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特集 病院における歯科
虚弱高齢者の歯科診療・口腔ケア
著者: 西出直人1
所属機関: 1医療法人社団 和楽仁 芳珠記念病院 歯科・口腔外科
ページ範囲:P.816 - P.819
文献購入ページに移動 虚弱高齢者(frail elderly people)とは,要介護の状態ではないが,心身機能の低下や病気などのため,日常生活の一部に介助を必要とする高齢者と定義される.複数の慢性疾患や高齢者に特有の問題(老年症候群)を抱える虚弱高齢者は,厚生労働省が指定した5大疾患である,がん,脳卒中,心疾患,糖尿病,精神疾患を合併症として持つことが多く,この他にも複数の疾患を抱えている.また,75歳以上の5人に1人は認知症と言われ,これらも社会問題となっている.
そのため虚弱高齢者の歯科診療においては,重篤な口腔疾患のみならず,抜歯一歯のみ施行するにも,血圧の変動や抗血栓療法よる出血,糖尿病やステロイドの服用などによる抜歯後感染などの合併症が出現し,十分な情報,手段を持たない開業歯科医院ではその対処に苦渋することがある.したがって,かかりつけ歯科医院では対処が困難なケースに対しては,病院歯科がその役割を果たす必要がある.また,病院歯科におけるメリットとして,病院では多数の科が虚弱高齢者に対する治療を行っていることから,院内の各専門医と連携し,評価し合いながら治療できること,さらに病院の検査機器による詳細な評価が可能なことなどが挙げられる.
そのため虚弱高齢者の歯科診療においては,重篤な口腔疾患のみならず,抜歯一歯のみ施行するにも,血圧の変動や抗血栓療法よる出血,糖尿病やステロイドの服用などによる抜歯後感染などの合併症が出現し,十分な情報,手段を持たない開業歯科医院ではその対処に苦渋することがある.したがって,かかりつけ歯科医院では対処が困難なケースに対しては,病院歯科がその役割を果たす必要がある.また,病院歯科におけるメリットとして,病院では多数の科が虚弱高齢者に対する治療を行っていることから,院内の各専門医と連携し,評価し合いながら治療できること,さらに病院の検査機器による詳細な評価が可能なことなどが挙げられる.
参考文献
1)山田祐敬,他:厚生労働省委託補助事業 「病院歯科における口腔ケア実施に関する実態調査」 報告書,日本病院歯科口腔外科協議会,2004
2)日本循環器学会,他:循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版),2009
3)矢郷香,他:抜歯と抗血栓療法.呼吸と循環 54(9):993-1000,2006
4)倉科憲治,他:抗血栓療法患者に対する口腔外科小手術時の対応に関するアンケート調査.日本有病者歯科医療学会雑誌 15(3):179-188,2006
5)日本透析医学会 統計調査委員会(編):図説 わが国の慢性透析療法の現況 2009年12月31日現在,2010,pp3-13 http://docs.jsdt.or.jp/overview/index2010.html
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