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雑誌目次

雑誌文献

病院70巻2号

2011年02月発行

雑誌目次

特集 どう発展させる 病院総合医

巻頭言

著者: 山田隆司

ページ範囲:P.93 - P.93

 「総合医」に関する議論が活発になってきた.診療する対象や分野を限定し,その質を向上させようとする専門医に相対して,幅広く何でも受け入れ,診療しようとする「総合医」の流れはいわば時代が求めている国民ニーズと言えよう.

 医学の発展は先端科学の進歩と相まって専門分化の道を進んできた.科学的な解明を重んずるばかりに遺伝子のレベルにまで医科学は進んだものの,科学では説明のつかない患者を取り巻く状況に対しては眼をつむりがちだ.多くの医師は科学的に裏付けのある技術や手法には積極的に取り組むものの,患者の一見理不尽な訴えや,解釈不能な病態には一転して佇んでしまう.勢いあやふやな人間全体を理解しようとすることを早々にあきらめ,疾病や臓器を限定し,自信を持って腕が奮える分野に進もうとする.

病院総合医の現状と展望

著者: 小泉俊三

ページ範囲:P.94 - P.100

 わが国の病院総合医について,その現状と展望を語るには,まず,その定義を明確にしておく必要がある.

 もとより,用語の曖昧さや概念の混乱は,曖昧さや混乱に満ちた現実を反映しているので,語義を厳密にしたからといって何かが直ちに解決するというほど物事は単純ではないが,筆者の考えでは,“病院総合医”についての議論が一向に深まらない最大の原因は,議論の前提となる用語について最小限の定義づけさえ未だに不明確なままであるところに存在する.特に,地域コミュニティに密着した中小病院に勤務する“内科系”の医師が果たしてきた役割と今後のあり方については,未だに共通の認識基盤が形成されているとは言い難く,論点はすれ違いがちである.

病院総合医―大学総合診療科の役割

著者: 平山陽示 ,   大滝純司

ページ範囲:P.103 - P.106

 先進医療を掲げる大学病院において,総合診療科の役割とは何か.大学病院の一部の医師からは総合診療科不要論も聞かれるが,現実には卒前・卒後の教育とプライマリ・ケアの実践という点において,極めて重要な役割を果たしている.ただし,大学病院における総合診療科の役割と一口に言っても,大学病院によってその役割は一様ではないので,ここでは当院における現状を説明するとともに,現状を踏まえた課題と将来の展望について述べる.

病院総合医―救急との連携

著者: 田中拓

ページ範囲:P.107 - P.110

 「救急部門はなんでも受け入れる」

 ある時は期待と希望に満ちて,またある時は院内からの揶揄として,救急に対して語られる言葉である.

病院総合医―その専門性について

著者: 池田康夫

ページ範囲:P.112 - P.114

 低医療費でありながら,世界一の長寿国であり,新生児死亡率も最も低いことから,わが国の医療制度の国際的評価は非常に高いものであったが,現状はと言えば“医療崩壊”なる言葉で表されるごとく,医療の地域格差,診療科における医師の偏在,救急医療体制の不備等,多くの緊急に解決すべき課題が山積している.この現状を打開する1つの鍵として,国民に広く支持され,医師にとっては生涯学習の意欲を継続させるにたる専門医制度の早期の確立が非常に重要であるとの認識が高まりつつある.日本専門医制評価・認定機構では各学会が設けている専門医制度の整備・標準化を目指し活動をしているが,同時にわが国の医療制度の中において専門医制度をどのように構築すべきか,その枠組みについての議論を急いでいる所である.

 2008年,日本学術会議は「医療のイノベーション検討委員会」における検討結果を要望書としてまとめ発表したが,その中で専門医制度の体制整備の必要性を特に強調している.また,厚生労働省の「医療における安心・希望確保の為の専門医・家庭医の在り方に関する研究班」(主任研究者:土屋了介)でも医療における質管理・品質保証の仕組みの構築,専門医・家庭医・総合医の専門性の確立と地域の医療体制の再構築等の重要性が述べられている.これらの動き,提案からもわかるように,地域医療・総合診療の提供体制の現状認識の上に立って,医療の役割分担,他の専門医との協調・連携の視点からの専門医制度設計が喫緊の課題であることが容易に理解できる.

