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雑誌目次

雑誌文献

病院70巻4号

2011年04月発行

雑誌目次

特集 採用看護師の教育・研修

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.253 - P.253

 病院附属の看護専門学校の場合は,入学・教育と,採用・研修が一体である.そのため,両者は円滑に移行し,採用後の職場は学園生活の延長であるゆえ定着も期待できる.ところが,独立した短大・大学の場合は,両者は分断されている.その結果,教育者として,どんな病院においても通用する標準的な技能を有する看護師を養成する必要がある一方で,新卒の看護師を採用する病院の側としては,自院に適した人材を採用し,育てなければならない.新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務として施行された背景には,医療安全の確保だけでなく,こうした理由もあったと筆者は考える.

 本特集では,同研修制度の議論の元となった「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」の座長であった井部俊子氏に評価と今後の展望をお願いし,次いで病院における取り組みについて,上田順子氏ならびにウイリアムソン彰子氏に執筆いただいた.一方,中途採用者に対しては,院内の研修や指導の体制を確立するだけでなく,病院のニーズと中途採用者のニーズをマッチングさせ,支援してゆく必要がある.こうした観点からの執筆を北浦暁子氏と深澤優子氏にお願いした.最後は事例として,大学と病院の連携について松岡綠氏,行政における取り組みについて矢島道子氏,外国人看護師の教育について小松本悟氏に執筆いただいた.

【座談会】病院における採用看護職の教育・研修

著者: 勝原裕美子 ,   庄野泰乃 ,   宮城惠子 ,   神野正博

ページ範囲:P.254 - P.259

神野 昨年(2010年)12月に厚生労働省から第7次看護職員需給見通が公表されました.2011年から5年間の看護職員の需給見通しですが,その中では看護師の需要増加と同時に,供給の問題として,定着促進,再就業支援,そしてもちろん新卒看護師をいかに増やすかといった課題が挙げられています.今日は現場の看護の責任者として,看護師の教育や離職防止にどう取り組んでいらっしゃるのか,伺いたいと思います.

 最初に,皆さんの病院の背景として,看護基準,看護師さんの平均年齢,離職率などをご紹介いただけますか.

「新人看護職員研修ガイドライン」の評価と今後の展望

著者: 井部俊子

ページ範囲:P.260 - P.264

 「新人看護職員研修ガイドライン」1)(以下,ガイドライン)は,2009年に設置された「新人看護職員研修に関する検討会」で作成され,2010年4月から新人看護職員研修に活用されている.このガイドラインは,2004年に設置された「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」2)における議論がもとになっている.この間に6年の年月が流れた.

 厚生労働省は,新人看護職員研修に関する取り組みとして,これまで4つの検討会と1つの懇談会を開催している(図1)3).2003年の「新たな看護のあり方に関する検討会」では,卒後の教育研修の充実と専門性の向上,さらに技術研修と制度化を含めた検討を課題としている.2004年「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」では,新人看護師・助産師が1年間で到達すべき目標と指導指針を提示し,引き続いて研修責任者を対象とした研修とモデル事業を実施した.2005年「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法のあり方に関する検討会」では,新人看護職員の研修を制度化することが不可欠であり,制度のあり方や実施に際しての課題を検討するべきとしている.2007年「看護基礎教育の充実に関する検討会」では,保健師,助産師,看護師教育の技術項目と卒業時の到達度を提案し,卒後の臨床研修の検討を厚生労働省は速やかに着手すべきであるとしている.そして2008年「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」では,卒後の新人看護職員研修の必要性と教育内容の確立が論点整理の中に盛り込まれ,2009年「看護の質の向上と確保に関する検討会」中間とりまとめでは,看護教育のあり方,新人看護職員の質の向上,看護職員の質の向上,看護職員の確保,チーム医療の推進などが提言された(図2)4)

病院における採用看護師教育のあり方―主体性を育む支援の構築を目指して

著者: 上田順子

ページ範囲:P.265 - P.270

 病院における採用看護師教育は,2004年の厚生労働省「新人看護職員の臨床実践能力向上に関する検討会」報告書を受けて,新人看護職員の到達目標を明文化し,研修指導指針に基づき研修体制を整備するなど実施されてきた.しかし,医療の高度化や患者の重症化,平均在院日数の短縮など厳しい医療環境の中での採用看護師教育は困難を極め,多くの看護管理者たちは理想の教育と現実の狭間で地団駄を踏んでいたのではないだろうか.

