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文献詳細

雑誌文献

病院70巻10号

2011年10月発行

文献概要

特集 終末期における延命医療のあり方

認知症患者への延命治療のあり方

著者: 朝田隆12 吉岡充3

所属機関: 1筑波大学大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学 2筑波大学大学院人間総合科学研究科 精神病態医学 3医療法人充会 上川病院

ページ範囲:P.747 - P.751

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 世界でも稀な速度と加速度をもって超高齢化社会へ突入していった日本では,西欧諸国とは少し違った高齢者医療の誤りがあった.救命第一という急性期のモデル医療の中で,増え続ける障害高齢者が老人病院の中で無念の最期を迎えた.特に認知症の人たちが救命治療のために,また精神・行動症状への対処のために不必要な身体拘束を受けてきたのは事実である.その結果,人としての尊厳を傷つけられたうえに,認知症はより進行して寿命も縮められてしまった.

 社会の高齢化とともに今日のわが国では,「死」がタブーでなくなりつつある.誤解を恐れずに言えば,この10年間に「死の大衆化」が進んだ.そして「どのように死んでゆくのか?」が公開の場で語られるようになった.これは認知症高齢者においてもようやく始まりつつある.

 そこでは,リビング・ウィルの重要性が再三強調されている.またアメリカでは認知症患者に病名を告知する早期の段階で,経管栄養などの延命治療について意向を確認することも推奨されている.しかし日本における反応は乏しく,延命の意向確認などは日本の医療現場の感覚からは程遠い.そのような現状も踏まえつつ,本稿では認知症患者への延命治療のあり方について述べる.

参考文献

1)朝田隆:厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「認知症の実態把握に向けた総合的研究」平成21-22年度 総合研究報告書,2011
2)小笠原信之:許されるのか? 安楽死─安楽死・尊厳死・慈悲殺(プロブレムQ&A),緑風出版,2003
3)ハーバート・ヘンディン(著),大沼安史,小笠原 信之(訳):操られる死─“安楽死”がもたらすもの,時事通信社,2000
4)芹沢俊介:医師主導の決定に警告.西日本新聞,2000年5 月28日付朝刊書評面
5)Alzheimer's Society Comment On Terry Pratchett's Richard Dimbleby Lecture.UK The Medical News Today,2010年2月2日
6)Chambaere K, et al:Physician-assisted deaths under the euthanasia law in Belgium:a population-based survey.CMAJ 182(9):895-901,2010
7)石飛幸三:「平穏死」のすすめ,講談社,2010
8)Finucane TE,et al:Tube feeding in patients with advanced dementia.JAMA 282(14):1365-1370,1999
9)Sanders DS,et al:Survival analysis in percutaneous endoscopic gastrostomy feeding:A worse outcome in patients with dementia.Am J Gastroenterol 96:2556-2563,2001
10)Dharmarajan TS,et al:Percutaneous endoscopic gastrostomy and outcome in dementia.Am J Gastroenterol 96(9):2556-2563,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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