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雑誌目次

雑誌文献

病院71巻10号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 病院における歯科

巻頭言

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.773 - P.773

 わが国において,医科と歯科は身分法が医師法と歯科医師法に分かれ,それぞれの業務は名称独占・業務独占となっている.大学教育も医学は医学部,歯学は歯学部でそれぞれ別に教育されている.しかし,両者は完全に独立しているのではなく,口腔外科領域で共通部分を持つ.さらには,口腔ケアが手術後の合併症の発生頻度を低下させるほか,口腔内常在菌の誤嚥による誤嚥性肺炎や,抗がん剤の使用による多発性口腔粘膜炎(口内炎)の予防,QOL(Quality of Life)の向上に貢献することが広く認知されてきている.合併症や肺炎の抑制は,無駄な医療費の抑制にもつながる.

 2012年の歯科の診療報酬改定においても「チーム医療の推進や在宅歯科診療の充実等」に関して重点的に配分がなされ,「周術期における口腔機能の管理」「医科の医療機関との連携,医科歯科併設の医療機関の取り組み」「在宅歯科診療」の評価が行われた.

病院における歯科診療報酬の現状

著者: 中園健一

ページ範囲:P.774 - P.778

 2012年4月に診療報酬が改定された.今回の改定は「社会保障・税一体改革成案」で示した2025年のイメージを見据えつつ,あるべき医療の実現に向けた第一歩の改定である.本稿では,歯科保健医療を取り巻く現状と,歯科の診療報酬改定,特に病院における歯科診療報酬を中心に改定の概要を説明したい.

歯科医療政策と病院

著者: 野村眞弓

ページ範囲:P.779 - P.783

■日本の歯科医療の現状

 二大歯科疾患であるう蝕と歯周病は,1970年代に口腔常在菌の感染症としてその病因・病態が明らかになり,歯科医療はそれまでの“削って詰める”治療から,感染症としての対応へとのパラダイムが転換している1).そして,やや遅れて“むし歯の洪水”の時期に新増設された歯科大学・歯学部を卒業した歯科医師が臨床の第一線に立ち始めた.人口10万人当たりの歯科医師数は,1980年の45.8人から2010年には79.3人と1.7倍に増えている.

 1980年代に入ると,日本の人口構造は少子化・高齢化へと転じたことが明らかになったが,歯科医療の患者構成はそれを増幅する形で変化が生じた.早期発見・早期治療と,むし歯予防の推進により,小児う蝕患者の減少と軽症化が進んだ.一方で,長寿化と老人医療制度によって高齢者の歯科受診が増加したが,歯科診療所の患者総数は1980年の1208万人から2008年には1309万人と8.3%の増加に留まっている.

わが国における病院歯科の現況

著者: 阪口英夫

ページ範囲:P.785 - P.789

 医科と歯科は同じ医療分野であるにもかかわらず,その教育体系が医学部と歯学部に分かれていることにより,一般的にも違った分野として捉えられている.医師や看護師は医科疾患の治療のためにあり,歯科医師や歯科衛生士は歯科疾患の治療のためにあるという考え方である.しかし,歯や口腔は,同じ身体に存在する器官であり,医科疾患においてもその回復や治療に重要な役割を示すことが知られてきている.特に高齢社会を迎えたわが国における多くの研究は,口腔機能維持や口腔ケアが健康寿命の伸展を促すだけでなく,医科疾患の合併症予防にも効果があることを示してきた.これらの報告を基に,口腔機能や歯科の活動について興味を示す医師や看護師が増えている.

 一方,歯科医療サービスを担う歯科医師や歯科衛生士の多く(90%以上)は,医科との接点がほとんどない一般歯科診療所に従事している.そのため,歯学部では一般歯科診療所における歯科医療を中心に据えたカリキュラムによって教育が行われ,医科歯科協働について教える機会はあまりなかったというのが今までの状況である.しかし,高齢社会を迎え,歯科医療サービスの提供対象は確実に広がってきており,要介護高齢者を含む障害者であっても,一般歯科診療所の対象となる時代がやってきたことを背景に,歯学部教育も医科歯科連携を見据えた教育方針に転換を始めている.

