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雑誌目次

雑誌文献

病院70巻12号

2011年12月発行

雑誌目次

特集 何を目指すチーム医療

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.909 - P.909

 チーム医療により,医療・生活の質の向上,医療の効率性を高めることによる医療従事者の負担軽減,および医療の標準化・組織化を通じての医療安全の向上が期待されている.総論としては,誰もが賛同する目的であり,チームを適切に編成し,役割分担を規定すれば達成できるはずである.だが,第一の難関は,医療においては,各職種の役割は法律等によって規定されており,他の分野のように社会環境や組織のニーズの変化に対して柔軟に対応できないことにある.

 第二の難関は,各職種の役割を変えるには,まず教育・研修の体系を整備し,次に課程修了者に対して,技能が担保されていることを認証する必要がある.ところが,教員の意識を変えることも,研修指導者を育成することも容易でない.教員として登用するに当たって,資質・能力は学内の基準で審査され,一旦,教職につけば教育内容において大きな裁量権がある.したがって,ニーズの変化に対応するインセンティブは必ずしも高くなく,権威の源泉である研究は学問の自由によって守られている.

チーム医療とは何か―導入をめぐる組織マネジメント的分析

著者: 大藪毅

ページ範囲:P.910 - P.917

 この数年,「チーム医療」という言葉が医療界に広まっている.しかしながら,日本でこの用語は使われ始めてまだ日が浅く,語感からなんとなくイメージは湧くものの,統一された具体的な定義は存在しない.

 様々な文献や資料を見ても,チーム医療という用語は,医療技術の高度化とサービスの拡充という「より良い医療」に対応する試みという捉えられ方をしているが,さらに深く見ていくと,医療現場の従来のマネジメント体制が限界に達しつつあることも,導入に際して大きな要因となっていることがわかる.医療界の様々な環境変化によって,従来のように治療の一義的責任者である医師が,看護師など関連するコメディカルを一元的に指示・監督するマネジメントスタイルは困難になりつつある.

チーム医療に関するこれまでの流れ

ページ範囲:P.918 - P.920

 厚生労働省では,経済財政改革の「基本方針2009」(2009年6月23日閣議決定)において,「医師と看護師等の間の役割分担の見直し(専門看護師の業務拡大等)について,専門家会議で検討を行い,平成21年度中に具体策を取りまとめる」とされたこと等を受け,チーム医療推進の取り組みを継続的に進めている(図).本稿では,「チーム医療の推進に関する検討会」および「チーム医療推進会議」での検討内容を紹介し,これまでの流れを整理する.

チーム医療に対する診療報酬上の評価―経緯と現状

著者: 北村善明

ページ範囲:P.922 - P.925

 2009年9月に,医療関係職種および患者団体の合計13団体が参加して「チーム医療推進協議会」(以下,協議会)が発足した.医療を受けるために病院を訪れた患者が存在を意識するのは,医師であり,看護師であり,薬剤師である.一方,例えばX線を撮影するスタッフ,CTやMRIを操作するスタッフは,患者にとって,「病院職員」とは認識しても,「放射線技師」ではない.つまり,こうした職種は国民から“見えない”存在である.医療にとって,どのメディカルスタッフも欠かせない職種であってもである.これではチーム医療は成立しない.すべてのメディカルスタッフが“国民から見える職業”,“国民から必要とされる職業”とならなければならないのである.そのために,各職種の仕事の役割や内容の重要性,魅力を国民に積極的にアピールし,その必要性を知ってもらう活動が不可欠となる.医療界と国民に対して,自らの存在価値をアピールする.そのために様々な形でセミナーやシンポジウムを適宜開催していくというのが,協議会発足の目的であった.

 現在,協議会は18団体で構成する組織となっている(表).その特徴は,職能15団体に加えて日本病院会,チーム医療を推進するうえでは患者の意見を加える必要があることから患者会2団体,さらに,チーム医療を国民に広報するためにアドバイザーとしてメディアを加えた会となっている.

