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特集 患者の医療情報探索
患者の医療情報探索をどう支援するか
著者: 郡司篤晃12
所属機関: 1聖学院大学大学院 人間福祉学研究科 2NPO医療の質に関する研究会
ページ範囲:P.262 - P.266
文献購入ページに移動 WHO(世界保健機構)の評価によれば,日本の医療制度は総合評価で世界第一位ときわめて高い1).また,国民の受診頻度は,欧米諸国のほぼ2倍以上である.しかし,一方で国民による自国の医療制度に対する評価結果を見ると,ヨーロッパ諸国に比べて,日本の評価はきわめて低い.2010年の報道によれば,国民の自国の医療制度に対する満足度は,スウェーデンで75%,カナダで70%,英国では55%が「満足」と回答したのに対して,日本は15%で,先進22か国で最低であった2).専門家から見た医療制度は世界一,医療の利用頻度も世界一なのに,国民はきわめて不満なのはなぜだろうか? このギャップについての分析はまだ行われていない.
現在,わが国では健康に関する情報が氾濫している.しかし,いざという時になって,どこに行ったらよいのか,誰に相談したらよいのか,必要な情報がきわめて乏しいことに気づく.人々は不安なのではないだろうか? 不思議なことだが,人はケアが必要になった時の準備をあらかじめすることができないらしい.
現在,わが国では健康に関する情報が氾濫している.しかし,いざという時になって,どこに行ったらよいのか,誰に相談したらよいのか,必要な情報がきわめて乏しいことに気づく.人々は不安なのではないだろうか? 不思議なことだが,人はケアが必要になった時の準備をあらかじめすることができないらしい.
参考文献
1)WHO : World Health Report 2000, WHO, 2000, p196(Annex Table 9)
2)共同通信:日本,医療の満足度15%,22カ国で最低レベル.ロイター通信,2010年4月15日
3)郡司篤晃:医療システム研究ノート,丸善プラネット,2001,p60
4)江口成美:第2回日本の医療に関する意識調査,日医総研ワーキングペーパー 137,2006 http://www.jmari.med.or.jp/research/dl.php?no=336
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11)野口裕二:物語としてのケア:ナラティヴ・アプローチの世界へ,医学書院,2002
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13)Lorig, et al : Living a Healthy Life with Chronic Conditions : Self-Management of Heart Disease, Arthritis, Diabetes, Asthma, Bronchitis, Emphysema & Others(2nd ed), Bull Publishing Company, 2000/近藤房江(訳):慢性疾患自己管理ガイダンス:患者のポジティブライフを援助する,日本看護協会出版会,2001
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18)Calnan M, Rowe R : Trust Matters in Health Care, Open University Press, 2008, pp6-8
19)医療の質に関する研究会:パス法に関するシンポジウム─その原理と経験の交流,1997年9月27日
20)郡司篤晃(編著):パス法─その原理と導入・評価の実際,へるす出版,2000
21)NPO医療の質に関する研究会:シンポジウム「ヘルス・リテラシーと図書室機能の新たな展開」,2007年2月10日 http://www.shitsuken.org/kyouiku-semina/symposium.html
22)NPO医療の質に関する研究会ホームページ http://www.shitsuken.org/kanja-toshokan.html(2012年4月更新予定)
23)郡司篤晃,他:河北総合病院における「患者図書室」の目的・実績・評価,第50回全日本病院学会,2008
24)奈良岡功:患者への医学情報の提供.医学図書館 51(4):317-329,2004
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