 2009年,保健師助産師看護師法および看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部が改正され,2010年4月から新人看護職員の卒後臨床研修の努力義務化が施行された.これまで病院の自主性に任されていた新人看護職員研修を,看護部だけでなく病院として組織を上げて実施することが努力義務となったのである.現在,厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」を参考に,各病院が従来の研修体制を見直し,教育のあり方を考え,創意工夫して研修プログラムの開発に取り組んでいる.

教育専任課長の立場から

著者: ウイリアムソン彰子

ページ範囲:P.271 - P.275

 筆者は大学院(看護管理学専攻)修了後,教育の現場に8年間身を置いたが,思うところがあり,2009年4月に臨床へ復帰した.そもそも,臨床を離れたいと思っていたわけではなく,大学院生活の2年間も,夜勤をしながら睡眠時間を削って通っていた.教育現場にいた時も,臨床から声をかけられた仕事はなるべく引き受けていた.臨床での課題について,現場にいる人と話し合える良い機会であったからである.

 2006年の診療報酬改定で,看護は「7対1看護体制」という念願の手厚い人員配置を獲得した.しかしその結果,どの病院に行っても「看護師がいない.都市部の大病院に異動していきました」「年休を削って何とかやっています」という管理者の悲鳴を聞くことになった.一方,売り手市場となった看護学生は,就職活動をほとんどしなくても就職先が決まるようになったが,1年もせずに辞めて帰ってくる学生が年々増えていることを,教育の現場にいても実感するようになってきた.

中途採用看護師への支援

著者: 北浦暁子

ページ範囲:P.276 - P.279

 看護の質を決めるのは看護師の質であり,それを左右する人的資源管理の重要性は,多くの看護管理者の最大の関心となっている.今や,優秀な看護人材は市場からオンデマンドで調達することなど不可能であり,優れた看護師は組織運営における戦略資源としての重要度が極めて高い.

 平成22年4月「保助看法」「人確法」の改正により,新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化となり,採用看護師に対する教育・研修への関心は一層過熱しているように見受けられる.ガイドラインに則った質の高い新人看護師への教育・研修が検討される一方で,新卒新採用看護師以外に,「中途採用看護師」としてくくられる採用者たちがいる.長いブランクを経て再就職した看護師や,新たなキャリアアップを目指して職場を変えた看護師,前の職場に不適応となった看護師など,近年一気に多様化している.中途採用看護師に対する教育・研修は新人看護師に準じてプリセプターシップなどの体制で行われているが,中途採用者に特化した教育プログラムが整備された施設はほとんどない.個別の対応は,配属される職場単位でフォローするという形が圧倒的に多いのが実態である.

看護師と病院をマッチングさせるための支援のあり方―紹介会社に登録している看護師のアンケート結果から

著者: 深澤優子

ページ範囲:P.280 - P.286

 看護師の慢性的な人手不足を背景に,看護師の就職や転職は「売り手市場」と言われ,看護師自身もそのことをよく知っており,仕事を「選ぶ」という意識が強くなっているような印象を受ける.仕事を選ぶということは悪いわけではなく当然のことではあるが,ここでいう「選ぶ」は,諸条件でいろいろな病院を比較して,自分の望みに近い病院(あるいは完全マッチする病院)を選ぶ(選びたい)というものであり,こうした看護師が昨今増加しているのでないかと感じられるのだ.知人・友人等からの情報収集はもちろんのこと,インターネットでの情報収集は当たり前,より多くの情報を入手し,より吟味して選ぶという行動が一般的になってきている.求人サイトや人材紹介会社に登録する看護師は,必ずしも明確な転職意思があるわけでなく,登録利用目的は,転職そのものと情報収集となっている.