病院における歯科経営

著者: 大池康礼

ページ範囲:P.790 - P.794

■歯科部門の損益状況

 歯科部門は,多くの病院で経営面・採算性からその存続が議論されるケースが多い.特に近年は,自治体病院も経営改善が必須となっており,その過程で歯科部門はその存在意義が問われることが多くなってきている.

 しかしながら,そのような場面において比較検討するために必要な,歯科部門の経営実態がわかる公的統計は少ない.例えば,医療機関の経営状況を把握するための調査としては厚生労働省の「医療経済実態調査」が存在するが,この調査ではそもそも病院の診療科別の集計が行われていない.したがって,歯科・歯科口腔外科にかかわらず,病院における各診療科の採算性を適切に分析できない.

病院における歯科の役割

著者: 大野友久

ページ範囲:P.797 - P.801

 「病院の歯科」というと,真っ先に思いつくのが口腔外科であろう.口腔外科は,主に顎口腔領域の外科処置を実施する科である.具体的な処置内容としては,難しい抜歯や顎骨などを扱う口腔内の外科処置,あるいは頭頸部腫瘍への対応などが挙げられる.また,障害者や有病者など,地域の歯科診療所では実施困難な患者への対応,すなわち地域歯科診療所の後方支援的な機能も担っている.したがって,口腔外科は地域にとって必要不可欠であるのは間違いない.しかし近年,様々な理由から「もう1つの機能」を持った病院歯科が発展しつつある.それは,他科や他職種と積極的に連携する病院歯科である.

 具体的には口腔ケアを軸とし,他科患者の全身疾患に対する治療の支援を目的とした病院歯科である.当科は基本的に口腔外科的業務を実施せず,その「もう1つの機能」を主軸に置き,入院患者の歯科治療や口腔ケアを実施するというやや極端な歯科ではあるが,われわれの業務内容等を紹介しつつ,今後の病院歯科のあり方を提言したい.

歯科口腔外科の取り組みと収支

著者: 山下徹郎

ページ範囲:P.802 - P.805

 歯科口腔外科の存在は,病院においてどう認識されているのだろうか.また,医師や病院経営者から見た印象はどのようなものだろうか.「同じ病院内の診療でも,保険コードネームが異なるし,混合診療が普通で,そのうえ保険外診療も当たり前」「不採算部門」などと思われ,事務からも「歯科レセプトはわからないから,外注しよう」と言われ,病院全体のシステム,特に電子カルテシステムから除外されてはいないだろうか.院内の弱小科として軽視されているような,こうした様々な意見を病院歯科口腔外科に身を置く1人の歯科口腔外科医として,非常に敏感に感じている.

 本稿では,恵佑会札幌病院における歯科口腔外科の取り組み,治療実績,収支状況を紹介する.病院歯科口腔外科運営の一例として読者の病院関係者に知っていただくとともに,診療だけでなく,病院経営の面から見た歯科口腔外科の必要性を理解していただければ幸いである.

地域包括医療・ケアにおける歯科

著者: 占部秀徳

ページ範囲:P.807 - P.811

■地域包括医療とは

 2005年3月に尾道市と合併した御調町は,広島県の東部,尾道市の北部に位置し,人口約7600人,高齢化率32.8%(2012年3月末現在)の町である.

 尾道市公立みつぎ総合病院は,医療部門である病院は22診療科240床,介護・福祉部門である保健福祉総合施設は介護老人保健施設(老健)150人(一般棟100人,認知症棟50人),介護老人福祉施設(特養)100人,有床診療所19人,グループホーム18人とケアハウス30人の合計317人の入所者ならびに行政部門である御調保健センターから成る(図1).

