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特集 在宅療養と病院
在宅療養と病院,診療所の機能―現状の評価と推進への課題
著者: 武林亨1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学教室
ページ範囲:P.182 - P.188
文献購入ページに移動このような状況の変化は,地域における医療の機能や役割分担を促す大きな要因となっている.国民側の在宅医療へのニーズも高く,厚生労働省が行った「終末期医療に関する調査」(2008年)では,終末期の療養場所として約63%が自宅(「必要になれば医療機関に入院する」を含む)を挙げている3).また,55歳以上を対象とした内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」(2007年度)でも,「日常生活を送る上で,介護が必要になった場合,どこで介護を受けたいか」と尋ねたところ,自宅が約42%と最も高かった4).こうしたことを背景に,在宅療養の充実がクローズアップされている.厚生労働省によると,在宅医療を必要とする人は2025年には29万人と,現在より約12万人増える見込みという.しかし一方で,最期まで自宅で療養できるのは難しいと考える割合は66%と高く(終末期医療に関する調査),人口動態調査による在宅死亡率(2010年)も,自宅12.6%,老人ホーム(介護老人保健施設を除く)3.5%に留まっていることから(図1)5),在宅医療の充実には様々な角度からの課題解決が必要である.
本稿では,筆者らが実施した平成22年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「在宅療養支援の実態把握と機能分化に関する研究」6)の結果を中心に,主に医療提供側から在宅療養の現状を評価し,今後の方向性について考えていきたい.
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