 当社は看護師の紹介・派遣事業を行っているが,ここ2~3年の間に同業の会社が急激に増加し,看護師の就職や転職時の行動も大きく変化している.昨年度は月間平均100~150人だった新規登録者数が,今年は月間250~300人と倍増しており,看護師の転職活動における人材紹介会社や求人サイトが認知度を上げていること,看護師の利用度が高くなっていることがわかる.

【事例:大学と病院の連携】

国立病院機構福岡東医療センターとの連携

著者: 松岡綠

ページ範囲:P.287 - P.289

 2008年4月に福岡女学院看護大学が開学し,3年が経過した.125年の伝統を有するとはいえ,福岡女学院は私立の文系大学であり,ここに看護系大学が創設されたことは全国でも珍しい事例として注目されている.開学3年目の評価も兼ねて,これまでの経緯を振り返ってみたい.

【事例:行政】

神奈川県の取り組み―看護職を育むすべての人の力を新人看護職へ

著者: 矢島道子

ページ範囲:P.290 - P.292

 神奈川県では,2004年度より新人看護職員研修を行政の課題として取り組んできた.2007年度には看護職員確保対策の重点課題と位置づけ,「新人看護職員と教育担当者に教育的支援をする研修会」(以下,新人研修)を実施した.

 看護基礎教育で学んできた新人の成長に関わる人々が,立場の違いを越えて,新人を理解し成長の過程を見守り支える事業である.実施から4年間が経過した.本稿ではこの新人研修を紹介する中から,新人が自らの看護経験から学び続けていく生涯学習者としての能力をどう育てていくかについて考える一助としたい.

【事例:外国人看護師】

外国人看護師候補者の受け入れ

著者: 小松本悟

ページ範囲:P.293 - P.295

 日本との経済連携協定(EPA)に基づいて来日したインドネシアとフィリピンの看護師候補者3人が,日本の看護師国家試験に合格し,昨年4月から正規看護師として働き始めた.そのうちの1人,フィリピン人のラリン・エヴァー・ガメット(34歳)は,足利赤十字病院(以下,当院)において,わずか5か月という短期間の研修で難関を突破した.本稿では当院での教育環境の整備,教育方法を紹介し,さらにEPAの問題と課題についても述べたい.

グラフ

考える力を育てる―クリニカル・シミュレーションラボ―東京医科大学病院 卒後臨床研修センター

ページ範囲:P.241 - P.244

 東京医科大学病院では,新医師臨床研修制度を契機に卒後臨床研修センターを開設した.同センターは研修医の基本的な臨床技能向上を目的に,各種シミュレーターを揃えたクリニカル・シミュレーションラボを備えていたが,2006年に阿部幸恵氏が専任管理者として着任したのをきっかけに,施設をより活用すべく,院内の多職種に向けた各種プログラムの充実を図っている.今回は看護師対象に行われている「ヘルスアセスメントコース」を紹介する.

連載 看護学生と若手設計者が考える 理想の病院・4

地域と交流のある

著者: 中津大悟

ページ範囲:P.246 - P.247

地域と交流のある病院とは

 看護学生の皆さんのディスカッションから導かれた12のテーマのうち,私が選ばせてもらったのは「地域と交流のある病院」です.最初に,2つのサブテーマ「閉鎖的でない病院」「みんなで使える公園」を手掛かりに,今回のテーマについて考え始めました.「閉鎖的でない」という言葉の意味するところは,病院を包む物理的な壁と,精神的な壁があるのだと思いますが,今回の場合は特に後者のほうではないかと思います.病院スタッフと患者さんだけでなく,周辺の住民も含めた地域のみんなで交流を持ちたいという理想の中には,病院機能を追求する過程で,病院が周辺とは無関係に巨大化し,広大な敷地を求めて郊外の立地にぽつんと建ってしまうといった孤独さがあると解釈したからです.

 そして,もう1つのサブテーマ「みんなで使える公園」はその孤独さを解消し,精神的なつながりを持つための,とても重要な空間になると感じました.今回は,病院機能を絞り,建築ボリュームを抑えた中で,病院スタッフ・患者さん・地域の人たちが相互に使えるツールとして公園を共有しつつ,病院を含めた地域との交流を促すきっかけづくりができるような提案をしたいと思います.