地域歯科診療支援病院の現状

著者: 中松耕治

ページ範囲:P.812 - P.815

■病院の概要

 大正はじめ,福岡県の中央に位置する筑豊地方には公的医療機関が1つもなかったため,「郡民のために良医を招き,治療投薬の万全を図らんとする」という開設の精神に基づき,当時石炭事業を行っていた株式会社麻生が飯塚病院を設立し,1919年8月に診療を開始した.以後,当院は一貫して地域医療の向上に努め,飯塚市を中心とする筑豊一帯地域の中核病院として発展してきた.1982年4月には救命救急センターを開設するとともにICU・手術設備を充実させ,循環器科・脳神経外科を新設して筑豊のメディカルセンターとしての第一歩を歩み出し,2005年4月には地域医療支援病院に認定されている.

 病院の概要は表1の通りで,全国でも稀な漢方診療科を含め現在36科,1116床(一般978床,精神138床),外来患者1日1900人余,医師数274人(うち歯科医師4人)を擁している.

虚弱高齢者の歯科診療・口腔ケア

著者: 西出直人

ページ範囲:P.816 - P.819

 虚弱高齢者(frail elderly people)とは,要介護の状態ではないが,心身機能の低下や病気などのため,日常生活の一部に介助を必要とする高齢者と定義される.複数の慢性疾患や高齢者に特有の問題(老年症候群)を抱える虚弱高齢者は,厚生労働省が指定した5大疾患である,がん,脳卒中,心疾患,糖尿病,精神疾患を合併症として持つことが多く,この他にも複数の疾患を抱えている.また,75歳以上の5人に1人は認知症と言われ,これらも社会問題となっている.

 そのため虚弱高齢者の歯科診療においては,重篤な口腔疾患のみならず,抜歯一歯のみ施行するにも,血圧の変動や抗血栓療法よる出血,糖尿病やステロイドの服用などによる抜歯後感染などの合併症が出現し,十分な情報,手段を持たない開業歯科医院ではその対処に苦渋することがある.したがって,かかりつけ歯科医院では対処が困難なケースに対しては,病院歯科がその役割を果たす必要がある.また,病院歯科におけるメリットとして,病院では多数の科が虚弱高齢者に対する治療を行っていることから,院内の各専門医と連携し,評価し合いながら治療できること,さらに病院の検査機器による詳細な評価が可能なことなどが挙げられる.

グラフ

オムツから見える排泄ケアの今 (株)はいせつ総合研究所 オムツフィッター研修

ページ範囲:P.761 - P.762

 「病棟では1人の患者さんにオムツを何枚も重ねて使っていて,汚れるたびに1枚ずつ抜いていました.患者さんが“お尻が痛い”と言うので改善を提案したのですが“夜勤の手間が増えるから”と却下されてしまいました」.オムツフィッター研修に参加したある看護師の言葉だ.

 高齢生活研究所の所長を務める浜田きよ子氏は,25年にわたって介護の相談を受ける中で,その半数が排泄に関わる問題であったことから,2003年に(株)排泄総合研究所(現・はいせつ総合研究所)を立ち上げた.その核となる「むつき庵」は多種多様な排泄用具を揃え,アセスメントに基づく具体的な排泄用具の提案を行う情報館として運営されている.

連載 病院が変わるアフリカの今・10

予算のない国立病院が選んだ日本式経営

著者: 池田憲昭

ページ範囲:P.766 - P.769

国からの予算がない国公立病院

 コンゴ民主共和国(以下,コンゴ)は,アフリカ中央部に位置する広大な国で,人口約7000万人を擁する.首都キンシャサでは2010年の大統領公邸襲撃事件以降は大規模な内戦もなく,次第に安定しつつある様相だが,国土の東南部は天然資源が豊富であり,隣接9か国と国境を共にしているため紛争が絶えない.情勢は依然不安定という見方が大勢を占めている.