【病院総合医 地域病院での役割】

松前町立松前病院の取り組み

著者: 八木田一雄 ,   木村眞司

ページ範囲:P.117 - P.120

■松前町立松前病院の概要

 北海道最南端の松前半島に位置する松前町に松前町立松前病院はある(図1,2).松前町は他の市町村同様に年々過疎化と高齢化が進んでおり,2010年11月30日現在では人口約9,200人,高齢化率は約37%である.

 当院の診療圏は松前町と隣町の福島町および上ノ国町の一部に及び,診療対象人口は約1万6,000人である.当院は3町で唯一の入院施設を有する病院であり,唯一の小児科医のいる医療機関であり,かつ夜間休日24時間365日受け入れ可能な唯一の医療機関である.医師数は2010年11月現在で常勤医師数8人,標榜科は内科,外科,整形外科,眼科,耳鼻咽喉科,リハビリテーション科,人工透析であり,整形外科,眼科,耳鼻咽喉科,乳腺外科は非常勤医師による外来が行われている.許可病床数は100床で,うち4床が小児科,96床が急性期一般病床であり,2010年度は11月末現在でベッド稼働率は80%以上を維持している.

地域医療の再生に向けてどんな医師を育てるか?

著者: 平井愛山

ページ範囲:P.122 - P.123

■医師育成の視点からの地域医療崩壊の原因分析:臓器別専門医育成の弊害

 医療崩壊の背景要因として,わが国が戦後医学教育システムを整備する中で,内科系医師については,内科系の総合医ではなく,臓器別専門医の育成に重点を置いてきた弊害が指摘されている.昭和年代は,医師育成の拠点であった大学病院の内科系医局講座は,ナンバー内科と呼ばれ,内科の9分野(消化器,循環器,呼吸器,内分泌代謝,血液,神経,腎臓,免疫および感染症)の複数分野をカバーする診療と教育を行っていた.

 しかし,平成年代に入り,大学病院の外来が臓器別診療に移行するのに伴い,内科系医局講座は徐々に臓器別講座に細分化されることとなった.一方,診療の現場では,少子高齢化が進むのに伴い,高齢患者では,1人で複数の臓器の疾患を持つケースが普通になり,多臓器にまたがって全身を診ることのできる医師のニーズが高まってきた.しかし,上記のような医師育成システムの変化により,わが国の内科系専門医は,基本的に臓器別専門医で,臓器を越えて全身疾患を診ることのできる内科系ジェネラリストはほとんどいないため,医療ザービスの提供者(医師)と利用者(患者)とに乖離が生じ,年を追って大きな問題になってきた.そこに加えて,大学病院の医師不足により,地域の病院への医師派遣機能が急速に低下したため,地域病院の内科系勤務医の不足という事態になった.

川崎市立川崎病院総合診療科の後期研修―質の高いGeneral Physician養成の試み

著者: 宮木大 ,   鈴木貴博

ページ範囲:P.124 - P.127

 神奈川県東部にあり,多摩川を挟んで東京都に隣接する川崎市は,人口140万人余の政令指定都市である.当院はその南部医療圏の基幹病院であり,救命救急センターを有する災害拠点病院である.

 病床数733床,27診療科を有する臨床研修指定病院で,医師数は常勤117人,非常勤として後期臨床研修医は55人(うち総合診療科には19人),初期臨床研修医は23人である(2010年現在).1日平均外来患者数は約1,600人,入院患者数は約620人である.

総合内科のロールモデルを目指して―臨床研修と教育による地域医療への貢献

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.128 - P.130

 地域病院における病院総合医の役割は,一概に言えるものではない.その地域地域によって,置かれている環境が異なるためである.ただ,特に自治体病院(200~500床)において,表のような環境の病院は少なくないのではないだろうか?