チーム医療に対する診療報酬上の評価の検証

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.926 - P.928

 最近,チーム医療という言葉がよく聞かれる.その背景には医師不足を解決しようとする意図がある.加えて,医師や看護師,薬剤師,臨床工学技師,栄養士といった職種の縦割りをなくし,これらの医療従事者が互いに連携して,患者中心の医療を実現するという目的がある.2010年度診療報酬改定でも,病院勤務医負担軽減策として,医師事務作業補助体制加算に加えて,多職種からなるチームも新たに評価する観点から「栄養サポートチーム」(以下,NST)と「呼吸ケアチーム」という加算が設けられた.それぞれ週1回200点,150点の加算だ.

 前者の対象患者は一般病棟入院基本料,特定機能病院入院基本料(一般病棟),専門病院入院基本料のうち,7対1または10対1入院基本料の届出病棟に入院している患者で,栄養管理実施加算が算定されており,栄養障害を有すると判定された者だという.その算定要件は,①対象患者に対する栄養カンファレンスと回診の開催(週1回以上),②対象患者に関する栄養治療実施計画の策定とそれに基づくチーム診療等,③1日当たりの算定患者数は,1チームにつき概ね30人以内とする,の都合3点となっている.

―【インタビュー】―米国のチーム医療から見た日本の課題

著者: 上野直人

ページ範囲:P.930 - P.934

 薬剤師の業務拡大や特定看護師の創設が議論されるなど,日本の医療現場では医師不足なども背景に,各職種の職域が再検討されている.これはチーム医療のあり方にも,大きな影響を及ぼすだろう.日本における「患者中心のチーム医療」普及のため積極的に活動している上野直人氏に,NPやPAなど日本以上に様々な職種が活躍している米国のチーム医療について,話を聞いた.(編集室)

―【各専門職の裁量権・業務拡大に対する意見】―日本医師会

著者: 鈴木邦彦

ページ範囲:P.935 - P.939

■「チーム医療」の背景と日本医師会の考え方

 「チーム医療」は,従来より病院内で患者を中心とした医療安全を目的として行われてきたものであるが,最近より強調されるようになった背景を考えてみると,主に2つの理由があると思われる.1つ目は医療崩壊,特に病院崩壊と言われる現状において,病院勤務医の負担軽減を図るために他職種の支援を得ようとする考え方であり,ここでのチーム医療の中心は,あくまでも医師である.2つ目は,勤務医の負担軽減をきっかけとしつつも,「特定看護師(仮称)」に代表されるように,各職種の職域・権限を拡大し,より自立を目指そうとするもので,相対的に医師の役割は縮小され,より多職種協働的なチーム医療となる.しかし,あくまでも医療である以上,その中心には医師が存在すべきであろう.

 こうしたチーム医療に対する考え方の違いが,今日の混乱の元になっていると思われるが,日本看護協会(以下,日看協)が主張するようなNP(ナースプラクティショナー)ありきのような考え方も,決して海外の主流であるわけではない.例えば,筆者が本年5月に訪問調査したフランスでは,人口当たりの医師数はわが国よりもはるかに多いが,医師の権限は強く,処方権は医師のみにあり,パラメディカル(医療補助職)はメディカル(医療職)に付いて働くのが大原則である.そもそも看護師はメディカルですらなく1),NPには反対というのがフランスの考え方である.ちなみに,助産師はメディカルとのことであった.

―【各専門職の裁量権・業務拡大に対する意見】―日本薬剤師会

著者: 土屋文人

ページ範囲:P.940 - P.942

 近年,医療の質・安全の向上に対して国民の意識が高まる状況の下で,医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大は目を見張るものがある.これらの状況に対応するため,多種多様のメディカルスタッフがそれぞれの専門領域を確立しつつ,お互いに協力し合いながら患者中心の医療を実行するという,「チーム医療」の概念が定着しつつある.医薬品の専門家としての薬剤師の業務も,この環境の変化に応じて,大きく変革している.以前は薬剤部にこもっていた薬剤師が病棟で患者と積極的な関わりを持つようになり,病棟に薬剤師が常駐している施設も増加しつつある.一方,国の後発品使用推進策を受け,保険薬局では患者との相談の下,後発品に変更することが定着しつつある.

 本稿においては,薬剤師の業務拡大の実態にふれながら,適正な薬物療法の確保のために,また多職種協働というチーム医療における,薬剤師の果たすべき役割について述べることとする.