 一般に,フランス語圏アフリカの公的病院では,正規職員は国(公務員省)から給与が支給され,病院運営予算は保健省(財務省)から支払われる.しかし国家予算の乏しいコンゴでは,国公立病院の運営費用は各施設の負担,すなわち利用者負担となっており,国民の大半を占める貧困者には,保健医療サービスの利用に大きな壁がある.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・61

【連載5周年記念対談】東日本大震災─爪跡と向き合う~柳田邦男氏と語る~

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.820 - P.826

東日本大震災から1年半が経過した今,被災した人々に本当に必要な支援とは何だろうか.阪神淡路大震災の被災者でもある鉄郎さんと,大災害を取材し続けてきたノンフィクション作家の柳田邦男さんが,喪失体験と向き合うこと,そして次世代に伝えていくことについて語った.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・74

MSW業務の立ち上げを通して

著者: 村田朱

ページ範囲:P.828 - P.831

 都市部の大規模病院においてMSWの配置が進む中,地方の中小規模の病院ではいまだMSWの配置がゼロであるか,または事務職との兼任,嘱託,パート採用の形を取っている場合が多い.地方都市の病院におけるMSW新規配置の事例を報告し,今後の課題を検証する.

医療管理会計学入門・7

現場の自律的経営を促す損益管理システム―責任センターマネジメントとしての管理会計③

著者: 荒井耕

ページ範囲:P.832 - P.835

■現場自律性促進損益管理システムの登場

 前2回で採り上げてきた予算管理や利益目標管理を適切に運用していくためには,責任センター別原価(損益)計算により提供される,責任センター別の収益,費用,利益に関する情報が必要である.この情報がなければ,適切に収益予算や費用予算は編成できず,統制段階で予算実績差異を把握することもできない.また適切な利益目標の設定や,その実現度合も把握できない.このように,責任センター別原価計算は,責任センターマネジメントとしての管理会計の運用にとって不可欠な経営情報提供システムとしての役割を有している.

 しかし,この責任センター別原価計算は,時に情報提供機能だけでなく,その計算制度の下で働く職員の意識や行動に,意図した,あるいは意図せざる影響を与える機能をも有している.意図せざる影響は必ずしも組織にとって望ましいものとは限らず,できれば避けたい悪い影響であることもある.伝統的には,原価計算の情報提供機能に注意が向けられ,ともすると原価計算を単なる計算システムとして理解する向きがあった.しかし原価計算は,経営管理のための情報を提供する仕組みであると同時に,構築・運用方法次第で,職員の意識や行動に特定の影響を与え,組織にとって望ましい方向へと導くための経営(損益)管理システムとして活用することも可能である.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第213回

がん・感染症センター都立駒込病院

著者: 尾崎亮一

ページ範囲:P.837 - P.843

■がん・感染症医療の拠点

 本プロジェクトは,東京都が進めている都立病院再編整備の一環として平成17(2005)年度に東京都病院経営本部が特定事業として選定したPFI(Private Finance Initiative)事業「がん・感染症医療センター(仮称)整備運営事業」に基づき,がん・感染症医療の拠点とすべく都立駒込病院の全面改修を行うものである.

 具体的にはストック活用の観点から謳われているスケルトン・インフィルの概念に沿い,約70,000m2という大規模な病院のスケルトン(躯体)に耐震補強を施して活用し,インフィル(内外装,設備)を新しくする「全面的な改修工事」を「病院の運営を休止することなく行う」というこれまでに類のない試みである.

リレーエッセイ 医療の現場から

気持ちをつくる病院建築

著者: 戸倉蓉子

ページ範囲:P.847 - P.847

 私は「気持ち」をつくる仕事をしています.「一体何屋さん?」と思われるかもしれませんが,私は建築デザイナーです.

 家や会社など,建物の環境が気持ちに与える影響はとても大きく,「幸せになれる気がする」「仕事がバリバリできる気がする」「きれいになれる気がする」といったように,自分の心がのびのびできる環境に身を置くことは,病気にならずにいつまでも若々しくいられる秘訣でもあります.

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書籍紹介

ページ範囲:P.783 - P.783

書評 日頃からの「ソーリー・ワークス」マインドが大切―ダグ・ヴォイチェサック,ジェームズ・W・サクストン,マギー・M・フィンケルスティーン(著)前田 正一(監訳)/児玉 聡,高島 響子(翻訳)『ソーリー・ワークス! 医療紛争をなくすための共感の表明・情報開示・謝罪プログラム』

著者: 永井裕之

ページ範囲:P.796 - P.796

 妻は関節リウマチが悪化し,炎症があった左手中指の関節滑膜除去手術を受けた.簡単な手術は成功したが,その翌日(1999年2月11日),点滴後の処置において消毒薬を間違って注入されて急死した.なぜ? 何があったの? 死因は何なの?…などなど,病院の説明対応に不信感が募っていった.その時点で「医療紛争」にする気もなかったし,「医療紛争」になるとも思っていなかった.しかし,病院側は「医療事故・ミスにはならないように」という初期対応を進めていたことを後で知った.それは,「ソーリー・ワークス」ではまったくなかった.