医療マネジメント 21世紀への挑戦・1【新連載】

病院崩壊からの再生―「匠と女将の世界」から「価値共創組織」へ

著者: 長谷川敏彦

ページ範囲:P.296 - P.299

 この20年は病院,いや医療システム全体の激動の時代であった.特にここ5年は「医療崩壊・病院崩壊」という流行語に象徴されるように,病院経営環境が大転換を迎えている.これからの20年,日本は有史以来の高齢者数を抱える超高齢社会に向け驀進し,これまでの20年以上に変貌することが想定される.特に医療については,あと5~10年で大きく様変わりするのではなかろうか.

 しかし現在の混乱・未来の重圧に対して,日本の医療界にも,また政界にも未だその準備があるようには見えない.準備のための「課題の把握」「原因の分析」「将来の予測」「提案の検討」は,どれをとっても単純ではないからである.

 実は,変革期に有用な手法とは「大きな枠組みによる俯瞰」の作業である.本連載では,まず第1回で導入として病院経営をめぐる過去と未来の20年間を歴史的に俯瞰し,そこに浮かび上がる現象を医療マネジメントの枠組みから捉えることにより,背後にある根本原因を追究する.その分析を基に,最新のサービス経営理論を用いて解決法を提案したい.残りの5回はこの第1回を基調とし,医療界を構成する医療マネジメントの各要素およびその背景について順次詳述していく.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・56

療養病床におけるMSW業務の確立―公立から民間へ移行した病院のMSW

著者: 下地美佐

ページ範囲:P.300 - P.303

 当院は2009年度に高浜市立病院から医療法人豊田会刈谷豊田総合病院高浜分院となり,新たなスタートを切った.MSWは市立病院時代には配置されていなかったが,新たに2人配属されることになった.これまでの取り組みから,新病院におけるMSW業務の確立の過程とMSWならではの相談援助業務とは何かを振り返り,療養病床におけるMSWの役割について検証する.

医療BSC基礎講座・3

BSCの起源を探る

著者: 髙橋淑郎

ページ範囲:P.304 - P.307

 1987年,キャプランらは著書『Relevance Lost』で,競争的な経済状況の変化とそれに対する企業戦略の遂行において,当時の財務指標ではスピード・内容の面とも追いつくことができないと指摘した1).管理会計の経営意思決定に対する有用性の喪失(Relevance Lost)問題である.経済的効率優先の企業経営の見直し,顧客志向へのシフト,多品種少量生産,サービス経営の増加などの急激な変化にあって,経営内部に向けた伝統的管理会計の知識や手法では,現在の企業のあり方を示せない,あるいは実務と乖離し整合性が失われるという主張であった.キャプランらは「管理会計システムは組織の業務や戦略を支援するよう設計することができ,またそうであるべきである」としている.

 この喪失した「レレバンス」をどう再度獲得していくのかについて,キャプランは管理会計の枠組みを拡張あるいは伸張させ,管理会計の中で解決し,レレバンス・リゲインドをいかに図るかということを考えていた2).しかし,後述するように,キャプランはBSCの発案・発展において経営学的手法を多く取り入れ,その根底には管理会計の領域をはるかに超えた思考があると考えられる.したがって筆者は,キャプランは管理会計の歴史的背景やアメリカの近視眼的・財務主体の業績評価に不満を感じ,伝統的な管理会計の限界を超えないと管理会計が生き残れないという意味合いで上記の書籍を著し,それが1992年のBSC誕生へつながったと考える.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・43

―長崎原爆とひとりの医師②―長崎の鐘が鳴る

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.308 - P.309

 『長崎の鐘』(アルバ文庫)は永井 隆が「第11医療隊救護活動報告書」を長崎医科大学に提出した後,書き始めた著作の第1作目である.長崎の鐘とは浦上天主堂の「アンジェラスの鐘」を指し,「平和を願う鐘の音」を意味する.本書が元になり,サトウハチロー作詞・古関裕而作曲の「長崎の鐘」が生まれた.今回は前書の内容から,彼の平和への願い,その源流に触れた随想を綴る.

