囲:P.742 - P.746

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 医療の最前線である一般病院においては,経管栄養や人工呼吸器に代表される,いわゆる延命治療の開始や中止,終末期患者への病名・予後の告知といった医療倫理的問題が山積している.従来,多くの病院では,これら終末期の治療方針の決定は,主治医個人の判断に任されており,それ故,射水市民病院における人工呼吸器中断や,川崎協同病院における気管内挿管チューブ抜去の問題等,メディアの注目を集める事例も散見された.臨床現場では,患者にとって最善と考えた判断であっても,患者や家族の側から利益がないと考えられてしまう可能性や,その判断が,結果的に人の死を早めてしまうのではないかという医療者自身のジレンマがつきまとい,困惑する場面も多い.その反面,医療従事者による独断専行も容易に起こりえる環境であるが,現代の医療現場においては,医療従事者の判断の正当性をいかに担保すべきかが問われる時代になってきている.

 近年,各学会・委員会等から,終末期医療に関するガイドラインが相次いで発表されているが1~3),その中で言及されていることは,終末期の治療方針の決定においては,個人の判断に頼らず,医療チームでの判断が望ましいこと,また,医療チームによる判断が困難な場合は,倫理委員会に対して助言を求めることが望ましいこと等が述べられている.つまり,臨床現場における倫理的な問題に対して,合理的な判断を提供するための支援,いわゆる,倫理コンサルテーションの必要性を明言したものと言えよう.倫理コンサルテーションとは,主に医療従事者が,臨床現場において生じた倫理的問題に関する不安や対立を解消するために,個人やグループにより,助言を与えるものと定義されている4)

 本稿では,一般病院における倫理委員会の設立・運営のためのノウハウを紹介し,終末期の治療方針の決定に果たす倫理委員会および倫理コンサルテーションの役割について,概説する.

参考文献

1)日本救急医学会:救急医療における終末期医療に関する提言 http://www.jaam.jp/html/info/info-20071116.pdf
2)日本医師会:第Ⅸ次生命倫理懇談会,平成18年2月 http://www.med.or.jp/nichikara/seirin17.pdf
3)厚生労働省:終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0521-11a.pdf
4)Mark P Aulisio : ETHICS COMMITTEES AND ETHICS CONSULTATION. Stephen G Post(Edi) : Encyclopedia of Bioethics : 3rd edition, Macmillan Reference, 2004, pp841-847
5)赤林朗:倫理委員会の機能:その役割と責任性.浅井篤(編):医療倫理,勁草書房,2002,pp277-288 ※臨床現場で直面する様々な問題に対し,何を行い,何を行うべきでないかをわかりやすく解説した医療倫理入門書
6)長尾式子,他:日本における病院倫理コンサルテーションの現状に関する調査.生命倫理 15(1):101-106,2005 ※わが国の臨床研修指定病院(n=640)を対象に,倫理コンサルテーションの現状を調査した論文
7)長尾式子,他:倫理委員会とコンサルテーション.緩和医療学 11(1):40-45,2009 ※倫理コンサルテーションの必要性と海外の現況を解説し,わが国の一般病院における取り組みを紹介
8)三浦靖彦,佐野広美:一般病院における倫理委員会の役割.JIM 19(9):654-657,2009 ※一般病院において,院内倫理コンサルテーションを開設する際の規定作り,実際の運営方法,問題点,利点等を述べている
9)Jonsen AR, et al : Clinical Ethics Fifth edition, McGraw-Hill/Appleton & Lange, 2002/赤林朗,他(監訳):臨床倫理学 第5版,新興医学出版社,2006 ※臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ法についての解説書
10)水野俊哉: 医療倫理の四原則.赤林朗(編):入門・医療倫理Ⅰ,勁草書房,2005,pp53-68 ※医療倫理の諸問題を倫理と法の2つの軸で解説した入門書
11)浅井篤,他:ともに考えるための臨床倫理チェックリスト http://www.clethics.jp/page0102.html ※日常診療の中で,何が最善の医療行為なのかを患者とともに考え,決定していくためのチェック項目が簡潔にまとめてあるポケット版マニュアル
12)佐野広美,他:一般病院におけるDNR指示の現状と問題点.第14回日本緩和医療学会学術大会,2009
13)三浦靖彦,他:病院内倫理コンサルテーションの効果及び開催方法についての質的研究.日本生命倫理学会第22回年次大会,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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