―【各専門職の裁量権・業務拡大に対する意見】―日本看護協会

著者: 洪愛子

ページ範囲:P.944 - P.946

 わが国の2010年時点での総人口に占める65歳以上の割合は23.1%,さらに2025年にはその割合は30%を超えると予測されている.その対策として,社会保障改革に関する政府の検討や厚生労働省の検討会においても,今後の人口動態を見据え,社会保障の方向性が議論されている.2011年6月にとりまとめられた「社会保障・税一体改革成案」には,高齢化等に伴う医療ニーズの増大や医療技術の高度化等に対応するための改革案として,病院・病床機能の分化・強化と連携,在宅医療の充実等が示されている.具体項目には,病床機能の分化,マンパワーの増強,医師・看護師等の役割分担の見直し,療養病床の削減,在宅医療・在宅看護の推進を図るという改革項目(充実・重点化・効率化)がある.

 今後の少子・高齢・多死社会を支える医療・介護の提供体制をどのように構築していくのか,日本看護協会はこうした社会の変化やニーズに看護職がしっかりと応えていくための方策として,労働条件・労働環境の改善や安全で効果的な医療提供体制を目指した特定看護師(仮称)の法制化・制度化の推進,および長期的な在宅療養を支える訪問看護を基盤としたサービス提供体制の確保と整備をはじめとする重点政策・重点事業の取り組みをしているところである.

―【トピック】―特定看護師(仮称)の養成教育とその活動

著者: 草間朋子 ,   小野美喜 ,   福田広美

ページ範囲:P.947 - P.951

■特定看護師(仮称)養成試行事業と業務試行事業

 2010年3月に,厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」(座長:永井良三 東京大学教授)から,医師の包括的指示の下で,特定の医行為を実施することができる「特定看護師(仮称)」(以下,特定看護師)が提案された.5月には「チーム医療推進会議」が設けられ,その下に設置された「チーム医療推進のための看護業務ワーキンググループ」において,特定看護師の制度化に向けての検討が急速に進められている.その中で,①特定看護師の要件,②特定の医行為の範囲,③特定看護師の養成課程の認定要件などを検討するための事業として,2010年度から,「特定看護師(仮称)養成試行事業」(以下,養成試行事業),2011年度から「特定看護師(仮称)業務試行事業」(以下,業務試行事業)の2つの事業が実施されている.

 養成試行事業は,特定看護師の養成教育を行っている機関(看護系大学院等)が厚生労働省に申請し指定を受ける事業で,業務試行事業は,養成課程を修了した学生が就職した医療施設が申請し,指定を受ける事業である.

グラフ

チームの力で患者を支える―聖路加国際病院 呼吸療法サポートチーム

ページ範囲:P.897 - P.900

 2010年度の診療報酬改定において新設された「呼吸ケアチーム加算」では,呼吸ケアチームの定義として,人工呼吸器を装着した入院患者に対し,医師,看護師,臨床工学技士,理学療法士からなるチームが人工呼吸器離脱を目指した呼吸ケアを行うものとしている.こうした動きに先駆けて,聖路加国際病院では2004年から「呼吸療法サポートチーム」(Respiratory Support Team,以下,RST)による病棟のラウンドが行われている.今回は呼吸ケアチームの先駆的取り組みとして,当院RSTの活動を紹介する.

連載 看護学生と若手設計者が考える 理想の病院・12

四季を感じる

著者: 山寺美和子 ,   神谷優治 ,   石黒健史

ページ範囲:P.902 - P.903

 季節の移ろいが豊かな日本において,「四季の情緒を感じる病院」.このテーマに対し,「季節による自然の変化を身近に感じ,1年を通じた様々な行事を行うことで四季を感じる」という,とてもシンプルですが,これらにまつわる要素を様々な形で病院に散りばめることを今回の提案としたいと思います.