 表紙を開くと,片岡弥吉が序文を記し,その冒頭に永井の妻の死について記してある.書中で永井が妻の死について触れていないため,一筆加えたと受け取れる.あえて書かないで沈黙を守る,その不自然さに永井自身のメッセージが潜んでいるのだが,序文がそれを切り崩す.事実を客観的に綴ることの重要性とその難しさを感じた.僕もどこかで同じことをやっているに違いない.よかれと思ったことが他人を傷つけ,何の気なしにやったことが喜ばれたりする.この世とはそうして成り立っている.

病院管理フォーラム ■院内感染対策―医療監視の立場から・4

日和見感染症

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.310 - P.311

 「日和見感染症」という言葉があります.黄色ブドウ球菌,腸球菌,セラチアなどは,皮膚表面や腸内,あるいは環境中に常在していますが,健康人では,正常な免疫機構によって排除されるため,通常は重篤な疾患を起こすことはありません.また他の病原性を持った強い細菌などが存在する状況では,それらの菌との競争に勝てないことも病原性を示すことが少ない理由の1つです.しかし,手術後や消耗性疾患などで免疫力が低下した状態,さらには抗生物質が使用されて他の病原細菌が勢いのなくなった状態になると,これらの常在菌,環境菌が肺炎などの感染症を起こし,重篤になることがあります.身体や他の病原微生物に勢いがなくなった状態で,病原性を発揮するため「日和見」感染症と呼ばれるわけです.

 健康人に病原性を示すことが少なく,院内感染の代表的な原因となります.旧来は,院内感染症=日和見感染症とする考え方もありました.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第195回

総合病院 南生協病院

著者: 野崎庸之 ,   橘髙宗平 ,   廣瀬文昭

ページ範囲:P.312 - P.317

 総合病院南生協病院は,南医療生活協同組合の基幹施設として313床26診療科を有する総合病院である.名古屋市南部におけるJR東海道本線の新駅「南大高駅」の前に,2010年3月に移転新築した.

リレーエッセイ 医療の現場から

NPOと企業が取り組んでできること―障害のある人への「スキンケア&メイク講座」から

著者: 久島玲子

ページ範囲:P.319 - P.319

 東京・有楽町にある「ハーバーサロン」では,月に1回のペースで「基本のスキンケア&メイク講座」が開催されている.化粧品会社がメイク講座を行うのは特に珍しくないが,この講座がユニークなのは,知的障害や発達障害があり,すでに就労をしている,あるいはこれから就労を目指している人たちを対象にしているところだ.エイブルアート・カンパニーという,アートを通して障害者の自立を支援するNPOとハーバー研究所という企業が協力して行っている.

 そもそも,障害のある女性にとって,スキンケアやメイクをするのはとても大変なことなのだ.種類も数も多い化粧品を混乱せずに,手順どおりに使っていくことが苦手な人が多い.また,本人がメイクに興味を抱いても,周囲が「いらない化粧品まで買わされてしまうのではないか」と不安を抱き,化粧品などに触れる機会が少ないのだという.

表紙

「さくら」

著者: 赤木主税

ページ範囲:P.251 - P.251

 1980年岡山県生まれ.生後1か月でダウン症と診断される.中学卒業後に入所した岡山県吉備の里能力開発センターで絵画の才能を開花.97,98年「Tシャツアート展」受賞,世界人権宣言50周年記念切手デザインコンクール佳作入選ほか.2006年4月より茨城県つくば市にあるNPO法人自然生クラブに参加.絵画制作の他,田楽舞の舞台にたち,アイルランド,ベルギー等の演劇祭に参加,国内外問わず精力的に作品展,公演を行う.


【今月号の作品】

さくらの木が大地にしっかりと立った様子はとても力強く感じる.満開の花びらの1つひとつがとてもかわいい.(母 赤木真里子)

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次号予告/本郷だより/告知板

ページ範囲:P.320 - P.320

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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