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書評 地域医療再生のための処方箋―松村 理司 編著『地域医療は再生する―病院総合医の可能性とその教育・研修』
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著者:
堺常雄12
所属機関:
1日本病院会
2聖隷浜松病院
ページ範囲:P.102 - P.102
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私が勤務する聖隷浜松病院では,過去10数年の間に各科の専門分化が進み,診療の内容も高度化し,先進的な医療にも対応ができてきた.それにもかかわらず,数年前から現在の診療体制はこれでよいのだろうかという漠然とした疑問が浮かんできている.例えば,救急の場面で専門医が呼ばれ,「これはうちではないよ」という事例を散見するようになったからである.彼(彼女)自身からすればその通りなのかもしれないが,困るのは患者,看護師,初期対応の医師である.この時点では,診療プロセスの中で何ら問題が解決されていないのである.このような状況を改善し,診療の基礎となる部門の充実と総合的な診療の質の保証を目指して考えたのが「診療部門3階建」構想である.1階部分が総合診療内科と救急科よりなるGeneral Medicine(総合診療部門),2階部分がSpecialties(専門各科),3階部分がSuper-specialtiesという構造である.縦,横の連携の充実が図れればと願っている.まだ完成してはいないがこれから1~2年のうちに構築しようと考えている.
このような考えを持っている時に読んだのが,本書『地域医療は再生する―病院総合医の可能性とその教育・研修』であり,まさに目から鱗が落ちた感じであった.この本は松村理司先生の36年にわたる経験をもとに書かれたもので,現場の医療を知り尽くしたうえで地域医療再生のための処方箋を示されたものである.医療者が医療崩壊などと言っている場合ではなく,現場から医療を再構築しようという熱い心が込もった,しかも実現可能な提言である.