 京都府北部にある福知山市民病院もこういった環境にある.人口約8万人,医療圏は府・県を越えて約10万人に対して,市内にある急性期/救急対応病院は2つである.当院は救急告示病院,へき地医療拠点病院,臨床研修病院,地域がん診療連携拠点病院,地域災害医療センターであり,本来354床(うち14床は結核・感染症用)の医療機関である.しかし,2009年度までは看護師不足もあり,1病棟を閉鎖していた.診療科も主要な科は揃っているが,不足している科がある.医師は京都府立医科大学からの出向が多く,専門「外来」を対応する非常勤医師も派遣されている.2008年度までは臨床研修指定病院ではあったが,研修医はあまり集まっていなかった.

グラフ

総合診療部―診療,教育,そして研究 自治医科大学附属病院

ページ範囲:P.81 - P.84

 自治医科大学附属病院総合診療部は,それまで同大の地域医療学講座が運営していた地域家庭診療センターの機能を院内の一部門として引き継ぐ形で,2000年に開設された.外来診療を受け持つとともに16床の病棟を持ち,原因不明の発熱や感染症,原発不明のがん患者に対する入院診療を行っている.また,医学生の臨床実習においても積極的に取り組んでいる.本稿では同院における総合診療部の活動を,診療と教育の面から紹介したい.

連載 看護学生と若手設計者が考える 理想の病院・2

家族とともに

著者: 北川正仁

ページ範囲:P.86 - P.88

“理想の病院”とは…と,いざ考えると難しいものですが,将来の病院の姿と私の入院体験を踏まえて提案したいと思います.

医療BSC基礎講座・1【新連載】

BSCの基本を理解する(その1)

著者: 髙橋淑郎

ページ範囲:P.132 - P.135

 バランスト・スコアカード(Balanced Scorecard,以下,BSC)がキャプランらによって発表されて以来,経営者にとって魅力的な経営の道具として,多くの国々で使用されてきた1~3).そして日本でも,幸いなことにBSCがゆっくりとではあるが,医療・福祉施設に浸透してきた.しかし,医療・福祉施設では多くの場合,キャプランらの厚い翻訳書や研究論文を読むにはハードルが高いこともあり,ハウ・ツー書籍や講演のスライド資料などでBSCが広まっていっていることが多い.したがって,誤解やあり得ない解釈などに出会うことも多くなってきた.今回は,BSCの基本編として,キャプランらの正統的な思考を基準に,わかりやすく理解できるように解説していきたい.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・54

HIV感染症治療とMSW―受診前相談と継続療養支援

著者: 岡本学

ページ範囲:P.137 - P.140

 大阪医療センターの「医療相談室」には様々な相談が寄せられる.当院の特徴から,救命救急センター・小児・がん・脳卒中・HIV感染症には担当のMSWを配置している.本稿では,今回は特にHIV感染症治療におけるMSWの関わりについて報告する.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・41

鉄郎対談集①―大往生なんか,せんでもええやん!(後編)

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.142 - P.143

 前回簡単にふれた桜井隆医師の著書『大往生なんか,せんでもええやん!』の第2部と第3部を改めて紹介しよう.

 第2部は「家で死にたいをかなえるための考え方」が先頭に綴られる.そのためには,まず“ぽっくり幻想”を捨てること,そして「終わりあかんでも,まぁええか」と,少し皮肉めいた表現を切り口に,がんばらない最期の迎え方を説く.死は美化されがちだが,あまりカッコよくない死の姿こそ自然だと,著者は言いたいのであろう.続いて,自らの治療医時代の反省も込め,15年程前の延命治療について語られ,さらに家に帰るための具体的ノウハウの話では,病診連携やその他の公的支援,お金の話までが詳細に綴られている.

病院管理フォーラム ■院内感染対策―医療監視の立場から・2

インフルエンザの院内感染

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.144 - P.145

●インフルエンザ院内感染事例

 2008/2009の流行シーズンのことです.東京都の多摩地域にあるS病院で,入院患者を中心とした大規模なインフルエンザによる院内感染が発生しました.結果として100人を超える患者が発生し,3人の方が亡くなりました.亡くなられたのはお年寄りで,100歳,85歳,77歳の女性でした.いずれも持病を持っておられた方です.

