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文献詳細

雑誌文献

病院70巻5号

2011年05月発行

文献概要

特集 病院は経済成長に寄与するか

「医療と経済成長」論議

著者: 遠藤久夫1

所属機関: 1学習院大学経済学部

ページ範囲:P.343 - P.347

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■「医療と経済成長」の議論は「計画原理VS市場原理」論争の延長

 ここに来て医療と経済成長との関係が注目されてきている.国民皆保険体制が整った1960年代からの推移を見ると,国民医療費の伸び率は経済成長率と高い相関がある(表1).これは国民医療費の伸び率が経済成長率を大きく上回ると,積極的な医療費抑制策が展開されてきたためである.医療費の伸びを経済の「身の丈」に合わせるというこの政策は1つの哲学であることは確かである.しかし,経済成長の鈍化が恒常化しているわが国において,2000年以降の医療費の伸び率は年率1%台という皆保険制度確立以来の最低水準の伸びに抑えられている.70歳以上の高齢者の1人当たりの医療費はそれ以下の年齢の5倍弱であり,65歳以上の人口は年率約3%で増加している.この高齢化に伴う医療需要の増加に経済的にどこまで応えることができるのか.これがわが国の医療保障を考えるうえで大きな課題となっている.

 「トヨタ過去最高益達成」「国民医療費過去最高」,この2つの報道は異なるニュアンスをもっている.前者は「よかった.日本企業もまだまだいけるぞ」という印象であり,後者は「困った.これからどうなるのだろう」といったニュアンスで報じられてきた.この違いはどこから来るのか.医療費は負担であり経済成長の「重し」であるという固定観念があったためである.これに対して医療活動は経済成長に貢献するという当然のことが改めて主張されるようになってきたのである.しかし,そこから導かれる政策インプリケーションには対照的な2つの考え方がある.

参考文献

1)宮澤健一,日原知己(主任研究者),他:医療と介護・福祉の産業連関に関する分析研究,医療経済研究機構,2010
2)前田由美子:医療・介護の経済波及効果と雇用創出効果―2005年産業連関表による分析,日医総研ワーキングペーパーNo.189,日本医師会総合政策研究機構,2009
3)閣議決定:新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ,2010
4)医療産業研究会:医療産業研究会報告書,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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