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特集 病院と日本復興
被災地で目指す高齢社会のまちづくりモデル
著者: 後藤純12
所属機関: 1東京大学・仮設まちづくり支援チーム 2東京大学高齢社会総合研究機構
ページ範囲:P.43 - P.47
文献購入ページに移動東京大学高齢社会総合研究機構は,超高齢社会の広範で複雑な課題を解決するために,医学,看護学,理学,工学,法学,経済学,社会学,心理学,倫理学,教育学など,各領域の専門家が学問領域を超えて結集した組織である.
震災以前から,医学,看護学,都市工学,建築学の教員や学生らと,「住まいとケアの一体的整備」というテーマに取り組んできた.都市部の高齢化は想像以上に厳しい問題を巻き起こし,病院には外来患者が大量に押し寄せてくる.例えば千葉県の某市は月に500人が高齢者となり,毎年1%ずつ高齢化率が上がっていく.しかし病院の数はそう簡単に増えることはない.また一方で,日本の高齢化は後期高齢者の増加が特徴である.身体機能・認知機能ともに良好で自立した生活が送れていれば,公共交通を乗り継ぎ病院に通うことは可能であるだろう.しかし80歳あたりを境にして,自力では病院に通えなくなってくる.高齢者の単身化,夫婦のみ化も進み,病院まで連れて行ってくれる人もいない.病院は前期高齢者であふれ,街は外来にかかれない後期高齢者で埋もれる.震災以前から,こうした現状について「高齢化の津波が押し寄せる」と称し注意を喚起していた.
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