 このシーズンの感染症サーベイランスの報告をみてみますと,東京では2008年の12月上旬からインフルエンザの流行が始まりましたが,年末年始の休みに入って流行は一段落し,休み明けの2009年1月はじめから流行が拡大し,1月下旬から2月上旬にかけて流行がピークに達しています.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第193回

お産施設二題―お産の森いのちのもり 産科婦人科 篠﨑医院

著者: 藤木隆男

ページ範囲:P.148 - P.151

 TX(つくばエクスプレス)で秋葉原から40分ほど,利根川を渡ると守谷である.そこは緩やかに拡大し続ける首都圏の新しいベッドタウンだが,まだ森と畑と民家が大まかに混在する田園風景を色濃くとどめるエリアである.与えられた敷地はそんな地域の2,500m2余りの平坦な畑地であった.医院と住宅,駐車場に充てられたそこは,北と西に栗やケヤキなどの鬱蒼とした森(雑木林),東側は長ネギなどの畑,そして南側前面がTXの高架橋である.

お産施設二題―聖路加産科クリニック

著者: 木村敏夫 ,   鳥山亜紀

ページ範囲:P.152 - P.155

 聖路加産科クリニックは,財団法人聖路加国際病院が新たに開設した自然分娩に特化した施設である.ここでは,母子ともに健康な方を対象に,医療の介入をどうしても必要なものにとどめ,妊婦が本来もつ力を活かした分娩をサポートする.また,健診からお産,産後のサポートを産科医,小児科医と協力しながら主として助産師が担い,緊急時には聖路加国際病院がすみやかな対応を行う.新しいコンセプトに基づいたこの事業は,少子化および産科医不足を憂いた日野原重明理事長と福井次矢院長により,10年以上も前から考えられてきたそうである.妊婦が持つ「産む力」を最大限活かすため,緊張や不安を和らげ,家族に見守られながらお産ができる「我が家」のような出産環境を創り出すことが求められた.

 敷地は,築地駅から5分.聖路加国際病院と道路を挟んで北側に位置する.3方をオフイスビルやマンションに囲まれているが,間口約15mの南側には病院敷地の豊かな緑地をのぞむことができる.一見マイナーなロケーションに思われるが,実は聖路加のシンボルであるチャペルの塔が間近に見える貴少な場所である.

リレーエッセイ 医療の現場から

国保はホチキス,社保は糊

著者: かたおか柔

ページ範囲:P.159 - P.159

 レセプト点検の仕事(パート)を始めて3年が経ちました.仕事に就くにあたり,一応,医療事務の資格を取得したのですが,現場に出ると「ひえ~」の連続で,月末月初はいつもドキドキです.なかでも予想外,そして一番の「ひえ~」は「公費」の種類の多さと複雑さでした.

 「公費」は,診療報酬の請求業務において,最も神経を使わなければいけない最重要項目です.正しい請求先に正しい金額を請求しなければ「ウチで払う分ではありません」と戻されるし,何より窓口で徴収した額と医療機関に入金される額が異なってしまいます.ところが,医療事務の授業では「難病の患者さんなどに対しては,患者負担を軽減する公費という制度があります」程度に,さらっと触れただけ.初日は先輩方の口から飛び出す「ゴーイチ,ゼロニー」「ニーイチ,キューサン」などが理解できず,レセの山を前にひとり無言で固まっていました.

表紙

「ドラムを打つ」

著者: 赤木主税

ページ範囲:P.91 - P.91

 1980年岡山県生まれ.生後1か月でダウン症と診断される.中学卒業後に入所した岡山県吉備の里能力開発センターで絵画の才能を開花.97,98年「Tシャツアート展」受賞,世界人権宣言50周年記念切手デザインコンクール佳作入選ほか.2006年4月より茨城県つくば市にあるNPO法人自然生クラブに参加.絵画制作の他,田楽舞の舞台にたち,アイルランド,ベルギー等の演劇祭に参加,国内外問わず精力的に作品展,公演を行う.

