文献詳細
文献概要
レポート【投稿】
診療拒否・退院請求・強制退院:裁判例レビュー
著者: 奥津康祐1
所属機関: 1東京女子医科大学医学部医療・病院管理学
ページ範囲:P.452 - P.455
文献購入ページに移動要 旨 近年問題となる患者・医師関係の特に先鋭的な場面として,診療拒否・退院請求・強制退院がある.これらの法的関係の理解は重要である.診療契約は準委任契約とされるが,民法上,準委任契約は両当事者の意思が合致することによって成立し,また,各当事者はいつでも解除できるのが原則である.しかし,医師は正当な事由なく診療を拒否できないという医師法19条1項の応召義務規定がある.正当な事由とは何か,いかなる場合に診療拒否ができ,あるいは,できないのか.入院加療が不要な場合,満床の場合,専門医が不在である場合,医師の経験・自信不足や開業医の専門外の場合,診療費不払いの場合等についてこれまでの裁判例をレビューし,適宜検討を加える.また,常軌を逸した行動をする“自称”患者に対し,医療機関側が退院請求や強制退院の措置をとった事例も紹介する.本稿が,よりよい医療を提供できるような環境づくりに役立てられれば幸いである.
参考文献
1)美濃部達吉:行政上より見たる医師の不応招問題(一).法律新聞 1047:6-7,1915
2)我妻榮:債権各論上巻,岩波書店,1954,p19
3)中村哲:医師の判断(裁量)と患者の自己決定権について(上).判例タイムズ 1018:87,2000
4)高田利廣:事例別医事法Q&A(第4版),日本医事新報社,2006,pp10-11
5)西原春夫:犯罪各論(第2版),筑摩書房,1983,p115
6)中森喜彦:医師の診療引き受け義務違反と刑事責任.法学論叢 91(1):1-2,1972
7)小野恵:医師法第19条第1項の問題点.東京女子医科大学雑誌 38(10):709,1968
8)上記5),p116
9)厚生省:医務局長通知医収第755号(昭和30年8月1日),1955
10)野山宏:民事編20事件.最高裁判所判例解説平成七年,1998,p452
11)上記3),87-88
12)厚生省:医務局長通知医発第752号(昭和24年9月10日),1949
13)加藤済仁,小林弘幸:医療訴訟事例から学ぶ(13).日本外科学会誌 105(7):422,2004
掲載誌情報