 では,自然の季節による変化をそのまま享受するのか,良好な環境のためにあえて遮るのか.自然と建築を考えるうえで,根本とも言えるテーマです.私たちは1つの病院の中で,居場所の選択によって生じる差異を緩やかに,または直接的に楽しみ,気分や体調によって移動することができる,移動選択性のある空間を設定します.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・64

小児脳脊髄腫瘍患者と家族への支援におけるMSWの役割

著者: 御牧由子

ページ範囲:P.958 - P.961

 小児脳脊髄腫瘍は小児固形腫瘍のなかでは最も頻度が高く,かつ死亡率や後遺症の発生率も高い疾患である.当院では開院時より小児脳脊髄腫瘍を専門とする診療部門を設置し,手術,放射線治療,化学療法による集学的な治療を展開している.また,患児および家族が遭遇する多彩な心理社会的課題に対応するため,多職種によるチームアプローチを実践している. 

 2007年4月~2009年3月の3年間にMSWが相談支援を行った101症例を振り返り,小児脳脊髄腫瘍患者と家族の療養生活のニーズとその支援について考察し,MSWの役割について検討する.

病院への政策金融 事業仕分けと東日本大震災を通して・2

事業仕分けを通して考える病院への政策金融

著者: 岩野正史

ページ範囲:P.962 - P.963

■事業仕分けに至るまで

 昨今,行財政改革として思い浮かぶのは「事業仕分け」であるが,前政権下においても独立行政法人・特殊法人を対象とする見直しは繰り返し実施されており,独立行政法人福祉医療機構の歴史は行革・見直しの歴史と言っても過言ではない.同機構の前身である社会福祉・医療事業団は,1983年の臨時行政調査会最終答申によって社会福祉事業振興会と医療金融公庫が1985年に統合されてできたものであるし,2003年に現在の独立行政法人福祉医療機構となったのも,特殊法人等改革推進本部の「特殊法人等整理合理化計画」を受けてであった.

 特殊法人の見直しと同時に政策金融についても見直しが進められ,2005年11月に経済財政諮問会議で取りまとめられた「政策金融改革の基本方針」では,政策金融は中小零細企業・個人の資金調達支援など3つの機能に限定し,政策金融を実施する組織については,日本政策投資銀行等の完全民営化や国民生活金融公庫,中小企業金融公庫,農林漁業金融公庫等を1つの政策金融機関へ統合することなどが決定され,2008年10月に日本政策金融公庫が発足した.

臨床倫理コンサルテーション・8

臨床倫理コンサルテーションの方法(3)―分析・検討③

著者: 瀧本禎之

ページ範囲:P.964 - P.966

 前回に続き,筆者の施設で使用しているコンサルテーションシート(表)について解説する.「判断能力」の欄は,「患者の意向」と併せて評価されるべきものである.なぜなら,患者の判断能力の有無は,患者が最善の意思決定者であるかどうかに大きな影響を与えるためである.これは倫理的問題を実際に取り扱う際には重要なポイントになるため,評価には慎重を期す必要がある.判断能力の有無については医師が判定することになるが,多くの医師はその経験を有しておらず,患者の判断能力の評価は,医療者にとって現実的な問題となりやすいと言える.実際,筆者が所属している患者相談・臨床倫理センターにおける,医療者からの倫理コンサルテーション依頼の中で,判断能力の評価に関連した依頼が最も多く,38%を占めている.そこで,臨床倫理コンサルタントとして倫理的観点から医療者を支援する者は,判断能力の評価方法について精通しておくことが望まれる.

医療BSC基礎講座・11【最終回】

BSC運用時に見られる典型的な障害とその解決

著者: 髙橋淑郎

ページ範囲:P.968 - P.972

 今回で基礎講座は終了となるが,最後にBSC運用時の障害とその克服について考えていきたい.BSCを導入している病院が増えてきたが,詳細に現場の事例を検討すると,いくつかのレベルに分類することができる.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・51

市民活動としての「小さな勉強会」予防医療の土台となるもの

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.974 - P.975

 2011年6月号で「つちやま内科クリニック」院長の土山雅人氏と胃ろうについて対談した際,10~20人程度の小さな勉強会を開催するアイディアについて触れたが,それは3回連続の講座として,すぐに実現した.協力者は土山氏と,8月号で対談したALS患者の西村隆氏,そして,地域で活動する訪問看護センターの言語聴覚士数名だ.