【今月号の作品】

太鼓が好きで,思いっきり叩いていた主税.その楽しさが,ドラムのたくさんの色で表現されている.(母 赤木真里子)

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書評 地域医療再生のための処方箋―松村 理司 編著『地域医療は再生する―病院総合医の可能性とその教育・研修』

著者: 堺常雄

ページ範囲:P.102 - P.102

 私が勤務する聖隷浜松病院では,過去10数年の間に各科の専門分化が進み,診療の内容も高度化し,先進的な医療にも対応ができてきた.それにもかかわらず,数年前から現在の診療体制はこれでよいのだろうかという漠然とした疑問が浮かんできている.例えば,救急の場面で専門医が呼ばれ,「これはうちではないよ」という事例を散見するようになったからである.彼(彼女)自身からすればその通りなのかもしれないが,困るのは患者,看護師,初期対応の医師である.この時点では,診療プロセスの中で何ら問題が解決されていないのである.このような状況を改善し,診療の基礎となる部門の充実と総合的な診療の質の保証を目指して考えたのが「診療部門3階建」構想である.1階部分が総合診療内科と救急科よりなるGeneral Medicine(総合診療部門),2階部分がSpecialties(専門各科),3階部分がSuper-specialtiesという構造である.縦,横の連携の充実が図れればと願っている.まだ完成してはいないがこれから1~2年のうちに構築しようと考えている.

 このような考えを持っている時に読んだのが,本書『地域医療は再生する―病院総合医の可能性とその教育・研修』であり,まさに目から鱗が落ちた感じであった.この本は松村理司先生の36年にわたる経験をもとに書かれたもので,現場の医療を知り尽くしたうえで地域医療再生のための処方箋を示されたものである.医療者が医療崩壊などと言っている場合ではなく,現場から医療を再構築しようという熱い心が込もった,しかも実現可能な提言である.

書評 本書を読めば病院の組織と機能は一目瞭然―今中 雄一 編『「病院」の教科書―知っておきたい組織と機能』

著者: 邉見公雄

ページ範囲:P.116 - P.116

 『「病院」の教科書―知っておきたい組織と機能』が,今中雄一教授(京都大学医療経済学)の編集で出版された.「先を越された」という気持ちと,「やっとこの手の本が世に出たか」という感慨が入り混じった感がある.

 実は,私も田舎の自治体病院長を22年務めている間,新しい事務局長や事務職員が本庁から異動してくるたびに種々の関連書籍や医療雑誌の特集号を渡し,新規採用者研修では医師とコメディカルに分けてオリエンテーションを行っていた.例年この時期は年度末の学会や退職者の送別会,関連教室の定年教授への挨拶などに走り回っているが,大切な仕事と思い,合間を縫って実施してきた.新任の方々が組織にスムーズに溶け込み即戦力になっていただけるように,オリエンテーションでは私の知る限りの知識と経験談などをできるだけ噛み砕いて話をしたが,力が入り過ぎて持ち時間を超過することも度々であった.

書籍紹介

ページ範囲:P.127 - P.127

書評 診療情報の意義と役割を明らかにした大著―日本診療情報管理学会 編『診療情報学』

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.147 - P.147

 平成17年4月に施行された個人情報保護法によって,患者の個人情報は原則として患者自身に帰属するものであることが明示された.一方,病院医療の現場では,チーム医療の推進のために,診療に関する情報の一元化と共有化が最近特に求められるようになっている.今回,医学書院から日本診療情報管理学会の編集による『診療情報学』が刊行された.本書の目的は,医師,看護師をはじめとする医療従事者が記載,作成する記録や取り扱う情報を「診療情報」として体系化することに関する基本的な事項について解説し,同時にその体系化の問題点や今後の課題を示すことによって,診療情報の意義と役割を明らかにすることにある,と編集委員の大井利夫氏が本書の序の中で述べられている.

 現在のように,医療のすべての分野で高度化が進み,各種の医療専門職が患者を中心に医療を展開するチーム医療の場にあって,安全で質の高い医療を遂行するためには,正確な診療情報を速やかに医療従事者間で共有することが絶対的な条件となっている.しかし現実には,診療情報の収集,管理保管,その活用については多くの解決すべき問題点があり,統一した方式や知識が未成熟の状態にあるため,診療に関するデータは数多くあるが,本当に伝えるべき情報が少ない,いわゆるData-Rich-Information-Poor Syndrome(DRIP Syndrome)の状態にあると言わざるを得ないのが現状である.

投稿規定

ページ範囲:P.157 - P.158

次号予告/本郷だより/告知板

ページ範囲:P.160 - P.160

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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