 本書は医療事故が過失(ミス)による場合の対応について,「医療紛争をなくすための共感の表明・情報開示・謝罪プログラム」の重要性を説明している.特に「第6章 患者とその家族にどうやって謝罪するか」は,思わぬ医療事故が発生し,さらに突然の死に至った家族に対する対応として「患者は不誠実さを敏感に察知します.誠実に振る舞ってください」,また「初期の反応は怒りや驚き,あるいは激怒であったりします」とし,「落ち着いて次のように答えてください」と,語りかけの言葉が記載されている.

書評 人生を生きるとはどういうことかと考える機会に―岡西 雅子(著)『生きることは尊いこと いのちをみつめた闘病と介護の日々』

著者: 島尾忠男

ページ範囲:P.827 - P.827

 岡西雅子さんの御尊父は高名な結核専門家であり,晩年には医学史的な観点からのご寄稿を結核予防会も何度か頂戴し,ご逝去後は長年にわたり蒐集された結核関連の切手を結核予防会にご寄贈くださった.それを頂戴しにご自宅に伺い,雅子さんにもお目にかかる機会があり,ご自身もご不自由の中,パーキンソン病に悩むお父上を長年在宅で介護されたことは承知していたが,今回ご著書を拝読して,自らも難治疾患である膠原病との長年の闘いを続けながら,というよりは共生しながら,お父上を在宅で介護された,凄まじいとしか言いようのない生き様に圧倒された.お父上にも何度か苛立った対応をしながら,すぐにそれを反省し,介護に戻られるのは,悟りきった聖人に近い心境であろうか.それが雅子さんの周辺に多くの素晴らしい方々が集まってくる契機となったのではないだろうか.往診を厭わず,最善の治療と処置をしてくれた家庭医,牧師さんご夫婦,泊まり込んでお父上の在宅介護に協力してくれた方々,在宅介護がかなり進んだ今日でも,このようなチームの誕生は考えられない.

 慢性疾患に罹患することは,人間を,そして人生を深く考える良い機会となる.一昔前の結核の療養はその典型的な一例であり,若者に多かった結核患者が,生命の危険に曝されながら,人生について,人間について考える中から,多くの優れた文芸作品や芸術が生まれた.膠原病も難治の慢性疾患であり,免疫学の研究がこれほど進んできても,自身に対する過剰な反応を制御する方法は,十分には解明されていない.ステロイドは過剰反応を抑える有力な手段であるが,副作用が避けられない.ほとんど動けない状態で2回も長期間入院された雅子さんが,ご自分で歩くことができ,父上の介護もある程度可能になるまでに回復された背景には,強い意志でつらいリハビリに取り組んだ努力があった.これらの経験を読むことによって,同じ病に悩む者が大いに勇気づけられるであろう.

投稿規定

ページ範囲:P.845 - P.846

次号予告/告知板/表紙解説

ページ範囲:P.848 - P.848

1972年,神奈川県生まれ.自閉症障害を伴う精神遅滞およびてんかん,両感音難聴と診断される.神奈川県立平塚聾学校を卒業し,同県の通所授産所に通所後,秋田県へ.1995年より社会福祉法人一羊会 杉の木園に転入し,お菓子作りや絵画の才能を発揮している.きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)が毎年開催している「きょうされんグッズデザインコンクール」では動物や風景の絵を描き,数多く入賞している.

〈10月号解説〉

大きな果物が色鮮やかに描かれており,食欲の秋にふさわしい作品である.窓には作者の職場である「丸木橋」から見える外の風景が描かれている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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