 参加定員は20名までとして,市民に参加を呼びかけた.「こんなユニークな勉強会は他に少ないので,取材に来てほしい」と新聞各社にも声をかけたが,残念ながら来た記者はいない.医者が主導するものとか,派手で目立つものでないと興味がわかないようである.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第203回

小倉記念病院

著者: 藤記真 ,   大守昌利

ページ範囲:P.976 - P.982

 心臓疾患の分野で国内トップの症例数を誇る小倉記念病院(658床)の移転新築計画である.新病院は,旧病院と同じく小倉の中心部を流れる紫川の畔,小倉駅新幹線口地区に建設された.

リレーエッセイ 医療の現場から

高齢化進む団地の商店街に「暮らしの保健室」開設

著者: 秋山正子

ページ範囲:P.985 - P.985

「空き店舗を,安く貸してもいいですよ」

 白十字訪問看護ステーションがある新宿区には,「戸山ハイツ」というとても大きな団地があります.昭和43~51年に建設され,総戸数3000戸,高層から低層まで35棟に約6000人が暮らしています.高齢化が急速に進み,高齢化率はなんと46%,しかも1人暮らしが多い地区です.孤独死問題をマスコミに取り上げられた戸山団地とは少し様相を異にするものの,階段室しかない古い住宅に高齢者が住んでいる状況は,要介護状態を作り出す環境要因が山積みです.

 この戸山ハイツの1階に長屋のように並ぶ商店街,その一角に2011年7月1日,「暮らしの保健室」がオープンしました.きっかけは,空き店舗のオーナーが,2010年11月に新宿区主催,NPO白十字在宅ボランティアの会と白十字訪問看護ステーションの企画運営で行った,在宅医療推進のためのシンポジウムを聞きに来られたことでした.民生委員として永年地域で活動しているオーナーは,年末で契約が切れる空き店舗を,地域の福祉に役立つよう,心ある人に使ってもらいたいと思っていたそうです.

研究と報告【投稿】

初期臨床研修医に関連したインシデントの傾向と対策

著者: 冨田泰彦 ,   北原るり子 ,   高橋信一 ,   赤木美智男

ページ範囲:P.953 - P.957

要 旨 2007~2010年度の4年間における初期研修医関連のインシデントレポート56事例を,日本医療評価機構・年報や当院初期研修修了医事例と比較し,その傾向を分析した.報告時経験月数は2年間均一で,発生時間帯は午前8~10時,曜日では火~木,比較的土曜も多かった.患者影響レベルはすべてアクシデント3a以下で,インシデント0~1が76%,内訳は患者誤認,輸液手技や薬剤(処方・注射)の誤認が7割,診療情報,輸血と気管挿管,他に関するインシデントが3割であった.患者誤認は3分の2が採血検体で,他に胸水検体・輸液・対診依頼表,輸液では留置手技が多く,他に輸液速度・CVC留置手技,気管挿管時の口腔損傷であった.処方では情報・確認不足が7割と多く,ほか薬剤量・薬品名誤認であった.注射では量誤認が7割と多く,ほか薬剤名誤認,情報・確認不足であった.初期研修医では午前中の採血患者誤認,薬剤や輸液に関するインシデントが多く,繰り返しの注意喚起や支援体制が重要である.

表紙

「仮面」

著者: 赤木主税

ページ範囲:P.907 - P.907

 1980年岡山県生まれ.生後1か月でダウン症と診断される.中学卒業後に通所した岡山県吉備の里能力開発センターで絵画の才能を開花.97,98年「Tシャツアート展」受賞,世界人権宣言50周年記念切手デザインコンクール佳作入選ほか.2006年4月より茨城県つくば市にあるNPO法人自然生クラブに参加.絵画制作の他,田楽舞の舞台にたち,アイルランド,ベルギー等の演劇祭に参加,国内外問わず精力的に作品展,公演を行う.


【今月号の作品】

この年に赤木は仮面劇に参加している.その後しばらく仮面のモチーフを描くのだが,描いているうちに物語はどんどん膨らみ,色々な場面に生き物が書き込まれていく.最終的に,とても複雑なデザインが生まれた.

(自然生クラブ ディレクター 柳瀬 敬)

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投稿規定

ページ範囲:P.983 - P.984

次号予告/本郷だより/告知板

ページ範囲:P.986 - P.986

「病院」第70巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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